記事
- 2012年12月24日 00:54
LNGと原油の月次輸入通関実績推移
原子力発電を停止したために液化天然ガス(LNG)による火力発電が増加し、それによって発電コストが上昇したため電力料金が引上げられました。そして、それは貿易収支が赤字化した主因のひとつとしてもあげられています。そこで、LNGの輸入量や金額(したがって通関価格)が2011年3月の地震発生以降どう推移しているのかを調べてみました(財務省貿易統計による)。
月次の実績をグラフにすると以下のようになります。目盛りの数値をいれていないのは、相対的な変化をみるために、2011年3月以前の数量・金額・価格がほぼ同じ水準になるように数値を調整しているからです(実質的には指数化しているのと同じです)。また、原子力発電所の稼働停止が始まった2011年3月以降は赤い四角で囲ってあります。

さて、上のグラフから明らかなことは、2011年3月以降のLNGの輸入量(タテ棒グラフ)はそれほど大きくは増加していないということです。月によって大きく変わりますが、概ね前年比1~3割増で、平均して2割増程度にみえます。勿論、LNGは火力発電だけに使用されているわけではありませんから、火力発電用途向けの輸入量増加率は、当然もっとずっと大きくなっているはずです。ただ、ここでは、LNG全体の輸入量は原子力発電所停止後もそれほど大きく増加しているわけではないということは認識しておく必要があると思います。
しかし、輸入量に比べて、輸入金額(円ベース:領域グラフ)の方はずっと大きく増加しています。すなわちそれは輸入単価(円ベース:折れ線グラフ)が上昇しているためです。原子力に替えてLNG火力発電を増やしたためのコスト上昇のかなりの部分は、LNG輸入単価(円ベース)の上昇の影響によるものと考えることができます。良く知られるように、LNGの価格は原油価格に連動しているようです(またそれは日本だけではなくEUも同様のようです)。そこで、原油の輸入通関実績も同様にグラフにしてみました。
原油の方は、より長い2000年1月から2012年10月までの期間をとっています。したがって、LNGの通関実績を見た2010年1月から2012年10月までの期間を赤い四角で囲ってあります。

まず、価格(折れ線グラフ)と金額(領域グラフ)の相対関係を見ると、リーマンショック以前はほぼ同しような水準で推移していたことがわかります。しかし、リーマンショック後は金額が価格を下回る傾向にあるので、原油輸入通関数量(タテ棒グラフ)はリーマンショック後減少する傾向にあることが分かります。これは省エネルギーの進展の影響もあるでしょうが、もっぱらリーマンショック後の日本の製造業の生産活動の縮小が影響しているのではないかと考えられます。
2010年1月以降の部分をみると、原油の輸入通関価格は再び上昇傾向に転じていて、LNGの輸入通関価格は概ねそれと類似の動きになっていることが分かります。2012年に入ってからの輸入価格(円ベース)の低下は、急激な円高の進行によるものと理解されます。
今後の推移は、ドルベースの原油価格の推移とドル円為替レートの推移にかかってきます。仮に、原油価格(ドルベース)が変わらずに円安が進行すると、輸入価格(円ベース)が上昇し輸入金額が増加するので、発電コストは更に上昇します。したがって、デフレ対策=円安誘導=原子力発電所稼働再開はどうしてもセットで行われる必要があるということになります。今回の選挙の国民の選択は、そういう政策セットを選択したということになります。
月次の実績をグラフにすると以下のようになります。目盛りの数値をいれていないのは、相対的な変化をみるために、2011年3月以前の数量・金額・価格がほぼ同じ水準になるように数値を調整しているからです(実質的には指数化しているのと同じです)。また、原子力発電所の稼働停止が始まった2011年3月以降は赤い四角で囲ってあります。
さて、上のグラフから明らかなことは、2011年3月以降のLNGの輸入量(タテ棒グラフ)はそれほど大きくは増加していないということです。月によって大きく変わりますが、概ね前年比1~3割増で、平均して2割増程度にみえます。勿論、LNGは火力発電だけに使用されているわけではありませんから、火力発電用途向けの輸入量増加率は、当然もっとずっと大きくなっているはずです。ただ、ここでは、LNG全体の輸入量は原子力発電所停止後もそれほど大きく増加しているわけではないということは認識しておく必要があると思います。
しかし、輸入量に比べて、輸入金額(円ベース:領域グラフ)の方はずっと大きく増加しています。すなわちそれは輸入単価(円ベース:折れ線グラフ)が上昇しているためです。原子力に替えてLNG火力発電を増やしたためのコスト上昇のかなりの部分は、LNG輸入単価(円ベース)の上昇の影響によるものと考えることができます。良く知られるように、LNGの価格は原油価格に連動しているようです(またそれは日本だけではなくEUも同様のようです)。そこで、原油の輸入通関実績も同様にグラフにしてみました。
原油の方は、より長い2000年1月から2012年10月までの期間をとっています。したがって、LNGの通関実績を見た2010年1月から2012年10月までの期間を赤い四角で囲ってあります。
まず、価格(折れ線グラフ)と金額(領域グラフ)の相対関係を見ると、リーマンショック以前はほぼ同しような水準で推移していたことがわかります。しかし、リーマンショック後は金額が価格を下回る傾向にあるので、原油輸入通関数量(タテ棒グラフ)はリーマンショック後減少する傾向にあることが分かります。これは省エネルギーの進展の影響もあるでしょうが、もっぱらリーマンショック後の日本の製造業の生産活動の縮小が影響しているのではないかと考えられます。
2010年1月以降の部分をみると、原油の輸入通関価格は再び上昇傾向に転じていて、LNGの輸入通関価格は概ねそれと類似の動きになっていることが分かります。2012年に入ってからの輸入価格(円ベース)の低下は、急激な円高の進行によるものと理解されます。
今後の推移は、ドルベースの原油価格の推移とドル円為替レートの推移にかかってきます。仮に、原油価格(ドルベース)が変わらずに円安が進行すると、輸入価格(円ベース)が上昇し輸入金額が増加するので、発電コストは更に上昇します。したがって、デフレ対策=円安誘導=原子力発電所稼働再開はどうしてもセットで行われる必要があるということになります。今回の選挙の国民の選択は、そういう政策セットを選択したということになります。
FOLLOW US