□このテキストはゲーム中の文章をHTMLに変換したものです。「ゲーム面倒だよ!」「動かないよ!」という方にどうぞ。
□ここでしか読めないシナリオはないですが、開発中に残した余白が少々残ってます。また、一部ページはフロー順になっていない事をご了承ください。
□分岐やサイコロのシーンは記載していません。ゲームブックとして遊びたい方はマニュアルにこっそり書いてある分岐条件を参考にしてください。

P:1
あなたは一冊の本に手にした。手の平に収まる文庫サイズのありふれた形だが、これに呼ばれたような気がしたのだ。その不可解な感覚のままに、中身を調べるためだと表紙を開き読み進む。話は現代の学園生活を舞台とした物語で、ジャンルを付けるとしたらファンタジーかホラー、あるいはジュブナイルと言うものか。そんな分析をしながらページをめくると、極めて性的な表現に出くわす。そしてそこから堰を切ったように、日常が非日常へと変わる官能と性欲の世界が繰り広げられていった。しまったと思いながらも、その妖しさに没頭してしまう。
P:2
…それからどれだけの時間が経っただろう。読めど読めれど物語はメビウスの輪のように終わらず、興奮も昂ぶり蓄熱されるだけだ。下半身に手を伸ばせばいいだけなのだが、その手が何処にあるのか分からない。ではどうやって本を持つのだ?いやそもそも目がないのにどうやって見ているのだ?どんなはなしをよんでいたのだ?

そう、すでにあなたは本の前には居ない。本の中に居るのだ。
P:3
その事に自覚して気付いたのか、本能の反射的な作用だったのかは誰にも分からないが、あなたは己の不安定さに慌てて本の中に『存在』しようと試みる。それは現実から空想に渡るために行われた心身の再構築。

あなたは意識の中から自らを想像し、その世界に自分を創り造るのだ。
P:4
物語に登場した、悪霊を祓い大事なものを守る善き仲間たち…退魔師と呼ばれる存在が浮かぶと、白い紙片が渦となって舞い上がり、あなたを構築する。かくしてひとりの退魔師として、あなたはこの世界に降りる事となった。

とりあえず地面に足が付いた感覚に安心し、普通に呼吸を行えた事に冷静さを取り戻すが、それはそれでまた困った事になる。寺社に勤める着物のような格好と、漠然と霊力を持つ、という事はわかるが、そもそも自分が今、何者かが分からないのだ。
P:5
あなたが記憶する物語はこうだ。
「催淫蟲」と呼ばれる悪霊が目覚め、女の子を操り力を蓄えようとしていた。その舞台となった街には星陵学院という学園があり、そこに古くから存在し七不思議とまで言われる「心霊研究部」の部長、神条高志が事件に巻き込まれ

…それだけだ。もっと話を読んだはずなのだが、本の世界に来た影響か思い出す事ができず、そして少なくともその中に「自分」という退魔師はいない。
P:6
さてはてと歩を進めるようとすると、ちょうど前から駆け足の女の子が走っていた。育ち盛りといった幼く小さな身体を丸めて、制服と胸が密着してなだらかになるまでに長い棒を大事に抱えており、険しい目元に元気を失った表情からも大変そうなのが伺える。そんな彼女に注視すると、向こうも気付いたかこちらに意識を向ける。その瞬間、はっとした顔を見せ急ブレーキを掛ける。そういえば自分の格好も現実なら浮世じみていたな、という事を思い出したが、少女が足を止めた理由はまさしくそれであった。
P:7
「あっ、ねえ!そこのお兄ちゃんってもしかして退魔師さん?」
女の子は藁にもすがろうという顔であなたを見上げ、短めのツインテールを激しく揺れらした。他に応えようもなかったので肯定すると、花まで咲きそうなまでの勢いで明るく喜んだ。
「た、助かったぁ〜!ねえ!お兄ちゃん、高志お兄ちゃんにこれ届けたいのっ!美佐お姉ちゃんに任されて、えっと、エッチな蟲がいてね、えーと、えーと!」
先まで走っていた事もあってか彼女の話は口も頭もちぐはくで、それでも懸命に伝えようとする。
P:8
しかし今の情報だけでも、物語を思い出し今が何処かを知るには十分で、そしてそれがあれば、この娘…神条優美の話も理解できた。ストーリーは結末へと向う過程。蟲の暗躍により高志の周りの女の子が堕ち、あるいは救われるのだが…いよいよ力を得た蟲が学園を支配し飲み込もうとする所だ。行方が知れなくなった美佐に代わり、最強の退魔刀「鬼切り丸」を兄の高志の下へ届けようとする優美に、これから様々な罠が待ち構え…構えているはずだ。
P:9
「えっと、退魔師のお兄ちゃん?今ので…大丈夫だった?」
記憶の復活と断片に顔を歪めてしまったのを優美に見られ、再び不安な気持ちを抱かせてしまったようだ。問題はない、と軽く一言返して、理解できたので協力する旨を伝えると、優美の表情はまた一転する。良くも悪くも分かりやすい娘だが、それこそが魅力のひとつなのであろう。あなたは優美と共に学園へ向った。
P:10
「お兄ちゃんもお姉ちゃんも大丈夫かな…」
学生の往来激しく、特に下校時間にも差し掛かって賑やかなはずの星陵学院の校門は、異界を隔てるような禍々しい境となっていた。霊力を持つ身だからこそだろうか、特にその不快感が強く、優美がごくりと息を飲むほどに不安になるのも実感できた。この中には彼女の兄と姉が居るのだ。ただの学生として何も知らずにいるか、退魔の知識で何かと戦っているか…あるいは、すでに催淫蟲に乗っ取られしまったか。
P:11
何はともあれ進まなければ話にならないだろう、と、あなたは自然と霊力を高め臨戦態勢で学院に踏み入る。すると早速、門番が動く。正しくは校門付近で蟲に乗っ取られた男女たちだ。
「あんっ…新しい精子ぃ…」
「げへへ、お前も欲しいのか?」
「んふ…この熱に身を委ねるだけ…それだけで気持ち良くなるの」
理性の無い言葉を口にすると、外にも服にも関わらず自らの性器をいじり、隣の異性と抱き合いながら二人に迫ってくる。
P:12
優美がその異常な光景にビグンと怯え、懐の鬼切り丸をより強く抱き締めた。あの刀が使えれば、こんな連中は物ともしないだろうが、今の彼女には難しいだろう。あなたはそう判断して、悪霊に憑り付かれた人間たちの壁の前に立ちはだかると、その意気に苛立った人の群れが襲い掛かってきた。
P:13
目にも留まらない一撃が、壁を割って崩した。男女まとめて2・3人をまとめて吹き飛ばしたかと思えば、学生たちから黒い気が溢れて、わずかに苦しみを口にしながら気を失っていた。
「わっ!お兄ちゃんすごーい!」
優美はその力に純粋な感動を覚えたようだが、あなたは返って自分に秘められた力が諸刃である事を認識する。幸い、今の攻撃で敵の群れも怯んでくれたようだ。優美に突破の合図を伝えると、最低限の戦闘で、操られた人を傷付けないよう校舎内へ駆け入る。
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ひとつひとつ丁寧に叩き込まれた浄化攻撃は、確実に学生たちを蟲の支配から解放するが、多勢に無勢、優美を守るのに手一杯だ。
「お兄ちゃんっ!危ない!!」
そう思っていた矢先に、体育会系の男が後ろから襲われる。だが、振り上げられた腕は、身体ごと地面へと落ちていった。
「ふー、護符を持ってきてよかったぁ…気をつけてね!」
どうやら優美の放った破邪札に助けられたようだ。面目無いなと思ったものの、二人とも傷つく事なく迫り来る相手を倒して校舎に入った。
P:15
P:16
悪霊を祓う力があれど、人の群れを相手にするには、また別の技術が必要であった。数人の男を気絶させるも、それは人海戦術に置ける盾。正面の相手に気を取られた瞬間、ぐっと抱きつかれ二の腕と肩に柔らかい感触が乗った。左右の敵はどちらも女の子。
「ふふふ…」
「ふふふ…」
二人とも異質な色気を持つ事以外は普通の女の子だが、蟲を宿した肉体は人体の限界を超える怪力を引き出す改造を施す事もできた。勝ち誇ったいやらしい笑みを浮かべると、もの凄い勢いであなたを押し倒す。
P:17
「お兄ちゃん!」
地響きでも起きたような音に、孤立していた優美があなたへ意識を向ける。それが命取りだった。
「今助けっ…きゃあ!!」
あなたを捕らえる女の子に目掛けて護符を構えた所を、何者かに両腕を握られる。そのまま振り上げらると、痛みで手が痺れて札を地面に落としてしまう。
「やっ、このっ…離してよっ!」
悪霊の影響だけとは思えない下衆な顔をする男に向って優美は吠えて暴れる。
P:18
だが小柄な彼女にすれば、相手は巨漢の男だ。万歳の格好をさせられて持ち上げられては、ヘソを晒されながら地面に足を付けるのがやっとになる。そして、その足が接して抵抗しずらい程度の高さこそが、男が受けた命令であった。
「このぉ、ヘンタ…ひゃう!」
手首の痛みを上回る、異常な感覚が優美の脚から這い登ってくる。べちゃりとした固体とも液も言えない物質が、体健康的な太ももを舐めるように上がり、背筋から震えが走った。優美は怯える…この感触は、かつて彼女を堕とした催淫蟲だからだ。
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「む、蟲っ!や、やだっ、来ないで来ないでっ!いやぁあ!!」
感触が内へ内へと迫るたびに、頭の中に寄生され支配された記憶が蘇る。だが、操られた時には意識はなく、湧き出てくるのはそこで味わった甘美と喜悦。そして肉体は正直に自由より快楽に反応し、無意識のうちに優美の欲情に火を付けてしまう。
「あっ…あ…!」
抵抗のため搾り出した声は悲鳴のはずが、期待を込めた喘ぎになる。下の口は正直に涎を垂らし、純白のパンツを汚した。そしてそれは、催淫蟲を誘う呼び水。
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「ひっ、ひゃあっ、あ…あああああああぁっ!!」
見えないまま下着をずらされた事に声を上げ、一瞬の間を置き、そして狂的な声を張り上げた。無垢だった優美の顔が白目を向きそうなまでに歪み、持ち上げられた時とも這い上がられた時とも違う、腰を中心にした動きで激しく暴れ出す。
「ああっ!あひっ、あは…」
スカートが翻るたびに、校門の舗装された道にいくつもの染みが落ち、そして、口から溢れる音が苦いものから甘いものに変わっていった。
P:21
そんな果実を頃合と思った、優美を捕らえる男が片手だけを離す。そのまま細い腕が垂れて振れたが、彼女はその事に気付かず、ただ衝撃の余韻に震えるだけだ。一方、男は空けた手をやらしく捏ねると、優美の未成熟な胸に伸ばした。
「きゃう!ああんっ!!」
制服がくしゃっと乱れて幼い乳房がしわになって浮かぶ。優美がまた声を上げたが、それは胸をいじられた嫌悪でなく、内から沸騰する欲情に外からの刺激を重ねられた事によって身体が溢れたものであった。
P:22
「お、おっぱい…こんな、いいっ…ちくびがっ、びくびくって…」
性感の限界を超えた優美は、理性もなく呟いた。もはや何の限りもなく、ただ快楽のためだけに生きる獣に成り果てたのだと、その虚ろな瞳と淫らな笑みが語る。
「あんっ、ねえ、もっと揉んでぇ…優美のおっぱい、もっといやらしくしてぇ…」
さらなる欲望を求め、自分を捕まえた悪党を相手に、あさましくねだる。いや、すでにこの男は、彼女にとって同族なのだろう。同じ主…催淫蟲に服従するという共通の存在なのだ。
P:23
そんな彼女の望みに応えて、彼女を嬲る指先がより激しく蠢く。
「んっ、ああ!そう!それぇっ!すごぃ!気持ちいっ…んく!」
そして期待に応えた見返りに、男は優美の唇を奪った。そのままでは女性に縁の無さそうな冴えない顔が、邪欲に満ちた表情で幼い少女の一面を覆ったが、今の優美は、その性欲丸出しな精神に同調して心からときめくように作り変えられていた。
「ちゅ…ぬちゃっ、…んんっ」
積極的に舌を絡めて口を蹂躙しあうそのキスは、相性抜群のカップルのように情熱的であった。
P:24
…あなたは、そんな優美の痴態を、地べたから見上げる事しかできなかった。いよいよ行為も激しくなると、居た堪れなくなり顔を地面に向ける。
「あらあらお兄さん、嫉妬?」
しかし、あなたを捕える女の子がそれを許さなかった。髪を掴まれた痛みが走ると、首を捻られた痛みが追い討ちを掛ける。そして、そんな事を気にも留めない優美と男の痴情が精神までも鞭打つ。
「でも大丈夫よ、あなたにも彼女のキモチ、教えてあげる…」
P:25
もう一人の女の子が耳元で怪しく囁くと、その息がそのまま頭の中に潜入してきたかのように、脳が霞に包まれる。術中に陥るまいと慌てて精神を集中するが、それもつかの間、下半身から衝撃が上ってきてバラバラに崩された。
「ふふ、カチカチじゃない。あの娘の変態プレイに興奮した?」
また別の方向から、震えるような罵倒が耳を犯す。彼女が地面と腰の間に指を入れて自分の肉棒を握り、男を支配操作しようとする。それはまさしく蟲が女の子に侵略する動きで、それを宿した彼女が自然と模倣しているのだ。
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「さぁ…退魔師さん、あなたもご主人様の下僕…いえ、さらにその下の家畜にしてあげる…」
隣の子も乗り気を増して、あなたの顔や背中を愛撫する。はぁはぁと熱気の篭った顔をしているのは、あなたの肉体に欲情しているのに足して、子宮がその行動を肯定し、褒美を与えているからだ。
「ふふふ、さあ、もっとシテあげるわ…私たちに溺れなさい…」
二人は目を合わせるまでもなく連携を取り、仰向けにして服を剥いていく。
P:27
あなたは抵抗も試みたが、二人でひとつの意思に動かされてるかのような彼女たちの前には、力で抑え込まれ、霊気も練る事ができず、なすがままにされるしかなかった。
「ふふふ、チンコだけは立派ね…さすがご主人様の餌になるだけの霊力の持ち主だわ。」
「ふふふ、私の蟲様がお許しになる限り、退魔師さんでいくらでも楽しめそう…」
年頃の子が異性に興味を持つ目で、あなたの下半身を見下す。ただ、彼女たちの思考は蟲に思考を感染させられたそれだ。
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恥じらいは残していながらも、蟲の快楽を伴った命令に押し流されて、欲情のままにあなたの陰部と口元に顔を寄せた。
「んっ、んぐっ、じゅる…ちゅ」
「ちゅ、くちゅ…んん…はぁ…」
卑猥に蠢く軟体生物の舌が彼女たちの口から生み出され、あなたの下の突起と上の口内を激しい愛撫で蹂躙する。何もかもを溶かしてしまう唾液を塗りたくられ、その心地よさを身体が受け入れようとする。だが、退魔師としての意地が、必死にもがいて抵抗する。
P:29
「んっ……へえ、まだ、んっ、逆らっちゃうんだ…」
上の娘が惜しげに唇を離すと、口に残った粘液を拭いながら問いかける。その仕草と膜が自分と彼女の行為で出来たものだと思うと心音が上がるが、その浮いた気持ちに下から楔を打とうと下半身の娘が蛇の目でこちらを見ている。あなたは負けまいと、開いた口を強く締めて睨み返す。
「ふふふ…そっちじゃないわ」
もう一人の狩人が、あなたの頭を掴んで捻る。空を正面に上を見上げられる形になると、転地逆さで優美のいた方向を見せられた。
P:30
「…あはっ、退魔師のお兄ちゃん…お兄ちゃんは、まだなんだ?」
そこに居たのは、純粋なまでの色香を放つ優美だった。しかも、先の悪漢に、愛おしく、まるで新婚の報告にでも来るように抱きかかえられているのだ。
「んふふ、無駄なのになぁ…女の子はね、みんなこの気持ちよさが大好きで…催淫蟲、こんなにHにしてくれちゃうご主人様のためなら、なんでもしちゃうんだよ…」
頬を赤く染めながらも虚ろに、優美は蟲の素晴らしさを語った。
P:31
その言葉は身体や意識を操って喋らせているのでなく、魂の底に根差して常識そのものを塗り潰し、言うのを当然としたものだ。
「ふふふ、見せてあげるね…」
もはや蟲に全てを乗っ取られた彼女は、開かれたブラウスも腰からずれるスカートに気を止めないどころか、男に無言で命じ、布が隠すべき奥をさらに晒す。あなたを見下しながら、両脚を大きく開かせたのだ。
「気持ちよくなる、幸せをねっ」
誰もが愛しく思う爛漫な笑顔を見せながら、その秘所に両指を伸ばす。
P:32
そしてぐっしょりと塗れ、もはや不快感しかなさそうな汚れたパンツを退けてずらすし、蜜の滴る淫らな源泉をくぱぁと開く。
「ご主人さまぁ…また、精気を食べさせてあげますねぇ…」
幸福な喜びが狂喜の笑みに染まり、そして沈んでいく。表情でなく、位置がだ。
「んっ、あはっ、ああぁぁぁ!」
そして、女と男の腰が繋がる。蟲に憑かれ、その下僕の魅力に支配された男は、すでに交尾をする事だけが存在意義の家畜だった。そう調教されたように、裂目を貫く男根も正確だった。
P:33
「きっ、きた!わたしのアソコに、太いおちんちんっ、かちかちのぉっ!!きもちいのぉぉ!!」
ぐちゅりという音があなたの上で響くと、優美は歓喜に震えながらありったけの卑語を口にした。性知識の幼い彼女の拙い言葉が、かえって異様な妖しさを生み出す。
「もぉ、もっとぉ、うごいでっ、ぐちゅぐちゅってかき回してぇ!いっぱい腰を振ってぇっ!」
宙にある身体を捻りながら理性もなく叫ぶと、そんな子供をあやすように男はリズムを合わせて腰を突き上げる。
P:34
「そぉっ、それっ!もっと、キモチいいのぉ!お兄ちゃんよりすっごいの!おちんちん頂戴!!優美をぐちゃぐちゃにしてぇ!!」
相性抜群の動きに夢中になりながら、ひたすらに叫び、二人の腰が熱く密着するたびに牝の汁と汗が撒き散らされる。その液体が落ち行く先は、あなたが倒れる地面と、そしてその上に転がるあなただ。ぴたっ、ぴたっ、とあなたの顔は汚されるが、身体を封じられて拭う事もできない。ただ、匂いが染み込んでいくだけだ。
P:35
そんな事をされ、顔が震えても、快楽に溺れている優美は気付く様子すらない。ただ、あなたを捕らえる女の子だけが、その表情にサディックスに楽しんでいた。
「ホラ、あの子も堕ちちゃったし…退魔師さんも、ね?」
精神をいたぶりながら、上の彼女の手が胸元に侵入してくる。身体を触るそれは、恋人の甘い睦のようだった。その気配を察した、下の彼女に宿る子宮の蟲が同調の命令を下すと、びくっと震いながら
「ちゅぱっ…我慢ひないぇ…ね」
そう咥えがら囁いて、筋や玉まで指先すべてを使って生殖器をいじりまわす。
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二人の愛撫は、直接のテクニックで溶かすような押しの攻めから、急所のギリギリを突いてじらす引きの攻めへと変わると、いよいよ我慢の仕方が分からなく、堪えるという感覚が麻痺してきた。
「ああぁぁっ!激しく、つぃ、んん!びくんびくんって、おチンポふくらんでるっ、きてるぅ!」
何より面前で繰り広げられる大胆な獣じみたセックスが、その降り注ぐ匂いが、あなたの頭を揺さぶり真っ白にしていく。
P:37
「幸せそうでしょう?さぁ…」
「羨ましいでしょう?さぁ…!」
いよいよ思考が定まらなくなってくる。あるまがままに身を任せ、そしてそれ自体が快楽にまみれたものに変わってゆく。
「いいよぉっ!きちゃう、優美、おかしくなっちゃ、ひゃう!ああ!イクっ、いっしょに!ひゃ、ああああああぁぁぁぁぁ!!」
どこかで果てる音がして、暴雨が降り注ぐ。その液体があなたの最後の一線を決壊させ、蟲の下僕に生命力に満ちた精液を差し出した…
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「わっ、誰もない…不気味ー」
玄関に入り罠も後続もないと確認すると、二人は廊下に足を踏み入れた。優美が思わず口にした感想の通り、賑やかな放課後の時間とは思えない静まりようは、何かの謀略を感じさせる異様な空間だ。あなたはそれに囚われる事なく意識を集中し霊力を高める。
「ねえ、どうしようか?まずはお兄ちゃん、あ、私の高志お兄ちゃんと合流したいな。今の時間なら心霊研の方だと思うの。」
そんな優美の問い掛けで集中を外したが、校内の妖気を探るには十分だった。
P:42
妖気はない、だが、校内に結界で隔離された空間がある事を察知する。それ自体に正邪の境は無い。
「ねえお兄ちゃん、退魔師のお兄ちゃんってばっ!!」
優美があなたの袖を引き反応を見ようとしたが、その時に顔を見て視線が考え事の方向を向いているのに気付いた。
「ん、そっちは職員室とか保健室くらいしかないよ?」
無意識に案内を受けたが、つまり優美の兄のいる可能性が低く、彼女の興味が無い方向という事か。気になるのはこっち、案内されているのはあっち。どうするか…
P:43
この違和を消せずには進めない、そう説明しようとした時だった。
「あ、優美!どうしたのー?」
その方向から、ひとりの女の子が大きく声をかけながら駆け寄ってきた。まだ子供だが優美よりは成長期の盛りで肉付きもほどよく、それを引き立てるまっすぐな長髪や柔らかい瞳は、品の良い高潔さをかもし出していた。
「お姉ちゃん!無事?元気?!」
その娘に優美は勢い良く返事をする。どうやら彼女の姉の、神条晶のようだ。あなたの記憶に残る物語にも出てきた、兄妹の面倒見良いイメージにもよく当てはまる。
P:44
「もう、何?どうしたのよ、そんな危険なの持って?それに…えっと、どちら様でしょうか?」
たたっと女の子らしく静かな動きで優美の下まで来ると、外の様子を知らないのか呑気に尋ねる。その一方で、危険だと指した鬼切り丸以上に、あなたに向け、丁寧な言葉で包みながらも痛烈な視線をぶつける。晶が何も知らなければ、妹を連れまわす不審者なのかもしれないのだから、保護者としては当然かもしれない。
「何って、もう、外とか大変なんだからぁっ!お兄ちゃんにこの鬼切り丸を届けてあげないと!」
P:45
その警戒心に気付かないのか、優美は姉の質問に落ち着きなく答え
「あ、この人は退魔師のお兄ちゃん。優美を助けてくれたの!」
おまけ程度にあなたを紹介する。幼い彼女では、やはり身内と他人の扱いに大きく差が出るものだ。
「大変?助け?」
「もう、蟲だよ!あの催淫蟲!復活してるかもって!!」
晶が警戒を解かないまま、妹の話を聞く。子供っぽい優美の扱いには慣れているようだが、それでも腑に落ちないといった顔をして、その理由を答えた。
P:46
「それなら、先ほど美佐さんが来て封印したはずよ、優美。」
その意外な情報に、あなたも優美もきょとんと目が点になる。
「え?ホント?でも校門で…」
「ああ、本当にさっき、保健室での事でしたから、今頃外の片付けをしているかもしれませんね。」
晶はやれやれと納得と解決に落ち着いた表情に戻ると、あなたに身体を向けて大きく頭を下げた。
「そういう訳です、退魔師さん。今日はありがとうございました」
しかし謝礼の動作は大きいが、その言い様から伝えようとするものは少ない。
P:47
晶も退魔師の娘だ、妹を危険な目にあわせないで下さい、と遠まわしに言ってきたようにも思えた。
「ほら、そんな危ない刀なんてものは持ってないで、美佐さんの所へ行きましょう。預かり物なんでしょう?」
「ちょ、お姉ちゃん、待っ…」
はやばやと妹に向い、姉らしい保護者の態度で優美の肩を掴んで連れていこうとする。が、その時
「きゃぁ!」
優美がビクンと急に震えて声を上げる。何か意外な事が起きた時の反射だ。
P:48
「どうしたの優み…」
晶が心配そうに声を掛けたが、その瞬間、優美が飛び退く。それは逃げ上手な兎の動きに近い。
「今、優美に触った時…鬼切り丸が反応したよ、お姉ちゃん!」
険しい表情で姉を睨みながら、優美は晶に指を向ける。あなたもその意味を悟り、構えを取った。
「?どういう事?」
ひとり取り残されて唖然としているが、優美は容赦なく敵対する。あなたも集中を入れて探りを見るが、たしかに僅かながらに妖気を感じた。だが、それは残り香とでもいうべき量であった。
P:49
「この鬼切り丸が反応したんだ!何かに憑り付かれているか、お姉ちゃんじゃない!」
優美の推理は姉への情愛からすれば当然の怒りであるが、その当事者は見抜かれたにも疑われたにも合わない、指を口に当てる仕草をして余裕を持って切り返す。
「それは、さっきまで美佐さんの手伝いしてたからかな?封印のお手伝い…って、言われたままだから詳しくは分からないけど、それでホラ、匂いとかかな?」
そう言って晶は、無防備に自分の腕を持ち上げて袖に鼻を近づけてスースーと音を立てる。
P:50
その警戒心の無い、いつもの姉の動きに比べれば、鬼切り丸の反応は一瞬の事。論証のろの字もない優美だ、言い返せずに詰まる。
「あっ、え…でも?」
「もう、美佐さんに確認すればいいじゃない。さ、行きましょ」
このままでは頭をこんがらせる優美は、晶のペースで連れて行かれるだろう。さすがにまずいと思い、あなたは優美に疑問点を耳打つ。そのヒントが優美の混乱を収め、追求の軸になる。
「お姉ちゃん…どうしてこれが、鬼切り丸が…危険とか、刀って知ってるの?」
P:51
「えっ?!それは…」
その指摘に冷静な表情は変わらないが、額と頬に汗が光った。
「ほら、それは…そう、美佐さん、美佐さんに聞いてたから…」
「ウソ!ケータイに美佐さんから掛かってきた時に言ってた!」
ついに見せた綻びに、優美が噛み付く。
「これは、鬼切り丸は、大切で神聖な霊器だって!苦しそうな声で、私なんかに必死に頼んできて…そんな時ですら大事に思ってたものを
「危険」
なんて美佐さん言わないよ!お姉ちゃんだって!ホントのお姉ちゃんなら!!」
P:52
だがそれは、論破というのは感情的すぎた。一気にまくし立てる言葉に、優美の二人に対する理解と信頼があったからだ。晶はそれに飲まれたか、後ろに一歩仰け反ってうつくむ。
「…ふふ、そうね。でも私、ウソは言ってないのよ。」
下を見たままぼそりと、似合わない負け惜しみを呟く。
「じゃあ何っ?!」
優美がさらに詰めると、晶は顔を持ち上げた。その顔は先に同じく整った柔和な笑顔。だが、うっすらと開く口端や目元には二人に対する悪意があった。
P:53
「だって…その鬼切り丸は、私たちを滅する危険なもの、って聞いたんですもの…」
ついに現れた本音に肌が粟立つ。殺気交じりの告白には、騙し損ねた事への怒りが練り込まれていた。あなたは咄嗟に晶に向けて臨戦態勢を示すす。だが、直情的な敵愾心にしては、晶はあまりに無防備だった。ただ、その動きを見て、晶はさらに妖しく笑いながら虚ろな目を開くだけだった…それで勝利だと言わんばかりに。
「ねぇ…美佐さん?」
「ええそうよ、優美ちゃん、退魔師さん。」
P:54
晶が見ていた虚空から声がした。はっとなって振り返ると、そこには紅白の巫女装束をまとった、一人の女性が幽霊のように立っていたのだ。まさに魔性とも言える美貌の女だったが、あなたは新手に不意を付かれたという反射から仕切りなおそうとする
「動かないで」
だが、念の篭った声がしたかと思った瞬間、あなたの動きが止まる。急に身体が硬直し、コンクリートの中にでも突っ込んだかのように、まったく動きがとれず、呼吸などの最低限の動作しか自分の意思が効かないのだ。
P:55
「お、ねえ、美佐さん…っ!」
どうやら優美も同じく身動きひとつ取ることができないのは、辛うじて向けられた目線と、その苦悶の声で分かった。
「もう、晶ちゃんたら…引き付けてくれたのは嬉しいけど、妹だからって甘く見ちゃダメよ。」
そんな二人の辛さに目もくれず、邪悪な晶を慈しむ目で見つめる。これがあの巫女…三条美佐の言霊という術だ。あなたが読んできた物語にも出てきた、優れた退魔師で皆が姉のように慕う女性、だが今の彼女は、清楚な姿に淫猥な本性を隠す蟲の下僕のようだ。
P:56
「てへ、ごめんなさい…だって、優美は大好きな妹だから…」
美佐の庇うような叱りに、晶はしおらしくも大胆な事を口にする。
「お、おねぇ…ちゃ…っ!」
驚きと戸惑いを感じながらも、言霊に縛られる優美にはそれを満足に表す事はできない。そんな人形と化した優美の顔に、晶はそっと手を伸ばす。だが、頬を撫でる手をぶるぶると震わす彼女の顔は、親類へ向ける愛情という言葉では生ぬるい、溜め続けた欲望に汚染された顔だ。
「だからね…また一緒に気持ちよくなりましょうねぇ…ふふふ」
P:57
べちゃりと音がしそうなまでに舌を躍らせ、囚われの優美に偏愛を囁く。人としての枷が外れた晶に怯えながらも、優美はその捕食者の手を払うどころか、嫌がる表情すらも満足にできず嗚咽を上げる事しかできず、それをいい事に、首筋まで腕を伸ばし、制服の胸元に手を入れ込む。いつもの姉の珍しいコミュニケーションならともかく、蟲の仕業なのは明白。否定の声を上げようとしたが、
「あ、ゃ…んんっ!」
蔦のように絡む晶が優美の唇を奪うと、そのまま口腔まで、余すところなく犯す。
P:58
姉妹のじゃれ合いとしては濃すぎるほどの濃厚なキスに、優美の顔に赤らみが増して表情の強張りがだんだん緩んでいく。
(んんっ、お姉ちゃん、だめっ、だめなのにぃ…優美の舌、たべられひゃう…それに、身体を触るのっ、ぞくぞくしちゃう…!)
