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中国漁船の“侵攻”も急増 韓国に次いで紛争地と化した九州沖EEZ
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水産庁の漁業取締船「白鴎丸」(右)が拿捕した中国の底曳き網漁船「浙●(=山へんに令)漁23910」=6日、長崎県五島列島沖(水産庁提供) 九州沖東シナ海の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、中国漁船による違法操業がなお後を絶たない。水産庁九州漁業調整事務所が昨年拿捕(だほ)した外国漁船13隻のうち中国漁船は6隻に上る。6日も中国の底曳き網漁船「浙●漁23910」(288トン)が、漁業主権法違反の疑いで拿捕された。かつて韓国と漁業戦争を引き起こした中国人漁業者は、日本のEEZ内に確実に“侵攻”しつつある。(田中一世)
「日本のEEZ内は中国より大きな魚がたくさん獲れる。大きい方が高く売れるのでこれからも日本のEEZ内で操業したい…」
水産庁漁業取締船「白鴎丸」に拿捕された「浙●漁23910」の船長、許軍祥容疑者(37)=現行犯逮捕=は、取り調べに対してこう供述した。
浙●漁は6日、長崎県の五島列島・女島の南西約80キロのEEZ内で操業し、実際は14・1トン漁獲量があったのに、操業日誌に2・0トンと過小に記載した疑いが持たれている。
EEZ内での他国の漁船操業は許可制となっている。日本は中国、韓国、ロシアとそれぞれ2国間で漁業協定を結んでおり、漁船総数の上限や、船ごとの漁獲量などが細かく定められているのだ。
水産庁九州漁業調整事務所は2008~2012年の5年間で、管内の東シナ海や日本海で無許可操業や漁獲量超過などの容疑で外国漁船計59隻を拿捕した。このうち韓国漁船が53隻、台湾漁船が2隻、中国漁船は4隻にすぎなかった。
ところが2013年に入ると、EEZ内で操業する中国漁船数が急増した。日中境界に近い五島列島沖のEEZ内で6隻を拿捕。水産庁の取締船が停船を命じたのに逃走した中国漁船も10隻あった。
水産庁の担当者は「EEZ内は許可取得が面倒なため、かつては日本のEEZ内で操業する中国漁船は少なかった。昨年から急激に増えたのは、中国のEEZ内で漁船が増えすぎたため、日本側にはみ出してきているとみられる」と説明する。
中国側が漁場を広げる背景には、中国内での魚需要の高まりがある。
かつて中国で海水魚は高級食材だったが、経済発展により国民の所得が増えた上、流通・保存技術が向上したことにより、内陸部でも海水魚が人気を集めるようになった。
国際連合食糧農業機関(FAO)の統計によると、2000年の中国内での海産物消費量は3150万トン、漁船数は約48万7千隻だった。これが2009年には消費量4236万トンに増え、漁船数も67万2千隻になった。現在はさらに増えているとみられる。
中国沿岸部だけで、13億5000万人の胃袋を満足させる漁獲量を賄うことはできない。
FAOによると、中国沿岸漁業の漁獲量は、1990年の578万トンから2000年に1255万トンと2倍以上に増えたが、その後は頭打ちとなり、07年は1191万トンに微減した。北京に近い渤海や、上海に近い舟山群島周辺などかつての好漁場は、ほぼ枯渇状態といわれる。
このため、中国漁船は好漁場を求めて東進を始めた。まず狙われたのが、韓国のEEZだった。
これに伴い、中韓の漁船のトラブルも急増した。2011年12月には、中国漁船を拿捕しようとした韓国海洋警察庁の隊員が中国人漁師に刺殺される事件が起きた。翌年10月、今度は中国漁船の船員が、海洋警察庁隊員が撃ったゴム弾に当たり、死亡した。
次に狙われたのが。日本のEEZだった。
4、5年前から日中のEEZが重なり合う「中間水域」で、従来の底曳き網やイカ釣り漁船だけでなく、強力な集魚灯で魚群を大型網の中に集め、ホースで根こそぎ吸い取る「虎網漁船」が急増した。
日本はEEZ内で、水産資源を一気に枯渇させる虎網漁を禁じているが、水産庁の監視の目をかいくぐって侵入してくるケースもある。
2010年9月、沖縄・尖閣諸島付近で中国漁船が海上保安庁の船に体当たりする事件が起きたのも、こういう背景がある。
水産庁にも、日本の漁業者から中国漁船の取り締まり強化するよう要請が急増している。水産庁は、取締船を2014年度末までに現在の41隻から44隻に増強する計画だ。
五島列島の日本人漁業者は「中国漁船は乱暴で何をしでかすかわからない。近寄ってきたらその場を離れるしかない」と嘆く。
「漁業戦争」に敗れた韓国南部全羅南道のベテラン漁師はかつて産経新聞の取材に「やつらは次に必ず日本の海に行く。私らの海が奪われたのもあっという間だった」と語った。
今その時が来ている。
※●=山へんに令