人口減少、地場企業の国際化といった大きな環境変化のなかで、地方銀行の役割が問い直されている。

 地域経済の活性化を先導するうえでも、サービスの多様化はもちろん、合併・買収を含め、あらゆる選択肢を検討していくべきだろう。

 目下、地銀の業績は全体として良い。ただ、本業の融資は低調で、アベノミクス相場による株高や国債価格の高止まりで底上げされた面が大きい。今後、物価が上昇して金利が上がっていけば、抱え込んだ国債は一転して重荷になる。

 先々、人口減少の影響はさらに大きい。預金者や預金量が目減りするのは避けられまい。

 一方、優良な地場企業はアジアなど海外展開に意欲を示す。サービス面で地銀が対応できなければ、メガバンクにドル箱の顧客をさらわれることになる。

 国際的に展開する企業を、地場の金融サービスできちんと育てていく。それには地銀自ら、顧客企業の先を行く経営変革に取り組む必要がある。

 もともとの地銀と旧相互銀行が転換した第二地銀を合わせると全国で100行を超す。同一エリアで競い合い、序列へのこだわりやライバル意識も強く、再編を阻んできた。バブル崩壊後は救済合併など後ろ向きの再編がもっぱらだった。

 そんななかで、余力のあるうちに前向きの再編に乗り出すのが、ともに首都圏を地盤とする地銀の東京都民銀行と第二地銀の八千代銀行だ。今年10月に持ち株会社方式で統合する。東京はメガバンクの存在が大きく、危機感がひときわ強い。

 経営破綻(はたん)から再生した足利ホールディングス(栃木県)は昨年暮れに再上場した。株式の3割を持つ野村ホールディングスはいずれ売却する方針で、再編の核となる可能性がある。

 広域連携や海外業務を強化する動きもある。

 北海道から福岡県までの9地銀が中小企業の支援で提携を決めたのは一例だ。大口案件で協調融資をしたり、取引先の合併・買収の相手を紹介しあったりする。全国規模の提携は初めてで、業界に一石を投じた。

 国際協力銀行と提携した融資を足場に、国際業務の地力向上を図る動きも広がる。

 ただ、取引先企業の側には地銀の腰はなお重いという不満が根強い。高度化する顧客のニーズに応えられる人材の育成なども、個別バラバラに進めては非効率なのは明らかだろう。

 変革を加速するには、より大局に立った発想が必要だ。