頭の中に危険信号が鳴れど、自分の身体を知り尽くされたと思うほどの愛撫の手捌きに、内から力が抜けていく。あれだけ強く抱き締めていたはずの鬼切り丸もするりと優美から抜け落ち、からんと足元に転がった。
P:59
「ふふ、お熱な二人…私も、ああやって綾音と愛し合いたいわ…」
あなたの前で余裕たっぷりの美佐が羨ましそうに呟くと、堪えるそぶりすらなく、自らを強く抱き、性感の集まる箇所に押しつぶす。痴女そのものの様態だが、理知的で清廉さを醸し出す美佐が恥ずかしげもなく発情しているそのギャップには、多くの人間が惹き込まれてしまうだろう。ただ、この場で誘惑の対象となりうるのは3人、男は一人しかいない。獲物を見定める目で、その色気を腰で振りまきながらあなたに近づく。
P:60
「さぁて、退魔師さん…優美と、鬼切り丸をここまで連れてきたみたいだけど…残念だったわね。」
動けないあなたの前で腰を屈めると、胸板を指でなぞりってからかう。上から覗けば、長く美しい黒髪が背中を走り、純白の巫女服がだらしなく肌蹴て白く豊な乳房が揺れているのが見える。これが今でなければどれだけの眼福かとも思うが、この妖艶も全ては彼女の内に宿る蟲に繰られているだけだと考えれば、そうはいかない。しかし、それにしては、美佐の纏う妖気は薄く、むしろ本質である破邪の霊気の方が濃く写る。
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「不思議そうね。ふふ、じゃあ…イイ事を教えてあげるわ…」
まるで考えを見抜いたかのようにあなたを見上げると、いつでも捻り殺せる小動物を可愛がる乙女の顔をして、あなたから少し離れた位置に直立する。そして悪戯っぽく微笑むと、真っ赤な袴を握ってゆっくりと持ち上げていく。するりするりと上る幕から覗く美脚からあなたは目を逸らす事はできず、淫らな蜜が滴る太ももに唾を飲んでしまう。そんな男の本能を弄んだ事に満足すると、いよいよ本番と、腕に力を入れた。
「さぁ、見せてあげる…」
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わさっと僅かに捲れ、緋色の袴の内側が明らかになと、恥じらいを誇らしげに感じる美佐の中心が少し震える。そのそこは、術式の施された1枚の札が貼られており彼女の淫穴を封じられているのだ。だが、その前貼りを銀色に汚す愛液と、それが持つ妖魔の匂い。
「こうやって、私の身体でね…んっ、催淫蟲様をお守りしているのよ…気配を隠しながら、ね。」
恥辱の報告を嬉々とするように、美佐は袴を上げたまま秘密を語った。これが彼女と晶が蟲の気配を隠せる理由…彼女たちを結界にして、妖気を遮断しているのだ。
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「もちろん私も、よ…けど、私はあなたになんかは見せないわよ。お兄様にだって、蟲様のお許しがでない限りわね…うふふ」
二人の会話に晶が競うように割り込み、言霊の縛り効果だけとは思えないほどに脱力して固まる優美に圧し掛かりながら、あなたに向けて腰を突き出す。そして模範的な長さのスカートの片端をずるずると腰に乗るまで上げ、白桃のような尻を、肝心な所を挑発的に隠しながら見せ付けた。あの位置まで肌が晒して下着が見えないという事は、やはり美佐と同じく蟲を隠す札が貼られているのだろう。
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互いの忠誠心を試すために蟲の命令でも下されたのか、二人は進んで痴態を晒す。こうして女性の尊厳を折らせるのが連中の常套手段なのかもしれない。だが例えそうでも、今の彼女たちであれば幸福に満ちた顔で、自らを貶める事を賛美しかねない。
「もちろん、これは高志くんを堕としに行った綾音も同じ…こうしてあなた達、退魔師の不意を付いて、私たちのように、催淫蟲様に服従させてあげるわ。」
恥辱に濡らしながらも助力を惜しまない美佐は、それほどに、寄生する主の支配を甘受していた。
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「んぁ、そ、その前に…ま…まずは優美ちゃんからっ…らの…う、生まれっ、きっ、いっちゃう!」
饒舌な口ぶりで蟲の素晴らしさを語っていたはずの美佐が急にどもったかと思えば、表情が精神的な陶酔から肉体的な高揚に切り替わっていく。そしてスカート状に作られた袴を持ち上げたまま強く握り、声にいきりを混ぜながら脚を内股に曲げて固める。組まれた手が洋風な祈りに見えるが、それはまさしく、我が子を産もうとする女性のそれだ。
「私の、あそこから、ずるずるって、堕ちて来る、出ちゃうっ!」
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苦悦にあられもない姿を見せ、美佐は激しく震えると、自慢の護符がもろく剥がれて割れ目が露わになる。そこにあるのは、欲情に蒸れた肉襞と、そして、体液に包まれた肉塊だった。
「ん、はぁ…ふぅ…私の、可愛い子ども…ご主人様の、愛の証…」
封印が解け、ぽこっと桃色のそれが床に落ちると、精力を出し切った美佐はそれを追うようにくたっと腰を落とす。彼女の吐き出した液と身体中から吹き出る汗が、情事の後の幼妻のように艶やかで、それはまさしく、快楽に堕ちた聖母と形容されるものだ。
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「んっ…ふふっ…」
袴が美佐の意思とは別にもぞもぞ動くと、愛しさに満ちた微笑でその動きを味わう。やがて出口を見つけたそれが、裾から顔を覗かせる。ピンク色の芋虫は生まれた直後、いや、母体から分裂増殖してなお淫魔の力を禍々しく放つ。
「あぁ…羨ましいなぁ、美佐さん。私もたくさん精液を吸って、はやく蟲様を授かりたいなぁ…」
「美佐さっ、そ、そんなぁ…」
異種の出産に立ち会った姉妹が、それぞれの感情を口にした。その声が聞こえたか、蟲が二人の方を向く。
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「ひっ!」
目を持たない蟲の眼光に優美が怯える。彼女を同族かどうかを判断し、獲物として睨んだのだ。
「もう、美佐さんの子どもなんだから、そんなに固くならないで…とても気持ちイイから、ね?」
そんな妹をあやす姉は曇りひとつなく赤子のように新たな蟲を受け入れている。今の晶の思考はあの蟲と同族なのだから親身になるのは当然だが、家族を奪われたような優美には、嫌悪しかない。
「やぁっ、やあ!ヤダぁっ!!」
言霊の束縛が続く中でも、優美は精一杯の声を上げて抵抗を示す。
P:69
さすがに施術から時間も経ち術師の消耗もあり、優美も僅かに自由を取り戻してきたが、それでも晶に軽々と押さえ込まれる程度の力だ。むしろ抵抗をきっかけに、体勢を無理矢理組み直させた。床に腰を押し付けると両足を膝の裏を抱えて開脚させる分娩の格好だ。
「さぁ、受け入れるのよ…一度堕ちた優美なら分かるでしょう?痛いのも怖いのも、すぐに快感で溶けちゃうからね…」
「ああ、やっ、やだっ、お姉ちゃ、正気っ、に…もどっ」
「ふふふ、私はずっと正気よ?」
P:70
嬲り舐る蟲の配下の暴虐が、いよいよ終末を迎えようとする。あなたは最後まで諦めずに逆転の機会を探っていたが、もはや時間が無い。言霊の力が弱まっている今、皆の意思が優美に向っているこの瞬間に飛び出そうとしたが
「もう、無粋な男ね…じっとしていなさい?」
脱力から回復した美佐が見過ごす訳もなく、術を重ねてあなたを呪縛を強めた。
「優美ちゃんの次は、高志くん。あの霊力を私たちのモノにするの…もちろん、あなたの逞しい力も私たちで絞ってあげる…」
P:71
言霊に誘惑を重ね、あなたを封じようとする。秘部の札も剥がれて内に棲む妖気が漏れ出すが、むしろ隠さず色気に混ぜて、熟達した娼婦を思わせる態度であなたを堕とそうとする。だが、産み落とした蟲に霊力も奪われているのか、その力は先に比べて抑制力がなく、全力を振り絞れば自力で破れそうだ。優美の状況からも見て、反撃あるいは脱出のチャンスはここしかない。あなたは霊力を昂ぶらせ、下半身の集まる血も丹田にまで持って行き全ての力を呪縛を解く力に変えた。
P:72
P:73
その隙を見た優美も、渾身の力を振り絞って制服のポケットに手を入れ切り札を握り締める。
「あくりょうたいさーん!」
気合の声に合わせ、一方的にしてきた晶に反撃する。万が一に備え、鬼切り丸と一緒に携帯してきた破邪札。妖魔を祓う護符は、晶に、いや、そこに宿る蟲に致命傷を与えるには十分な力を宿す。
「はぁぁんっ!!」
晶の体内を巡る聖なる電撃に彼女の口から悲鳴が上がるが、がくりと肩から倒れ込むと、毛穴から妖気が噴出して、晶のスカートから不気味な液体が溢れる。
P:74
「やっ…たの、かな?退魔師のお兄ちゃん。」
優美に問われて姉妹の方向を見る。その液体こそは形を保てなくなった蟲の死骸だろう、と、あなたは思ったが、気絶した晶の容態の確認も含め、一度立ち上がると二人の下へ移動する。しかし、それは窮地を脱したという安堵が作る大きな隙であった。
「伏せなさい!」
突然に急いた言葉が耳に入ると、あなたと優美は反射的に言われた通りにする。ここは敵地なのだから油断禁物…そう、その言葉も。
「えっ、あぶな…あ、あれ?」
P:75
あなたも優美も伏せたまま、またも指一つ動けなくなる。言われた事から何か飛んできたかと危険を感じ、その言葉を抵抗なく受け入れてしまったが、ここの敵が飛ばしてくるのは、警戒していなければ必殺の呪い…言霊しかない。
「…やってくれたわね、三流。」
物静かであれど、その殺意としか言いようのない怒りは背中ごしに伝わる。美佐だ。あの時の衝撃は呪縛を解く力で相殺され、彼女の悪霊にまで至らなかったのだ。
「私の子…催淫蟲様と、晶ちゃんの愛するご主人様…この怒り、許しがたし…!」
P:76
身体が動かずうつ伏せのままなのは、かえって幸運だったのかもしれない。こちらを覗く優美の戦慄した顔に、空気が烈震しそうなほどのこの怒り。どんな鬼の形相をしているか想像も付かない。だがどの道、その行動は短慮な悪鬼そのものだった。ムシケラでも踏み潰すように、足袋を履く足を持ち上げてあなたの首に勢い良く全体重を乗せてきたのだ。背骨が折れそうな衝撃、そして窒息。
「命を以って償ってもらうわ。」
なんであれ我が子を消されたという憤怒は制御が利かず、糸の切れた彼女は冷酷という境地に至る。
P:77
「どこの退魔師か知らないけど、いらない所に突っ込むようなその首から片付けてあげるわ…!!」
背骨に触れる足の裏の温かさが出来の悪いギロチンになり、あなたを締める。折れるが先か詰まるが先か、あなたは徐々に迫る恐怖にたまらず苦痛の声を上げたが、致命の感覚にもはや声にもならない呻きしか上がらない。薄れいく意識の中で、隣で何も出来ない優美の顔が目に入る。悔しそうに、悲しそうに、涙を流していた。そしてなお、諦めたくないと言っていた。出来る事は、叫ぶだけだ。
「おっ、お兄ちゃぁーん!!」
P:78
なんら力も無く、美佐をぴくりともさせない悲痛な大声。だがしかし、確実にそれは届いた。それは「兄」の元まで。
「さすがにやりすぎだぜ美佐さ、いや、蟲さんよ…悪霊退散!!」
何か頭上で大きな音がすると、ギリギリの所であなたは息を吹き返す。だがしかし、その死から生への横断はあまりに大きな負荷であったか、あなたの意識は安らかに泥沼へ沈んでいく。その中であなたは、泣き止んだ笑顔の優美と、鬼切り丸を握る男の背中を見ていた…
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…目が覚めると、あなたは本を手にして立っていた。はっと慌てて辺りを見回したが、それは物語に没頭する前の情景そのものだ。…夢か?とつい口にして、開きかけていた手元の本をめくると、終わり無く感じた物語はすでにエピローグに達していた。
「悪い蟲は主人公の神条高志の手に寄って退治され、妹たちと平常を取り戻しました」
優美や晶の幸せな笑顔に、まんざらでもない高志や、それを見守る美佐や綾音、そして仲間たちの日常。そんな最後のページを静かに本を閉じ、あなたは心の底で思う
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そうだ、これでいいのだ。夢であれ彼女たちに力を貸せたのか、物語に没頭するあまりに世界に介入する夢をみたのか、どうであれ、彼女は明るい日々を取り戻し、自分は良きストーリーに触れる事が出来た。あなたはそんな満足感の中で本を片す。正しい結末を迎えたこの本は、もうあなたを呼ぶ事はないだろう…


「ありがとう、お兄ちゃん!」
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あの力は、あの苦労は、あの笑顔は。夢と現世とも言える狭間を見たあなたは、この浅はかな平穏を迎えた事に歪な感情を抱く。
「ナラ正セバイイ…」
そんな言霊が、あなたの脳裏を過ぎった。それはきっと、あの時に聞こえた本の呼び声。次に呼ばれた時は、きっと力になるだろう。そう、この本の中に蔓延する黒く妖しい力。光を屈し闇に染め上げる彼らの力が…
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物語に登場した敵役の悪霊…女を操り男の精を奪い、退魔師たちを堕としていく催淫蟲と呼ばれる存在が浮かぶ。寄生されたうら若き娘たちが、蟲の妖力によって淫靡な肉体に改造され快楽による餌付けで洗脳されると、絶対的な服従を誓い自らを奴隷に貶め、そして命じられるままにその力を感染させ連鎖的に仲間を引き入れていく…これはそんな恐怖と背徳と戦う物語であるが、あなたの脳裏には、抗うはずの仲間たちが蕩けた顔でいやらしく腰を振り、催淫蟲―あなたにねだる光景で一杯だった。
P:91
そしてその欲望のまま黒き魔力を望む…が、深い闇は応えない。深い闇は、まだあなたを試しているようだ。望み通りにならなかった事に舌打ちをしたが、音は鳴らない。あなたはまだ本の世界における「存在」でしかないのだ。一度頭を空っぽにして、再構成を試みる。
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そしてその欲望のまま黒き魔力を望んだ時、あなたを待ち望んでいたモノが居た。深い闇から覗くそれは、呪詛とも祝詞とも言える詠唱を存在不確なあなたに与える。
「望ムガママニ世界ヲ創リ変エルノダ…」
黒いインクが霧となって膨れ上がり、あなたを構築する。時の無い虚空の中で、生命体を構成する骨が臓が機械で調理するように練り混ぜられ、液が肉が乙女の拙い抱擁のように抱き締められる。そこに精神という糸が紡がれ繋がると、パシャンと爆ぜる音と共に暗闇が切り裂かれた。
P:94
…だがどうやら、この先はまだ道が無いらしい。このページに一切れのメモが挟まっていた。
「すいません、ここから先はまだ未完成です。次回更新をお楽しみに〜…だけだとガッカリルートなので裏技をひとつ。タイトルで*キーを押すとデバックモードです。バグモード、蟲モード。サイコロの出したい目のキーを押すと思うがままに。あとはフラグ状況が操作できたり5キーでページ戻りとか。矛盾が発生するけど気にしない。じゃそういう事で」
その情報はともかく、ここからが本番だろうに…仕方ないとあなたは諦め、本を閉じた。
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物語に登場した様々な人物たち…大事な使命を果たすために、大切な人々を守るために、心を込めて力の限り生きる者たちが物語と共に浮かび上がる。そしてその記憶がスイッチとなり、本の世界が流れ出すと、あなたの意識はその潮流と共に、最も深く想った者の元に届けられた…
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「ほらほらぁ、聞き分けのない男は嫌われるわよ?」
まるで霊力が募った瞬間を見計らったかように、あなたの視界が美佐の顔で埋まる。その影に驚いて霊力の制御が中断されてしまうと、隙を見つけた彼女の腕がするりとあなたの着物に忍び込む。
「抵抗してもムダ…さあ、盛った雄になってしまいなさい…」
そのまま豊満な肉体を押し付けながらあなたの耳元で囁く。言霊の強制力はない、が、彼女から匂い立つ牝の妖気があなたの肉体を穢し、精神を堕落させる。
P:101
「ああ!やあぁ!助けて!助けてお兄ちゃん!!」
しかし溺れそうになる意識を、その叫びが引き止めた。もうすでに新たな蟲は、尻を床に付ける優美の恥丘に登らんとしている。
「ふふ、もうすぐよ…お兄様も、今度こそは私たちと同じにしてあげましょうね、優美」
抵抗激しく暴れているようが、妹を奉物にしようとする晶を振りほどける状況ではない。自分を頼りしてくれたあの娘を蟲に奪われる訳には、と決意改め、あなたはもう一度霊力を集中する。だが全ては敵の手の中。
P:102
「ほらっ、違うでしょ…その霊力は、大事な餌なんだからねっ」
今だというタイミングで、下半身から強烈な刺激が登ってくる。びくりと震えると、へその下の霊力はそれに連れられ火が付くことなく体内で霧散した。
「とても硬くて美味しそう…」
うっとりとした目で、美佐はあなたを見つながら、指を絡める。その蠢く中心はあなたの肉棒だ。根元から先端まで5本の触手が余すことなく攻めると、あなたは溜まらずに声を上げ、全身の意識をそこに持っていかれる。
P:103
その弄ばされる表情を美佐は愉しそうに見納めると、上半身をあなたの腰元に沈める。慌てて追った先で彼女は手早くあなたの着物に手を掛けたかと思えば、あっという間に帯を外した。
「ひゃん!」
可愛く上げた悲鳴にぺちっと乾いた音が重なり、あなたもつい呻いてしまった。制御しきれなかったペニスが彼女の顔を叩いたのだ。
「もうこんなにカチカチで…それにビクビクと脈打ってて素敵…」
飢えた獣のように涎と舌が垂れる口が、目の前の獲物に話しかけたと思えば、そのまま襲い掛かる。
P:104
「ちゅ、ん…ちゅぱっ…ぢゅ…ふごひ、うじゅ、ひあわせ…ちゅ」
はしたなくも夢中に、美佐はあなたの隆起するものをしゃぶる。舌が踊ると快感に惹かれて感覚も霊力もそこに集まり、奥まで吸い取られると強烈な放出感と喪失感が先端から駆け抜けて、たまらず仰け反ってしまう。
「ああっ、ひゃん!あああ!!」
そして、あなた以上の快楽に悲鳴を上げる声が突き刺さった。だるい身体をなんとか声の元に向けると、抵抗空しく優美の股の上に不気味な塊が蠢き、裂目を擦りながら全身を挿入しているのだ。
P:105
「だめっ、ああん、ダメなのにっ入っちゃう、私のあそこにぐちゅぐちゅっていってるぅ!」
優美は胎内へ侵食される恐怖と肉襞を刺激される快感に戸惑いながら首や腰を振ってもがく。
「ああっ、蟲様が嬉しそうに中へ…おめでとう、優美。」
だが、妹の陵辱に手を貸し興奮隠さず夢心地にある晶の抱き締めるような拘束からは抜け出せそうもなく、蟲は分泌される媚薬の体液と本能的なテクニックを駆使して優美の膣へと徐々に沈んでいく。その深度が高まるたびに、優美の顔と声が紅く媚びた、甘いものに変貌していく。
P:106
「やぁっ、だ、だめだよ…優美、ゆみっ、とけちゃうっ、蟲がはいって、いって、いっちゃう!」
肉体が肉塊と同調し、優美の意思に関わらず蟲を受け入れる。ずるりと最後の一線を越えると、催淫蟲は全身を震わせ、子宮から襞にある全ての神経を愛撫する。
「ひゃん!ああっ、すごぃぃっ!きちゃっ、らめぇ!とんじゃう!いっちゃうぅぅぅぅぅぅ!」
内部から攻められた優美はあっという間に崩れて激しく絶頂する。瞳を大きく開いて天井を仰ぐまで全身を反ると、弛緩した下半身から様々な液を漏らす。
P:107
その瞬間、冷たい床をびしょびしょに濡らす音だけが響いた。
「ふふふ…これで思い出したかしら、優美。蟲様を宿す快感を…」
それを福音のように聞き入る晶が、その祝福を受けた優美を抱き直す。捕らえていた脚から肩や顔へ、気を失うほどの衝撃を受けた優美を優しく包んだ。
「お、おねえ…ちゃん…」
抱擁の中で優美は呟く。波が去り正気を取り戻したはずの彼女。
「むし…催淫蟲…さまぁ…すごい…わたし、思い出しちゃった…」
だが、その正気とは、既に寄生した蟲が塗り潰したものだった。
P:108
「もう、手間が掛かるんだから…さあ、あなたは何かしら?」
晶は赤子の幸せそうな微笑みを浮かべる優美を胸の中に抱き、母性に満ちた顔で問い掛ける。
「優美は…私は、催淫蟲様の奴隷です…この快楽を教えるために、なんでもする牝犬ですぅ…んっ」
そして、良くできましたと褒める代わりに熱いキスを交わす。優美もまた、その慈愛を無垢に受け止める。温かな姉妹愛は、蟲に洗脳され淫靡を常にしてもなお変わらなかった。ただ一人、その場に取り残されたあなただけが、堕ちた者たちの狂態に虚脱していた。
P:109
「んんっ、ちゅぱ…ぢゅる…ん…さぁ、優美ちゃんも目覚めたし…あとはあなただけよ?」
尻餅付いて壁に倒れかけるあなたの中心にしなだれ激しいフェラチオをしていた美佐が、あえて奉仕を中断し、心の隙間に言葉を突き刺す。優美を守れなかった自責…そして、その嬌態に卑しくも反応してしまった事が、心に致命的な傷穴を開ける。美佐もそうだという事を察していたから、直接的な肉欲の攻めに精神的な被虐感を植え付けようとしたのだ。その目論見は的中したようで、あなたの肉体は自虐的に快楽を求めていた。
P:110
「ふふふ、またまた膨らんで、もうパンパンね…さあ…ぢゅ…出ひて、んちゅ、しまひなさい…!」
極めて艶かしい加虐の顔を再び腰に突き出し、あなたも肉棒にむしゃぶりつく。先までの我慢の分が限界まで溜まっており、抵抗のハードルが下がった今、精子が脳にまで達しそうなほどにそのペニスには欲望が溢れかえっていた。
「さぁ退魔師さん…無様にイッてしまいなさい。私たちの養分になるりなさい…!」
「ふふ、退魔師のお兄ちゃんも、ガマンしないで一緒にイこうよぉ…」
P:111
真っ白になる頭の中で、あなたは姉妹の言葉を聞いた気がした。なんとも愛しく、なんとも淫らな声であろうか。
「ちゅぅ、さあ、全部吸ってあげ…ん、んんっ!う、んんんっ!」
そしてこの射精のなんと気持ちよい事か。びくびくと脈打つそこから、あらゆるものが精液に混ざって吐き出されたようだった。
「ふふ、ぺろっ、ん…ごくっ。一杯、口の中がすごい美味しい精液の匂いで…感じちゃうわ。」
あなたは自分を吸い尽くし、白濁に染まった女性に尽きぬ感謝と幸福を刻みながら、絶頂の余韻で気を失った…
P:112
P:113
P:114
P:115
へその下に集中した力を解き放つと、霊気が裂帛の衝撃波を発した。それは呪縛を弾くに足らず、校舎を揺らし付近のガラスを割り、うかつにあなたに触れていた美佐を壁に吹き飛ばす。きゃあと悲鳴が上がったが、そのまま、再び霊力を練り直し一閃、地面に蠢く催淫蟲に直撃させる。さすがに巫女の力を奪って生まれたといえど胎児に近いそれに大した力はなく、雷撃を受け崩れ落ち、灰が自然へと還るように霧散する。
「あっ、あ…蟲様!!」
その退魔行を見て、晶はみるみる内に青くなり狼狽した。
P:116
その隙を見た優美も、渾身の力を振り絞って晶に抗う。がら空きのボディに肘を入れ込み怯ませた。
「おねえちゃん、ごめん!」
さすがに人体の脆い所を突かれては痛みに呻き硬直する。こうして危機を脱し顔を見合わせた二人だが、状況は明らかに不利だ。会話を交わすまでもなく校舎の出口に向って駆けようとする、が
「伏せなさい!」
突然に急いた言葉が耳に入ると、あなたと優美は反射的に言われた通りにする。ここは敵地なのだから油断禁物…そう、その言葉も。
「えっ、あぶな…あ、あれ?」
P:117
あなたも優美も伏せたまま、またも指一つ動けなくなる。言われた事から何か飛んできたかと危険を感じ、その言葉を抵抗なく受け入れてしまったが、ここの敵が飛ばしてくるのは、警戒していなければ必殺の呪い…言霊しかない。
「…やってくれたわね、二流。」
物静かであれど、その殺意としか言いようのない怒りは背中ごしに伝わる。美佐だ。あの時の衝撃は呪縛を解く力で相殺され、彼女の悪霊にまで至らなかったのだ。
「私の子…催淫蟲様…この怒り、許しがたし…!」
P:118
強烈な殺意と共に、あなたのがら空きのわき腹に一撃。女が憎悪を込めて包丁を刺す時と同じ勢いのつま先は、寝そべってるあなたを壁に叩きつけるまでの威力があった。腹を蹴られ壁に弾かれ、内臓が吐き出そうな衝撃が往復する。
「できれば今すぐ、無惨に殺してあげたいわ…今なら言霊で、自分を1日かけて撲殺か身内に首を絞めさせるくらいは出来るわよ…」
さらりと有り得ないほどの残酷な提案をしながら、美佐は片足を突き出してあなたを壁に押し付ける。その容赦ない顔は、古今の怪談に出てくる鬼女そのものだ。
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どうであれ、彼女にとっては自らが産んだ我が子を消されたのだ。その怒りが煮えるのは理解できる。だからこそ、その復讐が自分に向う事に、あなたは恐れおののき、真っ青になるまで凍て付く。
「本当。蟲様のご意思が無ければ、こんなゴミ男は今すぐにでも処分しますのに。」
そう震える中で、突然に耳元で囁かれ誰かが肩に圧し掛かった、幽霊と間違えたか、堪らずあなたはひぃと情けなく鳴いてしまう。
「でももう、次はありません。」
慌てて振り向くと、優美が打ち倒した晶があなたの側にいたのだ。
P:120
前門も後門も居るのは妖魔。さらには言霊で四肢を奪われては頼みの霊力も使い果たした直後。もはや武器も鎧もない有様に、あなたは耐え切れずガクガクと竦む。そんな無様な姿を晶はサディックスに見つめながら、一気にあなたに喰らいつく。そう、その唇に。
「んっ、んんっ…ちゅぅる…」
訳も分からず、彼女の口から生まれる息と涎を口移しに呑まされると、頭の恐怖と混乱を差し置いて肉体が燃えるように熱く盛る。
「催淫蟲様に感謝しなさい…晶の身体で次の子を産むために、あなたの精力を奪えと仰せなのよ。」
P:121
あなたと晶の交わりを冷めた目で見ながら、美佐はその理由を塞がった口に変わって伝えると、興味を失った態で、一人遠くから地獄を見ていた優美に近づく。
「みっ、みっ、美佐さぁん…」
あの優しい美佐がすっかり変貌してしまった事への怯えか、あるいはあなたを嬲るその姿そのものに怖がったのか、涙声ですがる様に、優美は声を出した。その美佐が歩く間の無言が、いつまでも続く恐怖に感じられる。そして優美のすぐ側に来ると、それを分かってからかうように、急降下で伏せる優美にかぶさった。
P:122
「ひぃぃっ!」
一言も無くその肉弾を摺り寄せてきた美佐に、優美はたまらず絶叫する。
「ふふっ、私が怖いかしら?でも安心しなさい…心を静かにね…」
度の過ぎるいたずらに泣き喚きそうになっていた優美だったが、その美佐の言葉が意識を揺さぶると、いずれ一定の心地よいリズムを刻み、感情をまっさらにする。
「し、静…かに…しま……す…」
言霊の力をより強め、強力な催眠術へ変えるのも、常日頃から親しくしていた優美と美佐の関係ならたやすい事だった。
P:123
「さあ落ち着いたかしら、優美ちゃん。そうしたら、思い出しなさい…あの時の事を。」
優美に優しく声をかけながら、美佐はその身体をマッサージするように撫でる。心も身体もコントロールする繊細な指捌きは、彼女を思うがままに誘導していく。
「…あの…とき……?」
その深度がいよいよ根幹に来た手ごたえと共に、美佐は意識と感覚を優美の芯に一点集中させる。
「そう、蟲がアソコに入った時。忘れられない快感を刻まれ、催淫蟲様に服従した時の事を…!」
P:124
言霊に併せ、美佐の指が優美の淫唇にくちゃりと音を立て柔らかに挿入される。その相乗効果が、肉体と精神を一気に堕とす。
「ひゃぁっ!あ…あああ…!」
下半身から電撃のような刺激が全身を走ると、神経全てに甘い疼きが残り、そして精神に伝播する。
「あぁ…蟲っ、私のアソコ…犯されちゃって…なのに、すっごいエッチになっちゃっう…」
「気持ち良くて幸せな事を…!」
「ああん!そう、良いの!優美、エッチすぎてしあわせっ!」
言葉と愛撫を器用に繰り、美佐は優美を都合の良いように操る。
P:125
「そう、だから受け入れましょうね…ご主人様を、その身体で万全に、いやらしく、媚びながら…」
自らを晒す事を望んだ事に刷り返る。傍目から見ればおかしな事かもしれないが、美佐の使う言霊の強制力と、肉体から来る甘美な感覚が、優美を真っ白に塗り、その上を自在に書き換える。
「うんっ!ああ…欲しい!欲しいよぉ!なんでもするからぁっ!頂戴、蟲っ、今すぐ!」
いつの間にか伏せの言霊は解除され、優美は自由を取り戻していが、すでに先のように逃げるという事は思い付きもしない。
P:126
その場で腰を振り上げ犬のように発情すると、虚ろな瞳で堪えようもなく、蟲に寄生された記憶を甘く想いながら秘所に指を伸ばす。
「ふふ、まだダメよ…もうすぐ、優美ちゃんのためのご主人様が産まれるから、ね。」
しかし美佐が、その腕を掴んで優美の欲情を塞き止める。
「いやぁん!蟲、欲しいよぉっ!もっとエッチしたいよぉっ!」
そんな従姉妹の狂いそうな姿にま呵責も無い所か、美佐は自らの愉悦のためさらりと吹き込む。
