<フィギュアスケート>現地メディアに“無視された”羽生結弦の好演技

 しかも、団体としての初日の順位を見れば、ロシアが19点で首位、カナダが17点で2位。3位は15点の中国で、日本は13点で4位発進だった。1位と2位の国のエースにスポットが当てられるのはもっともなことでもある。

■ショートプログラムでは圧巻の演技で1位

 ソチの現地報道の金メダル候補、羽生を無視したような反応は意外ではあったが、羽生は、リンクの上では、ロシアの皇帝も、世界王者も抑えてみせた。開会式に先立って6日に行われた、男子SP(ショートプログラム)で冒頭の4回転トウループを難なく着氷させると、得意のトリプルアクセル、3回転―3回転のコンビネーション・ジャンプもしっかりと着氷。羽生にしては珍しく、ジャンプがうまく決まるごとに小さなガッツポーズを見せながらの演技で97.98点をマークし、見事に男子SPトップに立った。

 これには4番滑走で会心の演技を見せて、SP自己ベストの91.39点を出したエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)もかなわない。9番滑走で小さなミスをいくつか犯し、89.71点に終わった世界チャンピオン、パトリック・チャン(カナダ)も、もちろんかなわない。プルシェンコは2位、チャンは3位。男子シングルの“前哨戦”となったSPを制したのは、日本の新星だったのである。

■羽生にプレッシャーがかからない?

 それでも、羽生へのメディアの注目度はまだ低い。グランプリファイナルのチャンピオンだが、世界的な知名度では、プルシェンコ、パトリック・チャンにかなわない。しかし、この現象の裏を返せば、男子シングルに向けて羽生には、無用なプレッシャーがかからないということでもある。ロシアでもフィギュアスケート人気は非常に高く、報道も過熱気味。ともすれば、金メダル候補には大勢の取材陣が殺到し、不要な疲労を招きかねない。むしろ注目の低さは、金メダルを狙う男子シングルに向けて追い風なのだ。