■第45話 靖国神社の正体
あまり日本人に知られていないことを書こう。毎年この頃になると閣僚の”靖国参拝”が問題になるが、そもそも「靖国神社」の正体とは何なのかを専門の立場から明らかにしてみたい。
多くの日本人は、靖国神社が日本古来から伝わる神社の一つ、「宇佐八幡宮」や「伊勢神宮」などの一つと思っている。が、じつはコレ全く”別物”なのだ。
そもそも古来より日本に伝わってきたのが「神道(Sintou)」なるもので、幕末期の世情不安の頃から、新しく「古神道」なるものが台頭してくる。新しいのに古神道とは妙だが、要は天皇を中心に日本を守り固めようとする「勤皇思想」が拡大し、神道への復古運動が過熱しはじめたのだ。
その中心にいたのが平田篤胤(Hirata Atutane)で、平田はそれまでの神道を仏教に従属した”俗神道”と切捨て、外来の道教思想や陰陽道まで排斥しようと画策する。その結果、明治維新後、宮中の陰陽寮から陰陽師が全て追放され、全国に廃仏毀釈の運動が起きて寺が焼き討ちにあい、経典が焼かれ仏像が打ち壊された。
結果生じたのが、神道の根源を追及する未知への体系運動で、一種の啓蒙運動にまで拡大する。「日本霊学」なる思想はこうして誕生したが、武家時代の強力な中央集権体制に至らなかった明治政府は、こうした動きを利用する。
天皇を神道の最高位に位置する”現人神”に置き、何者も命を投げ出さねばならない絶対的存在と流布したのだ。それに利用されたのが当時の教育制度で、「逆らう者は日本国から追放する」と言い放った。
かくして誕生したのが「国家神道」である。国家神道は権威を増す目的で、全国各地の神社と鎮守の森の統合を図り、幾つもの神社を閉鎖に追い込んだ。これを「神社合祀」という。
これに反逆したのが世界的博物学者だった南方熊楠で、最後は牢獄に入れられる。かくして明治新政府の政策で誕生した国家神道の本部として造られたのが靖国神社である。
薩摩(鹿児島県)と長州(山口県)の命令に従う者だけが祀られるととんでもなく偏った神社で、今も「西南戦争」を起こした西郷隆盛は賊軍として排斥され続けている。
最後は、薩長の明治政府が勝手に考えた(神道ではない)、国のために死ねば英霊が靖国に集合するという、まさに”カルト思想”で国民を操ったのである。その”国家カルト”の総本部が靖国神社だ。
別に中国の肩を持つわけではないが、外の国から見たら、まるで上九一色村(今は変名)のオウム真理教のサティアンがそのまま残りつづけ、政治家たちが毎年詣でている姿になる。
結論を言おう。靖国神社を国の中核に置く思想は、当時の支配者が勝手に創り上げた中央集権へのシンボルに過ぎず、神道と名乗っていても、「神社本庁」にも所属しない全くの別物ということだ。(もちろん、神社本庁=神道のお墨付きではない)
靖国に傾倒する人々は、未だに当時の国家思想から離れられず、英霊が祀られていると信じて参拝する。そられの人々は先祖供養の一つとして行うため是とされてもいいが、問題は、靖国への”狂信者”が未だに数多く存在し、自衛隊増強(できれば大増強)を是とし、天皇中心の八紘一宇の妄想に共鳴する右翼集団なのだ。
この数はバカにならず、これからが自分たちの出番とてぐすねを引いて待ち構えている。彼らは、防衛庁が防衛省に格上げされ、自衛隊を自衛軍と明記される機会を今か今かと待ち構えてきた。
時代を逆行させるなら、もっと昔の飛鳥時代ぐらいへ逆行させてほしいものだ(笑)が、彼らの逆行の終点は、あくまで日本の軍備が増強されていた時代で、軍の復興が根底にある。国家カルトは今も健在で、毎年、自民党が参拝し、カルト思想を神道というオブラートに包み込みながら継承してきた。
まずいのはこうした行動が、いつの間にか”国の威信”と結びついたことだ。だから靖国批判を国の面子を傷つける発言として反発する傾向が生まれるし、多くの日本人は“日本古来の神道が外国から汚されている!!”と信じ込むようになった。まさにカルトの思惑通りの反応が生じている。
筆者は、日本が真に独立国になるには、国家カルトなど不要で、逆に邪魔になるだけと考えている。日本人の多くは、神道の系譜など知らずに靖国問題を語り合っている。あの神社は、信教の自由をうたったアメリカの脇をすり抜け、運良く生き延びたカルトの総本部だ。あれは神道を装った別物で、神道の根幹を共有するだけにかえってタチが悪い。
それを知った上で、観光として靖国神社を訪れることには何の依存も無い。建物自体に罪は無いからだ。問題は、靖国神社を利用して再び日本を軍国主義時代へ逆行させたい輩で、自民党や自衛隊トップ連中の中に信じられないほど大勢いることだ。
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