「あの退魔師のお兄ちゃんが邪魔してなければ今頃は…ねぇ」
P:127
溶けた脳みそでその言葉を理解すると、優美は自らの使命も忘れ、あなたの方をキッと睨む。
「…おにいちゃんのバカ!気持ちよくなれなかったじゃない!邪魔しないでよっ!ばかばかバカ!」
優美が惚けた頭のに浮かんだ嫌悪の言葉を捻り出して投げつける。だが、すでにあなたの耳には届かない。晶の蟲から与えられた淫魔の妖気と技法で、あなたのあらゆる性感を責めているのだ。もはやその刺激こそがあなたの全てだ。
「うふ、優美からあんな言われて、もっと硬くなっちゃって…」
P:128
そして全身を舐める様にをなぞった指が、いよいよ睾丸を掴むと
「変態。」
一気に握力を高め、冷たく罵る。ぎゅっと絞られた痛覚が、その見下す目線ともども刺さるが、先の恐怖で麻痺してしまった肉体には、その刺激すらも良きものとして受け入れてしまう。
「あなたとセックスするなんて最低だけど…蟲様のご命令ですし、優美にも早くあげたいですから…んっ、ですから、勘違いしないでくださいね?そのソーセージみたいな粗末なモノから、さっさと出してください。」
P:129
あなたは眼中にありません、という事をままくし立てながら、晶は立ち上がって交尾の準備に入る。制服のスカートに手を入れると、そのまま下着を脱ぐ格好で、秘穴を封じる護符を剥がし、妖気交じりの淫気をあふれさせた。そしてあなたの下半身を脱がし、腑抜けた心とは裏腹の、必死に勃起する肉棒に右手を添えた。
「んんっ、こんな風にされてるのに、こんなそそり立ってるなんて、情けない退魔師…ねっ!」
蔑んだ口ぶりだが、下の口は従順に塗れそぼり、あなたを迎え入る体制が整っていた。
P:130
晶は左手でスカートを持ち上げ結合のための位置調整をする。ムダ毛の無く手入れされた未開拓の恥丘。だがそこは既に蟲の棲家だ。それを分かってながらも、あなたは情けなく興奮した肉体に収まりが付かず、肉薄するそこへ、晶と腰を合わせて、浅ましく求める。
「んふふ、退魔師のくせに、悪霊の下僕の身体をねだるなんて、あなたはさいてっ、んっ、あぁ!」
なじりの言葉の最中に、晶の腰が深く落ちた。座位の体勢で繋がり、子宮の奥にまで肉棒が届き、快感の刺激が全身を巡ると、その厳しい口から甘い喘ぎが零れた。
P:131
あなたの肉棒もイヤらしく蠢く肉壷に包まれ、その心地よさに全てを委ねてしまう。
「あんっ、さぁ、腰を振ってっ…私とセックスっ、で、んんっ!私のナカにっ、精子も霊力も全部!射精しちゃいなさいっ!!」
普段の清らかで潔癖なまでの晶からは想像できない乱れようで、激しく腰を振る。まだ小振りの胸が、ブラジャーまでしている制服の上からでも揺れるほどに全身を使い、覗ける太股や付け根は精気に満ちた汗を浮かべては弾く。若々しいエネルギーを性欲に換える晶の顔は、小悪魔のようだ。
P:132
「ふふっ、私のアソコで、チンポをびくんびくん、させてぇ…ああぁん、とっても堅くしてるっ!…ホントっ、すけべで、変態の、最低のっ退魔師ね!あなたっ!」
ぐしゅぐしゅと音を立て、性交に酔いながらも晶はあなたを罵倒するが、あなたは反する事も無く言うがままに受け入れた。晶の攻めるような動きと言葉は、先の恐怖からすれば、ずっと極楽なのだ。
「さぁっ、もう出ちゃうでしょう?ガマンできなくて、私の子宮に、びゅくびゅくって!ああっ、ん!あなたの精気、全部、吐き出しちゃってぇっ!」
P:133
二人の興奮がいよいよ最高潮に高まり、晶は収まりが付かない興奮を言葉にし、あなたはその言葉を受け入れると、操られるように腰を叩きつけ、晶を快楽のステージに乗せて躍らせる。
「あんっ、ああ!私も、イッちゃう!こんな最低なのにっ、突かれてっ、中出しされて汚されっちゃう!ん、きたっ、熱いのっ、凄いのがっ、ああ!ああぁぁん!!」
そして蟲の意のままに、二人は果てた。全精力を打ち出したあなたは晶に全てを吸い尽くされ、晶もまたその熱を受け入れるのに力尽き、あなたにもたれかかった。
P:134
「んんっ…はぁ…出しちゃったね、退魔師のくせにっ、蟲様に奉げる精液…やっぱりあなたって最低…責任、取ってくださいね。」
蟲に寄生されて服従されたといえ、晶は純真な年頃の女の子だ。性欲を操作されセックスに抵抗感が無くとも、特別な感情を残しているのかもしれない。あなたを罵りながらも、果てた後の余韻の中では睦みの甘えているような仕草さえ見せた。だが、使命が訪れれば直ぐに牝の本能を優先する。
「あっ、あん!もう、きちゃったぁ…私のナカでっ、精子が暴れて、蟲様に、食べられっ…!」
P:135
うわ言を口にしながら跳ね上がると、あなたとの接合部分から白と透明の液が撒き散った。そして晶はお腹を抱えて立ち竦むと、苦しみと悦びの入り混じった表情で顔を歪めて叫ぶ。
「あっ、ああっ、受精しちゃっ、蟲様のっ、産まれ、生まれて…あそこからっ、堕ちちゃうぅぅ!」
胎内からの衝撃にビクビクと痙攣する。その波が収まり震えが緩やかになると、妖気がひとつ、彼女の股の間から零れた。新たな催淫蟲…あなたと晶の子だ。
「うふ、ふふふ、ふふふふふふ…私、母牝になっちゃったぁ…」
P:136
どこを見ているのか分からない濁った目でそう呟きながら、晶は崩れながらあなたに身体を預けた。その淫らで愛しい微笑みが、精魂空っぽのあなたの中に居る。そう思うと、彼女こそが、全てを失ったあなたを埋める全てのように感じられた。どこから聞こえる嬌態も耳に入らないほどに。
「さあ優美ちゃん、きたわよ…晶ちゃんの産んだ、催淫蟲様が…」
「あはっ、ああん!やっと、私の、蟲…きちゃう、ああ、寄生されてエッチで一杯になっちゃう、やっとイケちゃう…気持ち良くなれちゃんだぁ!」
P:137
P:138
…数日後、催淫蟲はこの国を制圧する。あなたと彼女たちの間に産まれた沢山の蟲(こ)は、あまりに凶悪な妖気を蓄え、そして蠱惑の魅力を備えていた。その前に正義感溢れる神官も、清廉潔白な巫女も、実力のある退魔師も、全ては破れ果て…男は贄として喰われ女は虜として奪われるのだ。今もまた、どこかで寄生された者の堕ちた悲鳴が上がるだろう。



「…私は…催淫蟲様の下僕です…身体も心も、私の全てをあなた様に奉げます…」
P:139
P:140
ここで優美にヘソを曲げられても困るしそもそも自分は部外者だ。ここは言う通りにしようと、引っ張られる方向に歩みを進め出したその時であった。
「優美ちゃん!無事だった?!」
ふっと紅白の衣装を着た女性が目の前に現れる。それは学園らしからぬ巫女の装束で、全身を清楚に包みながらも肉体のラインを浮かばせ魅力的な肢体を感じさせる。
「あっ、美佐さん!大丈夫?!電話で頼まれた鬼切り丸、もってきたよ!悪霊はどう?!」
優美は大きく手を振りながら、美佐と呼んだ女性へと駆け出した。
P:141
どうやら彼女は、あなたの読んだ物語にでも出てきた三条美佐という女性のようだ。一流の退魔師で色々な人間から信頼される出来た人間だと言う事は、優美のはしゃぎ様やそれをにこやかに見守る表情を見ても分かる。
「悪霊の件、催淫…蟲、の件は…ん、そうね、もう解決よ。」
その一方で問いに答える彼女は、疲労感のある喋り方で、よく見ると顔が赤い。件の退魔行との関与で、霊力を消耗しているからだろうか。その事を気にかけて耳を傾けたが、先に美佐から気をかけられた。
P:142
「そちらの方は…退魔師かしら?見慣れない顔だけど…」
「うん、退魔師のお兄ちゃん!優美と一緒に来てくれたの!!」
優美の無邪気な紹介を受けたが、それが返って重い。この幼い女の子を連れ回す得体の知れない男と取られそうだ、と、警戒の眼差しを向けながら、指を鼻先に置いて値踏みのような仕草を見せる美佐を見て思った。だが機転が利く女性なのだろうか、すぐに表情を穏やかに代えて軽く頭を下げる。
「同業者の方でしたか。優美をここまで保護してくれて、ありがとうございます。」
P:143
そうしてごく自然な柔和な表情に丁寧な口上を添えて頭を上げる。その一連の所作は典雅というに相応しく、彼女の美貌もあり思わずドキリとしてしまうが、巫女という柄を考えればそういう営業スマイルは十八番のはずだ。首を振って邪念を抑えつつ、彼女の話の続きに耳を傾ける。
「この学園を中心に、憑依寄生型の悪霊が確認されまして…詳しくは私やこの優美ちゃんの一族の話になりますので語れませんが、彼女の持つ『鬼切り丸』という霊刀が急ぎ必要になるので、持ってくるようにお願いしたのです。」
P:144
「もう、びっくりしたんだから!美佐さんから私の携帯に、すごく苦しそうなのに、大至急、大事なものだから絶対にお兄ちゃんに渡してって!」
美佐の説明に優美が割り込んできた。話のフォローというよりは、お使いを達した事のアピールといった所だろう。美佐もそれを分かっているのだろうか、従姉妹同士の間柄らしく優美を褒めた。
「ええ、本当に助かったわ。その時の意図とは違うんだけど…ね」
だが、その言葉に何か潜んだ時、彼女の表情から薄皮一枚が、ニヤリという音で剥がれ落ちた。
P:145
そこにあるのは女性の陰に満ちる狡く淫らな、妖艶な笑み。
「だから…おやすみなさい」
その裏に気付いたあなたは瞬時に構えた、はずだったが、ぐにゃりと視界が歪み身体も霊力も何処かに飛んでしまったかのように崩れ落ちる。彼女が言葉にした
「おやすみ」
という意味を、全身が実行しているのだ。言霊…魂に呼び掛ける催眠術は、彼女の得意技だ。
「あ…美佐…さ…ん…」
一方で優美は、それを理解できないまま、美佐の下へ倒れ込んだ。二人が触れ合った瞬間、鬼切り丸が怒り出したように震え出す。
P:146
「そう、これは人間側の切り札…催淫蟲様を討とうとする愚か者に渡す訳にはいかないの。本当に、ありがとう。優美ちゃん。」
自虐に酔う笑みを浮かべながら、美佐は神聖な霊器を不浄な気として扱うように術符で縛り付ける。そうして暴れ馬が落ち着くのを見計らい、手綱を取るように鬼切り丸を取り上げた。
「…うふふ。私がご主人様に歯向かった事も、こうなればお赦しに…いや、ご褒美…あはぁん…」
身体をくねらせながら恍惚の余りに口にした通り、彼女が鬼切り丸を見る目はあまりに歪んでいた。
P:147
あなたはそんな痴態を晒す彼女を、朦朧とする意識から見据えながらも、彼女が悪霊…催淫蟲の手先に堕ちている事に気付けなかった事に慙愧する。
「あはぁ…そうね、私の前に、優美ちゃんにご褒美を上げな…あっ、んん…はぁ、産んでっ、私のアソコから…はああぁん!!」
重い瞼を堪え彼女を見ていたが、彼女は気にも留めず誰かと話すように蕩けた口振りで淫猥に腰を振る。それが彼女の中の蟲と魂から交わる儀式と気付いたのは、べちゃりという粘り気のある音が床に転がった時だ。
P:148
そこには産み立ての羊水に包まれた芋虫が、産声も上げずに蠢いていた。あなたは新たな脅威に反応しようとしたが、そこに目線を向けた時に限界を向かえてしまう。瞼の裏の真っ暗な闇に落ちゆく中で、女の子が夢見心地に喘いでいたのが聴こえた気がした…
P:149
P:150
…あなたが気を取り戻した時に居た場所は、真っ白いカーテンに囲まれた保健室らしき部屋だった。身体を置くベッドも付近を遮断する布も白く染められた空間、だがそこに充満する匂いは薬品のものを掻き消すほどの汗と精液で溢れる甘く酸っぱい欲情の臭気。そして無数の喘ぎと嬌声が木魂する狂乱の宴が、遮断布の一歩外に広がっている。
「目が覚めたかしら?」
その異常な隔離空間に一人の女性が割って入る。扇情的な肉付きを惜しげなく晒している彼女は、先まで敵対していた三条美佐だ。
P:151
それが当然であるように裸体を見せつけながら、彼女は身体を揺らしてあなたが倒れるベッドに腰掛ける。部屋の匂いに馴染んだ彼女が腰掛けた先からシーツが汚れ、その染みの拡大に乗って身体をあなたに向けて押し倒す。汗玉を弾くたわわな胸と熱を帯びてなお深く虚ろな瞳が、眼前を覆う。
「ふふふ…あなたやわたし、この学園に来た退魔師はみんな、敗れ…催淫蟲様に征服されたわ。」
美佐は嬉しそうに笑みを浮かべ、自らが敗れ屈した事を至福であるような語り草で、あなたに近づく。
P:152
強く気高い退魔師だった彼女が、蟲に支配され淫らで卑屈な存在に貶められている…そしてあなたは、そんな彼女を見て思うのだ。
「催淫蟲は素晴らしい」
と。自分が帯びた使命も、彼女と敵対した理由も、まだ覚えている。だが、この淫靡な牝の魅力に比べれればどれだけ無意味か、この燃え滾る肉の疼きに比べればいかに滑稽か。どうやら自分も蟲に改造されたしまったようだが、そんな事は大事でない。それは寄生された美佐も、きっと同じだ。
「ふふ、その顔…そうよ、わたしもあなたも、同じなのよ。」
P:153
あなたの思考から浮いた顔が美佐を惹き付けたのか、もう一歩顔を寄せてあなたの唇を奪う。そのまま侵入してきた舌が絡み合い、唾液と共に熱と粘りが溢れ出す。そこに入り混じる桃色の吐息が、二人の興奮をより高めた。
「んっ…はぁ…万全のようね。」
しかし美佐は、少し堪能すると口を離す。繋がりを惜しむ白濁の糸が伸びて切れると、ぴたんとあなたの胸に落ちた。
「さあ綾音、いらっしゃい…。」
あなたを見据えたまま後ろに手を伸ばすと、そこから幕が開いて一人の少女が入ってきた。
P:154
「あっ、あの、はじめまして…」
控え目な声で挨拶をした女の子は、呼ばれて白い帳に入るやいなや顔を伏せ床を見ながら美佐の下に寄る。底の無い漆黒の髪を揺らしながら、子猫のようにささっとした動きで腰元に隠れた。人見知りよりも、恥ずかしさや照れといった感情だろう。しかしそれは、一糸纏わない姿である事や、白く穢れを感じさせない肌を紅潮させ、自信の無さそうな胸の先が背伸びして膨らんでいる事や股が緩んで太股に雫が伝い…その先が既に催淫蟲に奪われている事、だけではない。
P:155
「あらあら綾音ったら、どうしたの?もう処女じゃないし、あれだけ快楽に溺れてたじゃない?」
「お、お姉ちゃん…エッチな事は大好きなんだけど、そ、その…わたし、普通のセックス、はじめてだから…」
裸を見せても顔を見せたがらないまま、綾音は口ごもる。
「ふふ、ヘンな子。催淫蟲様に憑かれた時に、楽しそうに輪姦されてたじゃない。すっごく充実した表情で話してくれたのに。」
「だっ、だって!あれは蟲様が…それに、あれは使い捨ての男から精液搾ればよかったですから!」
P:156
乙女の恥じらいにしては、あまりに過激で、倫理のネジが飛んだ会話をする姉妹。しかしそれに違和を覚える者はここにはいない。
「もうこの子ったら、もう高志君を堕とした事は忘れたの?」
「えっ、そ、そんな事はないけど、だってアレはもう絞りカスにしましたし!」
いつに抱けるかと心待ちに会話を聞いていたあなたは、漠然とこのまどろっこしい話を聞いていた。それをなだめるように美佐はこちらに目配りをすると、続けてカーテンに目をむけ、その遮蔽の先のシルエットを指した。
P:157
「喜んでいいわ、綾音。この人の次の相手は、その高志君よ」
「えっ?!」
驚きながら美佐の指先にある、3重の重なりが蠢く黒い影を見つめる綾音。そして部屋内に広がる饗宴の騒音からそこに耳を傾ければ、あなたも聴いた声がする。
「はぁぁん!お兄様!おにいさまぁん!こんなに逞しくてっ、熱くて!ずっと妄想したのよりっ、ああ!気持ちいいですぅ!」
「あぁ、お姉ちゃん、すごくエッチ…まるでヘンタイさん、優美、ひゃん!ああっ、お兄ちゃんの指っ!すっごくいいよぉ!」
P:158
隣の閨も楽しみのようだ。ここで高志と呼ばれ、向こうでお兄様と呼ばれる男はひたすらに息を荒げているようだが、どうなっているかはまったく興味が沸かない。ただ、優美と晶の姉妹が、心底まで蟲の意のままになっている事に、あなたは嬉しさを隠せなかった。
「え、そんなっ…どうしよう…」
だが一方で綾音は、何が気まずいのか引き腰に呟いている。
「私、高志さんを堕とすために、蟲様の力で散々に罵って、嬲って、許しを請わせるくらいに犯してミイラにしたはずなのに…蘇っちゃうだなんて…」
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綾音は焦点定まらない瞳を震わせながら、何か自分の世界へと入り込み、外と内の区別も付けずに想像を口にする。
「ああっ、きっと蟲様の力をもって私に仕返ししてくるに違いないわ!今度は力関係が逆転して、私があの時したように…激しく身体中を撫で回して、淫乱やマゾだって見下しながら罵倒して、それなのに私は感じちゃって自分を慰めようとするけど許さないと押さえ付けられて、あの人の妖気入りのチンポを見せ付けられて…私は、胎内に居る蟲様の愛とその太い肉棒を天秤に掛けるけどその匂いに
P:160
「はいはいそこまで」
「ひゃん!」
綾音の暴走した妄想に揺れる腰を美佐が叩くと、甘い夢から可愛い悲鳴を上げた。目を丸くした妹をやれやれと見る姉。それはいつもの三条姉妹の関係であった。ただし、蟲への感情が奪われ、同じにされるまでを空白としての話だ。
「綾音、これから私たち巫女として、強い催淫蟲様をたくさん産み落とすのよ。霊力の強い男とはより愛情を込めて濃密に交わらなくてはいけないのだから、そういう妄想も悪くはないけど…今は、この男の事だけを考えなさい。」
P:161
美佐の言葉に綾音はさらに顔を赤らめた。
「…で、でも、私、あまりこの退魔師さんの事、知らないから…」
人間的な性的の常識はすでに無いのは、裸をなんとも思わない所から間違いないのだが、どうにもセックスには抵抗があるらしい。あなたは首を傾げたが、美佐は仕方なしという顔で話かけてきた。
「ふふ、これは女の子の性よ。大事な人とだけ繋がりたい、愛する人の子が欲しいっていう…まあ催淫蟲様に支配されちゃうと無くなっちゃうと思うけど…まだ堕ちきってないのかしら、綾音?」
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「そ、そんな事ないです!蟲様は私がもっとも愛する存在です!この胎内に宿る掛け替えの無いご主人様です!」
綾音が挑発的な姉の言葉を強く押し返す。だが、それに続く言葉は自信に欠ける弱いものだった。
「だから、その、気持ち良いけど…なんだか、男の人と、気持ちを込めるっていうのが…」
顔に手を当てまさに女々しいと言った口篭りの綾音。今の素振りといい先の美佐の言といい、要は純情な乙女心がまだ残っている、といった所なのだろう。
P:163
その解に辿り着いた時、ドクンと血が昂ぶった。それは蟲の妖気…そう、今の綾音を作り上げたモノが放ったシグナルだ。
「だからそ…きゃあん!」
あなたは綾音のか細い手を握ると、振れる勢いそのままに彼女をベットの中に引きずり込んだ。
「わっ、な、何するんですか!」
無理矢理に横に侍らせられて否定の声を上げる。だがその仕草こそが、この抵抗感こそが、彼女とその主の精力の集め方なのだ。
「ま、まだ心の準備が、そのっ、いいいくらなんでも、むムリヤリだなんて、やめてくださいっ!」
P:164
「こ、この、やめって!言ってるのにっ!このヘンた、んんっ!」
陸の上の魚のようにジタバタと暴れる綾音を、あなたは力任せに上から押さえ込み、さらには顔を被せて黙らせた。そのまま欲望塗れの息と汚れた涎を舌に混ぜて唇ごと綾音に入れ込む。
「じゅっ、ん…ふぅ…ああぁ…」
気を荒げて見開いていた目が、口を犯されるたびにとろりと緩むと、その甘みが身体へ行き渡り敏感な箇所に蓄積される。激しい動きが悶えに変わるのを感じた所で、あなたは綾音から口を離した。
P:165
「あっ、ああ…はぁ…酷い人…」
真っ赤に欲情しながら息を急かせ瞳を潤ませていようと、その抗議は本心だった。だが、彼女の内にはその嫌悪をも上回る快楽が巡っているのは明らかだった。
「いやがってる女の子を押し倒して犯すなんて、最て、んあぁ!」
控え目な胸の谷間の上にぷっくりと立った乳首を摘み、気の緩んだ股座に膝を差し込むと、否定の声を自らの喜声で遮り、じたばたと暴れていたのが神経から来る電撃に身をよがらせるようになる。
「ああっ、はぁ…どうして…?」
P:166
これが、綾音の中に居る蟲が施した彼女への肉体改造なのだろう。少女の精神を残した性開発、それが雄の嗜虐を煽り、そして彼女自身もそのギャップを持ってより深い快楽の果てに飛ばされる。それが濃度の高い霊力を絞り出し、妖気の肉壷に詰め込ませるのだ。
「こんなヒドい事されて、悔しくてイヤなのに、感じちゃうの…蟲様を宿してるのに、こんなレイプでよくなっちゃうなんて…!」
そうと知らずか、綾音はいよいよ感極まって涙声になっている。
P:167
しかしその悲痛も、先の愛だ情だ言った事も、すべては男を誘い出すためのスパイスだ。あなたはか弱き声によってそそり立った肉棒を操りながら、腰を深く落とす。その先にある裂目は、既に待ち切れないとひくひく震えていた。
「いやっ!ヤダっ!こないでっ!私のあそっ、ああっ、あああ!」
正直な下の口は、そのまますんなりとあなたのモノを受け入れた。そのまま深くゆっくりと押し進めると、ぶちゅぶちゅと肉と液の混ざる音が綾音の悲鳴をウソと糾弾するように、帳の中の3人の耳に侵入する。
P:168
「ああんっ!どうしてぇ、私の、おっ、オマンコ!汚されて、ん!のに!はあ、ああ、熱いっ、アソコから燃えちゃうのぉっ!!」
綾音の奥まであなたは入り込み、彼女の想いを溶かしながら腰を振る。全力の否定も、肉の摺れる音がするたびに、快楽で染まった甘い音色へと変わっていく。
「ひぃん!あぁぁ!いいっ、いやんっ、ダメっ、こんな!やめっ、らめぇっ!助けっ、てぇぇ!」
陰部に溜まる熱が一突きごとに肉体を駆け巡り、否定の意思を白く塗り潰す。
P:169
その快感と恐怖から逃げ出したいと、首を振って声を上げた。その先には頼れる姉が居るはずだ。
「あぁ、綾音…そうよね、ムリヤリなんてイヤよね…ふふふふ…」
だが、その美佐は心配といった事を口にしながら心あらずだった。
「はぁ…ん、でも、ねっ…催淫蟲様が望まれているのだからぁ…」
そして虚ろな呟きに、くちゃりと粘液を混ざる音が増えた。それは綾音の目線の先、美佐の綺麗な脚の内側からであった。よく見れば、赤く火照った身体を抱き締め、愛しきモノへ媚びるように肩腰をくねらせている。
P:170
「私もね…出来れば、綾音の辛い姿は見たくなっ、んっ、だけど…ご主人様がぁ、ああん、負け犬の牝退魔師らしく、妹が犯されてる所を見てマンズリしろ、て、私のオマンコで暴れてくれるのよ…はぁ、はぁ…」
美佐が腰掛として座っていたベットに片足を乗せて自然と脚を開くと、その秘芯を食い破ったかのように蟲が蠢いていた。生きるバイブを突き刺した状態の彼女は、下半身の攻めを主に任せて自らの乳房を下から掬い上げ、目の前の陵辱を糧にするように自慰に耽り始めた。
P:171
「ごめんねぇ、綾音っ…私もう、ああっ、マゾの変態巫女になっちゃったからっ、助けるどこか…綾音が犯されて、興奮、しちゃているの…!んっ、んふっ!」
「そ、そんなぁ…はああんっ!」
実妹より快楽を優先する浅ましい姿に打ちひしがれる綾音に、あなたはより肉棒を深くめりこませた。心地良い綾音の抵抗と、自らを被虐で縛る美佐の姿が、より強烈な衝動を駆り立てるのだ。
「やぁんっ!やめっ!ああんっ!突かないで!アソコが、熱くて一杯!でっ、びくびくしてるオチンチンでイっちゃうのぉ!」
P:172
ぐしゅぐしゅと一突きの度に抗いの言葉から降伏の弱音が見え出すと、いつの間にか綾音の下半身を裂くこの身体に、二本の脚が獲物に喰い付いた牙のように強く絡んでいた。精神がいかに拒むよう仕向けられてもと、肉体は蟲の意思に従い精気を全て吸い尽くさんと貪欲に渇望しているのだ。
「ああっ!私のナカっ!ん!熱いのが、膨れてぇ!ひぁぁ!破裂、しそうなのぉっ!んあぁぁっ!おちっ、おチンポでっ!」
そして彼女もいよいよ湧き上がる肉欲で脳を溶かされ、何か逆らおうにも卑語しか出てこなくなる。
P:173
顔も涙まみれのまま舌をだらしなく惚けさせており、もはや崩すものは無いと、あなたはラストスパートと一気に腰を振る。そこにあるペニスも、綾音の柔らかに塗れた膣の吸い付く圧迫にいきり立ち、鈴口からの先走りに乗って綾音の子宮を抉るように突き刺す。
「んんんっ!あぁっ!きちゃう!硬いのっ、爆発しぇ!はあんっ!私っ、くる、くるぅ!射精でっ、イッちゃう!イくっ、いいっ!」
抵抗をやめた綾音の欲情に満ちた叫びが肉体に呼応し、あなたの肉棒を心身とも求めて強く締める。
P:174
その膣からの刺激に、あなたは昂ぶり続けた肉棒から我慢ひとつせず、欲望のままに精を放った。
「ああっ!あああああぁぁ!!」
綾音の嬌声と肉棒の快楽が全身を巡り魂を絡め取り、全てがペニスから綾音の元へと出て行く。
「…はぁあん、びゅくびゅくって…ナカに、出されちゃったぁ…」
自らの内で爆発した絶頂と、その後に来る精液塗れの余韻の中、綾音は陵辱への悔いとその中での快感を惜しんで呟き力尽きた。上半身は呼吸で上下するだけで、積極的な脚も縛めが解けると、接合部が外れて大量の液が零れ落ちた。
P:175
「ふふ…綾音…エッチでキレイで…沢山の霊力を吸えたみたい…」
そんなくたくたの二人に美佐は声を掛ける。綾音の太股を伝う白い液を羨ましく眺めながら、あなたの愛液塗れの肉棒を見て涎を垂らしながら、余裕も無く息を荒げている彼女は、自慰をしながら絶頂を得ていない…いや、許されてないといった所だろうか、と、腰の動きやそこで蠢動する蟲の気配から察する。そんなあなたの目線に美佐はにやりと笑うと、ベットに全身を乗せ、仰向けに倒れる綾音にかぶさり、そして獣のような四つんばいで、あなたに尻を向けた。
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「はぁん…次はっ、私…」
行き場の無い必死な欲情塗れの声を絞り出しながら、美佐は膝立ちする脚の付け根に指を伸ばす。少し前までそこを支配していた肉塊の悪霊は、下ごしらえが済んで棲家へ戻っていたようで、発育の良い大人の身体ながら新鮮な桃色に透明な蜜が溢れる陰唇は、ただあなただけを待ち望んでいた。
「妹を強姦したそのペニスでっ、綾音のレイプをオカズにオナニーするこの卑しい三条美佐をっ、牝巫女らしく躾けてください…!」
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そう哀願しながら振り向いた彼女は、かつて凛々しく聡明だったとは思えない程にか無様でか弱い表情であなたに媚び、身体を卑猥によがらせてその肉棒を強請った。綾音が純情を蹂躙される事に特化したように、美佐もまた、妹の身より快楽を求める変態という最低の立場に興奮しているのだろう。だからこの女は、発情しか頭に無い変態として奴隷らしく調教してやればいいのだろう。
「あぁ…その逞しいチンポで…私のオマンコをかき混ぜて、私をイカせてくださいぃ…」
P:178
綾音との性交で全てを吐き出したと思っていたが、目の前の痴態を見ているうちにムクリと活性化していたらしい。あなたの中の蟲がそうさせたのかもしれないが、そんな事はどうでもよかった。これからこの牝が、どう鳴き叫び、乱れ狂うか、その妄想と下半身の衝動だけが今は全てだ。
「さぁ、ああ!きてくださぃ!そのオチンポ様でっ、私を犯してくださいぃっ!膣に出してアクメしながら妊娠させてくださいぃっ!」
こうしてあなたは誘われるままに、深い闇へと挿入していった…
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…数日後、催淫蟲はこの国を制圧する。あなたと彼女たちの間に産まれた沢山の蟲(こ)は、あまりに凶悪な妖気を蓄え、そして蠱惑の魅力を備えていた。その前に正義感溢れる神官も、清廉潔白な巫女も、実力のある退魔師も、全ては破れ果て…男は贄として喰われ女は虜として奪われるのだ。今もまた、どこかで寄生された者の堕ちた悲鳴が上がるだろう。



「…私は…催淫蟲様の下僕です…身体も心も、私の全てをあなた様に奉げます…」
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きーんこーんかーんこーん…授業の終了がいつものチャイムで告知され、教師も生徒も早々と休み時間に切り替える。がたがたと机や椅子が鳴き、人の喧騒が教室のあちこちを埋め尽くした。
「ふぁ…ねむ…」
そんな中で、いつもはその賑やかな輪の中心にいる優美が、めずらしく自分の席に着いたまま、だるそうに欠伸をしていた。
「眠そうだね優美ちゃん。徹夜?」
そんな光景が珍しかったのか、隣の席の友人が様子を尋ねてきた。
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「あ、佐織ちゃん…うん。ま、そんなトコ。ちょっとお疲れで〜」
元気で朗らかな優美らしからぬ言いよどんだ喋り方だが、佐織はその言葉を信じてか深く追求せず、返って気を使って一言二言交わすだけに留めて席を離れた。
(さすがにコレは言えないなぁ)
それでも不慣れな事をしたという気だるさを感じながら、優美は机に沈むよううつ伏せた。いかに彼女が子供っぽく何でも喋ってしまう性格にしても、出来事が事件だけに、友人には話す事はできない。催淫蟲事件、その被害者となった翌日の話である。
P:202
もちろん優美も詳しい顛末は覚えていない。姉の晶とお手伝いさんの薫と共に悪霊に取り憑かれていたという説明、その時の心身ともに夢を見ていたような感覚、そして大好きなお兄ちゃんの温もり。
(うーん…何があったか覚えてないけど、何か思い出せそうな…お姉ちゃんはどうなんだろう?)
