国際激流と日本

「尖閣の主権は日本にある」、
明確に日本支持だったかつての米国中立政策への変節はアジアを危機に陥れる

2014.01.22(水)  古森 義久

(1)1971年のCIA報告書は、尖閣主権問題では、米国こそが一貫して事態の決定的な結果を左右する中心的な存在であることを明白にした。同報告書に提示された証拠は、米国政府が日本を尖閣の所有者と見なしてきたことを疑いなく示している。中国と台湾の抗議を受けて米国が1970年以降に取るようになった「中立」の主張は思慮を欠くものである。

(2)米国の中立政策は、同盟国の危機に対して毅然とした行動を取ろうとしない状況を示す。自国の情報機関が日本の揺るぎない尖閣主権をかつて証明したのに、いま米国政府がそれを認めないことは、日本の潜在敵、特に中国の軍事挑発的な態度との対決を避けようとする戦略的曖昧さにつながる。

(3)この現状は、中国が日本に対し絶え間のない外交的な攻撃、プロパガンダ的な攻撃を仕掛ける力を強めることになる。中国はその種の攻撃を、日本という地域的な競合相手を打ち破り、アジア・太平洋地域での米国の威信と信頼性を侵食させるまで続けるだろう。

(4)米国は尖閣危機に対して極めて重要な役割を果たすことができる。米国政府は日本の尖閣主権主張を支える証拠を保持しており、その証拠に基づく支援と議論とを日本に与えるべきである。米国にとって、日本支持の立場を明示することは、中国人民解放軍が尖閣諸島に上陸し、中国軍との戦闘で米軍部隊の犠牲を余儀なくさせられることよりも、ずっと好ましい。中国軍の尖閣攻撃は、日米同盟の責務により米国を巻き込むことは避けられないのである。

 これらは、米国の国益という観点からしても、極めて妥当性のある政策提案だと言える。さらには米国が日本を真の同盟パートナーと見なすならば、当然取るべき政策としてさえ映る。

 まして日本にとっては、これこそが米国に切望する尖閣防衛策、尖閣をめぐる日中軍事衝突の抑止政策である。中国との衝突や対決を避け続けるオバマ政権にとっても、戦争を防ぐためには十分な新政策だとさえ言えよう。

 こうした提案が出てくることを、日本側としても米国側の超党派の懐の深さとして真剣に認識しておくべきであろう。

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