賃金は安く、身分は不安定――。そんな派遣社員の不満に応える中身になるのか。徹底的に詰めるのが国会の役割だ。

 厚生労働省の審議会で、労働者派遣制度の見直し案がまとまった。来月にも関連法案が提出される。

 新しい制度では、期間の制限なく派遣社員に任せていい仕事が、26の専門業務からすべての仕事へと広がる。

 現状では、パソコン操作を含む「事務用機器操作」なども専門業務の対象になっているためで、規制を撤廃する。

 これに対し、労働組合や野党などは「生涯、派遣で低賃金の労働者を増やす」と批判する。

 一方で、新制度では業務の内容にかかわらず、派遣先の同じ部署で働ける期間は、派遣会社に無期雇用されていない限り一律3年までにする。

 3年経った人については、派遣会社が派遣先に直接雇用を申し入れたり、別の派遣先を提供したりすることを義務づける。こちらは規制強化である。

 問題は、新しい規制が労働者にプラスに働くかどうかだ。

 現在、派遣労働者は135万人。特に専門26業務で働く60万人弱にとって、同じ仕事が続けられないことへの不安は大きいだろう。

 改正案は、業務の専門性が低く無期雇用への転換が難しい場合、同じ仕事を漫然と続けるより、3年ごとに新しい仕事で能力を磨き、キャリアアップに結びつけるほうがいいという考え方に立つ。

 であれば、派遣会社が新たな仕事を紹介するたびに給料が下がってしまうようなキャリアダウンを防ぐ工夫がいる。

 さらに、派遣先で同じような仕事をする正社員との「均衡待遇の推進」も大きな課題だ。

 通勤手当について正社員との差別を禁じるなどの具体策は、厚労省が「指針」で定めるという。どこまで実効性を持たせられるか。

 いずれも、派遣会社と労働行政の取り組みが問われる。

 これまでは、派遣を受ける側が労働者の質より料金の安さを優先させるなか、8万3千近くの派遣会社が乱立し、派遣料金の値下げ競争が起きていた。

 改正案では、届け出だけで派遣会社を設立できた制度を廃止し、すべて許可制にする。数を絞ることで、派遣会社の交渉力が上がり、労働者の処遇改善に結びつくところまで進むかどうかが焦点だ。

 法律の文言の先にある姿を、国会の論議を通じて浮かび上がらせてほしい。