それが性交によるお祓いに繋がる事は幼い彼女の知識では辿り着けないが、もどかしさから記憶の糸を深く辿った時、へその下から悪寒と共に微熱が巡り、優美の身体がぶるっと震えた。
(?…おトイレいってこ。)
P:203
その感覚を尿意と感じた優美は教室から廊下へ出る。すると見計らったかのように、優美の携帯電話がぶるぶると震えた。校則の許しがあれど節度は求められるため、うるさい教師対策としてマナーモードに設定の上で制服のポケットに入れている。主にメールや会話をする友人も同じ学校で同じ拘束を受けているのだから、そんな対策は基本無意味なのだが、今回の着信に限っては成果の上がった話になっただろう。
「んー…あれ、美佐さん?」
手の中で震える携帯には、学外の人物の名が浮かんでいたからだ。
P:204
優美の従姉妹で、悪霊を祓う巫女という職を得ている三条美佐だ。番号の交換はしていても姉同士か妹経由、つまりは晶か綾音を通して話をする事が多いので直接掛かってくるのは意外だ。それに足して平日の昼間と常識的ではないタイミングで携帯を鳴らす事そのものが美佐という人物らしからぬ事であったが、そういう事を気にする優美でもない。どうしたんだろ?と口にしながら手元で振動する携帯を開いて、人気の無い方に足を向けながら耳に当てた。
「もしもーし?優美です」
P:205
「…みちゃ…はぁ、あぁっ…!」
「?もしもし、美佐さん?」
凛とした美佐らしくない熱に緩んだ声に、優美は電波が悪いのかと思いながら携帯をより接着させて聞き返した。
「いい優美ちゃん!聞いて!!」
それが仇となって、耳から耳へに凛々しい高音が突き抜けた。たまらず腕を伸ばして携帯を離し、過ぎた衝撃を抑えようと耳穴に空いていた指を挿した。目も口も食いしばって頭骨の振動が抜けるのを待って、ゆっくりと携帯を耳元へと戻した。
「もぉー、いきなり大声ださないでよぉ…」
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「…音がそっ、あ、ごめんっ。はぁ、私、とにかく、限界っ…」
「えっ、なに?限界…?」
優美は耳鳴りの不愉快さを我慢せずに会話を続けようとしたが、それ以上に美佐の必死で苦しそうな声に心配が募る。
「蟲よ!催淫蟲!昨日の悪霊にやられっ、ああ!私も、危ないの!だから…はぁん!お願いっ…!」
「昨日のって、優美やお姉ちゃんの事?ねえ美佐さん、大丈夫?」
いよいよ狂人じみてきた声に動揺もするが、美佐が真剣そのものである事は伝わった。そのため優美も一語一語を漏らさず集中する。
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「ダメ、でもやらなきゃ!刀、鬼切り丸…たしか蔵っ、神社の裏手にある古い倉庫!?わかる?!」
「うん、分かるよ!かくれんぼでよく使ってたから!」
「ああっ、あそこは危険だから入るなって、ん、あぁ、違う、今はそんな場合じゃない!聞いて!」
優美は一瞬冷や汗を掻いたが、向こうの方から逸らしてくれた事にほっと一息する。確かに今出た来た蔵とは、親からも危険だから寄るなと言われていた場所だ。兄はともかく姉は言い付けを守っていたはず。だからこそ絶対的な隠れ場所だった。
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「そこに納められている刀があるの!鬼切り丸!神条秘伝の霊刀!それを大至急高志くんに渡して!それが切り札だって、ひ、弘志さんからっ、聞いて、んん!」
「えっと、蔵にある鬼切り丸っていう刀?どこにあるの?!」
「あ、はぁぁん、ん…わかんっ、ああ、ないわよ!私の、じゃなぁっ、い、ひぃぃんっ!!」
ついには理性の失った叫びが、再び優美の鼓膜を痛めた。
「美佐さん!平気?!もしもし!もしもぉーし!!」
それでも今度は我慢したが、その甲斐も無く電話の向こうからの音が途切れた。
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「これ、大変だよね!美佐さんも心配だけど…急がないと!」
そう思いを口にして、音信不通になった電話を早々を切る。美佐の身が気にもなるが、そんな情を望んでいるはずがない。おぼろげながらも体感したの事件への危機感と、彼女の潜在的なセンスが、瞬発的に合理的な判断を下した。だが、それに確たる自信を持てるような場は積んでいない。
「でも…学校サボりだよね…?」
ここは学校で今は休み時間。目先の現実を突き破る決断力は無い。ならばと優美は、すぐに頼れる人の下に駆け出した
P:210
「お兄ちゃん!居る?!」
廊下を駆け、ガシャンと騒音が出る勢いで扉を開け、さらなる大声で兄である高志を呼ぶ。その3重騒音に教室の喧騒が静まり集中が集まるが、なんだ神条の兄妹か、と誰かが言うと、すぐに先までの賑やかな休み時間が戻る。
「優美…お・ま・え・なぁ!」
注目を浴びた高志だけは妹の周りを省みない行動に険相を変え、大慌てで詰め寄りながら妹の手を引いて教室から出て行ったが、それも仲の良い事だという話のネタになり、高志のクラスはいつも通りに次の授業を待つだけになった。
P:211
「てめぇ優美な!話があん…」
「お兄ちゃん大変だよ!美佐さんが、悪霊が!鬼切り丸って刀が!えーと、蔵にあるから!」
「なら…なに?!」
廊下に出た二人が同時に喋り出し、話の先制権を優美が取る。会話にはなってなかったが、優美の口にした単語が重過ぎるからだ。
「だから大至急だって!美佐さんが蟲に…と…えっと、何かあって、大至急、鬼切り丸って刀をお兄ちゃんに渡せって、お父さんが切り札だって!」
「ちょ待て、優美…えーと、その話、どこからだ?」
P:212
「携帯だよ!美佐さんから!!」
とにかく大事そうな単語を繋ぎ合わせた優美の話、その意思は高志も読み取れたが、頭の中で整理が付かない。とにかく自分も妹も落ち着けようと話を整理していく。
「…つまり、美佐さんがピンチだから優美に連絡して、蔵にある刀を持って俺に渡せ、って事か。」
「違うよ!大至急だって!美佐さんすごく辛そうで、しかも電話に出なくなっちゃったし!」
話の顛末を整理すると高志の言う通りなのだが、優美にとって最重要なのは早急に美佐の願いを叶えて助け出す事だ。
P:213
「つってももう次の授業だしな…学校抜けるとか、後で晶になんて言われるか。それにもう昼過ぎだぜ?終われば放課後だし。」
「それじゃ遅いかもしれないじゃん!お兄ちゃん!」
優美の頑固なまでに芯の通った瞳を、高志はじっと見つめ返した。子どもの頃からよく見た我侭を突き通そうとする顔だが、誰かの身を案じたそれは、折れるものでなければ悪いものでもない。
「よし…じゃ、俺も行く。」
「…え?ホント?!」
その返答に優美の表情がぱっと緩み、嬉しそうに聞き返した。
P:214
「ま、つっても学校出るまでな。俺は三条神社を見てくる。優美はその鬼切り丸ってのを探しておいてくれ。蔵、大丈夫か?」
「うん、分かった!蔵は何度か入った事あるから平気だよ!」
「おいおい、あそこは入るなって親父から言われてるだろ…」
ふいに高志が顔をしかめる。甘やかし過ぎてはいけないと、ここらで締めようと思ったのだろう。
「えー、お兄ちゃんだって入った事あるでしょ?かくれんぼで、優美見つけたじゃん。」
ああ、と零しながら頭を掻いた。
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「とにかく、急ぐぞ。俺はすぐ学校に戻って教室か部室に居るから、優美も早くな。」
ばつの悪そうな顔をして高志は早々に駆け出した。兄として情け無い所を見せたというのを隠したいのだろうが、それくらいの事で嫌ったりするような妹ではない。
「うん!行こう!!」
引っ張られるように走り出した優美は、事件の危機感を少しの間忘れた表情で、兄の背中を見つめていた。
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…こうして鬼切り丸を手に入れた優美の、それから待ち受ける運命はまた別のページで語られる事になるだろう。兄妹がまた笑顔を揃えるか、二人が堕落に果てるかは、あなた次第。
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「お姉ちゃん!居る?!」
廊下を駆け、ガシャンと騒音が出る勢いで扉を開け、さらなる大声で姉である晶を呼ぶ。その3重騒音に教室の喧騒が静まり集中が集まるが、なんだ神条の姉妹か、と誰かが言うと、すぐに先までの賑やかな休み時間が戻る。
「優美…!もう、何よ!」
注目を浴びた晶だけは妹の周りを省みない行動に険相を変え、大慌てで詰め寄りながら妹の手を引いて教室から出て行ったが、それも仲の良い事だという話のネタになり、晶のクラスはいつも通りに次の授業を待つだけになった。
P:221
「優美!ここは家じゃないのよ!」
「お姉ちゃん大変だよ!美佐さんがっ、悪霊が!鬼切り丸って刀が!えーと、蔵にあるから!」
「静かに…って、美佐さんがどうしたの?」
廊下に出た二人が同時に喋り出し、話の先制権を優美が取る。会話にはなってなかったが、優美の口にした単語が重過ぎるからだ。
「だから大至急だって!美佐さんが蟲に…と…えっと、何かあって、大至急、鬼切り丸って刀をお兄ちゃんに渡せって、お父さんが切り札だって!」
「ちょっと優美。落ち着きなさい!」
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「もう、落ち着いてられないよ!美佐さん苦しそうだったんだよ!」
必死になって晶を急かせる優美だが、彼女にはそれが妹の狼狽にも見えた。だからこそ自分が冷静にならなけなければと、肩に手を置いてなだめる。
「そう、それは分かった。えっと、美佐さんはどこから連絡?」
「携帯だよ!さっき突然!でも繋がらなくなっちゃって!!」
「あ、方法でなくて場所…って、もう連絡付かなさそうね。」
晶も美佐の事は心配だが、それ以上に今すぐにでも駆け出しそうな妹を止める方策を考える。
P:223
人々に危害を加える悪霊の話は体験してしまった恐怖で、話に出てきた蔵についても父親から触れてはいけないと念を押されている不可侵の領域。それらに突っ込もうとする大事な妹が不安で仕方ないのが、姉としての心情なのだ。
「…そうね、それじゃ綾音ちゃんは連絡付くかな?」
そこで思いついた迂回策が、美佐の妹に連絡を取ることであった。
「あ!綾音ちゃんなら美佐さんの事知ってるかな?!」
優美もその名を聞いて、直進よりも確実なルートを発見した気分になり、手早く携帯を取り出した。
P:224
晶の時と同じく直接訪れても良かったが、優美も姉と居た方が落ち着いて話が出来ると思ったのだろう。その場で携帯を取り出すと、綾音の名をディスプレイに映し電話を掛ける。ぷるるると無機質な呼び出し音が1回、2回と時間をゆっくりと刻んで二人の息を緊張で止めた。そして3度、4度と繰り返されると、悪い方向に考えが向き、たまらず優美の目が晶に反れた時
「…もしもし、綾音です。」
「綾音ちゃん!!」
待望の声が聞こえ、二人の表情が明るく晴れる。そのまま優美は電話を抱くように押し付けた。
P:225
「ねえ綾音ちゃん!美佐さん知らない?!大変だって私のトコに電話あったの!!」
「…姉さん…大変……そう…」
しかし口早な優美に対して、電話越しから聞こえた声は落ち着いたものだった。
「ん…綾音ちゃん?なんか電波悪い?聞こえてる?!」
その違和に優美は疑念を持つ事無く、ありがちな携帯の不具合から来るものだと思い聞き返す。
「…ぁ、ええ平気。お姉ちゃんの事なら、知っているわ。さ…悪霊の事でしょう?」
「ホント?!大丈夫なの!!」
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「ふふ、お姉ちゃんの事ですもの、きっと問題ないわ…」
しかし内気な彼女にしてもその喋り様よりも不明瞭な言い草に、優美は躓いた気分になった。
「もう!何が起こってるの?!」
親友である綾音を信じきり大声で問い直す。晶が叱るような目線を向けていたが、そうとも気付かずに話に集中する。
「お姉ちゃんね、悪霊に…その、攻撃を受けたの。昨晩からかなり苦しんでたみたい。心配したけど危険だからって遠ざけられてたし、今朝にはもうお祓いの目処が付いたって言うから、私は普通に登校したわ。」
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「え、でも、さっきの電話だと、すごく危なさそうだったよ?」
「うーん。私は落ち着いてたの見たし、もう大丈夫って言われてからなぁ…」
「けど、私のはさっきだし!」
電話の応答は状況も感情もかみ合わず、進まない話が時間だけを浪費していく。結論の出そうに無い気配を察した晶は休み時間の終了を考えさせるように時計を指し、優実は気持ちの分かってくれない二人に焦りを覚えた。
「このままだと授業始まっちゃうの!美佐さんの事分からないままになんかできないって!」
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「優美ちゃん、私もお姉ちゃんは気がかりだけど…事件が事件だけに、安易に動いちゃダメだと思う。お姉ちゃんから逃げた悪霊が携帯を使って、優美ちゃんを狙ってる可能性だってあるでしょ?」
「でもでも!あんな苦しそうな美佐さんがホンモノだったら…!」
見た綾音と聞いた優美、この二人の平行線は埋まりそうにもない。いよいよ廊下にたむろっていた生徒もほとんどが教室に戻り、これ以上は作戦会議に時間は裂けないだろう。ここで進退の判断をするのは、もっとも客観に当たる晶だ。
P:229
「…優美、ちょっと代わって。」
「え、あ、うん…分かった。綾音ちゃん、お姉ちゃんに代わる。」
応酬の隙間に入ってきた晶が優美をいなして電話を取り上げる。
「もしもし綾音ちゃん?私、晶」
「あ、晶さん。こんにちは。」
「話は優美は聞いたけど、美佐さんは大丈夫なの?何処に居るとか分かる?」
「今は家に居ると思うよ。でも、放課後になったら学校に来るって言ってた。悪霊の件でここを調べるって言ってたから」
「なるほど。今は家で、こっちに来る予定なのね。」
P:230
先と違い、晶と綾音の応答はスムーズに進む。それが納得いかないのか、あるいは説得しきれなかった事を悔やんでいるのか、優美はぶすっと拗ねた顔をしている。
「それじゃ次の授業で放課後だし、その時に確認しましょう。それでいいかしら、優美?」
端的だが要項が伝わるように話していたので、その問いも簡素なものだった。だから目線も合わせず
「…わかったよ、もう。」
抗議の意が篭った諦めの返事をした。お説教のひとつでも必要そうな態度ではあったが、振り返れば、優美の気持ちも分からないではない。
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「それじゃ放課後、よろしくね。私も綾音ちゃんも、そして優美も美佐さんを信頼してるから…ちゃんと授業を受けましょうね。」
「うん、それじゃ放課後…ね」
優美へのフォローを含んだ返事を決定稿として、晶は通話状態のまま携帯を渡す。続けての話は無いが、端末が優美のものである配慮だろう。受け取った当人はどうでもいいと言った憮然とした表情でボタンを切りながら受け取ると、ちょうど始業のチャイムが人の気配が減った廊下に響いた。
「さあホラ、美佐さんを信じて、今は教室に戻りなさい。」
P:232
「ちぇ…分かったよ。」
不安は拭えないが、身近な二人に信頼という言葉を持ち出されては言い返す事はできない。優美もまた、美佐を信頼できる人物だと思っているからだ。その想いを強く振り絞りながらも、しぶしぶと教室に戻り小一時間の授業を耐える事となった。…そして放課後
P:233
「お姉ちゃん!居る?!」
廊下を駆け、ガシャンと騒音が出る勢いで扉を開け、さらなる大声で姉である晶を呼ぶ。その3重騒音も放課後の開放感を満喫しようとする生徒たちは気にしない。
「もう優美!落ち着きなさい!」
それでも一部からは注目された気恥ずかしさに晶は先ほどは引っ込めた小言を口にする。
「だってだって!美佐さんが!」
もちろんそんな空気を読む優美ではないし、それにこの落ち着きの無さは、授業中に我慢していた不安の反動もあるだろう。
P:234
「まぁ…そうね。綾音ちゃんと合流して、早く行きましょう。」
そしてそれは晶も同じ事だった。妹の動揺や綾音の話を聞いて冷静な判断をしなければと、あの時には思ったが、美佐への信頼と優美の真剣を天秤に掛けてみれば、優等生に属する晶とて授業に身が入らなくなっていた。
「うん!えっと、じゃあ綾音ちゃんと連絡を…」
ようやく意気が合ったと揚々として優美は携帯を取り出す。だが、その時晶に疑問が走った。
「…あれ、綾音ちゃんとは会わなかったの?」
P:235
優美と綾音は同じ学年のはずだ。晶の下に来るより先に綾音の方へ行けるはずだが、一人で駆けてきた上にわざわざ電話をするとは?
「それがね、ホームルーム終わったらそっこー教室に行ったけどもう居なくて。他の人に聞いたら既に教室出たっていうから、とりあえずお姉ちゃんのトコに来た。」
そうなんだ、と説明を受けて晶は返事を返す。先に美佐に会いに行ったのだろうと考えるのが自然だが、沸いた疑問を解決するには何か、足りないものを感じた。だがそれを考える間もなく、着信音が入る。
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さっそくマナーモードを切っていた優美の、ポップなメロディだ。
「あ、先にメール来た。綾音ちゃん、いつもタイプ遅いのにぃ〜」
「連絡来たんだ、どう?」
ちゃっちゃとメールを開く作業を覗き込むと、そこにはただ一言
「保健室に来て」
とだけ書いてあった。行き先がはっきりした二人はお互いの顔を見てうなづく。
「それじゃ行きましょう。」
「うん!」
P:237
そんな姉妹のやり取りも放課後の騒がしい空気では目立たない。二人も気にする事なく教室や玄関の前を通り抜け保健室に到着する。
「さってと、綾音ちゃんは…中に居るのかな?」
「そうね…辺りにはいないし。」
駆け足で目的地に着いた優美に、付近を見回し綾音を探しながら進んでいた晶が足を止めてからうなづいた。部活や帰路に向かう廊下に比べて学生が来る理由の無いエリアのためか、途中から綾音はおろか人影1つも見えなかったので、居るとしたら呼び出し先のこの中しかない。
P:238
「しつれーしまーす」
ガラガラと大きな音を立てて、前に立っていた保健室の引き戸を開く。窓もベットもカーテンに遮断された空間は何かを光から隠すような空間だった。そこに独り白衣の女性が、来訪を知っていたかのように入り口に椅子を向けていた
「…いらっしゃい、優美ちゃん」
「…ほえ?」
健康そのものでほとんど面識の無いはずの保険医に下の名前を呼ばれて、優美はぽかんと口を開ける。そのやりとりに気付く間もなく、晶も続いて優美が開いた戸を越して保健室に入った。
P:239
「ふふふ…」
それらを全てお見通しという驕った顔の教師が、老獪な魔術師のようにすっと指を振り上げる。すると二人の後ろからガラリという音が走った。晶が振り向くと、木製の扉が何の気配を無くピシャリと閉じていた。
「え…?」
自動ドア?と頭が無理に解釈しようとしたが、密室が完成した途端に空気が不自然に澱み、その臭いが晶の鼻に突き刺さると、昨日の恐怖が冷たく駆け巡って現実を直視する。
「こ、これ…まさか、悪霊の!」
P:240
「え、お、お姉ちゃん?!」
晶の叫びにはっとなって優美は振り返ると、彼女は悲鳴と同じ怯えた表情で扉に寄りかかり取っ手を両手で掴んでいた。
「くっ、この…開かない!」
だが壁に向かってそうしているように、入り口は微動だにしない。
「無駄ですよ、晶さん。この保健室の結界は完璧ですから。」
そしてその逃避行をあざ笑う声が、ベットが並ぶ方向から聞こえてきた。全てが白い布で遮られている中で二人の真横にある帳が、その聞き覚えのある声を合図に、誰の手も介さずに開いた。
P:241
「あ、綾音ちゃん?!」
そこに居た顔を見て、優美が名を呼んだ。探していた彼女の顔はいたずらっ子のように無邪気な笑みを浮かべ、そしてそれを凶器のように扱える黒い闇に染まった瞳をしていた。これがあの優しく清楚な綾音なのかと認識できなかったからだ。
「え、綾音ちゃ…きゃあ!」
続けて晶が衝立からベットを覗いた時、彼女はその綾音の下に横たわるモノを見て、思わず口に手を当てながら叫んだ。それは白い肌を紅に染め、透いた汗をだが流し黒い長髪を下敷きにする、ひどく火照った女性の身体であった。
P:242
着崩れした巫女装束の上に大の字で四肢を拘束され転がる肉体。すらりと伸びる太股から恥丘を登り、荒い呼吸に揺れる大きな胸のぴんと桃色にそそり立つ乳首の頂点の向こうには、口元を縛られていようとも、見間違えるはずのない顔を、晶はその名を呼んだ。
「み、美佐さん…!!」
何故ここに、どうして裸で、と様々な事が巡ったが、その肉体の艶には合わない腰を中心にした悶え様や、瞼を落とし苦しそうに呻く表情がまず気掛かりだった。しかし気絶して悪夢の中にいるのか、その声は届いた様子もない。
P:243
「美佐さん!どうしてここに…」
優美も続けて呼びかけたが、そこに綾音が卑しい口元を隠さずに割り込んできた。
「どうして、って…そんなの決まっているじゃない、催淫蟲様の罠よ。私がここに居るって行ったら、蟲に寄生されてるのにも関わらず来ちゃうんだもん。ホント、おかしくてしょうがないわ!」
腹を抱えながら自慢げに語る綾音に、二人はぞっとした。羽目を外したとでは言い足りないほどの変貌振りと、自分たちを犯そうと害する存在を様付けして呼び、自ら進んで謀略に協力しているのだ。
P:244
綾音はその戦慄の表情を、勝ち誇ったいやらしい目で見下す。
「もちろんあなたたちも、これで催淫蟲様の手の内…とっくに取り憑かれていた私に教えてくれるなんて、ホントは快楽を忘れられなくて、わざとなんじゃない?」
「そ、そんな事…!ふざけないで!私たちは二度と屈しない!」
「目を覚ましてよ綾音ちゃん!」
そんな圧力に負けまいと二人は言い返したが、綾音はそれを一笑して、美佐の方に身体を傾けた。
「ほらお姉ちゃん、優美ちゃんと晶さんが来たんだからさ…起きなさいよっ!」
P:245
綾音はそういって、美術品のような裸体の先端を荒っぽくつねる。
「ひぐぅっ!あっ…ふぅ…」
一瞬の苦痛に声を上げたが、それに気付く余裕もないといった辛い顔で美佐は目を覚した。その後に出てくる声はトリップ状態の喘ぎ声であったが、開いた瞳は強い意志を宿して綾音を睨んだ。
「ふふ、眠ってる内に乗っ取られなかったみたいね。さすがお姉ちゃん…でももう、霊力も、言霊を使う気力も無いでしょう?」
そんな美佐を気遣うフリでいたぶりながらも、口の拘束を外した。
P:246
ようやく口が自由になった彼女は、澱んだ空気と分かっていながらも肺の酸素を入れ替えると、血の巡りに乗って決意を口にする。
「んんっ、綾音…!私は絶対に諦めない!あなたを助けっ、蟲どもを必ず滅ぼしてみせるっ!!」
そして弱みを見せまいと歯を食いしばる。気を抜けば肉体を底から犯す妖気のままに、情け無い声が漏れてしまうからだ。
「ふふふ、催淫蟲様に寄生していただいたのに何時間もイカず、その巣窟に自ら飛び込んで囚われたというのに…お姉ちゃんってばお馬鹿さ、いや強情なんだね。」
P:247
美佐は豹変した妹の態度にくっと唸る。心の支えに揺らぎが走ったが、悪霊のせいだと分かっているのだから、言い返しもせず体力や精神力を消費しないよう機を待たんと堪えた。相変わらず子宮からの甘い誘いが肉体中を震わすが、魂からこれを求めなければ屈する事はない。だからこそ意識の無い間に無理矢理に支配せず、自らの覚醒した意思で差し出させようとしているのだろう。つまりここから正念場だと、美佐は腹を括る。
(そう、優美ちゃんには伝えたのだから…私が耐え抜けば、このまま逆転勝利できるわ!)
