高野 え、なんで?
角幡 だって、川口浩と『ムー』とレヴィ=ストロースが同一に論じられてる。どう考えても変だと思います。
高野 いや、だから、それは(笑)、人から見たら変かもしれないけど、おれの中では『ムー』も真面目な本だし、川口浩も真面目な番組だから、同じなんだよ。
角幡 よくわからない。全然納得できないけど(笑)。僕も小さいころは川口浩見てましたよ。でも、ウソだと思ってました。
高野 本当に? 夢がないね、君は(笑)。
角幡 常識があるといってください(笑)。でも、影響されてる部分は絶対にあって、僕が探検部に入ってやりたかったのは、やっぱり川口浩みたいなことだったんです。川口浩が探したものを探したいということじゃなくて、川口浩みたいなことをやりたいと思ったんですね。
場所のイメージとしてはジャングル。うっそうとした密林が繁っていて激流が流れてて・・・・・・そういうところに行きたかったんです。でもイメージに合うテーマがなかなか見つからなくて。そんなときに、のちに『空白の五マイル』で書いたヤルツアンポー峡谷のことを知って、目的が定まった。だから、『空白の五マイル』は川口浩の変形版ともいえるわけです。
高野 ずいぶん変わったんだね。
計画書のなかのすごい理念
角幡 僕の中ではつながっているんですよ。あと、学生時代にやったことでよく覚えているのは「劔岳三〇〇〇メートル化計画」。劔岳っていうのは富山にある二九九九メートルの山なんですけど、その山頂にセメントを盛って三〇〇〇メートルにするというとんでもない計画。計画を立てたのは僕の先輩なんですが、計画書を見ると、ものすごく高尚な理念が書いてあるんです。「社会の常識の裏側に行くことが探検である」みたいな。でもその高尚な理念を探検部的に具体化しようとすると、ケシカランものになる(笑)。
高野 計画書って、概要とかスケジュールとか書かなくちゃいけないけど、そういうのを書くのは面白かったな。計画している段階って、すごく楽しくない?
角幡 そうですね。一番楽しいと言ってもいい。
高野 それで、劔岳の計画は、どうなったの。
角幡 部会で紛糾して、計画段階で却下されました(笑)。
高野 部会の審議は機能していたんだな(笑)。そういえば、探検部の昔の先輩の、(作家の)西木正明さんや船戸与一さんたちが学生時代にやっていたこと知ってる? ベーリング海峡が凍る時期にそこを徒歩で横断するという壮大な計画。
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