「体制」「態勢」「体勢」などの使い分け
2008.09.01
テレビや新聞が伝える政治・政局関連ニュースの中で、「総選挙に向けた○○党内の態勢[タイセイ]づくり…」などといった表記・表現を見たり聞いたりします。[タイセイ]には、このほか「体制」「体勢」など、よく似た語もありますが、どのように使い分けているのでしょうか。
「態勢」が「一時的な対応・身構え」を表すのに対し、「体制」は「統一的、持続的・恒久的な組織・制度」を、「体勢」は「体の構え・姿勢」を表します。また、「大勢」は「おおかたの形勢、物事の成り行き」を表します。放送では、これをもとに用字用語・表記を使い分けています。
解説
日本語の中には、同じ音・読みで意味も似ているけれどもニュアンスが微妙に違うことから、表記の使い分けが必要なことばがたくさんあります。例えば「意思」と「意志」、「異常」と「異状」、「夏期」と「夏季」、「規定」と「規程」、「成長」と「生長」、「制作」と「製作」などです。[タイセイ]もその1つで、放送の現場でも迷ったり誤ったりしやすい語です。その語意と表記の用例を以下に示します。
- 体制 [統一的、持続的な組織・制度、長期的な仕組み、システム]
- 政治~ 支配~ 社会~ 責任~ 新(旧・現)~ 反~ ~側(派)
- 戦時~ 資本主義~ ベルサイユ~ 幕藩~
- 態勢 [一時的・部分的な対応・身構え]
- 受け入れ~ 独走~ 臨戦~ 厳戒(警戒)~ 着陸~ スト~
- 選挙~ (○○選に向けた)~固め(づくり)
- 体勢 「体の構え・勢い・姿勢、フォーム」
- 射撃~ ~が崩れる 有利な~ 得意な~に持ち込む
- 大勢 [おおかたの形勢、物事の成り行き]
- 時代の~ 選挙の~(判明) ~を決する ~に従う
- ~に影響がない 賛成(反対)意見が~を占める
* 警備[タイセイ]や24時間[タイセイ]などは、それが長期的なのか短期的・一時的なのか内容や状況によって「体制」または「態勢」のいずれかに書き分ける必要があるでしょう。例えば、「24時間タイセイ」について、永続的・恒久的に24時間シフトを敷く場合には「24時間体制」、臨時または短期的に24時間シフトを敷く場合には「24時間態勢」となります。
* また、同じ「大勢」でも[オーゼイ]と読めば、「多くの人数」の意味になります。
(『NHKことばのハンドブック 第2版』p.122参照)