P:248
そう考えながら、天井を見つめて集中する。緩急を付けた蟲の愛撫が霊力を練れないほどに意思を掻き乱すが、美佐には耐えて敵に与しないという明確な役目が屈しないための拠り所となり、色気と強気の混ざる凛とした顔を作った。
「み、美佐さぁん…」
しかしそうと知らない優美が、眼前で欲情しながら衰弱する美佐の身を案じて名を呼んだ。
「…え?」
集中の矢先で第三者に呼ばれて美佐は聞き返す。その聞き覚えのある声に嫌な予感が走り、拘束された身体を無理に捻りながら首を起こした。
P:249
両腕を縛られ肩を使えずに持ち上げた苦しげな美佐の顔と、不安に揺らぐ姉妹の顔が交差する。
「どうし…て…優美ちゃん!あなたがどうしてここに居るの?!」
「えっ、その、綾音ちゃんに聞いたこっちに来るって言うから…」
言い訳の途中だが、美佐の心胆を凍て付かせ強情な表情を愕然とさせるには十分だった。首を縮め猫のように縮こまる優美と、説明の中で出てきた綾音という言葉が、最悪の事態を結論付けたのだ。
「そ、それじゃあ鬼切り丸は…それに、高志君はっ!誰かに知らせているの?!」
P:250
一転して喰い付くような尋問に優美は思わず一歩引いてしまったが、そこに姉が入り込む。
「えっと、兄は携帯を持たないので…そ、それに、すぐに授業になったので、あの、その…」
しかし庇うような晶もまた、この致命的な状況を生んだ一因である。説明しようにもその自覚と、美佐のやり場の無い怒りを収めるような弁明はしようが無い。この有様を説明できるのはただ一人。
「つまりね、お姉ちゃんが必死に伝えた事も、何か期待して耐えているのも…全部ムダって事だよ!」
その綾音が、冷酷に言い放つ。
P:251
妹に突きつけられた絶望が、美佐の血を引かせ顔を蒼白にさせる。
「そん、な…あ…ああっ…!」
そしてひび割れた心の隙間に、臍の下からマグマのような灼熱が襲い掛かる。肉体に宿る蟲が精神の揺れを見逃すはずがなく、隷属の波動を流し込んできたのだ。
「あ、あぁん、はぁあん!あ…熱いっ、私のアソコ…快感っ、ガマンしてたの…漏れちゃったぁ!」
理性という堤防が決壊し、耐えに耐えてきた快楽が美佐のあらゆる感覚に一気に突き刺さった。人の限界を超える性感が甘い電撃となり、びくんびくんと身体を波打ち乳房や尻肉を揺らす。
P:252
その衝撃は美佐の顔から意地と誇りを消し、闇に堕ちた瞳と制御不能の口を元を大きく開かせ涙と涎を無様に零すアクメ顔を晒した。
「ああん!ダメっ、らめっ!あはっ、おかひっ、んああぁぁっ!」
そして嬌声と区別の付かない敗北感の嗚咽が心身共に降伏のサインとなり、絶頂という白濁の閃光が脳ミソを焼き切るように煌く。
「はぁ、んああ!ひぐっ、イク!私っ、私の負けよぉっ!こんな、こんなに気持ち良くなれるのぉ!おほぉっ、ひゃああい!!蟲ぃ、催淫蟲様ぁっ!!従いますぅぅ!心も身体も奉げましゅ!巫女なんて辞めて忠誠を誓ひぃっ!!」
P:253
美佐は己の全否定を全身全霊を込めて叫び、四肢を縛ら押さえ付けられるのが当然のような狂人の惚けた顔でビクビクと痙攣して白目を剥きながら、快感の震源となる腰を突き出し、寄生する蟲から生まれる爆発的な愛撫に歓喜の神楽を奉げるように暴れ出す。
「ひゃぁあん!すごぃいのぉ!!あそこから溶けちゃ、わたひ、私、死んじゃうぅぅ!絶頂してイッちゃあ、ああああああぁぁ!!!」
そして断末魔の喘ぎ声を上げて、果てた。耳をつんざく声が保健室を駆け抜けた後、淫蜜がびしゃびしゃとシーツを濡らし、そこに腰がどすんと落ちた音で静まり帰る。
P:254
「あ…あぁ…ぜぇ…あひゃ……」
過呼吸と絶頂の余韻と区別もつかない声を上げる口は、何よりも幸福そうな笑みを浮かべていた。
「みみ、美佐、さん…?」
その崩れ落ちた姿を見て優美が唖然と名を呼んだ。純真な少女には受け入れられない現実を理解しきれず、ただこの先の悪寒に怯え、すぐ側に立っていた晶に寄りかかる様にその腕に抱き付いた。
「ああ…美佐さん…そんな…」
しかし絶望の淵からの風に吹かれた晶もまた、その先の予感に姉という使命ごと折れて、膝からがくりと腰を抜かす。
P:255
「お姉ちゃ、あぅ!」
「きゃ!」
連鎖的に床に伏した二人はそろって声を上げた。最初は倒れた痛みから来るもの…そして苗床を探すように足元で待ち構えていた催淫蟲を見て、怯えるものを。
「む、蟲っ!やだ!こないでよ!優美の太股に触らないでぇっ!」
「だめっ!下着から入ってくる!いや…あそこに入っちゃう!!」
保健室が再び煩く騒ぐ。だが、邪妖の結界にから漏れる事はなく、誰に伝わる事は無い。ばたばたと人が暴れ跳ねる音も、抵抗の叫び声も、やがて全ての音がひとつへ繋がっていく。
P:256
「ああっ、優美のお股まで来ちゃ…はぁん!ぐしゅってされたら、ぞくぞくってきたの…!!」
「嫌なのっ、また蟲に取り憑かれ…ああっ!熱いっ、あそこから…また気持ちよくなっちゃう…!」
姉妹は揃って喘ぎながら、自分の身体を抱き締め胸を揉み、スカートの中に指を入れる。服が肌蹴け脱げ落ち、卑猥な液が擦れ、全てが欲情を奏でた。そして協奏は、やがてその源への賛美に染まる。
「ああん…すごいぃ…!優美、キモチ良すぎて頭がヘンだよぉ…」
「はぁん…思い出しちゃったぁ…私、支配されてた心地良さを…」
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惚けた顔で夢心地を囁く優美と晶は羞恥も忘れ、割目から精神を犯す催淫蟲の蠢きに陶酔し、濡れそぼる秘部に自慰を重ねる。そう、保健室に居る者全てと等しく。
「ああんっ!優美、おかしくなっちゃう!おまんこの蟲さんにっ、全部食べられちゃうよぉっ!」
「はぁん!はひっ、私、晶はっ、催淫蟲様の奴隷ですっ!何度でも子宮から躾けてくださぃっ!!」
そして心の底からの沸き立つ被虐の感情の叫びと共に、二人は肉欲の高みへと達していった。
「あああんっ!壊れちゃぅ!!」
「はぁん!お願いしますぅ!!」
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優美と晶が、ハーモニーのように嬌声を揃える。こうして姉妹よりも危うく濃厚な絆、蟲という同一の存在へ生まれ変わるのだ。
「優美っ、イくのぉ、あひっ、イッって、とんじゃ、ああ…!」
「晶っ、イキますぅ、ご主人様に、イカせていたらひぃ…!」
「「あああぁぁぁぁぁん!!」

そして完全なシンクロを果たし、二人は堕ちていった…
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…かくして、高志に会うどころか鬼切り丸の存在すらも明らかにならないまま、妹たちは蟲の饗宴の中へ沈んでいった。この後、物語がどのように傾くかは…おそらく語られる事はないであろう。
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闇夜と森林に囲まれた三条神社は当主不在という理由で封印されており、いつもは静寂を結界とする荘厳な空間だった。ただ、今日だけは僅かな明かりが灯り、境内を繋ぐ鳥居と参道を幽かに照らす。
「お姉ちゃん…どうしよう…」
その境目で、やるせない顔で俯く制服姿の少女が右往左往していた。三条綾音、早世した前当主が残した娘のひとりだ。いつもは慎ましい可憐な花の微笑みが似合う美少女だが、今の彼女は暗い表情でその価値を落とし、そんな事も気に留めず社を見つめている。そこに姉が篭っているからだ。
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三条美佐、この神社の後継者である。優れた能力と美しい容貌を持ち合わせ、なお謙虚さを忘れない才媛で、修行中の身ながらも一流の退魔師だ。パートナーである神条弘志の予知に従い、彼の子供達と自らの故郷を悪霊の手から守りに来たのだが、今はその使命を果たすどころではなかった。
「あっ、はぁん、あぁぁぁ…!」
悩ましい苦しげな女性の声が、付近一帯に響く。鎮護の杜に囲まれていなければ、男どころか女も呼び寄せてしまいそうな妖しげな喘ぎだが、ただ一人その声を聞いた綾音は、たまらずに耳を塞く。
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「くぅ…はぁ、はぁっ…!これ、キツイわ……熱いのっ、一晩…あんっ、持つかしら…?」
穢れ無き神殿の中央で、欲情に肌を染めた美佐が呟いた。正座で手を合わせ霊力を集中していたはずが、膣奥から来る衝撃に打ち崩されて上半身から倒れる。棒になった腕で受け身を取ってなんとか支えたが、心地良い痺れで表情が緩く歪み、それを戒めるように食いしばって険しい顔を持ち上げた。
「やられた、からには、油断って事…けど、耐えてみせるっ…!」
誰もいない空間で、決意を口にしないと骨抜きにされそうな快楽と美佐は戦い続ける。
P:303
催淫蟲…封印が解かれ増殖しだしたこの悪霊を浄化するのが彼女の使命だったが、うかつにも逆に憑り付かれてしまい精神支配の攻撃を受けているのだ。女性の大切な器官に寄生したそれは、嬲るよう愛しむように、美佐の膣から媚毒を盛って心身を内から愛撫する。
「はぁぁ…熱くて、疼くの、でも我慢しなきゃあ…あんっ!」
いかに優れた退魔巫女と言えど、美佐は女性として最も華やかに咲き誇る年頃だ。過敏に刺激を欲して、敵対する妖魔に屈する倒錯感さえ受け入れてしまいかねない程に青い。
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それでも強い精神力と自制心で、並みの女の子であれば5分と持たず隷属させる蟲の支配を跳ね除けるが、しかし、その高潔さがあるからこそ、除霊にあたって慢心が無かったにも関わらず隙を作ってしまった理由…蟲の虜となっていた柏原という親子を祓う際に、その妖力で調教された母子の黒光りする美貌への動揺を認める事も自覚する事も出来なかったのだ。
「はぁ…気持ちい…これじゃ、高志君の事も責めな…あぁん!」
ぐっと姿勢を堪えなおしたはずが、かえって性感を過敏に伝達させて、蕩けるような快楽が巡る。
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未知の快感が何度となく魂ごと痺れさせ、より深い底へと誘う。だがその誘惑にも負けず、美佐は体内を清める霊力を練り直した。
「はぁ…そうね、高志君に言った手前、負けられないわねっ…!」
肉体を苛む邪気を、聖なる霊気で癒す。その自転車操業は術者を疲弊させるが、逆に言えば精魂尽き心折れるまでは耐え抜けるのだ。
(綾音…お姉ちゃん、絶対に勝ってみせる!あなたのためにも!)
そう心の中で意思を固め、再び集中を始めた。美佐と綾音、二人の姉妹はお互いの身を強く案じていたのだ。
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(私…なにもできないのかな…)
しかし以心伝心という訳にはいかず、綾音にただただ不安が募る。彼女にとっての事の始まりは、久々に帰ってきたはずの姉が早速にあちこちに駆け出した後だった。我が家でゆっくりしていってもらいたかったが、事情を知っている綾音は本来の性格もあってそれを口にはせず、姉の成り行きに任せていた。そして今日の夕方、携帯が鳴ってようやく連絡を入れてくれたと喜んだが…
「綾音っ、ごめ、んっ、お姉ちゃんっ、悪霊に…はぁん!はぁっ、いい、よく聞いて!!」
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芯の通った頼れる姉の声が淫欲に冒され助けてを求めてきたのだ。尊敬する姉の痴態に自我がぐらりと揺らぐ思いがしたが、それでも助けたい一心で姉の指示通りに、この神社の結界や護符の配置を見直して夜を越せる準備をし、自宅にある情報を頼りに同業者や互助会への連絡を済ませ、美佐を守る万全の準備を敷いた。美佐はその手筈を褒めてくれたが、苦悶の表情から貰ったそれは、何もできない自分の不甲斐なさを悟らせる。
「信じる事はできるけど…信じる事しかできないなんて…」
綾音はより憂鬱にこぼした。
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綾音にも退魔の心得はあるが、助けようにも美佐自ら拒まれた。親族で親友の居る神条家は
(ここと同じ状況にあると知らず)
誰も電話にでない。また、助けを求めた連絡先も本人でない・信用がないといった理由で今駆け付けてくれる人はゼロ。生死を境に化かし合う世界なのだから出前のように来れないのは当然にせよ、結果、美佐は独りだ。苦悶の悲鳴が響くたびにその事が圧し掛かり綾音の悲しみが瞳から溢れ出す。その瞬間、首を振って涙を払った。
(お姉ちゃんはもっと大変なんだ…何もできないからって…!)
P:309
制服のスカートの汚れも気に留めずに荒れた土の上に膝を曲げると、綾音もまた苦行に身を置くように、深く念じて手を合わせる。
「お父様…お母様…そして三条のご先祖様。どうかお姉ちゃんをお守りください……」
そして祈りを口にすると、穢れを除ける詞を唱えだした。その言葉に力があると願い、あるいは、苦しみを共有できない未熟者の罪滅ぼしのために、綾音に出来る事は目に見えないものを信じる事だ。それが確かな形を持たなくとも、お互いを想う気持ちには意味があると二人はそう信じているのだ。
P:310
「…はぅん!きっ、きた…っ!」
しかし境内の戦いは、再び綾音の祈祷の届かない世界へと突入する。そこは美佐の内、強く閉じた瞼の裏側にだけ見える魂と悪霊の、理性と肉欲のせめぎ合いだ。
「はぁっ、はあ!ああっ、はっ、祓い、いいっ、たまえっ…!」
歯軋りの聞こえそうなほどの形相ながら、額に浮かぶ汗は脂の乗った色香の臭いを放ちながら朱色の頬まで伝った。美佐の霊力が再び充填されようとしている事を感じた蟲が、その気を霧散させようと激しく暴れ出したのだ。湧き出る清浄な気を欲情の霧が覆う。
P:311
しかしそれを跳ね返し、美佐の身体に蒼白の膜が浮かび上がった。
「清めっ、た…まっ…ぁああ!」
そうはさせまいと蟲は膣腔を高速往復して摩擦熱を生み出し、肉欲ごと美佐の精神を燃焼させる。
「だっ、だめぇ!ナカで、激しくっ、暴れてぅっ…はぁぁん!」
無意識に卑猥な攻めを抑えようと下半身に集中が行き、それが却って快感を味わう事になる。袴の中からぐしゅっという音が濡れ落ちると、美佐の腰がそれに滑るように落ちて正座の形を崩す。
「…ぐぅっ!はぁ…はぁ…!くしょうっ…!ふざけないで…!」
P:312
崩れた姿勢を再び床を激しく叩いて持ち堪えると、その勢いのままに悪態を付いた。彼女の気性は日頃の礼儀正しい姿に反して、本質的に荒々しい。そこの自覚はあり、それが今の立場には不向きであると知るから、良く自重し、良き表面を徹底しているのだが、ここでその本性が出たのは、彼女の限界を知らせるものだろう。
「はぁっ…情けない!この虫っころ…一匹!祓えないなんて…!」
掻き消された霊力と共に吹き出る蒸気のような汗や涎を気にも止めず、せっかくの美貌を激情で濁らせて力不足と胎内の相手を憎む。
P:313
その凄みに怯む催淫蟲ではない…が、彼女の知らぬ所であるが、その蟲もまた無事では済まず、妖力の限界を迎えていた。退魔師を支配できれば膨大な力になるが、そもそも浄化能力の高い霊能力者の中に居座るのは、渦巻く火中に飛び込むようなものだ。だからこそ欲望を操って自らを受け入れるように洗脳したり、眷属や同族へと肉体改造を行うのだが、どの手を打つにせよ、抵抗の術を知る巫女が相手では難しい。本能的に生きる蟲がそこまで考えている訳ではないが、美佐のしぶとさに進退の瀬戸際にいると直感していた。
P:314
「負けて…たまるかっ…!!」
美佐は丁寧に着込んだ巫女装束の崩れも直さず、いやむしろ直そうとした時に腫れた乳首に触ってしまったり、ふるふる震える尻を擦ってしまった時に登ってくるであろう快感への悪寒を察して、のぼせた肉体を覗かせたまま再び姿勢を直す。そして清浄な気の循環を感じた催淫蟲も、彼女の底知れない霊力への畏怖と、服従させた時の興奮を感じながら、女を堕とす妖気を充満させて蠢動しだした…
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「祓いっ…たまっ…まっ…あぁ!清…きっ、きちゃ…!あぁっ!」
美佐の身体に走り続ける電撃が急所を攻め、頭の中を弾けさせる。その波紋に精神がかき乱されると集中し直した霊力は再び散乱し、疲弊した身体がまた傾く。
「はぁっ!はぁ…くぅぅ…悔しいっ!私っ、感じちゃってる…!ああっ、苦しいのに、今すぐにでもっ、溺れたいくらい…!!」
なんとかまた耐えるも、かろうじて自我を保つ瞳は悦びとも悲しみとも区別の付かない涙が浮かぶ。だがそれだけ、まだ彼女には抵抗の意思が残っているという事だ。
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「は、祓い、たまえっ…清め、たまっ、えぃ…!もうすことっ…」
美佐の中を縦横する甘い刺激が、肝を据えた祈念によって敏感な所からひとつひとつ守られていく。湧き上がる霊力は彼女の肉体を覆いだし、いよいよ悪霊を潰すまでに十分な量に達しようとした。
「きこしっ…めっ…っぁああ!!ひぎっ!!いいッ!あああ!!」
しかし術言が完成しようとした瞬間、美佐は激しく悶絶した。悪質な快楽に苦しむものでなく、真っ当な苦痛から来る声、それは被虐に目覚めさせる蟲の影響をも越えた、もっと直接的な痛みだった。
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集中していた霊力も再び散るが、それどころではない衝撃に目を開いて倒れ、びくびくと痙攣する。
「痛、苦しっ…あああっ!出る!あそこっ、あぎっ、ひぐぅっ!」
その震源は蟲の居た箇所で、そこを保護する美佐の下着は、ぐっしょり濡れたまま歪な凹凸が膨らんでいた。そう、蟲が彼女から無理矢理出ようとしているのだ。この異物が這い出ようとする感覚は、おそらく出産という行為でしか知りえない。しかもそこに愛はなく、逃げるように産まれるのだから、痛みを抑える脳内分泌の量も少ない。だがしかし、この難産は彼女の勝利のための産声だ。
P:322
「あぁっ、ひああああぁっ!!」
抑えきれない絶叫が響き、その余波の中でぼとりという音が袴の中にすると、やがて息も絶え絶えの美佐を横目に、その幕から一匹の蟲が這い出てきた。宿り先の抵抗に耐え切れず、自らの危険を感知して寄生先から逃げ出したのだ。
「はぁっ…はぁっ…!くぅっ、祓いっ、そこねた…?!」
朦朧とした意識ながらもその気配を感じた美佐が、呼吸を整えながら反応した。自らの精神力で打ち克った事とは思わず、敵が態勢を整えるために一旦引いたものだと考え、思考を次の戦術に切り替える。
P:323
「悪りょ、うっ…たい…さん!」
残滓のような霊力を指に集め、遠ざかる蟲へと叩きつける。白い光りが床の上で爆発し焦げた煙が昇るが、その発火地点はしぶとく動いて美佐から離れていく。
「ぐっ、逃がすっ…あ、あっ!」
それを追撃しようと立ち上がろうとしたものの、腰の重さに潰れてしまいその場で倒れる。この状況で逆襲されてはひとたまりもない、そう考えていた美佐は、相手が瀕死であるという事は知らずに必死に己を鼓舞した。
「はぁ、はあ…ここで、倒さな、きゃ…みんなっ、守れない…!」
P:324
霊力の集中を欠かさずに、美佐もまた腕を使って移動する。
「はぁっ、ああ…はうっ!」
だが、彼女自身も蟲になったような醜い這いずり方で余熱の醒めない肉体が床と摺れ、特に腫れたように過敏な胸のしこりが痛覚と性感を同時に呼び込み美佐の理性を再び砕き、歩みを遅らせる。そしてその遅れが、命運を分けた。
「お姉ちゃん!どうしたの?!」
封鎖された境内を、ガラッと勢いの良い音が切り裂いたのだ。
「あや…ね…!」
それに続いた狼狽の一声に、美佐は思わずその名を呼ぶ。
P:325
「その、すごい声が聞こえて…えと、たまらず!いくらダメって言われても放っておけなくて!」
勢いの割りにはおろおろとした妹は、動揺と心配で一杯といった感じであまりに無警戒だった。
「綾音!逃げなさい!!」
美佐は間髪入れず叫んだ。未だ彼女と蟲は交戦中なのだ。しかもよりによって相手が立て直しを図る瞬間、考える間もなく、最悪の事態が頭の中に沸いていたのだ。
「えっ、お姉ちゃん…でも…!」
「いいから!逃げて!早く!!」
慌てる妹をどうにかしようと、疲労激しい身を省みず大声を上げた。
P:326
だが、そんな苦しそうな姉を見捨てられるほど綾音は冷静でなく、そして姉妹の絆は頑強すぎた。
「無理だよ、お姉ちゃんそんな苦しそうな…にっ、きゃあ!!」
姉の制止を聞かずに一歩踏み込んだ綾音が、突然悲鳴を上げた。二人の事など知りもしない蟲が、新たな獲物を飛び付いたのだ。驚きの声の間に、するりと太股を上ると綾音の股間に入り込む。
「なにこっ…れ…?あ…あぁ…」
困惑に顰めていた眉が垂れ下がり、緊迫した表情が惚けたものに変わると、綾音はそのまま床にぺたんと腰を付いた。
P:327
「ねえ、お姉ちゃん…わたし、ヘンだよ…あそこ、お股が熱い…」
性知識も霊的経験も薄い綾音が、微熱を浮かべたまま、美佐に助けを求めるか弱い声を出した。股間から走る強すぎる未知の快感に頭も身体も追いつかず、その濁流に翻弄され、姉を見ていたはずの目も焦点が定まっていなかった。
「綾音!気をしっかりもって!!誘惑に乗ってはダメよ!!」
「ゆう…わく…?」
美佐の懸命な大声に脳が揺れると、綾音は緩慢な動きで中毒者のようにぶるぶると震える手をじっと見つめた。
P:328
「綾音!あやねぇぇっ!!」
精魂尽きかける身にも関わらず、美佐は喉が枯れるまで叫んだ。敵を見過ごし、妹を守れない、そんな何もできない己の不甲斐なさを呪うような悲痛な絶叫だった。
「おねえ…ちゃん…?」
それは綾音が独りで待った時と同じ想いだった。姉妹の想いが響き合うと、虚ろな瞳を蘇らす。
「…はっ?!」
そして綾音の頭が回転すると、この得体の知れない疼きと姉がおかしくなった理由が噛み合い、呆然としていた表情が急に硬くなる。
「…これっ…いけないものっ…!」
P:329
綾音は目を閉じて首をぶんぶんと振って意識を覚醒させる。
「はぁ、はぁ…ねえ、お姉ちゃん、ど、どうすれば…」
毒が回って肌が朱に染まり弱気な表情を見せるも、目に澱みはなく、姉に助言を求めた。
「冷静になって!霊力の扱い方は知っているはず!まずは呼吸を整え妖気を排して、それから集中したものをヘソの下にぶつけてやりなさい!」
どちらかと言えば美佐の方がうろたえた態を見せたが、綾音はその言葉に従い集中を始める。
「う、うん…やってみっ…ひゃん!」
P:330
その流れを感知した蟲が、防衛本能から妖気を吐き出した。綾音の胎内に毒が回りそこから神経を冒すと、股の違和感が服の生地に触れる全てに広がり、全身のむず痒さに身悶えする。
「くっ、…ううん!ダメっ…!」
しかし綾音は歯を食いしばると、痒い所を掻いてはいけない、そう教わった子供が頑なに言いつけを守るような真面目な頑固さで疼きを抑える。並の小娘なら数分で屈服し、美佐のような退魔師でも不意を突かれれば絶望的な蟲の支配に抗ったのだ。そして蟲の愛撫に晒されてなお、美佐に微笑んだ。
P:331
「お、お姉ちゃん…綾音、綾音もっ、絶対に負けないから…!」
そこには邪気も欲情もなく、ただ、ボロボロな我が身も省みずに、全精力を妹のために使おうとしていた姉への感謝で満ちていた
「あや…ね…!」
その優しい気持ちに、美佐の不安や心配が洗われ、目が潤む。美しき姉妹の以心伝心。だがまだそこに浸るには早い。綾音が勢いよく手を合わせると、パンッ!と締りの良い音がそう言うように境内に響いた。
「お父様、お母様、そして三条のご先祖様…私たちを、見守ってください…!」
P:332
そして霊力を集中すると、綾音自らの情愛と正義の力が沸き立ち、その身を守る気が全身を包む。一気に満ちた膜は彼女のあらゆる穴を防護し、蟲の逃げ道をも塞ぐと、己が結界の中に封じられたと悟った蟲は、生存本能のままに全ての陰気を吐き出した。
「あっ…くっ!」
しかし、今の綾音には通じない。美佐に寄生した時が女性の肉壺に応じる千変万化の妖術を宿した張子であれば、綾音の中へ逃げ込んだ今は、美佐の浄化攻撃を受けた事もあり、電池の切れ掛かった玩具のローター程度の存在感しかない。
P:333
「あくりょう…退散っ!」
我慢を重ねた顔と共に気を吐き、綾音は自らの丹田に霊気の篭った掌をぶつけた。どこかで上がった小さな悲鳴は吐き出された正邪の入り混じる空気に掻き消され、そして綾音を包んでいた霊力も役目を自然に還るように消失する。
「…やっ…たよ、お姉…ちゃ…」
しかし喜びを表す余裕もないまま、緊張の糸が切れて美佐と同じ床の上に伏した。年端も行かない箱入り娘のような彼女に、いきなりの実戦は負荷が過ぎたのだ。
「綾音…あやねっ!」
その様に再び美佐が慌てる。
P:334
最後に湧き出た力を振り絞って立ち上がると、よろよろと揺れながら妹の下にたどり着いて心配そうに横になった顔を覗く。そこには実に安心しきった、勝ちに驕らず守るべき役目を達したという充実感に満ちる安らかな寝顔が、姉の気もしらずに転がっていた。
「ふぅ…もう、綾音ったら…」
その表情に癒されたのか、蟲が去り神社の浄化作用が強まったのか、美佐に盛られた陰気も解毒されて笑顔を見せる余裕が戻ってきた。そして体力回復のため、眠る事も許されるくらいに気が緩む。
「ふふ…おやすみ…」
P:335
おやすみの挨拶を妹にすると、美佐もそのままばったりと倒れた。川の字ならず二の字に眠る姉妹は、彼女たちの親が、その親が築き残した静謐の結界に守られ、誰にも穢される事の無い夢に迎えられた…
P:336
…そして日が昇り、木造の合間から差し込む陽の明かりで二人は目を覚ました。
「…おはよう、綾音。」
「おはよう、お姉ちゃん。」
昨日の戦いがウソのように、お互いを疑う余地もない挨拶を交わす。妹が思う以上に出来る子で、姉が自分を全力で想ってくれた事で、姉妹の絆は悪霊などには穢せないものだと実感したのだ。
「さあて、これからが本番!」
目覚めに一発、頬を叩いた美佐が言葉にも気合を入れる。確かに自らに付いた蟲を退けたといえ、まだ本体は健在なのだ。
P:337
「…うん。でも、お姉ちゃんなら、すぐに解決できるよね?」
しかし綾音の心に不安は一切なかった。頼れる姉なら正義のヒーローのようにあっと言う間に解決。自らの力で勝利を掴んだ後だからこそ、確かな気持ちだった。
「まっかせなさい!!」
そして美佐も、その感情にらしからぬ大げさな素振りで応える。それが妹へ示せるせめてもの感謝だった。
「さぁ、行くわよ!綾音!」
美佐が伸ばした手を、綾音はしっかり握る。
「…うん!」
P:338
かくして美佐は女性らしく退魔師らしく身嗜みを整え、蟲の棲家となっていた星陵学園に出陣すると、相手の手の内を割った後という事もあり、憑依された生徒もろとも吹っ飛ばすような大暴れで完膚なきまでに催淫蟲を絶滅させた。その雄姿たるや親族の妹は一緒に大はしゃぎ、姉は後であちこちに平謝り、兄は他人のフリをするほど。当然そのあと自らシメてやったが、そんな武勇伝が後に、数十個存在するという学園七不思議のひとつ
「巫女無双」
という恥ずかしい名前で母校に語り継がれる事になるとは思いもよらず。
P:339
だがそれすらも、やがて伝説の退魔師となる三条美佐の快進撃を彩るひとつのエピソードに過ぎなかったのは、その時誰しもが思わなかった事。時にはこんな未来が切り開かれてもいいのでは?
P:340
P:340
「はぁっ、次、やられたらっ…くぅっ、防護の術をっ…」
激しい疲労で遠のきつつある意識を必死に呼び起こして、身を守る結界を練り始めた。敵の動きに今すぐ襲ってくる様子が無いからには、勝利を焦るより敗因を排した方が確実だという美佐の判断だ。それに、ここは清浄な気が満ちる神域。妖魔が長く存在できる場所ではなく、そして脱出も不可能だ。だからあの程度の蟲であれば、人の胎内に保護してもらわなければ間もなく消滅するだろう。
(もうひと頑張りっ…はぁ…あとは、浄化を見届けるだけ…っ!)
