さよなら「旧旭商会」 来月にも取り壊し(2014/02/08 14:00)
取り壊しが決まった国の登録有形文化財「旧旭商会」=7日、八戸市小中野
 八戸市小中野地区のシンボルとして知られ、大正時代の趣を今に伝える国の登録有形文化財「旧旭商会」の建物が3月下旬にも取り壊されることが7日、分かった。老朽化と内部の損壊が激しく保存に多額の費用を要することから、所有者の八戸石材企業組合(接待一雄理事長)が維持を断念した。入居している「ひまわり食堂」は2月末で閉店。市民からは「歴史ある建物が無くなるのは寂しい」と惜しむ声が聞かれる。
 旧旭商会は、八戸商業銀行小中野支店として1917(大正6)年ごろに建設。玄関ポーチの三連アーチや塔屋上のドームの形から、当時の官庁や銀行の建物に流行したルネサンス風の特徴を持つ。
 同支店の廃止後、昭和初期にカフェ「ハトバ」となり、戦後は旭商会事務所を経て89年から、ひまわり食堂の店舗として使われている。
 近代の歴史を伝える貴重な文化遺産として2003年10月に国の登録有形文化財となった。夏に同地区で行われる「小中野新丁夜店」では建物の2階のフロアを使って往時のカフェの雰囲気を再現するなど、小中野地区はもとより、市のシンボルとしても長く親しまれてきた。
 建物の老朽化は以前から問題となっており、89年にいったん取り壊しが決まったが、同地区の活性化に取り組む地元グループ「海の樹開発研究会」などが補修作業を行い、保存にこぎ着けた経緯がある。
 しかし、年月とともに老朽化が進行。東日本大震災で内部が壊れるなど被害も出たため、同組合は助成金による補修も視野に入れ、対策を検討してきた。
 14年1月、専門業者に依頼し建物を点検したところ、「柱が腐っており、保存するためにはいったん取り壊し、最低でも4千万〜5千万円かけて建て直すしかない」と診断され、同組合が解体を決定。現在は市教委を通じ文化庁への届け出の手続きを進めている。
 同組合常務理事の浪岡文彦さん(61)は「建て直しの金額は高額で、対応は極めて難しい。窓枠や外壁が剥がれ落ちる危険性もあり、近隣の皆さんにご迷惑が掛かる恐れがある」と説明。同研究会の中村昭則さん(63)は「現状維持は厳しいかもしれないが、買い取って同じように復元したいという人がいれば…」と無念さを口にする。
 ひまわり食堂を経営する前森チヱさん(84)は「歴史ある建物で何十年も働かせていただいた」としみじみ語った。(橋武児)
【写真説明】
取り壊しが決まった国の登録有形文化財「旧旭商会」=7日、八戸市小中野

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