2013年03月23日
SKYACTIV-MT 新型アテンザXD(MT)試乗
【アテンザ開発者への10の質問】Q.4 なぜ今MTを設定したのか?
まずはこれに目を通してもらいたい。
MTを知らずしてよいATを作ることなどできない。
それは当然である。MTのネガな部分をATで克服するのだから。技術の進歩とは、不便さを便利さに、苦労を楽に変えたいとする人間の情念からくるものだからである。
実際にSKYACTIV-ATの出来は素晴らしいものがある。高価なツインクラッチなんて要らないだろうとおもわせるマツダ傑出のトランスミッション。しかし、それでもシフトを自ら動かして得られる感触からもたらされるプレジャーとシフトフィーリングはSKY-ATであっても実現できない。「アナログ的な良さ」というものは、いかなることがあっても、最終的には否定できない絶対の価値がある。たとえどんなデメリットがあっても。殆どの人がアナログ的なよさを求めない事情があるとしても。求める人がいる限り、決して絶やしてはならない、必要なものなのだ。
さてこのたび、GJアテンザセダンXDのMTの試乗車に触れる機会があった。
ボディカラーはメテオグレーマイカである。パッと見で新色だとすぐに分かるような艶やかな魅力はなく、堅実保守的なグレー、一昔前のBMWのスペースグレー、そのような印象を受ける。地味といえば地味だが、グレーが好きな人はこの色に即断即決である。
ほんの少しの試乗であったが、私なりに得られた感想を述べていきたい。
まとめ
・SKY-Dは洗練されたディーゼルエンジン
・SKY-MTには、マツダなりのシフトフィールへのこだわりが感じられる
・回転数を考えないギア選択をすれば普通にエンストする
まずは馴染みのN氏が運転席へ、私は後席へ。パッセンジャーとしてリアシートの居心地を味わってみたかったのである。
リアシートは特別に狭いわけではないが、身長175センチの私が座っても頭上には余裕がある。
ただし後部にかけてなんとなく閉鎖感がある。後ろを振り向いても視界が狭い感じなのである。RX-8ほどではないが、閉所恐怖症の人はすこし辛さを感じるかもしれない。ディーゼルエンジンを思わせる振動や音は全く感じない。
ディーゼル鬼トルクのお陰で、1速に入れたら判クラで楽勝発進できるとのことである。実際に試してもらう。後部座席に座っているのに発進時の車体の「軽さ」を感じる動きをする。エンジン回転数が上がった音が聞こえなかったので、アクセルを煽ることなく本当に半クラ発進をしたようだ。こんな大きな車が静かにスルスル動いて発進していくのは異様に感じる。
「ちょっとわざと加速してみますので、どんなものか体感してください」と、国道の流れに合わせて合流するために強めの加速をかけてくれた。静かなエンジンは唸るように声を上げ始めたと思ったら車がとんでもない加速をしている。流石ディーゼルの2ステージターボチャージャーである。この加速時には、飛行機が離陸するときのようなターボの音が控えめながらも聞こえてくる。これが男心をくすぐるような、渋く、とても良い金属音なのである。ターボ車の加速時の音が好きなひとは気に入るに違いない。
このSKY-Dエンジン、トルクの高さに比べて馬力は175であるから、車としての絶対的な速さには結びついていないが、とにかく前に出ようとする力強さは圧倒的である。追い越、高速道路、坂道では殆どの車両を圧倒する無頼エンジンであろう。まだまだ初期不具合も懸念される新エンジンだというのに、このエンジンに惚れ込んで契約する人が多いのもむべなるかなである。
ところで乗り心地は予想していたより悪い気がした。座っていて不快ではないのだが、もう少し柔らかくてよいのではないかと。後部座席に座るのは運転から隔離された人なので、乗り心地が悪いとそれだけでマイナス評価を下すだろう。ただ快適に乗っていられるだけを望むからである。それとも、車の後部座席というのはこういうものなのだろうか。判断するに経験不足なのは明らかなので、高級サルーンの後部座席にもっと座らないといけないだろう。そんな機会はなさそうだが。
運転を交代する。
シートは電動ではないが、わざわざMTモデルを買う人は私を含めて「電動シートなど重くなるだけだから要らん」と考える人が多数であろうからこれでよいのである。我慢がならない人は後期型の発売を待つべきである。その頃には、おそらく、ほぼすべてのグレードにMTを設定してくるだろう。勝手な予想だが、マツダは今後「MTの車を買うならマツダ」という企業ブランド(?)を確立させていくだろうからである。MTを選ばない人には傑出のSKY-ATがあるし、そのSKY-ATも、話によれば6ATを7ATに多段化することが元々可能なように設計されているとのことである。そして7速となったSKY-ATを新型アテンザ後期型に載せてくる可能性がある。
クラッチは想像以上に軽い。ハッキリ言って軽すぎる。そしてミートポイントは広く半クラッチに持っていくのは容易である。初代デミオのクラッチに似ている。敷居を低くするためにこうした味付けにのだろう。スポーツカーではないので、クラッチを重くミートポイントを狭くつながりを鋭くする必要は無いのである。
待望のSKY-MTだが、シフトフィールに硬さがあった。走行距離300kmも行かない個体なので、まだギアの渋さが取れていないのであろう。初々しいのである。
シフトフィールに拘りぬいて作ったというこのMTの出来はどのようなものなのか?