P:341
霊力が庇護の膜となると精神的なリラックス効果が現れ、状況を見渡して勝算を計る程度の余裕が生まれる。一方で体力の回復には追いつかず、腕一本を動かす気力も無いが、蟲の淫気が微熱の余韻を残して肉を苛む身にはかえってそれで良かったのかもしれない。
「動けたら…触っちゃうかもね」
そんな冗談を口にしたが、命運は些細なずれから回り出す。
「お姉ちゃん!どうしたの?!」
封鎖された境内を、ガラッと勢いの良い音が切り裂いたのだ。
「あや…ね…!」
それに続いた狼狽の一声に、美佐は思わずその名を呼ぶ。
P:342
「その、すごい声が聞こえて…えと、たまらず!いくらダメって言われても放っておけなくて!」
勢いの割りにはおろおろとした妹は、動揺と心配で一杯といった感じであまりに無警戒だった。
「綾音!逃げなさい!!」
美佐は間髪入れず叫んだ。いくら自分の身が安全だからと言え、ここは未だに敵の潜む危険地域なのだ。考える間もなく、最悪の事態が頭の中に沸きだした。
「えっ、お姉ちゃん…でも…!」
「いいから!逃げて!早く!!」
慌てる妹をどうにかしようと、疲労激しい身を省みず大声を上げた。
P:343
だが、そんな苦しそうな姉を見捨てられるほど綾音は冷静でなく、そして姉妹の絆は頑強すぎた。
「無理だよ、お姉ちゃんそんな苦しそうな…にっ、きゃあ!!」
姉の制止を聞かずに一歩踏み込んだ綾音が、突然悲鳴を上げた。二人の事など知りもしない蟲が、新たな獲物を飛び付いたのだ。驚きの声の間に、するりと太股を上ると綾音の股間に入り込む。
「なにこっ…れ…?あ…あぁ…」
困惑に顰めていた眉が垂れ下がり、緊迫した表情が惚けたものに変わると、綾音はそのまま床にぺたんと腰を付いた。
P:344
「ねえ、お姉ちゃん…わたし、ヘンだよ…あそこ、お股が熱い…」
性知識も霊的経験も薄い綾音が、微熱を浮かべたまま、美佐に助けを求めるか弱い声を出した。股間から走る強すぎる未知の快感に頭も身体も追いつかず、その濁流に翻弄され、姉を見ていたはずの目も焦点が定まっていなかった。
「綾音!気をしっかりもって!!誘惑に乗ってはダメよ!!」
「ゆう…わく…?」
美佐の懸命な大声に脳が揺れると、綾音は緩慢な動きで中毒者のようにぶるぶると震える手をじっと見つめた。
P:345
「綾音!あやねぇぇっ!!」
精魂尽きかける身にも関わらず、喉が枯れるまで叫んだ。しかし、美佐自身が自分を守るための霊力を繰っていたように、綾音もその疼きから身を守るように、震えながら自分の身体を抱き締める。
「ひゃあ!あう…ああぁっ…!」
だがそれこそが、催淫蟲の誘惑だった。まだ未成熟な乳房は淫気が集まり、ブラジャーが擦れるだけでも感じてしまう程に赤く熟れているのだ。そこを両腕で圧迫すると甘美な刺激が身体中を巡り、蕩けた果汁となって膣内の蟲に綾音の力を分け与えてしまう。
P:346
「はぁん…ねぇっ、お姉ちゃん…私、おっぱいが気持ちいいの…それに、あそこもすごく熱いよ…」
もちろんそんな事は寄生された当人は気付かず、ただ性感の芽生えに酔いしれ、そして深く貪ろうと手を下半身へ伸ばす。
「ダメよ綾音っ!耐えて!!」
美佐はなお呼び止めたが、綾音の溶け堕ちた理性には届かない。
「ああんっ!熱いのっ!くちゅってなって、気持ちいい…!」
綾音の手が制服のスカートの中に潜り込みパンツの上から秘部に触れると、指と襞が愛液で滑る音が神聖な境内を穢した。
P:347
「お願いっ、綾音っ、耐えて…」
美佐の諌める声が、泣き声のように小さく掠れていく。妹の魂が狂わされていく事が、自分への陵辱のように感じているのだ。
「…そうだ、水よっ。裏手に井戸があるから浴びてらっしゃい!それで少しは落ち着くはずよ!」
それでも出来る事を探し出し、閃いた事を即座に口にする。夢中に股間を弄る綾音だったが、少し間を置いてふらふらと立ち上がる。
「…はい」
しかし虚ろな返事の通り、そこに意思が宿っていないような、糸の切れた操り人形の動きだった。
P:348
未知の快楽をもたらす自慰行為に溺れ、すでに綾音の意識は沈みきっている。だから無意識に美佐の指示通り井戸へと向かったが、それが何故か分からない、考えるよりも感じていたい…今の綾音は、そんな痴れた顔をぶら下げながら、下着に突っ込んだ手を抜きもせずに境内から出ていった。
(綾音っ…綾音ぇっ…!…父様、母様、御先祖様!どうか、綾音を守り下さい!!)
卑猥な音が外に出ていき、神社の中で一人になった美佐は潰されるように祈った。もはやそれしかできない、そんな諦めの境地だった。
P:349
やがて、ばしゃばしゃと水を被る音が聞こえてきた。清めの力を持つ冷水で少しでも正気を取り戻してくれるよう願ったが、しかし残酷にも水音は嬌声に代わり出す。
「…ああぁん!ダメなの、感じる…冷たいの、溶けちゃうくらい燃えてる…私の、エッチなとこ…」
綾音のそれは仔猫が鳴いたようにか弱く、あるいは嗜虐を煽るものだが、美佐には呪殺の禁言のように鞭打つものだ。耳を塞いで逃げたくとも、呪いの一環のように腕をぴくりとも動かせなかった。
「はぁん!すごいのっ、綾音の中で動いてっ、あひっ、ひゃあん!」
P:350
そして井戸に桶が落ちる気配も水に濡れた様子もなくなり、三条神社にあるものは、喘ぎ声だけとなる。そうとしか思えないほど、美佐の心は深淵の底にあった。
「ああんっ!いいよぉっ!もっと!!気持ちいのっ!綾音っ、なんでもするからぁっ…私のオマンコで暴れてぇっ!!」
抵抗の力もなく、祈願も空しく、綾音が奪われていく。出来る事はもう、涙を流す事だけだった。
「…あや…ね……」
その絶望の中、最後の光が断たれようとする現実から逃げるように、美佐は神社の中で気を失った。
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しかし綾音はもう、催淫蟲の事しか頭に無かった。下着に入れた手は離れる事なく割れ目をいじり続け、そして最後の一挿入として指に力が入り淫穴を掻き分ける。
「あああんっ!イくっ、いっちゃう!!はひっ、蟲っ、オマンコの蟲様のため!!私、い、イきっ、あああああぁぁぁぁぁっっ!!」
綾音の絶叫が神聖な空間を切り裂くと、びくびくと痙攣しながらのけぞり、全ての先端がぴんと張り詰める。こうして堕落の儀式は執り行なわれ、綾音は快楽と至福に満ちた顔と、雄も牝も欲情させる、蟲のような淫靡な存在へと生まれ変わっていった…
P:352
P:353
「おねえちゃん」
「……あや…ね…?はっ?!」
いつに眠りに落ちたかも気付かなかった美佐は、綾音の声で目を覚ました。しかし、聞き慣れたはずのその声の主は、まるで見ず知らずの浮浪者を見下すような冷たい表情を浮かべ、妹の安否を案じる間も、退魔の途中であった事を思い出させる間も与えず、強く握り締めた薙刀を一気に突き立てた。
「ひぃっ!!」
床を抉る斬撃と酷く憔悴した自分の顔を写す刃に動転の声が出る。そんな風に這い蹲り、そして自分を見上げた姉を、綾音は純粋で残酷な子供らしい笑みを浮かべた。
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「私、汚されちゃった。お姉ちゃんがくたばってる間に、沢山の男どもにレイプされちゃったわ…」
そんな無垢の顔をして、おぞましい陵辱の告白を始める。最悪の目覚めに心あらずの喋り方に、美佐は現実を理解できず唖然としていたが、いやらしく誘うように綾音がスカートを捲り上げた瞬間、全てを認識して真っ青になる。
「あ…ああ…あああぁぁっ!」
そして、悪夢に耐え切れず叫ぶ。そこにあるべき純白の布が無く、代わりに、赤の混じる白濁とした精液が、妖気と共に零れ落ちているからだ。
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そして美佐の崩れ落ちた顔に満足しながら、綾音は悪戯好きな子供のように追い討ちを掛ける。
「ふふふ、分かってる?全部、お姉ちゃんのせいだよ…んっ」
片手でスカートを押さえ、片手を秘部に当てると、二つの指で割れ目を開いた。緩んだ陰唇から溢れ出す精液も、容赦なく姉を責める言葉も、かつての綾音からは想像も出来ない有様だった。
「あや…ねぇ……っ!!」
美佐は頭を振って否定し、認めまいと頭を床に叩きつけた。ガツンと額に響いてコブができたかと思ったが、その痛みが冷静さを引き戻す。
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なにより、綾音のかけ離れ過ぎる豹変が美佐に逃避の余地を残し、否定の余力を生んでいた。
「綾音っ…あなたを、絶対に取り戻すから!そこの蟲、かならず祓うから…!!」
強い意志の表示も、相手の顔を見なければ意味がないかもしれないが、憑依され操られている相手であるからには、まともに向き合った所で相手の術中だ。美佐は悔しさを堪えながら、下を向いて微動だにせず呟いていた。
「…ふん、取り戻す、ねぇ…」
それを興味なさそうに聞いていた綾音は、痴態を改めて姉を見下す。
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このまま姉に負け犬の烙印を一生背負わせてやりたい、そんな背徳の欲望がもたげるが、その心の動きさえも寄生した蟲が制御する。
「ひゃっ!…あ…はああぃ…」
子宮の中がぶるっとが震えると、快楽と共に命令が頭の中を巡る。余韻を残して呂律が回らなかったが、与えられた使命を果たすにはそれでも十分だった。
「んっ…ふふっ、お姉ちゃんも、バカだね…蟲様の素晴らしさを理解できないなんて…」
そして妖しげな笑みを浮かべながら、膝から崩れ落ちそうになるのを我慢して肌を朱色の染める。
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「んっ…くぅん…あ、ああ!!」
耳を塞ぎたくなる妹の声から目を逸らし、今はひたすらに耐える美佐であったが目の前にぼとりと転がった音には反応してしまう。
「…えっ?…ひぃっ!!」
そして押し殺していた感情の蓋が外れた。妖気と淫気に満ちた塊が、薙刀の間に写ったからだ。そう、この身から離れたはずの催淫蟲が、再び出現したのだ。
「うふ、中出しされるのってホントに気持ち良いよ…お姉ちゃんの蟲様、返してあげるから…オマンコで一緒に味わって、こうやって蟲様を産む幸せと一緒に教えてもらうといいよ。」
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綾音は出産の疲労と排泄の快楽に身を震わせながら、姉に布教でもするような口振りをみせる。
「そ、そんな…ダメ、いやぁ!」
だが、そんな不気味な妹の姿に気を取られる事もできないほど、美佐は目の前で蠢く悪霊に怯えていた。昨日の戦いの疲れは抜けておらず、少しは回復しているといえ霊力を纏う暇もない。それだけダメージを与えた激戦の相手が万全の状態でいきり立っているように這って来るのだ。美佐は退魔師としての矜持も忘れ、虫を怖がるごく普通の女性のように、何の策もなく、ただ重いだけの我が身を捩って拒んだ。
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しかしその恐怖と抵抗が、蟲にとっては格段の馳走だった。欲望に加速して、防護効果も薄れた巫女装束にするりと忍び込む。
「いやっ、やっ…やめっ、え、はぁ…ああああぁん!!」
美佐の袴が不自然に盛り上がり、そして納まると、美佐が一段と高い悲鳴を上げた。しかしそこにあった嫌悪感は、つんざく音が収まると同時に奪われていた。
「はぁん!ああっ、そ、そんな…やあっ、感じてっ、なんか…!」
襞を擦って侵入する動きに快楽を呼び起こされ、膣に寄生されるやその存在感に洗脳されそうになる。
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涙ながらに首を振り否定をしたが、今の美佐に抵抗の力はほとんど残っていない。あと一押しで屈服するだろう、そんな風に姉が手篭めにされる様を綾音はにやにやと見ていた。しかし、先までのサディックスな攻撃から一転、本当に何もせずにいた。本能のままに動くのであれば今すぐ姉に抱き付いて淫欲に耽るだろうが、こうする事が蟲の指令であった。
「…ふふ、お姉ちゃん。私はこれから学校に行くから。優美ちゃんや晶さんにもこの快楽を教えてあげて、高志さんの精液を搾り取ってくるんだ。」
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「…はぁん…えっ?あや…ね?」
湧き上がる性感に乱れていた美佐が、綾音の言葉にびくりとして固まる。それだけ、おぞましい事を、それこそ毎朝登校するような日常の素振りで口にした。
「じゃあね、お姉ちゃん。」
「待ってっ、あやっ…ああん!」
なんら未練も無さそうに振り向き境内から出て行った綾音に、美佐は慌てて声を掛けた。その反動は肉体を奮い立たせるだけの勢いはあったが、腰を持ち上げた瞬間、後背位で貫かれたかのように下半身が燃え盛り、再びバランスを崩す。
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その倒れる先に残っていた薙刀に寄りかかると、乳房をむにゅと歪ませた時に駆けた快楽を耐えながら柄を握って体を支える。
「あや…ねっ!いっ、いかせない…絶対に、守ってみせる…!」
恥部から登る快楽に抗いながらも、美佐は強い意志を持って歩を進めた。綾音を蟲の触手から守れなかったかもしれないが、その上に悪行を重ねさせられては、ますます取り返しの付かない事になる。さらに彼女が選んだ標的は、この催淫蟲に対する切り札になる血筋だ。それを分かってるからこそ狙っているのであれば、命を賭けても阻止しなくてはならない。
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そんな決意にだけ集中し肉欲から意識を逸らしながら足を進める美佐だが、境内から出てると既に昇っていた日の光が気になった。
「…今何時…あ、携帯…」
庭石の側におかれた私用の鞄に近づくと、緩慢な動きで漁る。そこから携帯電話を取り出して液晶を見れば、時間の上に数件のメールと1件の着信履歴が表示されていた。メールは耳の早い友人や恩師、着信は互助会備え付けの霊力を遮断できる受話器からだ。
「…ふぅ、みんな、心配は、してくれるのね…で、ここに来ないのも、これ以上ない正しい選択…」
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熱を浮かべた顔で自虐的に美佐は呟く。人を操る術師が敵の手に落ちるかもしれない、こんな状況なのだから、自分が逆の立場でも同じように術の影響を受けないよう連絡を取るだけに留めるだろう。
「でも、これで良かったわ…綾音は、私の手で…!」
美佐は携帯を握り締めて強く言葉にする。彼女が推測する退魔組織の動きは、退魔師が音信不通のために格下が偵察目的に数名派遣した所、といったものである。しばらくここで耐えれば救援も来るかもしれないが、それよりも、綾音を自らの手で奪還するチャンスがあるという事が肝要だった。
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ここで解決すれば綾音が悪霊に憑かれた話は表沙汰にはならない。少なくとも、あの淫魔のような綾音を誰にも見せたくないという気持ちが、美佐の中にあるのだ。
「…とはいっても、危険かな…」
そう思いを巡らせてる間も、頭の中は肉欲によって桃色に霞みかかっていた。正気を保つ時間も少なければ、勝率も僅かだろう。しかし諦める訳にはいかない事と同時に、保険になる手がある事が彼女を勝負に走らす。帰国前にパートナーから聞いた
「鬼切り丸」
と呼ばれる霊刀の存在だ。それが退魔一族・神条の血筋に渡れば催淫蟲も撃滅できる、と。
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それだけに強力すぎる危うい力のため、神条家の蔵で封印し、いざという時にのみ使うよう言われていたが、その使い手の子らが狙われている以上はその時だ。
「高志くん…携帯もってないんだっけ。晶ちゃんは…学校にいるなら切ってる、かな…」
考えを口にしながらまとめて、通話ボタンを押した。時間も少ないため、確実に伝えたいがロスも許されない。そのために選んだのは末女の優美だった。良かれ悪かれ、学校にいても携帯が繋がるような子は彼女だけだと、美佐は神条の3人を良く知っていた。
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しかし、彼女の敵が内に潜む以上は黙って見過ごすはずがない。
「優美ちゃん、でっ…ううっ!」
耳に携帯を当てた途端、蟲のスイッチが弱から強に切り替わる。蟲が陰部を強姦するように強烈に暴れ出し、美佐は快楽に襲われて口の動きが呼吸で一杯になる。
「あぐぅ!ひぃ、ああっん…!!このっ、喋らせ、な、気…?!」
この衝撃の波に流されないよう杖にしている薙刀を抱き締めたくなるが、股に柄が擦れてしまえば、その瞬間の刺激に呑まれて、蟲の望むままに自慰を始めてしまうかもしれない。
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とにかく手や足に力を入れてその場でふんばって意思を強く持つ。
「くぅ、ああっ!すごい!…けどダメ、絶対伝えないと…優美、優美ちゃ…はぁ、あぁっ…!」
「…もし、美佐さん?」
繋がった!コールから切り替わった事にすら気付かなかった美佐だが、打ちひしがれる事が続いた彼女にはこれ以上無い喜びであり、そして死中に見出した活路だ。
「いい優美ちゃん!聞いて!!」
そのため、全力で声を出して一気に用件をまくし立てる。
「悪霊に襲われたの!それに巻き込まれた綾音が…」
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「もー、いきなり大声ださないでよぉ…」
しかしそれが伝わる前に、まず大音声を咎められた。
「…音がそっ、あ、ごめんっ。」
せっかく繋がった糸も切れてしまっては元も子も無い。感情も欲情も抑えながら、なんとか状況を説明して鬼切り丸の事を伝える。彼女自身はそう冷静なつもりでも、今の美佐は握った刀だけを支えにびくびく震えながら腰を振り、取り乱した喋り方で息を荒げる狂人じみたものであった。
「…大至急、高志くんに渡して!それが切り札だって、ひ、弘志さんからっ、聞いて、んん!」
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そしてパートナーの名を口にし、その顔が脳裏に浮かんだ瞬間、蟲がその情報を基点に攻撃を強化する。それは美佐にとって憧れの人であり、ほのかに恋心を抱く相手なのだ。その純真に淫気を当て、肉欲の正しさを肯定させる。好きな人に抱かれたいのは当然だ、愛するものの精が欲しいのは当然だ。蟲が子宮からその対象を塗り替えながら、美佐の魂に囁く。
「え…蔵……刀?どこ…?!」
その幻聴と電話からの声に振り回され、精神の均衡が崩れる。
「あ、はぁぁん、ん…わかんっ、ああ、ないわよ!私の、じゃなぁっ、い、ひぃぃんっ!!」
P:372
人らしい理性を失いながらも、人としての尊厳は守りたいという本能的な働きが、美佐を叫ばせた。そして携帯を耳から離した勢いで投げるように落とし、肉欲を耐える事だけに全力を注ぐ。
「んあっ、ああっ、はああぁ!」
頭を空にして、心を無にする。全力で美佐を責めていた蟲も、その抵抗と電話の阻止という目的を果たせなかった事に諦めたか、膣の上下運動をゆっくりに戻して妖力を抑えた。
「…うぐっ!うっ、はぁあ…」
その事も知らず、ペースの落ちた責め苦の合間に一呼吸を入れる。
P:373
それでも、美佐の足元の石段には袴の影から黒い染みがぽつぽつと落ちており、紅白の巫女衣も汗を吸いすぎて肌が透け、自慢の黒髪もうなじにぺったりと付いていた。蟲と激戦の跡だが、彼女自身の状態は何一つ好転していない。
「…でも、行かなきゃ…」
しかしこれで一筋の光明が差したのだ。あとはその光が広がり、綾音もこの街も、そして自分に万が一の事があっても救ってくれるだろう。そう確信して、美佐は満身創痍の肉体を引きずって、誘われた敵地へと単身の乗り込んでいった…
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「はら…はひっ、たっ、たま…え…んっ、ああぁぁんっ!!」
美佐の中を蹂躙する甘い波動が、霊力の保護を溶かして精神を汚染する。骨抜きにされる気持ちのままに伸ばした姿勢が前のめりに倒れると、受け身を取れずに美佐の豊満な胸から床に屈した。
「っ!ひゃあああぁんっ!!」
そして小袖の上からでも分かるほどに勃起した乳首を電源に、全身を痺れさせる衝撃が駆け巡った。その破壊力に頭が真っ白になり、反動で上半身を反り返しながら、知性も正気も無い有様の大口を開けた顔で、叫んでいた。
P:377
「あ、あはっ、ああ…ぅんん!」
その絶叫で全てを吐き出してしまったのか、再び無抵抗に乳房から落下する。びたんと顔と一緒に伏せると、そのまま肩で呼吸をしていた。しかしよくみれば、疲労一杯のはずの上半身の動きは呼吸だけを求めるものではなかった。
「あぁん…おっぱい…、私の胸、とっても気持ちいぃ…」
肩も腕も伸ばしたまま、背中の上下運動だけで胸元の衿を自ら崩すと、はみ出した乳房を床に擦り付けているのだ。冷たい無機質な床と真っ赤に火照った自分の重みで、自らの胸をマッサージする。
P:378
もはや退魔巫女としての矜持も破壊され、今の彼女には肉体から伝わる快感だけが残されていた。そして空っぽになった心に、子宮から洗脳の魔力が侵食してくる。
「あんっ、そう、気持ちいい事…素敵なことを…もっとぉ…」
焦点定まらない虚ろな瞳のまま、美佐は何かに命じられるままに腕を伸ばした。乳房を少し挟みながら肩を折りたたみ、正座を組んでいた太股の内側に指先が触れる。
「あひぃ!!これっ、すごい!!あそこから、何か来てるのぉ!」
袴と下着の上から自らの中心を押すと、胸のボタンのように気絶しそうな快楽が登ってきた。
P:379
「ああん!もっと!もっと欲しいのぉ!快楽っ、気持ち良いの!」
二度目の甘い餌に尻尾を振る獣のように腰を振りながら、美佐はへばったまま袴の結びを解き、ぐしょぐしょに濡れた下着を降ろした。露わになった秘部はパンツの上から袴に染みを作るほどの愛液で溢れ、ひくひく開閉していた。
「はぁ、下さい!くださいませっ…ああ、美佐にっ…快楽を!」
そして三度目の刺激を、自らの指で突きたてた。中指と人差し指が濡れた思う間もなく淫穴を一気に抉ると、美佐の全神経に快楽の電撃が走る。
P:380
「あひぃぃん!あぎっ、ひぐぅ…すご…いいぃ…!」
その未知の快感を表現しようにも、口は動かず呻きながら涎を垂らすだけだった。その刺激は全身を痙攣させ、駆け抜けた後も身動きを満足に取れずにいる。それでもなお貪欲に指を動かすと、肉欲を生む塊とは別の存在に触れた。
「ぁぁ…これっ…催…淫蟲?」
その瞬間、彼女は己が退魔師である事や悪霊と対峙していた事を思い出す。だが、止まらない指先から生まれる欲望が、彼女が十何年と積み重ねてきた巫女としての存在をも否定させる。
P:381
「…はぁぁん…そう、よね…蟲…蟲様、とってもいいからぁ…もうずっと、私のナカにいてぇ…」
猫撫でた甘えた声を出しながら、美佐は振り向いた。その顔は甘い幸福に蕩け堕ちた、雄に服従する牝そのものだった。
「もっと…私に、もっと快楽をくださいっ!犯して、感じさせて…イカせてくださっ…あぁん!!」
そして催淫蟲は彼女が差し出した魂を動力に暴れ出す。その衝撃に犯されるまま、美佐は後背位で突かれるように腰を振った。跳ねて揺れる尻肉は欲情の汗と共に桃色に染まり、肉のどこまでもが淫欲に満ちたりていた。
P:382
「あはっ、すごぃ!こんなの、わたひ、知らない!気持ち良くっ、ああん!真っ白なの!ひんんっ、オマンコからっ、きちゃうの!」
美佐は泣き喚くような感動と共に、下半身から来る悦びに歓喜してた。誰もいない虚空に向けて激しく腰を持ち上げては振り下ろして愛液の染みを脱いだ袴と足元に作り、床に顔と乳房を摺り寄せて愛欲に満ちた至福の顔を作る。
「あぁっ!いいぃっ!!いいの…私、イきっ、イきたひぃ…!!」
独りで肉体を躍動させる美佐は、まるで妄想の中で愛するものとセックスをしているようだった。
P:383
そして彼女のナカで、美佐の耳元に愛するものが囁いた。その甘美な言葉に心音がドクンと跳ね上がり、代えがたい祝福が魂に降り注ぐ。それが彼女に寄生する蟲の支配契約と気付く事もなく、美佐は全力で首を縦に振って答える。
「はひっ、奉げますぅ!霊力も、心も体も!私も!誰も彼も!!あげますからっ!きて、くださひ!私の蟲さまっ、催淫蟲さまぁ…!イかせっ、くぅ、ああっ!あひ、はああああああぁぁぁん!!!」
隷属の誓いが堰を切り、美佐は絶頂を迎えた。流されるままに背を仰け反らせて尻を持ち上げ、貪欲に開いた陰唇から潮を吹き出す。
P:384
そのまま美佐はあれだけ激しかった腰の動きを止めて、そこから来る快楽に打ち震えながら固まる。
「ああっ…あはぁん…いいぃ…」
まるで中出しされた精液を味わうかのように果てた余韻を味わう美佐の顔は、永遠の愛を誓った恋人の表情をしていた。そして全てが去り、情事の終わりに美佐の砕けた腰が落下すると、自らの作った水溜りに跳ねる音を最後に境内は静かな沈黙に包まれていった…
P:385
P:386
「…ぇちゃん、…姉ちゃん?!」
いつの間にか失神していた美佐は、誰かに揺さぶられて意識を取り戻した。蝋燭だけが室内を照らす空間ではどれだけ眠っていたか計る事もできず、ぼやけた視界は床と平行で、小さな膝とその先の身体が作る影しか見えなかった。
「…ぁあ…っん?」
「お姉ちゃん!!大丈夫?!」
眠気たっぷりの返事に目覚ましの声が元気になる。それが妹と分かるにはまだ頭の回転が遅かった。
「あや…ね?」
確認に名前を呼ぶと、綾音は視線の位置へ顔を下ろしてきた。
P:387
「そう、私、綾音!お姉ちゃん、分かる?!起きてる?!」
「…う…ん?」
よほど反応が嬉しかったのか、それとも不安で仕方なかったのか、内気で大人しい綾音らしからぬ騒ぎ様で美佐と顔の角度を揃えた。
「お姉ちゃん大丈夫?!入っちゃダメって言われてたけど、その、なんだかすごい声が聞こえて…!それで来てみたら、すごく熱っぽさそうでぐったりしてるし!!」
そのまま姉への心配と言いつけを守らなかった弁明をまくしたてたが、美佐は肉体と魂が分離しているかのように、虚ろな表情で右から左へと流していた。
P:388
やがて反応の弱い美佐に対して、綾音は気掛かりな事を申し訳無さそうに尋ねる。
「ねえ、お姉ちゃんに憑依したっていう悪霊…どうなったの?」
そしてその言葉が、美佐の意識を目覚めさせた。綾音に言いつけていた事、美佐が眠っていた事、そして今の自分。鮮烈な記憶と肉体に刻まれた感覚が全て繋がり、電源の入った神経が覚醒する。
「ああ、あく…ああんっ!」
「ひゃっ、お、お姉ちゃん?!」
突然びくりと跳ねた姉の動きに、綾音は驚いてから再び問い掛けてきた。しかし美佐は微動だにせず、その衝動の中に沈んでいた。
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(…ああ、そうだったわ…私は…あの蟲に敗れて…ああんっ!!)
気絶するまでの責め苦が衝撃的過ぎて、美佐の頭にはすぐに受け入れ難く、一眠りする間にどこかに理性が戻った。だがその正気で思った事は、瞬時に肉体からの刺激を伴う命令に修正される。
(あはっ…ああ、そうよ、蟲様…私は愚かにも催淫蟲様を祓おうとして、その御力も快楽も知らずに抵抗し…敵うはずもなく屈服し、忠誠を誓わせていただいた…)
思い出した事が彼女に根を下ろした蟲からの刷り込みと気付かず、美佐は蟲好みの心得を復唱する。
P:390
今までの美佐であれば想像するにも寒気がする思考はさすがに極端なブレとなって戸惑いになるが、そんな疑念も肉欲がコントロールして快楽で染め直す。その管制塔たるヘソの下からは甘い波動が放たれ、心ごと彼女を蕩けさせて常識や判断力を奪い去っていった。
(あぁん、そう…こんなに気持ちいいんだから…間違ってるはずがないわ!もっと、もっと味わいたい…もっと、ほしいの…!)
