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【静岡】

貨物船衝突事故・栄福丸 進まぬ補償、遺族焦り

◆中国人当直責任者 14日判決

伊豆大島沖で第18栄福丸と衝突事故を起こし、係留されている貨物船「ジィア・フイ」=1月7日、静岡市の清水港で、本社ヘリ「あさづる」から

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 昨年九月に東京・伊豆大島沖で貨物船同士が衝突し、名古屋市の海運会社が所有する「第18栄福丸」の乗組員六人が死亡した事故で、相手方の「JIA HUI」(ジィア・フイ)の中国の船主側が栄福丸の船体補償交渉に応じない状況が続いている。事故当時のジィア・フイの当直責任者で、業務上過失致死罪などに問われた中国籍の夏紅波被告(36)の十四日の判決に執行猶予が付けば釈放になる。栄福丸関係者から、判決後のさらなる停滞を懸念する声があがる。

 焼津市の高井智昭さん=当時(40)=ら乗組員六人への遺族補償では、ジィア・フイ側の保険会社が最大五億三千八百万円を提示したとされる。先月の静岡地裁沼津支部の公判で夏被告側が明らかにした。栄福丸を所有する丸仲海運(名古屋市港区)の杉下吉利社長(64)は「具体的な交渉はまだのようだ」と話す。遺族の一人は、公判で提示額を初めて知ったほどで「船主側に誠意ある対応がみられず、夏被告が中国に帰ると話が停滞するのではないか」と気をもむ。

 ジィア・フイの船主側との間では船体などの補償も滞っている。栄福丸は船体だけで損失は四億九千万円。積み荷や逸失利益などを合わせると損失は十億円を超えるという。丸仲海運には損保会社から保険金が支払われたが、沈没した栄福丸が稼働できなくなったことによる逸失利益は対象外で、毎月千三百万円の損失が出ている。

 ジィア・フイの船主側からは、今も謝罪の電話さえなく、中国の保険会社は、国外での操船免許を持たない夏被告が当直責任者だったことが免責に当たると主張。交渉に入れない状態が続く。損失をわずかでも回収したい栄福丸側は昨年十二月、静岡地裁にジィア・フイの差し押さえを申し立てたが、地裁の決定はまだ出ていない。

 丸仲海運に保険金を払った損保会社は先月二十日、夏被告に一億円の損害賠償を求める裁判を起こした。夏被告の過失で事故は起きたとして、船価の一部を請求している。

 この訴訟で、賠償命令が出ても日本の判決は中国国内での効力はない。賠償金を得られる見込みは低いが、夏被告を雇う船主側にも責任があると示し、交渉のテーブルにつかせるのが狙い。代理人は「交渉が進まないなら雇用会社側などを相手に中国で提訴するのも選択肢だ」と話した。

(斉藤明彦)

 

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