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日本の「ベートーベン」、代作者の存在認める―聴覚も正常か

ウォール・ストリート・ジャーナル 2月7日(金)11時18分配信

 両耳が聞こえない日本の作曲家として知られる佐村河内守氏(50)が、実は自分では作曲していない上、聴覚も正常なようだ、と同氏のゴーストライターが暴露した。佐村河内氏が作ったとされる楽曲の1つは、ソチ冬季五輪のフィギュアスケート競技で日本人選手が使うことになっている。

 佐村河内氏は、「21世紀のベートーベン」などともてはやされていた。しかし同氏は今週、ゴーストライターにカネを支払って、国際的にも高く評価された交響曲を含む楽曲を作曲してもらっていたことを認めた。

 6日には大学非常勤講師で作曲の専門家、新垣隆氏(43)がそのゴーストライターだったと告白するとともに、佐村河内氏は実際には耳が聞こえると思うと述べた。しかし、佐村河内氏の弁護士は、同氏が聴覚障害者だと信じていると述べた。

 佐村河内氏は、原子爆弾で殺された広島の人々を追悼する「交響曲第1番 HIROSHIMA」で、評判になった。また、日本のフィギュアスケート選手でメダル候補の高橋大輔選手が今月13日に予定されているソチ五輪のショートプログラムで佐村河内氏の楽曲を使うことになっており、同氏の作曲家としての名声がさらに高まっていた。

 佐村河内氏は弁護士を通じて声明を発表し、自分の作曲だとした一部の作品は他人の作品だったと述べ、ファンと関係者を裏切ったことを謝罪した。声明は、同氏が精神的に動揺しており、自ら思いを伝えることができないとした。

 一方、高橋選手の関係者は、別人の作曲だったことが発覚したことで、同選手はショートプログラムで使用する楽曲を変更するつもりはないとの声明を発表した。「今はオリンピック直前の大切な時期なので、やるべきことに真摯(しんし)に取り組み、本番を迎えたい」とコメントしている。

 ゴーストライターであることを告白した新垣氏は、日本の音楽教育の名門である桐朋学園大学で教えている。新垣氏は6日、90分間にわたる記者会見で、「このままでは、日本を代表してソチ・オリンピックで活躍する高橋選手は、彼と私のうそを強化する材料になってしまうと思った」とし、オリンピック前に告白しなければならないという思いに駆られたと述べた。高橋選手は「ヴァイオリンのためのソナチネ」という楽曲を使うが、これも新垣氏の作品だという。

 新垣氏は、自分は佐村河内氏の「共犯者」だとし、「18年前に彼と初めて出会って以来、彼のために曲を書いてきた」と、交響曲HIROSHIMAを含め、20曲以上を作ったと語った。

 新垣氏はまた、佐村河内氏が新垣氏の作った曲を聴き、コメントすることもあったと述べ、その際2人の間では普通に会話を交わしたと述べ、「彼が聴覚障害者だと感じたことは一度もない」と語った。

 新垣氏は、もっと早く告白しようと思ったが、佐村河内氏が自殺すると脅したため告白できなかったと述べた。佐村河内氏の弁護士のコメントは得られていない。

 聴覚を失っても自らの芸術に没頭する作曲家のストーリーは、メディアの注目を集めていた。2001年、佐村河内氏は米誌タイムに対し、聴覚障害になったことは「神からの贈り物」のようなものだと述べていた。

 佐村河内氏の作品を販売していた日本コロムビアによると、同氏の作曲とされていた作品のCD販売枚数は22万枚で、売上高は税引き後で約600万ドル(約6億円)に上る。同社は佐村河内氏がその売り上げから得た印税は明らかにしなかった。また新垣氏によると、同氏が受け取ったのは18年間で700万円ほどだったという。

最終更新:2月7日(金)11時43分

ウォール・ストリート・ジャーナル

 

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