常識が無ければ、正しさを決める判断材料は感覚だけだ。だから美佐は快感によって溶かされた心の隙間を性欲で埋め、自らの意思で性欲を肯定するよう矯正する。
P:391
これが蟲の洗脳術と気付く事は、もう無いだろう。魂からの支配を約束させた催淫蟲にすれば、寄生先の身も心も思うがままなのだ。
「……ん!お姉ちゃんってば!」
その施術は綾音の呼び掛けが少し途切れる程度の瞬間、美佐の魂を内なる世界に隔離していた。ほんの一言の間、だが欲望に屈した美佐を操るには十分な時間だった。
「んっ、ああ…あや…ね…そう、私は大丈夫…もう、平気よ…」
美佐はようやく綾音に返事をする。大切で愛しい妹の不安を取り除くため…そう、自分と同じ安寧の世界に導くという使命のために。
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「えっ、あ…おねえ、ちゃん?」
綾音は返事に安心するよりも、その表情にぞっとした。寝ぼけた様子もなくハッキリと口元に笑みを浮かべているのに、うっすらと開かれる眼差しがあまりに暗い。いくら薄暗い境内といえど、綾音が憧れ尊敬する高貴な姉とはまるで正反対の、性的な職に就いて誇りを捨てて冷たいマネキンと化した女性のような顔をしているのだ。
「ほ、ほんとに平き…きゃあ!」
不安よりも恐怖が重なり思わず問い直した瞬間、美佐は突然立ち上がった。とぐろを巻いて伏せる蛇が威嚇に胴を伸ばすように、崩れた正座から一気に直立する。
P:393
「ふふふ、平気に決まってるじゃない…綾音。私は正気でしょ?」
そう言って驚きに腰を抜かした綾音を見下す美佐は、唇に掛かった一本の髪の毛を手の甲で払って艶やかな長髪の元へ戻した。立ち上がると同時に赤い袴は脱げ落ち、巫女装束は襟元を閉め忘れたように胸元の谷間を開く。薄暗い神社に浮かぶ赤く火照った美佐の裸体は、伝承に出てくる淫欲に纏わる蛇女を想起させる扇情さだった。
「お、おねえちゃん…ちょっと、なんだかヘンだよ…!」
そんな姉を認める事が出来ず、綾音は言葉を探しながらも拒んだ。
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「あらあら…綾音ったら…」
それでも大切な妹が拒絶の態度を取ったのは間違いなく、美佐の心がチクリと痛んだ。しかしその傷は戸惑いどころか被虐の心地良さとなり、彼女に刻まれた使命を股間の疼きと共に思い出させる。
(そう…私は、綾音を幸せにしたい…こんな不安そうな顔を、解き放ってあげなきゃ…)
心細く涙目を浮かべる妹を見て、美佐は決意を固める。今も昔も、これからもずっと一緒にいたかった。愛情であり欲情であり、巫女の姉としての務めであり、蟲の奴隷としての役目なのだ。
P:395
そんな美徳を背徳に塗り替える愉悦を微笑みに変えながら、美佐は綾音の顔を覗き込んだ。
「ひっ、おお、おねえちゃ…」
それだけで綾音は上から押し倒されたような重圧を感じ、内股に尻餅を付いて震えた。
「うふ、そうね…じゃあ…綾音、私の声をよぉく聞きなさい…」
固まる綾音の耳元に口を寄せて霊力を込めて囁くと、吹きかけられた息にびくりとした様子を見せて
「おね…あっ。」
そして微動だにしなくなる。恐怖に包まれていたはずの顔から全ての表情が抜け落て虚ろになった。
P:396
美佐が得意とする術、言霊だ。人を操るという危険な可能性を持つため、よほどの事がない限り封じてきたはずの力だが、なんら躊躇なく妹にかざした。常識に囚われて禁忌にしていた事をあっさりと破り捨てた事に、美佐は震えた。
(ああ…私、綾音のために、ご主人様のために、生まれ変わってるんだぁ…うふ、ふふふ…)
そして幸せな妄想に浸りながら、腰を屈めながら両手を下半身に伸ばす。大きく垂れた乳房が両腕に挟まれて歪み、指が粘膜を溢れ出す秘部と淫核を擦り、蟲が与える欲望と共に快楽で満たされる。
P:397
このまま催淫蟲を崇めながら自慰に耽りたかったが、彼女はすべき事を思い返して綾音の側に立つ。
「綾音、まずは下着を脱ぎなさい。パンツだけでいいわ。あぁ、立ち上がらないでそのままね。」
美佐がそう命じると、術中の綾音は何ら疑問に思った様子もなく下着に手を伸ばした。
「はい…」
そしてまったく身動きを取らなかった彼女は、虚ろな返事と共に思い出したように腰を少し上げてパンツをずらして脱ぎ捨てる。
「ふふ、そうしたら自分の腕を膝の裏に通して、上に持ち上げるの。股を開きながら…ね。」
P:398
術中の綾音は言われた通りに動くが、股を開くという言葉に恥じて頬を赤くした。肉体を操作した所で、精神に干渉しなければそこは綾音の自由だ。その恥じらいを奪う事も美佐の術力なら可能だが、命じられた通りに膝裏の腕を持ち上げ続け、やがてバランスを崩して身体をひっくり返してダルマのように転がった妹を見た時、自分の能力の万能感に酔い痴れながらその高慢な位置から姦計を閃き、あえて完全な支配を施さず次の罠へと誘導していく。
「綾音…あなたは私の術が解けるまで今のポーズを崩す事はできない。その状態で目覚めなさい。」
P:399
美佐が言葉を繰り、綾音の自由を限定的に開放する。両足を抱えて背中から地面に転がり、暗い天井を写していた瞳に意思が戻った。
「え、あ…あれ?わ、わたし…」
思考が術下から外れると、ぱちぱちと瞬きして綾音は慌てた。姉の顔を見ていたはずが、いつの間にか天井の梁を眺めているのだ。
「うふふ。気分はどう、綾音?」
「え、どう、って…お姉ちゃん、あれ、あれ…?身体が…!!」
迷いの中で聞こえた声に反応して身体を向き直そうとしたが、全身が泥沼の中にいるように身動きが取れず、綾音はさらに混乱を増した。
P:400
しかも固定された格好に恥じらいを覚えた感覚は残されており、その事を意識すれば下半身がスースーして露出している事に気付く。慌ててスカートを押さえて隠したいと思っても腕は開脚を保たせるだけで、綾音は自由を奪われたまま右往左往していた。
「なんでっ、動かな…きゃあ!」
そうして自分の事で一杯だった彼女の頬に、割って入るようにひとつの手が当てられた。指の先端が暖かな粘液で濡れていたそれは、美佐の差し出したものだった。
「もう、暴れたってムダよ。あなたは私の術を受けたんだから。」
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頬を撫でる手に美佐の顔が続く。優しく諭すような表情にも見えるが、それが赤らめた顔で瞳を欲情に染めているのが恐しいのだ。
「お姉ちゃん…?!どうして!」
何といって言いか分からず、綾音はまず聞き返す。自分の身が危ない事と、姉が牙を向いている事を本能は警鐘するが、認めがたいが故に姉から否定してほしかった。
「うふ、すぐに分かるわよ。私の言う事を聞いていれば…ね」
しかし美佐は、疑問を持たれる方がおかしいという事に少し悩んだ仕草を見せると、にやりと笑って再び言葉に霊力を乗せた。
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「そ、そんなの…あれ…んぁ…」
魂を操る呪術に、綾音の表情が再び曇っていく。だが、先ほどとは違って完全なものではなく、困惑に眉を顰めてうわ言を口にできる弱い束縛力だった。
「やめ…てよ…お姉…ちゃん…」
それでも綾音は不自然な眠気を強制され、瞳に涙を浮かべた。このまま姉の言葉を何の疑いもなく受け入れそうになるが、異常な空気と本人の潜在霊力が危うい所で抵抗すると、自由が利く口元をきつく締めて眼前にある邪悪な意思を睨む。その眼光に美佐は困ったという表情を、大げさに作っていた。
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その露骨さは、自分の謀がうまく回っている事から来る余裕だ。
(うふふ…それでこそ私の妹…ご主人様も、お喜びになるわ。)
言霊を自在に操っているという自信と、妹に手を掛ける背徳感に酔い痴れながら、美佐は綾音の目をじっと見つめる。綾音は身構えるように眉を尖らせたが、その抵抗も次の質問の前には無力だった。
「…綾音、あなた…処女よね?」
「…えっ…!な、なにっ?!」
予想だにしなかった姉の質問に、耳元まで真っ赤にしながら動揺する。その純情さだけで判別は簡単だが、美佐の目的はそこには無い。
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「答えなさい綾音。あなたは処女?それとも非処女?」
「あっ、は、はい…」
ぐっと顔を寄せて強く問い詰められると、綾音は目線を背けながら答えてしまう。その恥じらいで焼けた初心な表情がかぶりつきたい程に可愛く、美佐の興奮に乗って彼女の中の蟲までが涎を垂らす。
(ひゃん!…あっ、ん、ふふ…もう、ご主人様ったらぁ…)
その雫が美佐の胎内で媚薬となりたまらず嬌声を上げたが、まだ使命を達していないと気を取り直した。肉欲は我慢できずに美佐の性感を震わせたが、彼女の堕ちた魂がその安易な欲望を拒む。
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全ては至福の快楽のため…綾音と蟲と共にある未来に広がる世界のために。美佐は黒い意思を固めて綾音を次のステップに進める。
「ふふっ、そう、綾音…あなたは処女…愛する人に奉げるため、大切に貞操を守っきたのよね…?」
さらなる辱めの質問に、綾音はかっとなって、羞恥のままに無言を決め込んで目線を遠ざける。興味はあっても踏み込むには怖い、そんな幼い無垢な綾音には未踏の領域なのだ。姉の言葉は正しいと思うが、それを理由にエッチをした事がないと言われると違う。綾音は今の状況も忘れて年頃の女の子らしくつい悩んでしまった。
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そして美佐にすれば、その解がどうであろうと問題はない。ただ、自分が口にした貞操観念を綾音の意識に刻めればいいのだ。照れながら茹で上がる綾音の顔をそう考えながら悪戯好きの笑みで見守っていたが、用意した企みの準備が、下半身から激しく伝わると、
「あ、あぐぅ!あああぁっ!!」
膣奥を震わす快楽と、胎内で暴れ出す苦痛に背を仰け反らせて、大きく口をあげて眉間を歪めながら悲鳴を上げた。
「えっ、お、お姉ちゃん!なに、どうしたの?!ねえ!!」
その声にはっと我に返った綾音が、一番に姉を心配する。
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しかし姉の顔を見ようにも首はほとんど動かず、さらにその元凶が今苦しみに息む美佐だという事を追って思い出すと、緊急事態に取り残されたように不安が蘇る。
「ひぎっ、い、ふふ…綾音ぇ…」
その当人はそんな妹の動揺を気に留める事なく、股間の衝動に全身を小刻みに痙攣させながら自分の世界に浸り、快感を貪っていた。
「ねえ…何か…ひゃあ!」
「うふふ…そう、焦らないで…」
独りでいる事の恐怖感から呼びかけてきた綾音の前に、美佐は声が届くや否や、突然勢いを付けて顔を寄せ、そのまま綾音の太股に乗って全身から圧し掛かる。
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下半身の肉がくっつき豊かな胸をぷるんと揺らし悪寒に耐える綾音の肉体に美佐の体温が伝えたが、その場違いな熱情の温もりはかえって綾音の心を凍えさせる。
「言ったでしょぉ、あひっ!す、すぐに分かっ、らっ…ひぎ!!」
さらに追い討つように、突然に悶絶した声を出して腰を突き出す。
「あぐっ、あは!蟲様ぁ、増える感じ、んんあ!あひぃ!産みっ、ますのぉ!ご主人様のぉぉ!!」
さらなる重圧になる、理性の欠片もない苦悦混りの叫び声。それは綾音が美佐を案じて境内に入ろうと思った声に似ていた。
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「おっ、お姉ちゃん!だ、だからなんなっ…ひっ、ひゃあ!!」
とにかく姉の事が第一だったが、操られて背筋を丸めて背を地に着ける綾音のへそと胸の間に生温かなで不気味なぬめりが触れると、その気色の悪さにたまらず反射的な悲鳴を上げてしまった。
「なに、この気持ち悪いっ…!ひぃ、やだっ、動いてるぅ…!」
ずるりと胸元まで転がってきたそれは、やがてその液体を撒き散らしながら胎動する。美佐に奉げられた力により増殖した催淫蟲だ。
「さあ綾音…あなたのために生まれた、催淫蟲様…受け入れてぇ…」
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美佐は産声を上げない赤子を愛しく見守り、その下に転がる妹には目もくれず囁いた。そして当の綾音は、蟲の存在にパニックとなり見ようにもほとんど動かない首を振って泣き喚きだした。
「いっ!やだやだぁ、やだよぉ!怖い、こわいの!!助けて!!」
嫌悪感が底力を引き出して金縛りにあう身体をもがかせるが、自分で自分を縛る腕を解くまでには至らず、産み落とされた物体を目視できないまま身体の上での蠢きをただ味合わされるしかなかった。
「もう綾音ったら、そんなに嫌がっちゃって…」
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怯えながらも無抵抗な綾音を楽しげに見下し、かつての愚かな自分と姿を重ねながら、いよいよ最後の扉を開かせようと語りかける。
「綾音…よぉく聞きなさい…」
「やぁっ…あ、お、お姉ちゃ…」
恐慌状態の中にあろうと美佐の言霊は突き刺さり、綾音は気色悪い感覚に晒されながら弱く返した。
(ああ綾音…涙で顔が台無し…)
心から陵辱され、逃げられない恐怖に満ちた妹の顔を見詰めながら
(はぁん…私が、こう、汚したんだよね…すごくっ、イイ…!)
肉体に走る性欲とはまた違った味わいの興奮に、頭を沸騰させた。
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しかしそれに溺れる準備はまだだと、冷酷な頭脳が脳内麻薬を抑えて本来の目的を遂行させる。
「いい綾音。あなたはこれから、この蟲様に処女を奉げるのよ…。そう、奉げる。巫女らしく、ね」
美佐は澄ました顔で、あえて言霊を使わずに宣告する。綾音自ら、思考の末路に至らせるために。
「…え…えぇっ!!」
そしてその意味を認識した瞬間、綾音は悲鳴のような大声を上げた。望まない破瓜の危機と、その行為を
「奉げる」
と定義付けられた事。この二つが、美佐の刷り込んだ処女というものの価値と繋がる。
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つまり、処女を奪われるという事は奪ったものを愛するという事…綾音は美佐の作った、その異常な思考に気付かず誘導されたのだ。
(まあ、そう思い込むように言霊で加減はしてるけどね…ふふふ)
絶望的に目を見開いて唖然としている妹の顔を見ながら、自らの罠がうまく働いた事にほくそ笑む。
(いくら蟲様の支配が素晴らしくても、万が一祓われてしまったら洗脳が解けてしまうかもしれない…だから、こうして寄生前に自ら望んだように刷り込めば、何があっても揺るがなくなるわ。それが恋人同士のような愛情であれば、なおさらにね。)
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この発案が自らの考えたものか、蟲に与えられた使命か分からなかったが、美佐はこう考えるだけで股がきゅんと悦び震えた。
「んふっ、ふふ…さぁ奉げるのよ、あなたのはじめてを…!」
陶酔しきったその言葉に、美佐の産んだ蟲が応えたように綾音の腹を登り出す。その先には、丸裸に開かれた穢れの知らない恥丘が唇を閉じて無防備に晒されていた。
「ぃ!やだ!来ないで!!ああ、嫌よ!私、こんなの好きになんてなりたくない!やめてぇっ!!」
まさしく死に物狂いで拒む綾音だが、自分の身体にその否定は届かない。
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臍の上を這う蟲の侵攻を追い払う事も祓い除ける事もできず、あっという間に股間に到達させる。
「いや!やめ…て、んあっ?!」
誰にも触られた事の無い大事な場所が何かに濡らされたと思うと、綾音の声に甘いものが混じった。そのまま裂目をこじ開け力押しで侵略できる蟲が、あえて留まって自らの体液を振り撒きながらぶるぶると蠢き出したたのだ。
「そ、そんなとこっ、ひゃあ!ああっ、やだ…声が出ちゃう!!」
その液体が人を発情させる媚薬であれば、その振動は意思を持った性玩具のローターだ。
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淫具が幼い綾音の性感を容赦なく愛撫すると、淫核をむき出させて愛液が溶け出し、肉体が自ら差し出すように秘裂を開いてゆく。
「はぁ、ああん!入ってきちゃ、ダメなのぉ!なのに、なのに挿れられちゃう!綾音のあそこ、蟲に犯され、ひゃう!ああぁん!!」
そのまま緩んだ膣腔に蟲が沈み、ずぶずぶと音を立てて綾音の中へ侵入する。抵抗の意思も襞が擦れる度に走る刺激によって塗りかえられ、嬌声にしかならない。
「ふあぁ!これじゃ、はじめて、私の処女を蟲に、いぃ、あっ!!ひぐぃいいいぃぃぃぃ!!」
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ぶち、と音がした。剥き出たクリトリスを蟲が身体の末尾で叩いて、そこを蹴った催淫蟲が一気に綾音の膣へと潜り込んだのだ。
「あがっ!い、痛ひっ!あそこが、ぶしゅって、裂けちゃうぅ!えぐっ、えぐられるぅぅ!!」
下半身から走った電撃が、甘い刺激と熱い痛覚を全身に反射し、綾音の心を焼き焦がした。そして蟲の尻尾がまだ覗く股間から鮮血が滴り、その最後尾がぐちゃりと納まると、透き通る汁が溢れ出す。
「あっ、ああ、わた、わたしの…はじめて…奪われ…、処女だったのに、蟲に、破らっ…え…あっ…奉げ…?」
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ドクン、と心が跳ねる。はじめての痛みから遠のいた意識に、言霊の支配が後催眠となり絡み付く。
「ああ、わた、しの…はじめて…だから、はぁ、ああ、好きな人、大切なの、破っ、もらった…?」
自らを蹂躙されて発狂じみた悲鳴を上げた綾音の顔から、だんだんと、しかめた皺が緩んで弛み、つんざく声から張りが消えていく。そして大きく見開いた瞳が暗闇に堕ち、蟲と言霊の呪縛がその影に刻まれる。やがて視界が開けるように思考が戻った時には、もう、彼女が心身を微熱に震わせ頬を赤らめる理由は、全て作り替えられていた。
P:419
「ああっ、そうなの、私、好きなの、好きだからぁ…はぁん…!」
綾音の心臓が高鳴り蟲が胎内で蠢くたびに、恋する幸福と欲情の快楽が血肉を巡り、真っ赤に泣き腫らした顔はいつの間にか怯えから恥じらいに変わる。そんな夢見心地の顔を羨ましそうに眺めながら、美佐は綾音の耳元に寄せる。
「さあ綾音、今のあなたの気持ち…全部、裸にしちゃいなさい。」
悪魔の囁きは姉妹の純真に成り済まして綾音の心を一押しすると、ときめきを感じながら頷き、肉欲の疼きに酔い痴れながら溢れる恋慕の感情を解き放つ。
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「ああ、私、は…綾音は…蟲が、この蟲様が…好きだから!!わたしのはじめて、奉げたんです!」
心の奥底からの告白に、境内の灯火が振れた。音の去った静寂の中で二つの肉薄する影も揺らめき、三つの発情した魂が震撼する。
「う…ふっ、ふふ、うふふふ!!そう!おめでとう!綾音!!」
たまらず美佐が嘲笑にも似た祝福を上げると、綾音は一寸の曇りもない感涙を零しながら微笑む。
「ああっ、お姉ちゃん…ありがとう、ありがとう!私、幸せでどうにかなっちゃいそう…!ひぐっ、こんな気持ち、はじめてっ!」
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そんな喜びに顔を崩す綾音に応え、催淫蟲が胎内から愛撫する。
「ひぅ!あああ!はあ、すごい、いい…!はぁん、こんな、気持ちいいの私、知らないよぉ…!!」
ぐしゅぐしゅと襞を蹂躙するたびに子宮が歓喜して処女の血を愛液で洗い流し、快楽と支配に肌を朱色に染めて制服の中を蒸らす。
「あはっ、綾音ったら、はじめてなのに、ああ、オマンコが汁まみれ…そんなに感じて…うふふっ、いくら愛し合ってるからってぇ、スケベすぎるわ…ふふ、変態!」
その様子を嬉々として語る美佐も、自らの下半身に手を伸ばして蒸れた淫穴を泡立てていた。
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「ああんっ、だって、オマンコ、すごいんだもん!こんなに激しくいじられたらっ、誰だってエッチで頭がおかしくなっちゃうよぉ!はぁあん!ほらぁ、お姉ちゃんも見てよ…蟲様が、んぁっ、私の事、愛してくれるとこぉ…!この快感、一緒に感じてぇ…!」
綾音も負けじと惚気出し、快楽に夢中の顔でM字に開脚したままの下半身から登る快楽に腰を振る。催淫蟲との性交でビクビク悶える身体は、寄生により血肉が変化していく事よりも、姉に見せ付けたくなるほど昂揚に震えていた。
「ええ、見てるわ、妹の初体験…妬けちゃうくらい、激しいの…」
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「ああっ、お姉ちゃん!!んっ、ありがとうっ!大好きだよぉ…!蟲様の次に好きなのっ、蟲様とのセックスの次に大切な人なの!」
満面の笑みを悦びの涙で塗り、綾音は崩れた序列で蟲と姉と讃える
(ああぁ…綾音がこんなに嬉しそうな顔をしているの、見た事ない…はぁっん、んん、やはり、私…いえ、私達、すべての女は、催淫蟲様に服従してこそ真の幸福を授かる事が出来るのだわ…!!)
そしてそれに疑問も抱かず、美佐もまた蟲に変容させられた正義を唱歌し、法悦の中で激しく自慰を続ける。姉妹の狂った歯車は、蟲という軸に回され姦されるのだ。
P:424
「あはっ、れじゃ、一緒にさっ…私と、イきましっ…ひゃ!私の催淫蟲様も、増殖で失った力…目覚め、あぎっ、あああああっ…!」
子宮で暴れる刺激が自分の指以外のものを感じ、美佐の意識が白く弾け出す。綾音に与えるために増殖し、衰弱していた美佐の胎内に巣食う蟲が覚醒しだしたのだ。妹に負けじと奉げた力が淫気となり、彼女の中で反芻する。
「ああ、お姉ちゃん…お姉ちゃんも幸せそう…私もっ、はじめて、はじめてイクのっ、ああんっ!!ご主人様、にゃあ、あひっ!わ、わたひぉ、おごっっ!!!」
P:425
綾音の願いとシンクロした蟲が、さらなる媚薬液を撒き散らしながら胎内を蹂躙した。しかしいき過ぎた衝撃に苦悦のまじった悲鳴も、愛欲の前にはすぐに肉体に相応しい牝の鳴き声へと変わる。
「ああんっ!ごしゅ、ご主人様!激しすぎっ、すぎるのっ!わたしを、愛してくれるのぉっ!好きだからぁ!私が、催淫蟲様、大好きだからっ!受け止めますっ、私のナカでっ…ご主人様の熱いぃっ、溶けちゃうみたいに真っ白なの!綾音のオマンコにっ、たくさん!出してっ、孕ませてっ!たくさんの蟲っ、ああ!産ませてぇっ!」
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「ああっ、私もぉっ、ああぁん!わたしっ、三条美佐は…催淫蟲様にっ、生涯お仕えいたしますぅ!この子宮にっ、精液を、快楽をぉ…蟲を授かる幸せくださひぃ!」
その姉妹の契約宣言が、最後の一線を焼き切った。二人を狂わせた蟲の蠢動が一段と加速し、手綱を放した暴れ馬のように膣内を蹂躙する。美佐の追い求める指使いだけでは、綾音の開発された襞では説明できないほどに、陰唇がぢゅくぢゅくと洪水を起こし、その奥で嬲られる核から果てしない快楽が駆け巡る。
「いぎぃ!いいっ!すごひぃ!」
「あぅぅ!熱いのっ、あぁぁ!」
P:427
堤を切った欲情が指先から脳内まで染み渡り、そこに快楽という電撃が走る。泡を吹いた口から途切れ途切れに喘ぎ声が続き、病的なまでにびくんびくんと痙攣を発症する。綾音と美佐のその震えは、蟲に操られれて同じ底へ堕ちていくように同調していた。
「ああっ、いいのっ、きたのぉ!はじめてのっ、イぅ、いくの!!綾音、イくのっ!蟲様と一緒に!同じにっ、いっちゃのぉ!!」
「あひっぃ!溶けちゃう!みさも全部っ、蟲様のモノになるぅっ!しぬっ、イッてしま、あぁぁん!催淫蟲様、ヘンになりますぅ!」
P:428
完全に屈した魂が最後の理性を吐き出し、空っぽになった心に蟲が巣食う。そして眷属となった姉妹の肉体に、最後の楔を突き刺す。
「っはあぁん!!、ああぁ!!いくっ、お姉ちゃ、あぅっ…!!」
「ええっ、私もっ、キたのぉ!!綾音っ!一緒にっ、いぃ…!!」
二人のなかの蟲がピストンを加速すると、溢れんばかりの精液が体内に生産した。それは子宮に収まり切らないほどの肉塊となり、グショ濡れの襞に入り込んで神経を押し潰しながら融合していき、
「うわぅ、あ…」
「ぃっ、い…」
そして、最後の一線を踏み躙る。
「「イくうぅぅぅっ!!!」」
P:429
姉妹は天に昇るほどの叫びを上げながら、自らの中心に溶け落ちた蟲を抱き締めた。その膣圧から蟲は妖液を噴出させ、爪の先まで張り詰めさせる絶頂と共に、二人の全てを真っ白に染め上げる。
「!!いぃぃ…んあはっ…!!」
特にキュンと強張るヴァキナは、精液を一滴も零さないようにと、浅ましく強張って締めらていた。
「あひっ、ひ、ぃ、いれすぅ……最高です…蟲様ぁ…!わたしの、お仕えするべきぃ御主様ぁ…!」
「ごしゅ、あいし…熱いのっ…わっ、たしっ……溶けちゃたぁ…幸せぇ…で…おかしく…あぁ…」
P:430
夢心地の世界を貪りながら感激の卑語を並べて、永遠と続くと思われる余韻に揺られて卑猥なダンスのように腰や胸を舞い躍らせる。まるで淫欲の原始を讃え祭る綾音と美佐は、正しく巫女であった。欲望に寝取られ催淫蟲を神とした人ならずものへの信奉者なのだ。
「んっ、あはぁ…うふ…ふぅ…」
しかし邪神の威光もやがて抜け、供物と化した二人の情欲も納まっていく。美佐の言霊もいつの間にか効力が消失し、綾音は固められた体勢から太股を落として小さな大の字で仰向けになると、同時に緊張が解けた美佐もぐったりとした上半身から崩れ落ちる。
P:431
艶のある黒髪が闇に吸われてハラリと散りながら倒れ込むと、二人の肉体が十字に交差する。そしてお互いが引き合ったかのように胸元を軸に重なると、美佐の熟れた乳房が綾音の慎ましくも整ったおっぱいと衝突し、肉の圧力から巫女服の袖がぽろりと開いた。
「…んっ、はぁん…」
4つの膨らみから小粒の甘い刺激が沁み、思わず声が漏れる。蟲から与えられた荒波のような快楽に比べれば細波のような味わいだったが、その蹂躙する情事に溺れた後の身には、これくらいの可愛いらしい感覚が心地良かった。
P:432
そして姉妹がお互いの温もりを感じあった事により、想い合う感情が自然と二人の瞳を交わらせた。
「ぁぁ…お、姉ちゃん…」
「んんっ、ぁ、綾音…ぇ」
目覚めの最中にあるような薄く閉じかけの目蓋がとろりと垂れ、赤らめた熱っぽい顔が見つめあう。妖気にうなされながらも安らいだ表情は、共に同じ世界へ連れて来られた事を理解させた。小さく名前を呼び合った後には荒い呼吸だけが響く沈黙が続いたが、もう、それ以上の言葉は必要ないのだ。圧し掛かっていた美佐が、綾音の顔に向けてゆっくり身体を回す。
P:433
んんっと吐息を漏らしながらも上半身を捻ると、ひしゃげていた二人の胸がさらに揉み崩れた。しかしそこでなお性感を得ようとしているのは、疲労感の憔悴に色惚けた紅潮を塗った表情を見れば明らかであった。だからゆっくりと、くにゅくにゅと胸を押し付け合てじゃれ合うように姉妹は蠢いて、下半身もお互いの脚に割って入り付け根を交錯させる。
「あはっ…ん、お姉…ちゃん…」
「んふ、うふふふ…綾音っ…」
二つの顔が向き合い、視線までがねっとりと絡み合う。愛しくて、いやらしくてたまらなかった。
P:434
「あやね……んちゅ…ん…」
上に乗っていた美佐の唇が、綾音の濡れた口元に引き寄せられる。
「はむっ…ん、ちゅ…ちゅぱ…」
姉妹のじゃれ合いには濃すぎる口付けは、唇を貪るに足らず舌までが絡み合う。まったくテクニックの無いはずの二人だが、それだけに原始的な、本能に任せた激しいディープキスだった。
(んちゅ、んんっ…キスって気持ちいい…ぁあ、そういえば、私、はじめてだぁ…ファーストキス、最初に奉げたの、お姉ちゃん…)
