◆うな重お手ごろはまだ先?
不漁で高値が続いたニホンウナギの稚魚シラスウナギが、ここにきて捕れている。養殖のタネに欠かせない稚魚で、漁は四月ごろまで各地で続く。価格も下がり、この先、かば焼きを安く食べられるようになるのではとの期待もあるが、実際にはまだ少々時間がかかりそうだ。
漁師の間には「何年か捕れないと、どっと捕れる波がくる」(浜名湖の漁師)との見方もあるが、今年なぜ捕れているのか理由は不明だ。
静岡県によると、昨年十二月一日〜一月二十日の漁獲量は前年同期比一・五倍の六一・二キロ。県のシラスウナギ価格は、漁解禁の十二月一日に一キロ当たり百万円でスタート。年明け六十万円に下がった。
「シラスウナギを乗せてくる黒潮が長らく、県沿岸から離れた場所で流れている」(渥美敏県水産資源課長)ため台湾、中国ほど豊漁ではないが、このままいけば昨季を上回る勢いだ。
日本より漁期が早い中国、台湾では日本の十〜二十倍捕れているといい、「今はだぶついて困っているはず」(養鰻(ようまん)関係者)との見方もある。
三月中旬までが漁期の宮崎県では、八十万円でスタートし、現在は五十万円。漁獲量はすでに、昨季全体を約百キロ上回る二百五十キロ(一月二十八日現在)に上っている。
宮崎県シラスウナギ協議会は「去年池に入れたウナギがまだ残っている上、安くなった今年一月のシラスウナギも半分は育ち、今夏の土用の丑(うし)には出荷される。安くなる可能性がある」とみる。
一方、浜松市内の三十店でつくる浜松うなぎ料理専門店振興会の高橋徳一会長(64)は「秋には安くなるかもしれない。ただ、ウナギ専門店は高値に苦しみ、ここ数年は蓄えを取り崩して何とかやってきた。シラスウナギの価格安が安定して続けば、料理の値段も下げられるが…」と様子見する。
七月末の土用の丑に間に合わせるため養鰻家が昨年十一、十二月ごろ池入れしたシラスウナギは日本より解禁が早いアジアから入ってきたものが中心で、まだ量も十分なく二百万円台の高値がついていた。
高い原価で育てたウナギは「養鰻家も簡単に値下げしない」(養鰻関係者)ため、今夏すぐに、うな重がお手ごろ価格になると判断するのはまだ早いようだ。
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