核のごみ:宙に浮くプルトニウム 推進派にも重荷
毎日新聞 2014年02月02日 09時35分(最終更新 02月02日 10時27分)
政府が原発の再稼働を急ぐ理由の一つに行き先のないプルトニウムの問題がある。燃料として使う目的がなくなり、使い道を説明できなくなる。再稼働しても問題は解決しないが、米国などからの当面の批判はかわせると考えられている。政府の原発政策は、微妙なバランスの上に成り立っている。それだけに電力の大消費地である東京の選択は重い意味を持つ。【福岡静哉、伊藤奈々恵】
東京都知事選では、再稼働については前日弁連会長、宇都宮健児氏(67)と元首相の細川護熙氏(76)が容認せず、元航空幕僚長、田母神俊雄氏(65)は認める立場だ。元厚生労働相、舛添要一氏(65)は「政府が決めること」として当面の再稼働は容認する姿勢を示唆している。討論の機会が少ないこともあり、論議はなかなか深まらない。だが、再稼働する場合もしない場合も、次の選択肢は容易ではない。
「プルトニウムの使用目的は何か。日本が核武装するとは思わないが、第三国も納得する説明が必要だ」。日本の原子力関係者は昨年秋に意見交換した米エネルギー省高官が、日本の原発政策に強い疑念を示したことに衝撃を受けた。8キロで核爆弾1発が製造可能なプルトニウムは国内に9トン、再処理を委託した英仏両国に35トンの計44トンある。
米国は核テロの懸念から目的があいまいな核物質を許さない立場だ。日本に対しても例外ではない。米国のカントリーマン国務次官補は昨年12月、日本原子力研究開発機構が東京都内で開いた会合で「日本の『余剰プルトニウムを保有しない』という政策を支持する。世界に対して責任ある決断を下す必要がある」と迫った。外務省関係者はその真意を「米国は他国に示しがつかないと懸念している。再稼働しなければ日本は極めて苦しい立場になる」と説明する。
プルトニウムを使う高速増殖炉は実用化のめどが立たない。現実にはプルトニウムをウランに混ぜたMOX燃料に加工して通常の原発で消費する「プルサーマル」しかない。再稼働をしないと決めると、即座に「プルトニウムをどうするか」という問題が降りかかる。
推進派にもプルトニウムは重荷になってきた。再稼働すれば使用済み核燃料が発生する。現在は全ての使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを再利用する建前だ。しかし原発も縮小が迫られ、プルトニウムを使い切ることが難しくなっている。全量再処理路線は見直しが必至の状況だ。