「あ、あのお母さんクレーマーだ」
友人が窓の外を見ながらそう言った。夜のファミレスでの事だった。
友人は保育士の10年選手だ。働き始めてから9年間は幼稚園に勤め、今年から保育園に転職した。仕事の話を聞くと、子供の世話を見ることよりも保護者への対応のほうが大変なんだと感じさせられる。今回もきっとそんな話だろう。
「あの子、嘘つくんだよ」
「そうなの?」
まぁ三つ子の魂百までと言うし、子供でも嘘をつく子はいるんだろう、私はそんな冷たいことを考えた。しかし、友人の話はちょっと違った。
「あの子さ、お母さんの気を引きたくて嘘をつくの」
「どういうこと?」
「あの子のお母さん、すごく忙しいみたいでね、朝は7時半に子供を預けに来て、夜は8時過ぎに迎えに来るの。だからあんまり子供のことを見てやれてないみたい。そこであの子が、誰それにいじわるされた、とか言うと、子供の面倒ちゃんとみてくれてるんですか、って大騒ぎするの」
「それって、その子嘘ついちゃったほうがいいって学んじゃわない?」
「そうそう。悪循環なんだよね。子供たちの面倒はしっかり見てるからあの子が言うようなことなんてないんだけど、お母さんにはそのまま言えないからさ。ちょっとあったことを大きく言ってるみたいです、としか言えなくて。お母さんも子供が心配だからクレーマーみたいなことになっちゃってるんだろうし」
「本当に悪循環だね。どこかで正直に言わないとどうにもならないだろうけど、クレーマーって言う位だとそれを聞いてくれそうな雰囲気じゃないってことでしょ」
「そうなんだよね。せめてお母さんがもっと子供のこと見てくれるようになればいいんだけど」
友人は軽くため息を付いた。そして続ける。
「保育園に来て色々びっくりしたことはあるんだけどさ、保育園って愛情不足の子供が多いのよ。お父さんお母さんが働いてて家にいなくて、その間ずっと保育園に預けられてて、親子のコミュニケーションの時間が足りない感じ。丸々半日預けられてる子もいるんだよ」
「なんか子供がお父さんの顔覚えてなくておじちゃん誰って言った、みたいな話があるけど、両親ともそうなっちゃわないの?」
「いや、なるなる。保育園の子供って家に帰りたがらないもん。幼稚園の頃は2時か3時には幼稚園が終わってお母さんが迎えに来て子供は喜んでお母さんのところに行ってたけど、保育園は違うの」
「そうなんだ」
「幼稚園は子供が集団生活を学ぶ子供のための場所だけど、保育園は結局親のための場所なんだよね。本当に働かなきゃ生活していけない人はともかく、両親そろって働く必要あるの?みたいな家の人もいて」
「そろって有名企業に勤めてるとか?」
今30代の私達の世代は、女性も働くべき、という価値観の教育を受けて育ったと思っている。男女平等を謳い、男と同等に働く女性は素晴らしいし、それができない今の社会は悪、という教育があった。私も素直にそれに感化され、キャリアウーマンを目指してがむしゃらになったこともあった。私自身は競争社会から脱落してしまったが。しかし今でも競争社会の中で頑張っている同世代のお母さんがいる。その努力は尊いものだ。
だが同時にこう思ってしまう。そもそも女性も働くべき、という価値観は正しかったのだろうか?それ以前に、女性の家事を仕事と認めず、賃金が得られる仕事だけを仕事と呼ぶのは間違っていたのではないか?女性は育児のために退職すると社会に復帰できなくなってしまう、などと言われていたが、専業主婦は社会の構成員ではなかったのだろうか?
以前男女共同参画のパンフレットを読んだことがある。昔は女性の労働人口は育児期には就労率が低いM字型のグラフを描いたが、最近ではMの谷が浅くなってきた、男女共同参画の成果だ、ということをアピールするパンフレットだった。
ここから一つ分かることがある。女性は一度退職すると再就労できない、という問題は嘘だった。
女性が再就労できないのであれば、グラフは40代から就労人口が増えるM字型ではなく、結婚する20台をピークに右肩下がりする山形グラフになるはずだからだ。
そもそも一体何が女性を家庭における子育てから引き剥がし、賃金労働に縛り付けようとしたのか?
子育ては片手間で出来るほど甘いモノなのか?
女性の増田にはもちろん、男性の増田にもぜひ考えていただきたい問題である。
参考:M字型曲線
http://danjo.city.kashiwa.lg.jp/gakushuu/gender_terms/terms/mcurve.htm
追記:
ブコメ読みました。まず、参考に出したURLは読んでいます。私とは意見が違いますが、その点も含めて参考になると思って出したページです。
そして一点だけ。M字の右側の人たちがいわゆる非正規雇用の人たちということは理解しています。しかし、非正規雇用の何がいけないのでしょう?非正規雇用の人たちの労働を「労働」と認めていない人たちは、どこでその線引きをしているのでしょう?社会保障が得られないのがいけないというのでしょうか。
小さな子供という明らかに仕事よりも優先させなければならないものを抱えた人は、それなりの働き方をするのが分別ではないでしょうか。私はそう思います。
あ、後もう一点。もちろん増田以外にも考えてほしい問題です。
4歳までに、専門職家庭の子どもなら自分に対して発せられた言葉を5000万語、聞く。労働者家庭の子どもは3000万語、福祉家庭の子どもは1200万語だった。 [上層ノンマニ...
男性側の視点として。 >そもそも女性も働くべき、という価値観は正しかったのだろうか? 正しいかどうかの答えは無いけど、女性がそれを求めてきたというのはあると思う。賃金格...
逆に、母親以外からの質の高い保育を受けている子どもは、そうでない子供よりも、協調性が高いという結果もでているようです。
問題は再就職ではなく、年功序列・終身雇用制度。 再就職が難しいのは勤続年数が長い以外何に役にも立たないゴミカス中高年男が居座ってるのが原因だからね。 年齢差別と勤続年数差...
保育園の子供は愛情不足という刷り込みをしようとしてる、ひどい釣り記事。 いっかい、保育園の送り迎えきてみろよ
いいから働け
http://anond.hatelabo.jp/20131129205714
M字型就労グラフってさ、それじゃあダメよ。 これじゃないと何もわからないでしょ? ちなみに紫のところの年収の平均は年令によって上がるけど、 青いところは何歳だろうが100~150万...