ぶんか部物語
愛知朝鮮中高級学校 高級部舞踊部
流れる優美な伝統音楽にまじって、朝鮮語で演技指導の声が響く。
「手の先まで使いなさい」「高いところで呼吸するように」
顧問の姜梨峰(カン・リボン)教諭(26)が厳しく見つめる中、黒いロングスカート、バレエシューズ姿の部員たちが朝鮮舞踊の基本動作をこなす。力強く、優雅に。1時間近く踊り続け、肩で息をする部員もいる。それでも笑顔は絶やさない。
愛知朝鮮中高級学校(愛知県豊明市)の高級部舞踊部。高校1、2年に当たる女子生徒14人が、校内の稽古場で月曜以外のほぼ毎日、練習に汗を流している。
まもなく、豊作を祝う演目「手太鼓の舞」が始まった。練習用に段ボールを使って手作りした太鼓が鳴り響き、踊り手の8人は中央に集まったかと思うと離れ、目まぐるしく隊形を変えていく。
前半のゆったりした雰囲気と、後半の力強さが対照的な曲だ。引退した3年生の送別会で来月、披露する曲の一つでもある。
「テンポが速くなったときに、ステップがついていかない」と柳貴仙(リュ・キソン)さん(1年)。姉も含む3年生に、感謝の気持ちを伝えたい。「春には後輩も入ってくる。成長した姿を見せたい」
最大の目標は朝鮮学校全国大会での好成績。一方、お披露目の場は地域にも広がる。昨年は試験と重なり断念したが、2009年から「少年少女合唱団地球組」(名古屋市熱田区)が開くチャリティーコンサートに出演してきた。
「一糸乱れぬ隊形、素晴らしい衣装、指先まで心配りをした動き。美しい花を舞台に咲かせてくれます」。同合唱団の代表池田則浩さん(53)は絶賛。「偏見を持つ人もいるが、同じ日本で、隣で、仲間として生きているのを知ってほしい」と訴える。
姜教諭も「近寄りがたいイメージがあるそうだけど、朝鮮学校をわかってもらいたい」と言う。
「一心一舞(イルシムイルム)」。稽古場に、部の目標が掲げてある。姜教諭は「生徒たちには、舞踊を通じて在日朝鮮人としてのアイデンティティーを確立してほしい」。呂潤雅(リョ・ユナ)さん(2年)は「ひとつになって踊っているところを見て、感動してほしい」と笑顔で話した。(山下裕志)
《愛知朝鮮中高級学校》
1948年創立。中学と高校に当たる中級部と高級部に朝鮮、韓国、日本の国籍を持つ在日3〜5世の277人が通う。高級部のある朝鮮学校は全国に9校で、高級部には東海3県のほか静岡、長野、福井の各県から生徒が集まる。卒業生の約3割が東京の朝鮮大学校へ。日本の大学などにもほぼ同数が進学する。
ここから広告です
身のまわりで起きたニュースや、記事へのご意見、ご感想もお寄せ下さい。メールはこちらから
朝日新聞名古屋編集局
朝日新聞・東海政界
ここから広告です
広告終わり
ここから広告です
広告終わり
ここから広告です
広告終わり
別ウインドウで開きます