東京都の新知事に、元厚労相の舛添要一氏が選ばれた。

 急速な少子高齢化のなか、安心して暮らし、働けて、活気もある東京を、いかにつくるか。都民の大きな関心はそこにあった。6年後の五輪への備えも、大きな課題に違いない。

 福祉に詳しい大臣経験者の舛添氏なら手堅くさばいてくれると都民は期待したのだろう。

 まず、だれの目にも明らかな少子高齢化の危機への対応だ。

 長年の課題だけに、そうそう斬新な突破口はない。知事には明確な目標を設け、民間や国とも手を結んで知恵を結集する力が求められるだろう。

 舛添氏が「任期4年で待機児童をゼロにする」と明言したことは評価できる。あまった都有地を使って保育所や特別養護老人ホームを新設する、といった具体策も打ち出した。

 都有地活用には都もすでに取り組んではいるが、実績はまだ多くない。埋もれた知恵は他にもあるだろう。掘り起こす工夫をしてほしい。

 他の候補が示した視点の中にもヒントはあるのではないか。少子化の裏にある若い世代の生活不安に応えるため、家賃の安い借り上げ公共住宅を普及させる案はその一例だ。

 エネルギー政策では、舛添氏は段階的な脱原発依存の立場を取った。原発再稼働に積極的な自民党の強い支援を受けただけに、就任後も「脱依存」を貫けるかが問われる。

 舛添氏は「2020年までに東京で使う電力の20%を再生可能エネルギーに」と掲げた。数値目標は都がすでに打ち出しているものだが、「他県との協力も得つつ、できる限り都内での発電をめざす」と、より積極的な姿勢を示している。「五輪も晴海の選手村ぐらいは、すべて都民がつくるエネルギーでやってみたい」とも語った。

 最大消費地の長として、国任せにせず自らの問題として取り組む姿勢を発信してほしい。

 振り返れば、原発の問題は、1月に「即ゼロ」を掲げて細川護熙元首相が名乗りを上げて以来、急浮上した争点だった。

 都民は「原発一本」の単純化に乗らなかった。舛添氏も「脱依存」を掲げ、違いは結局ぼやけた。しかし、いずれ原発頼みから卒業しなければという考え方は、選挙戦を通じて都民に広く共有されただろう。

 そもそもは選挙資金疑惑で猪瀬直樹前知事が辞任したのを受けた選挙だった。この3年間で3度目の都知事選である。政治とカネにまつわるゴタゴタは打ち止めにしなければならない。