スマホ普及でGmail浸透…「キャリアメール」は姿を消すか
携帯電話のメールが過渡期を迎えている。
スマートフォンの普及で携帯電話会社が提供する「キャリアメール」の影が薄くなり、代わりに無料メールサービス「Gmail(ジーメール)」などが浸透。NTTドコモは昨年12月、キャリアメールをパソコンでも送受信できるようにするなど“進化”の動きもあるが、ITジャーナリストの三上洋氏は「安全面などでメリットはあるものの、キャリアメールは将来的に姿を消すのではないか」と話している。(本間英士)
■MNPも逆風に
キャリアメールの利用頻度が下がったきっかけとして三上氏は、「番号ポータビリティー(MNP)と、スマホへの移行」を挙げる。
電話番号はそのままでNTTドコモからKDDI(au)へ−などキャリアを替えられるMNPがスタートしたのは平成18年。電話番号のため同じキャリアを使い続けていた人の「縛り」がなくなり、キャリア間競争が本格化した。同時に浮き彫りになったのが、MNPでメールアドレスが変わってしまうキャリアメールの不便さだった。
スマホの普及は、この状況にさまざまな展開をもたらした。一つは、グーグルが提供するジーメールのように、キャリアを替えても同じアドレスを使え、パソコンでも送受信できる無料メールサービスが手軽に利用できるようになったこと。従来型の携帯電話では、キャリアメール以外の利用は実用上困難だった。
もう一つは、無料メッセージアプリ「LINE(ライン)」のように、メール以外でコミュニケーションができる手段が登場し、普及したこと。さらに、スマホ普及時にキャリアメールの送受信障害が頻発し、スマホアプリでの使い勝手もよくなかったことが、こうした代替手段を“後押し”する結果を招いた。
三上氏はこれに加えて、KDDIが19年に「100年分のメールを保存できる」として始めたサービス「au oneメール」が昨年、わずか6年でサービス終了したことにも触れ、「ユーザーの信頼を損なう出来事が続き、ユーザーのキャリアメール離れを招いた」と指摘する。
■安全面では利点
グーグルのアンドロイドOSを搭載するスマホでは、初期設定でジーメールも使えるようになり、キャリアメールのように自動受信もできる。これと似たサービスは、アップル社のiPhone(アイフォーン)などで使えるiCloud(アイクラウド)メール、ヤフーメールなどがある。三上氏は「現段階のスマホでは、利用可能端末が多いジーメールが一番便利だろう」と話す。
「キャリアメールはいずれなくなるのでは」とみる三上氏だが、現状でも「安全性」の面で利点はあるという。無料で登録が容易なジーメールなどと比べ、キャリアメールは各キャリアが個人情報を確認した上で契約しているため、本人特定が確実だ。グーグルなどのクラウドサービス企業に個人情報を過度に預けることへの不安もある。さらに、スマホやパソコンはウイルス感染の可能性があり、メールの外部流出や不正アクセスを受ける恐れもあるが、従来型携帯電話でキャリアメールを使う分には、そういった心配はない。
三上氏は「どうしても漏れてはいけない個人情報はキャリアメールを使うという方法もある。携帯電話の機種やメールの内容に応じて使い分けるのがいいのでは」と総括している。