闘志でも焦燥感でもなく。都知事選投票日、福島県で開かれた民主党大会に漂っていたのはのっぺりとした倦怠(けんたい)感だった。

 冒頭、全員起立して綱領を唱和し、最後は福島市在住の歌手aveさんの歌と幹部らの手拍子で締めくくった。「バラバラだった僕らが 今この時にこそ 一つになる時が来たんだ “頑張っぺ”」。出席者はさぞ励まされたことだろう。

 特定秘密保護法を成立させ、靖国神社に参拝し、さあ、いよいよ集団的自衛権の行使容認に踏み込まんと意気上がる安倍政権下にあって、党の支持率は低迷。日本維新の会やみんなの党は野党共闘よりも自民党との連携に意欲的だ。士気が上がらないのは理解できなくもない。

 それを見透かす安倍首相からは「政策の実現を目指す『責任野党』とは政策協議を行う」と揺さぶられる。この挑発的な物言いに、海江田代表が大会のあいさつで「与党に擦り寄ることは『責任野党』ではない」と反論したのは当然だ。

 だがそれだけか。民主党は国会論戦を通じ、なるほどこれが「責任野党」かという姿を有権者に示し、首相からこの言葉を奪い返さなければならない。

 自民党の1強時代、野党第1党が果たすべき責任とは何か。まずは、大会宣言として採択された「暴走する安倍政権と厳しく対峙(たいじ)する」ことだ。批判的立場から論戦を挑み、対案を出す。問題点や不明確な点を示し、選択肢の幅を広げる。数でかなわない分、熟議のために力を尽くすべきだ。

 特定秘密保護法がそうだったように、疑問や不安が解消されないまま、首相自ら「説明不足」を成立後に認めるような形で事が決められることを許しては、有権者の代議制への不信は高まるばかりだろう。

 とりわけ、集団的自衛権の行使を容認するか否かは、戦後日本の岐路である。民主党は早急に見解をまとめるべきだ。

 元防衛相の北沢俊美・安全保障総合調査会長は「行使を認める場合は、憲法解釈変更ではなく憲法改正の手続きを」という案を作ったが、さまざまな異論が出たため結論は先送りされた。綱領に「真の立憲主義を確立する」の一文を掲げる民主党の立場として「解釈改憲反対」は妥当だ。行使容認に反対する有権者の「受け皿」が求められている。

 反転攻勢の時である。集団的自衛権の問題でまとまれないのなら、あとは安倍政権に「責任野党」として丁重に遇してもらうしかないだろう。