ハッピーさん(@Happy11311)インタビュー ~東京電力福島第一原発収束作業の現場から、作業員の訴え

2014年02月08日(土) 堀 潤
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---線量計に変化はありましたか?

線量的には、そもそも点検中にも高い線量の中でやっているし、その線量がどれくらいのものかという認識はあったので、意外に冷静でした。ただ、致死量というがあるのですが、そこまでいっているのかどうかはわからない状況でした。

---つまり、オーバースケール、針が振り切れているということですか?

そうです。オーバースケールだったので、なるべく線量の低いところを探って逃げました。表にいた自衛隊や消防の方々はその場から逃げるだけでいっぱいいっぱいだったので、その時点で外の線量がどれくらいあったのか、というのはわからなかったのではないかなと思います。

知識のない方の方が怖かったと想像しますね。

課題は人手の確保と技術の継承

---ハッピーさんが、本を通じてまず伝えたかったのは、現場の作業員を取り巻く環境についてということですが、具体的にはどういうことでしょう。

作業員を将来にわたって確保できるかという問題です。

安倍政権では原発の再稼働を進めたり、新たに海外での建設や、輸出が始まっていますが、そちらの方にも作業員が流れていくと思うんですよ。イチエフで作業員を技術的に育てるメリットがない、というのが現状です。あそこは、これからの作業というのは、被曝する作業なので、そこでじっくり技術者を育てるような現場ではないんですね。

建設やメンテナンスをやるほうが技術を伝承できるし、継承できる。でも、あの現場にいくと被曝が大半なので、悠長にやっている暇がないんです。今いる技術者が引退していくと、その下に技術が伝わっていかない。この先心配なのは班長さんや、機械屋さん、電気屋さんなど、ある程度の知識や経験のある人、まさに現場の技術者が育たないということです。

実は今は、そうした高い技術をもった作業員がいなくてもできる現場なんです。設備的には汎用品を使っていますから。コストの問題もあって難しい設備を使っているわけではないんです。これから新たに技術開発されて、高度な機械や設備が投入されるようになると思いますが、将来それを扱える人が果たしているのかどうか・・・。

汎用品を買ってきてポンと置くというのが現状ですので、今は素人でもできる作業をやっているんです。 今後、信頼性の向上を求めれば求める程、質の高い技術が必要になりますが、そうした作業ができる作業員が集まらなければ止めざるをえない状況が増えていくのではと思います。

---汎用品と専門部品とではそんなに違うのですか?

すこし具体的に説明しますね。

本来の流れであれば、原子炉を冷やすための冷却循環のループができました、一通りの急場凌ぎができました、となれば、次のステップではより信頼性のある設備をつくろうよとなりますよね。鋼管にしたり、きちんと溶接したり。つまり部品の耐用年数や品質も含めグレードをアップしたものを使っていくことになります。しかし、そうなるとコストがかさんでしまいます。だから今使っているのは、汎用品なんです。

例えば、今、焼却設備を作っているのですが、その設備にも、一般の汎用品を使っています。神戸製鋼で一般に使用しているものに、放射性物質除去のためのフィルター設備を追加しているだけです。

汚染水の循環ホースも、カナフレックスの汎用品。下水道で一般に使っているポリエチロンのものです。原子力用のものではない。耐用年数は10年くらいものですよ。ただし一般用途での10年であって、放射線の試験ではじき出された耐用年数ではありません。つまり最先端の技術ではないということです。

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