口辱の愛撫を味わいながら、綾音の脳裏にそんな事が浮かんだ。
P:435
言霊の術は既に解けていても、彼女に打ち込まれた楔は抜けていなかったのだろう。唇の処女を奉げるように、さらに激しく交わる。
「んっ、ちゅぱっ…お姉ちゃ…」
「っ…くちゅ…ん、綾ねぇ…」
にちゃにちゃと、わずかな言葉も粘液が混じる。溶け合い混じり、ひとつになるように、二人は闇夜の社の底でいつまでも逢瀬を続けていた…
P:436
P:437
夜が明けた。禁断の儀式が行われた本殿に日が差したが、そこには誰の姿も無く、遮られない日差しに木造の社の明るみが増していった。ただ、床の上に激しく散った染みの跡が暗く残り続けていた。
「さて…これで、いいかなぁ…」
そして離れの社務所、つまり三条姉妹の住処に二人は戻っていた。そして綾音は何事も無かったかのように制服を丁寧に着直し、鏡の前でくるりと回った。いつもなら膝が隠れる長さのスカートだが、今は膝上10センチの高さまで上がっており、翻るその端を際どく感じて赤面してしまう。
P:438
だがそこに、やましさや羞恥心はほとんど無い。清純という皮を1枚剥いて生まれ変わった自分への驕り高ぶった自信と、恋するものに一段と近づけた喜びだけが、綾音の心を支配していた。ただし、今はその感想を聞くことは出来ない事だけが気落ちさせた。
「はぁ、…んっ、お気に召していただけますでしょうか…蟲様…」
猫撫でた声で囁いたがその耳元に届いた様子はない。寄生した蟲は昨晩の戦いで乱れ、交わりで得た妖力を整えるため、そして宿り先を最大活用するために休ませるべく、一度眠りに付いたのだ。
P:439
もちろん綾音と美佐はつゆ知らず4つの肉欲が激しく絡み合う乱交の果てに気を失って体調を整える深い睡眠を取っていた。目覚めの時には子宮に感じる存在感だけが残り、そこにある意思が伝わってこない事には違和感を覚えたが、しかし二人に迷いはなかった。
「私たちは、これから星陵学園に向かい…母体の元へ参ります。」
「他の人間に怪しまれないよう、催淫蟲に歯向かう者達を欺くために、何でもいたします…」
蟲の意思を忠実に理解し、そして遂行する。彼女たちは巫女…蟲の使いなのだから、夢の中で啓示を受けたとしても揺れる事はない。
P:440
もっともそうでなければ、肉欲が湧き出るような身体に調教された綾音は、日常を装うための制服をも脱いで精気を集めに出掛けるか服装をもっと乱し男達を目線を集める格好を好んだであろう。それをいつもよりスカートを上げるというちょっとした背伸びに抑えたのは、肉体の快楽より精神の快楽いやもっと単純な、恋するものに気に入られたい、と言うようなささやかな乙女心なのかもしれない
「はぁ…お目覚めにいつかな…」
その感情が人でなく蟲に、そして主従関係という不幸も、幸せに溺れるよう洗脳された綾音が気付く事はないだろう。
P:441
ただ盲目的な妄想に浸りながら、綾音は鏡に映る自分を見ていた。控え目の発育を制服で隠すような自信の無い少女の貧相な身体が、一晩で張りを増して美味しそうに肉付き、太股や首元から覗く肌の艶が、まるで制服で封じ切れずに溢れ出たように、色気を秘めた肢体へ成長していたのだ。その変化に思わず見惚れ、そして恋患いの思いに耽る。しかし、その陶酔に掛かる時間は短いものだった。
「あやねー!ねぇ見て見て!」
ドタドタとした音に乗ってガチャと部屋の扉が勢い良く開き、綾音は驚きに肩を竦ませた。
P:442
「も、もう、お姉ちゃん!驚かさないで…え、ええっ!」
その騒音に慌てた顔で振り向き、美佐を見てさらに大きく見開いた
「お、姉ちゃん、それ…制服?」
「んっふふ〜、どうかしら?」
少し前の綾音と同じく、その場でくるりと回って見せてスカートを翻した。それは少し前まで見慣れていた、今と少しデザインの違う星陸学園の制服姿であり、初めて見る姉の浮かれ様の姿であった。
「久々の学園だから引っ張り出してみたけど、ふふ、なんだかカワイイ系の気分!ウェストも思ったより余裕で良かった〜」
P:443
妙なハイテンションで騒ぎながら次は両手を持ち上げて肘で組み、腰を捻って胸を突き出すようなポーズを決める。しかし綾音もさすがに呆れた気分になり
「お姉ちゃん…ちょっと…ね?」
なんとも言葉に詰まった感想を発してしまうと、微妙な空気を読んだ美佐はハッと我に返って空白を置き、そして首からうなだれた。ブツブツと年齢がどうだ若返り云々といった言葉を呟いていたが、一体何に抑圧されてどう解放したのかは汗をひとつ流して首を傾げるしかなかった。
P:444
(あ、でも…)
学園に行くのを口実に制服を引っ張り出してきた姉の突発的な行動につい気を奪われてしまったが、改めて見直せば、羨ましいほどに整っているグラマーで色気に満ちた肉体が制服の裏に隠れていた。衿で抑え切れない乳房はブラウスに肉感を写し、爆発的に実る桃尻はスカートから溢れんばかりに色めき立つ。制服の純情な可憐さをもぎ取り、自らの魅力を引き立てるために添える華へと豹変させてしまう妖艶な肢体は、異性はもちろん同性をも眩ませる魔性の魅力を滾らせていた。
P:445
(お姉ちゃんすごい…エッチ…)
まばゆいほどに蟲惑的で、あらゆる女を日陰に追いやるその美貌に綾音は見惚れながらも黒い感情が蠢くのを感じた。それは自惚れるほどの自分の肉体をまさに添え物とし、綾音の女性を否定するような傾国の美貌への嫉妬であった。
(でも、こんなの…ずるいよ…)
微熱と悪寒が背筋で入り混じるゾクゾクとした感覚に冒される。それだけ、見るだけで発情を催す美佐に心を奪われていた。比較するにもおこがましい我が身を隠すように両腕で我が身を抱き、付け根を隠すように内股にして身を閉じるしかなかった。
P:446
綾音の頭は回らず、口から溢れた唾をゴクリと飲み込んだ上に一筋の雫を唇に乗せてしまう。
「ふふ、どうしたの綾音…私がちょっと…Hすぎたかしら?」
どれだけ見惚れていたのか、綾音は美佐が立ち直り眼前に肉薄していた事にその声で気付いた。あまりの急接近に思わずきゃっと情けない悲鳴を上げてしまったが、お構いなしに美佐はさらに顔を寄せる。清廉な顔付きを紅色に蕩けさせたその美貌が、鼻と鼻のつく位置で妖しく微笑んだ。
「うふ、綾音だって可愛くていやらしい…食べちゃいたいくらい」
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唇から舌が割って出ると、その先が綾音に至る。そして聞かせるような唾音を立てながら、綾音の口から流れた筋の跡を舐め上げた。
「やあ、ああっ、ダメ、だよぉ…お姉ちゃんの方が、すごすぎて…私、おかしくなっちゃう…!」
ジュルリと立ち上る猥音と熱いナメクジが這うような感覚に耐え、綾音は震えながら抵抗を表した。彼女の主への貞操や牝に屈する事へ牝としての意地だろうと美佐は感じたが、あえてニヤリと嘲る顔を作り容赦なく妹の唇を奪った。
「んんっ…ちゅぱ…あはぁ…うふふ、食べちゃったぁ…」
P:448
その言葉が綾音の糸が切れる。反撃にと美佐の唇を奪うと、負けじと美佐も口と舌を絡めてた。その熱はお互いの心を溶かすと、泥になった理性を塗りあうように身体までを摺り合わせだした。美佐は両腕で妹を抱いて制服に跡が浮きそうに突起した乳首を擦り合わせ、綾音は抱擁を甘受しながら姉のスカートに膝を入れて割れ目をいじる。人を欺くための制服の裏に下着は無く、生地と肌が直接触れる感覚と布越しに伝わる体温が、姉妹に新しい性感を刻み付け牝の烙印を心に焼き付ける。
「はぁっ、あぁ…可愛いよ、気持ちいいよ、綾音っ…はぁうん!」
P:449
しかし耽美な姉妹の愛撫に溺れていたはずの美佐が突然大きな声を上げると両手ごと綾音から離れた
「あっ…お姉ちゃん、どうし…」
花園の心地だった綾音は現実に引き戻され、苦情も兼ねて姉に声を掛けた、が、その瞬間、ドクンと強烈な鼓動が綾音の中で木魂した
「はあぁ!あっ、ああ…っ!」
振動の波が突き上がり頭から抜けていく。その衝撃に上半身を仰け反らせ、ビクビクと痙攣するような電撃を神経に反射させる。起立したまま崩れなかったのは、その震源が身体の中軸だからだろう。
「ぁあ…催淫蟲様ぁ…」
P:450
綾音は恐る恐るその名を呼んだ。二人の中に眠っていたはずの蟲が、目覚めると同時に繋がった肉質から快楽と支配の電撃を発して蠢いたのだ。寄生された者は子宮から全細胞に妖気を通され、見えない手の愛撫に悶えながら自らの意思を蟲に乗っ取られていく。
「あはぁ…は、はひっ!も、申し訳ありませぇん…私たちだけで、楽しんでしま、うっ、ひゃあ!」
「ご、ごめんなさい!ご主人様ぁ…ああ!お許しくださいっ!」
しかし精神を犯されようが彼女達には恐怖も抵抗も無く、むしろ心から悦びに震えながら自ら股を開き、その触手を受け入れていた。
P:451
それは二人の心に降りた情景であったが、もれなくその情欲に現実の肉体も突き動かされれた。まずは美佐が中腰で身を屈めて激しく尻を振り、獣のように後背位をねだる格好で半狂乱に叫び出す。
「おっ、あぅぁ!はひ!私、美佐はダメな子です!妹に発情しっ、ひゃあ!れう、いつでも盛ってる牝犬なんですぅ!催淫蟲様のためにあるおま○こにしか価値のない淫乱な家畜!だからぁっ、もっとお仕置きっ!ああ!調教して!」
短いスカートの裏からチラチラと緩んだ淫穴が覗き、さらに蟲の尾が出入りする。二つの肉が交尾し愛液を撒き散らす。
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一方の綾音は小さく身体を縮め、蒼白な表情を浮かべて呟き出す。
「ご、ごめんなさい、綾音は悪い子です…蟲様が居ながら、お姉ちゃんの、に…欲情してぇ…誘惑に勝てず、浅ましく求めてしまって…はぁっ!反省しなきゃいけないの!ん!のに!蟲様の朝勃ち、目覚めの一突きでっ、こんな感じて、お、オナニーしちゃう…スケベな事しか頭にない、変態なんですぅ…ああっ、捨てないで!見捨てないで下さい!ご主人様ぁ!」
涙目になりながら罪悪感に満ちた感情に苛まれながらも、蟲の陵辱に同調して胸や股間の性感帯に手を伸ばして弄くる。
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二人は夢遊病のように独り踊る。それは催淫蟲による下僕の粗相、つまり勝手な快楽を貪っていた事への怒りと、寄生の侵食度合いを確認するテストであった。
「あはぁっ!ご、ご主人様あぁ!き、気持ちいいのぉ!この快楽に美佐は服従していますのぉ!」
「ひゃん!ああ、ごめんなさい!蟲様!綾音は絶対、ご主人様には逆らいませんからぁぁ!」
狂乱のままに発する姉妹が何を聞き、蟲がその言葉を理解しているかは分からない。だが、寄生洗脳の状態は彼女たちの血や気の流れから、蟲の遺伝子が記憶している牝奴隷という解に至った。
P:454
ハードな試験結果に満足すると、子宮責めのバイブレートを弱めて新たな命令を下す。
「ごひゅっ、じんっ!はひぃ!」
「あぁ、わ、分かりまひたぁ…」
精神の蹂躙で絶頂を向かえる寸前まで連れ去られ、そしてその波が突然に引いた事に姉妹は安心より不満が残ったが、蟲からの命令は首輪に付けられたリードと同じく牝犬では逆らえない。二人は綱で催促されるようにフラフラと姿勢を立ち直し、歩を揃えて鏡の前に向かった。一人用の立て鏡にはそれぞれの半身が映り、赤く蕩けた表情で虚ろな瞳を見つめていた。
P:455
欲望に昂ぶった太股は正直に震えその付け根をいじる様にモジモジと摺り合わせていたが、蟲に支配された二人はこの程度の刺激では満足できるはずもなく、さらなる欲情に焼き焦がれるだけだった。だから
「ご褒美」
を期待して、スカートにそっと手を伸ばした。
「んんっ…」
「はあぁ…」
そして小さく溜息を吐き、摘んだ裾ごと持ち上げると、短いスカートは簡単に捲れあがり彼女たちの秘部を露わにした。白い布で守られているべきそこは、桃色の肉が熱く爛れるように開き、愛蜜が香るいやらしい蟲の巣穴として、肌と陰部を鏡に晒していた。
P:456
姉妹は生まれたままの、生まれ変わったそこに目を奪われていたがその意思はさらに向こうを見つめていた。その淫穴の底に蠢く妖を
「…私は…催淫蟲様の下僕…」
「…私は…催淫蟲様の奴隷…」
そして恥部を見せながら、感情の抜けた顔で呟き出した。
「私たちは…ご主人様のために、全てを投げ捨てて働きます…」
「私たちは…ご主人様のために、この身を奉げて尽くします…」
それは蟲の下した命令…寄生試験の締めであり、完全支配の確認のために、忠誠の誓いを立てる事であった。
P:457
「仲間や退魔師…私たちの敵どもを催淫蟲様の生贄にし…自ら奉仕させるように欺き裏切る…」
「友達やクラスメイト…みんなに寄生させて、催淫蟲様のエサにするため…この快楽を教える…」
「そして全ての人をご主人様に服従させ…催淫蟲様の世界を…」
「そして全ての人がご主人様の為に生きる…催淫蟲様の世界が…」
抑制された声とは裏腹に、二人の肉体に沸き起こる欲情は激しさを増していく。妄想を言葉にさせられる羞恥と、その言葉がまさしく言霊となり、自分に課せられる使命となる事がたまらなく重く、そして、どこまでも甘美であった。
P:458
「わっ、私たちは屈服した牝巫女…さ、催淫蟲様に逆らう退魔巫女はっ、もっ…あぁ、みんな同じ、おなじなの!同じにするのぉ!」
「わ、私たちは洗脳された牝奴隷…ご、御主人様を好きになる幸せんぁ、ああ…優美ちゃん、晶さん…みんな好き!好きなのぉ…!」
やがてその熱も頭に回り、心が甘く溶け落ちていく。ドロドロになった精神は思考を奪い呂律も怪しくなり、二人は淫猥な妄執に操られ出していた。それは淫魔も呆れるような貪欲さだったが、二匹の催淫蟲はこの有様に十分な結果を感じながら、ブレーキを踏む。
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「あっ、ひゃあ!」
「うぁあ!」
グシュっと生々しい音が走った。それに姉妹も一際大きな鳴き声が乗り、壊れたラジオが沈黙する。
「ぁ…おっ、あはぁ、すごぃ…」
「ぅ…あっ…気持ちっ、いい…」
待ち焦がれたご褒美が全身を駆け巡り、その至福を堪能するために口を閉じたのだ。しかし甘すぎる官能が溢れ、感涙となり、愛液となり、喘ぎとなり、いくつもの穴から歓喜が零れ落ちた。特に下の口はひどく濡れ、秘裂から覗く蟲の尾をマーブル模様に飾る。それは潤滑剤として十分な形だった。
「あひぃっ!いっ!熱いのぉっ!イイのっ、もっと犯してぇ!」
P:460
蟲の強烈なピストンが始まると、再び美佐が大きな声を上げた。綾音も続き身体をもじりながら喘ぐ
「ひゃあ!気持ちっ、いいです!ご主人様ぁ、私、愛してますぅ…綾音、幸せなのぉ!イイのっ!」
姉妹が鏡の前でまたも踊り出す。しかし今度はソロの練習でなく、パートナーとの競演だ。陰部で自らの肉体を上下させる蟲を、牝が裂目を締めて支える。そこで生まれる摩擦と粘液が狂おしいほどの快楽となり、その共同作業が夫婦や主従のように思慕を募らせる。グシュグシュという性交の音が巡る度に、美佐と綾音は蟲への想いを深めていくのだ。
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「いっ!いぃ!蟲様!あ、ありがとうございますぅ!ご褒美っ!私を躾けていただき!この快楽を与えってへ、いらぁ、ありぁ!!」
「ひぃ!い、綾音は、誓いまう!永遠の愛をっ!おぉ!催淫蟲のっお嫁にぃ!なひっ!いぃぃ!!」
火照っていた身体は、肉と心が擦れてあっという間に燃え盛る。その炎に脳髄を焼かれ、恥も外聞も腰を振り胸を揺らし、淫部から昇り詰める衝動に身を任せていた。寄生する蟲の動きもその破廉恥な姿に興奮しているかのように加速し、すぼめられた淫穴に楔を打ち込んで快楽神経に触手針を刺す。
P:462
「あっ、ああぁぁ!イくぅっ!」
「は、はひっ、イきますぅ!!」
すでに蟲に屈している姉妹は何の迷いもなくその刺激を受け入れ、快楽の奔流に飲み込まれて絶頂を迎えた。自ら渦に飛び込んだように大きな声で嬉々として叫んで、その場で腰をビクビクと戦慄いて淫汁を撒き散らしていた。
「…ぁ、はぁ、はぁ…あぁぁぁ…制服…はぁ…汚れっ、ひゃう…」
余韻の溶けた目で鏡に映る自分を見つめながら、美佐が呟いた。鏡に映る姉妹の服には陵辱の跡にも似た染みが付着していたが、なによりも飛び散った愛液が鏡面を垂れて、その身をなぞっていた。
P:463
「…ぁ、んっ、はぁん…すごく、良かったです…ご主人、様ぁ…」
肩で呼吸して余熱に震える綾音も内にいる蟲へ向かって愛しそうに語りかける。二人が目覚め、知性ある瞬間を経由してからのこの邂逅は、催淫蟲の寄生支配が完成している事を示していた。
「…んふっ、はぁ、はぁ…それじゃあ、行きましょうか…綾音」
「…はぁ、はいっ、お姉ちゃん…行きましょう、ご主人様ぁ…」
迷いも意思も写さない瞳が鏡から離れると、臭いも汚れもそのままに乱れた制服を着直してスカートを下ろして下腹部を隠した。
P:464
それでも零れる雫も気に留めず、歩いた後に太股を伝う愛液の沁みを残しながら、姉妹は催淫蟲の為に歩み出した…


こうして蟲の巫女へ生まれ変わった三条の姉妹は、快楽の天啓に従い星陵学園へと向かう。神条という宿敵を撃ち堕とし、崇める神をこの世界に降ろすために。
P:666
視覚に反応が起こる。どうやら外と内が分かる程度の月夜の下、木目の床の上に居るようだ。何処に放られたのかと身体を起こそうとした時、ブゥンという羽音が聞こえた。何事かと振り返ると、そこには昆虫を思わせる透明な骨組みに粘液をまぶせた羽根が生えているのだ。そう、あなたの背中から。およそ人間らしからぬ感覚に驚き声を上げた、上げたはずだが、喉から音は出ない。そう、あなたに首はないのだ。確かめようにも腕も無い、肩から先は剥き出した肉塊の色をした曲線。それはまるで
「蟲」
そのものだ。
P:667
…ああ、そうか、とあなたは冷静にその人外の肉体を受け止めた。これが望んだ形、つまりは『催淫蟲』の身体なのだろう。その理解に至った時、神経と精神と絡み合った。息をしようと思えば皮膚が陰気を吐き、動こうと思えば歩くように羽根で身を浮かす。もはや腕や首というのがどういう感覚が思い出せないほど、あなたは蟲に成り果てたのだ。しかし身体の悩みが解決した後、ひとつの疑問が浮かんだ。イメージのある催淫蟲は、卑猥な玩具のような芋虫のはず。だが、今のあなたは蜂のような姿をしている。
P:668
その答えのヒントは、間もなく向こうから訪れてきた。
「あーん、暗いよー」
暗夜の方からした声は、心細さを紛らわせる小さな独り言だったがあなたの聴覚に届いた。言葉の意味は理解できなかったが、音が震えたという感覚だけは確実に捕らえた。その波は、この肉体の好物が発するものだからだ。そしてあなたは本能に釣られ発信源の方を向くと、行こうと考えるだけで足が動くように、自然と空を飛んだ。そして、あっという間に、その好物の前に飛び出た。
「な、何?!」
P:669
ショートカットの元気そうな女の子、ラインを引き立てる程度に引き締まった肢体、そして未成熟な感覚に潜む淫欲の香…あなたの目に、実に甘美な獲物が止まる。
「ひっ!」
自分よりも何十倍の大きさをしているが、人が巨木に怯えて果実を狩るのに戸惑ったりしないよう、あなたには何の恐怖感はない。むしろ黒い影に怯えているのは相手の方で、その塊が何かと確認もせずに振り向き逃げ出した。スカートや髪の乱れも気に留めない一目散、だが、羽虫になったあなたに比べ、余り無駄が多すぎた。
P:670
あなたは少し先に行こうと身体を進めただけで、まさしく飛ぶのだ。あっという間に女の子の前に回り込んだ。彼女はまた悲鳴を上げたが、諦めずもう一度踵を返して走る。しかし、腕を振り脚を上げる走駆という動作が、羽根を動かすという動作ひとつで足りる身にはひどく緩慢だった。再び回り込み、そして振り返る。その繰り返しはからかいの遊びに思えたが、その実それは本格的な狩猟。肉体から振り撒かれる体液が麻痺毒となり、空気を操る羽音が催眠音波となり、獲物を弱らせて肉を美味に引き立てるからだ。
P:671
「はぁ…はぁ…」
そうした催淫蟲の猟場とは気付かず逃げ回る少女は、妖気と媚薬を荒い呼吸と共に体内に取り入れ酸素と共に血に混ぜる。後は必死に走った身体が血流を巡らせて、熟成された雌肉の出来上がりだ。
「ひゃう!」
いよいよ限界を向かえ足がもつれると、ドサっという音を立ててその場に倒れ込んだ。崩れ落ちた身体は真っ赤な顔で息を荒げ、瞳を涙で濁らせている。だがそれは不気味な昆虫に襲われた恐怖よりも、溶岩のように滾る欲情の発芽への戸惑いに怯えるものだ。
P:672
「はぁ、はあ…もうっ、ダメなの…なのにっ、熱いの、おかしいよぉ…足腰っ、動かないのにっ、なんか来てるぅ!」
悪夢を拒むうわ言も、淫らな夢に染まった甘い音色となる。肉体はあなたの毒によく順応し、微熱が生む汗の匂いも発情を誘う香りを放ち、淫性の刺激に反応してびくびくと震える腰や背中の動きも雄を集める牝の踊りとなる。これで上出来だとあなたの本能が告げると、狩りの興奮冷めやらぬまま、下半身からまた別の熱が湧き上がってきた。それは蜂の針を思わせる肉棒である。
P:673
それは蟲の身体に比較しては巨大な突起だが、女性を喜ばせる一物としては、所詮は昆虫サイズ。それでもこの悪霊の力をすれば、この牝を相手にするにはなんら問題ない。漲る管と、そこから溢れる白濁の汁で確信できた。
「あっ、ああぁぁぁ…!」
少女の怯え声が聴こえた時には、すでにその声が頭上が響く位置。すなわち、肌蹴たスカートの内にすっと飛び込み、吸いきれないほどに蜜を編み出す白い布の前に構えた時だ。既に下着として機能していないそれは、愛液の滑りで簡単にずれ、秘密の園を曝け出す。
P:674
あとはそこに向けて、この怒張を突き刺すだけだ。直接肉欲を楽しむ事はできなさそうだが、今はこれが最上の獲得物だというのが本能に刻まれた答えなのである。
「あぐぅ!!」
ぐしゅり、と粘着音と共に、迷わず彼女の胎内を犯した。肉襞を味わうとまではいかないが、それでも少女の汁の味は極上だ。
「きゃあぁー!!」
だが咀嚼の余裕もなく、蟲の身体には負荷になるほどの悲鳴が突き刺さった。異物を挿入された恐怖と絶望に少女の精神が耐え切れなくなり、溢れたものだ。
P:675
しかし、だからこそ、放出してしまえば最後、要を失った理性は瓦解する。彼女から未知の感覚にゾクゾクと悦びに震えているのが、針を通じて伝わる。それが淫欲に寄るもので、自分が統べている事は確信できる。なぜなら、あなたは催淫蟲だからだ。
「あっ、あああ…」
そんな充実した手ごたえと感じると、この身体が早漏なのか、あっという間に蟲の針から精液が放出される。びゅくびゅくと射精の快楽が巡り満足感を得た。一方で少女は身体をぴくぴくさせるだけで、気を失って何ひとつ響かない。
P:676
今はまだ種を蒔く時節なのだろう。あなたは蟲としての活動を十分に果たした事を満足しながら、陵辱の傷跡を野に晒す少女を置き去りに闇の中へ飛び立っていった…
P:677
翌日、という概念は日夜を規則正しく生きる人間のもので、蟲と化したあなたにそれを理解する事は出来なかった。ともかく、少女を襲いそれから次に目が醒めた時。あなたは二つの違和感を覚えた。ひとつは闇夜に消えてから、力尽きたように眠ってしまった事。狩猟の興奮で気付かずに全力を発揮していたが、どうやら人間のように限界を知らせるや疲労や苦痛といったブレーキ機能を持たないようだ。自在に宙を舞った時とは違い、何処かの物陰に潜む今は、闇影と一体化してしまったかのように身体が重い。
P:678
この羽化した催淫蟲が芋虫からの変異種か、あるいは選ばれた上位種なのかは知る由もないが、悪霊と言えど肉体を持って具現化している以上は、虫という生物の法に則るようだ。だからこそ本能のままに生殖を行い…そして、寄生先を得て生命力を養うのだろう。もうひとつの違和感は、自らが襲った少女の事だった。あれから彼女がどうしかも知らないはずなのに、何故かその存在を感じるのだ。そう、まるで彼女が側にいる…いやむしろ、彼女の中にいるかのように。
P:679
「ひゃあ!」
ふいにあなたの脳裏に、女の子の小さな悲鳴が届いた。
「ん、どうったの?早矢?」
「あっ、うん、なんでも…ない」
そして大した起伏も無い日常的な空気の中、どこかの学校らしき空間を視聴する。これがしばらく逸していた人間の感覚だと気付く間に、さらなる波が意識に混ざる。
(昨日の……あんなの…襲わ……なんて……も言え……いよ…)
そして人の考えるという知覚があなたを刺激した時、その中に浮かんだ『あんなの』が自分の身体とリンクした。
P:680
(お、思い出し………で…ヘンになっ………私…はじめて………)
それから次々と、彼女の思考がノイズ混じりのラジオのように流れていく。興味深くそれに意識を傾けると、耳の時と同じく言葉が鮮明になっていった。
(熱くてドロドロな精液みたいなの注がれて、それが全身に駆け巡ってるみたい…身体のどこもかしもビンカン…学校でオナニーなんて変態みたいになってるのに、もっと、もっと、って疼く…!)
秘密にしているはずの、桃色に染まったストリーム。だがしかし、身体の内に潜むアンテナから、あなたはそれを傍受しているのだ。
P:681
この思念はあなたが犯した早矢という少女の意識。それを見聞きできるという事は、そこに『あなた』が居るという事…催淫蟲が、彼女の胎内に宿っているという事になる。そう確信して、あなたはもう一度彼女の意思に自分を、より強く濃いモノを混ぜ込んだ。
「んっ…あはぁ…」
子宮の底から心地良い電撃が全身を廻り、早矢が小さく喘いで震える。また友人に怪訝そうな顔をされたが、その事が知れる恥ずかしさから、下着の沁みが太股にまで伝っている事にも気付かないほど、慌てて否定した。
P:682
(お、おかしいよ…またアソコが熱くなってきちゃった…一度イッたから、さっきまで大丈夫だって、学校に居る間くらいは収まったと思ったのにっ…それに、今度の、なんだか奥から煮え立ってるみたいに…すごいよぉ…)
今までの精液に含まれた媚薬の中毒に足して、あなたからの邪な念波が混ざっているのだ。逆らう術を知らないこの娘の精神を少しけし掛けてやれば、この初心な理性は肉欲の情熱にあっという間に焼き焦げて、その場で服を脱ぎ捨てながら自慰を始め、友人の前で絶頂するだろう。
P:683
そんな醜態を晒させる事も容易く出来るのが、寄生するモノの支配力で、されたモノの悲劇だが、初めて開拓した血肉をそんな愉悦目的で使う事は考えられなかった。力を増やすため、人を喰らうため、種の保存のため、寄生先の肉体は有効に使い尽くさなくてはいけない。そのためにあなたは、蟲を通じて早矢の意識に触れた。自らの触手を彼女の魂に絡みつかせるイメージを作り上げ、彼女の脳内で形にする。
(ああぁぁぁ!な、何コレっ?私の心に、触らなぁ、あ、ひゃあん!)
P:684
魂の悲鳴を聞きながら透き通る裸の心に一本の触手を刺し、そのまま液状の妖力を溶かし込む。絵になればグロテスクな肉体改造も、これは精神空間での事。触手の拘束から挿入まで時間は発生せず、ただ彼女の脳に一筋の閃きだけが走った。
(あ…はぁ…そうよ、そうだよ、こんなの…忘れられないから…アレじゃないから…私を挿した、私の中に来た、あの熱い精液が足りないからだよ…)
それがあなたの注いだ洗脳液がもたらしたものと知らずに、彼女は頭の底から浮いてきたものを肯定する。
P:685
(んんっ、だから、オナニーしたってダメなんだぁ…我慢して、今は耐えなきゃダメなんだ…)
彼女に寄生した蟲は、まだ具現化されてない精子のような霊魂だが、妖気や霊力といったものを知らない少女ひとりを自在にコントロールには余るほどの力を持っている。あとは彼女自らの意思で、無理矢理引き出された性欲を悶えながら押さえ込むだろう。
(はぁ…我慢して、一人でイかないようにしてっ…ん…そして…)
その先に待つものがどんな結末かも考えられないほどの欲情を、独り抱えるのだ。
P:686
あとはあなたの元に自らの意思で来るように誘導すればいいが、彼女が学校に居た事からも、今はまだ日が高く人目に付く時間帯。後催眠でそのスイッチを仕込むに留めて、彼女との交信を切る。視界が賑やかで様々な色を見せる学校風景から何処とも知れない物陰に切り替わった。あのまま彼女の悶絶を楽しむのも一興だが、目的を達した途端に、また急速に意識が遠のいていたのだ。加減を知らない力に振り回されてあなたはまた、しばらくの眠りに付いた…

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