知りえている情報は、
・ワイヤー式
・ショートストローク化(他のワイヤー式に比べての話か?)
・節度感を高めた
・従来型よりも軽量化
ぐらいのものである。
自分のGHアテンザの6MTとどこまで違うのだろうか。
シフトチェンジに要する力は少し重めである。
ショートストローク化した、というのはすぐに分かるものではない。しかし操作していると確かに短いな、と分かってくる、そんな微小なものである。こちらの長さのほうが私好みである。ショートストロークすると、チェンジの手ごたえがしっかりしていないと面白くないが、そこを「節度感」が担当する。これは分かりやすく、手ごたえを感じる。わざとらしいぐらいの味付けにも感じたが、新品のマニュアルトランスミッションゆえの「かたさ」からきているところもあるだろう。マツダが謳う「吸い込まれるような」感覚は、当たり前だが、本当に吸い込まれるわけではない。シフトを一定以上動かしていくと、シフトが動かした先に誘導されたかのように収まる感触をいうのである。
シフトフィールの味付けとしては、とにかく「シフトチェンジをしました」感じを分かりやすくドライバーに伝えてくれている方向に思えた。分かり安すぎて人為的・人工的ですらある。自然な感じではないと判断する人もでるかもしれない。これぐらい分かりやすい味付けでないと、ワイヤー式にありがちなフニャフニャしたシフトフィール(マニュアルなのに操作してい楽しくない)につながるとマツダは考えているのだろう。そして、どんなにワイヤー式の味付けを頑張ってもロッド式が至高であることは変わらないとも自覚しているようだ。しかし少しでもロッド式に近づけたいその上でロッド式のネガな部分を消したトランスミッションを提供したいと考えているようだ。
こんなことをアレコレ考えさせられるトランスミッションであった。
時代遅れともいえるマニュアルトランスミッションを、こんなアレコレ作りこんでくるマツダという会社はやはり素敵である。
クラッチをミートさせて半クラにするだけで車体はスルスルと、巨体の重さを感じさせず動き出す。ステアリングを切って公道へ合流する。操舵はクラッチの軽さに比べれば重いが、GHアテンザよりは軽い。ここに違和感がある。クラッチの軽さに合わせて更に軽い操舵にすれば違和感は消えるだろうが、そうすると軽々しいステアリングとなり、あまりアテンザには相応しくない気がする。やはり、クラッチがもう少し重いければよいのにと思う。フロントの重いFFなので、軽快感の在る回頭は味わえなかった。
1速からの発進して、2速へ、そしてアクセルを強めに踏み込むとエンジンはタービンの音を含む硬質な唸り声を上げるとともにドライバーの体に加速Gを伝えてくる。耳と体に届くこの刺激は快感である。
ところで、ディーゼルの鬼トルクがあるからエンストはしないだろうと、回転数が1000ぐらいでシフトアップしていくとガタガタ振動が出始める。場合によってはそのままエンストしてしまう。車は走っているのに6速でエンストするお洒落エンスト(?)が可能なのである(走行中なのでクラッチ踏んでスタートボタン押してエンジンをかければバレずにリカバリーできる)。
半クラ発進が可能な鬼トルクを有するとはいえ、回転数と使用するギアを考えずに操作すればエンストするのである。そして街中では6速にいれる必要がない(せいぜい5速まででこと足りてしまう)。
アイドリングストップはありがたい機能だが、MTだと、慣れないうちはエンストしたのか否かがわかりづらい。一定以下の速度でニュートラルにするとアイドリングストップがかかる調律のようなので、車と操作に慣れるまではアイドリングストップをOFFにしているほうが安全かもしれない。
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/350808827
この記事へのトラックバック
http://blog.seesaa.jp/tb/350808827
この記事へのトラックバック