ハッピーさん(@Happy11311)インタビュー ~東京電力福島第一原発収束作業の現場から、作業員の訴え

2014年02月08日(土) 堀 潤
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汚染水の問題だって、今まで通常の原発でも低レベルの放射性物質は基準値を設けて流していたわけだし、今、トリチウムの処理が問題になっていますが、青森県六ヶ所村の再処理工場なんかでは、確か平成20年くらいだったと思うんですけど、当時、18兆ベクレルくらい流しているんですよね。

それは特別な措置としてやっているんですけど、そういう事実も知らされていない。今の僕らからすると、既に過去にそういうものが流されているんですよと、そういうことが国民になかなか知らされていない。国からすれば「公表していますよ」というスタンスなのかもしれませんが、大手メディアはそういう情報をなかなか流してこなかったので、大半が知る由もないですよね。

今、汚染水の問題で騒いではいるけれど、今までもそういうことがあったんですよ、というのを認識してもらいたいと。この40年程の間ずっと、原発が稼働してきたわけですが、小さなものから大きなものまでトラブルは過去にいくつもありました。原発業界というのは、常に「安全、安心」で来たわけではなくて、そういうトラブルも過去にあったんですよと。

これから再稼働するにしたって、原発を推進するにしたって、エネルギーの問題を議論するにあたってもね、もう一度きちんと情報を開示して、事象というかこれまでの事故やトラブルの情報を整理して、「これで本当に安全なんですか?」ということを進めていかなくえてはいけないんじゃないかなと思っています。

それと、本の最後の方に書いているんですが、今の流れでいくと、これから原発は再稼働してくだろうし、核燃料サイクルは止まらないと思うんですよ。それはやっぱり、日米原子力協定とか、プルトニウムの問題とかが背景にあって、そこにメスをいれる政治家がいないダメだと思います。

今のままだと、どうしても国内のエネルギーの問題とかCO2の問題とか、電気料金の値上げとか、庶民が注目するようなところにターゲットをあてて動いている、動かしているような流れなんだけど、本質はそこじゃなくて、日米原子力協定の問題、プルトニウムの問題、もんじゅの問題などにメスをいれなくては根本的な解決にはならないと思っています。そこにメスをいれる政治家が出てくるのか、ということを本の中でも書いています。

---今回の著書で何を一番訴えたかったのですか?

本を出すことについては、色々と言われましたが、フラットな目線で、今起きていることを何の意図もなく書いたつもりです。これを読んでくれた方々がどう思うのかは、それぞれの判断だと思いますが、今後も収束作業はまだまだ長く続くものですから、しっかりとやっていかないと、またいつどうなるかわからないというのもあるんです。

---というのは?

原子力技術の問題がまずあげられます。技術者がいなくなってしまうという懸念です。今、体制を見直さなくては間に合わなくなるという危機感です。

僕自身も年齢的に考えて、これから何十年もやれるわけではありません。いずれは次の人に引き継いでいかなければいけないと思っています。そのためには、この2年間の作業を振り返って、整理して、現状の課題を改善していかなくては引き継ぎ作業もままならない、という思いで本を書いたんです。

---ハッピーさんは常々、2年前と今の状況は変わっていないとおっしゃっていますよね。

この2年間で、延べ4000から5000程のツイートをしました。その全部を整理して振り返りながら、現状というのを2月から夏までの状況を見ながら色々なコメントを書き足していきました。本当は全てを残したかったのですが、ページには限りがあるので、残念だなと思いながら、そこから削っていきました。

僕が書き残したいと強く思ったのは、まず、「現場の作業員は頑張っているよ」ということ。そして「作業員たちを動かしている今の東京電力の体制じゃだめだよ」ということです。

体制的な課題を指摘して、作業員の作業環境を改善することをまず第一に考えました。編集を手助けしてくれたジャーナリストの布施さんは、僕のツイートのうち汚染水の問題を、編集者は作業員の生活や外からは見えない部分を、作業員さんがどんな気持ちで働いているのかを知りたいと言って、その部分をクローズアップして本に織り込んでいきました。

そして僕はまず、現場の作業員の奮闘を伝えたいなと。

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