チェンジアップを投げる阪神・藤浪=宜野座村営野球場(撮影・岡田亮二)【拡大】
宜野座にやってきた熱狂的な阪神ファンの大半が見逃した。大挙集結した評論家も誰ひとりも見ていない。和田監督ですら目撃できなかった。藤浪の衝撃弾は、阪神キャンプ地の視線がすべて呉昇桓が初投げしたブルペンに注がれたランチタイムのメーン球場で生まれた。
突如始まった投手陣の特打。先頭を切ってケージに入った藤浪の11スイング目だった。打球は、小高い丘となっている左翼芝生席の奥。道路の少し手間まで飛んでいった。推定130メートル弾。
「当たれば飛ぶ方ですし、力はそれなりにあります」
26スイングでフェンスはわずか2発だけだったが、やはりパワーは並ではない。高校3年の時の甲子園でも春夏1本ずつ(春は2回戦、対九州学院、夏は準々決勝、対天理)の2発打った実績もある。同い年のライバル・大谷(日本ハム)の二刀流の陰に隠れてはいるが、その打撃も非凡なのだ。
ただ、プロ1年目の昨年は打率・027(37打数1安打)と悲惨だった。
「去年はヒット1本しか打っていないので。まあ、打てるにこしたことはないですが、僕は打つのが仕事ではない。最低限、バントはできるようになりたいです」
どこまでも謙虚。でも、その後に始まった野手の打撃練習でも、何本かしか到達しない場所に打ち込んだ。恐るべしだ。