ロシア:本当のソチ、同性愛に寛容…「海外は騒ぎすぎ」
毎日新聞 2014年02月06日 11時50分(最終更新 02月07日 19時19分)
【ソチ真野森作】同性愛者に関するロシアの人権状況への懸念から、欧米主要国の首脳らが7日の開会式のボイコットを表明したソチ五輪。だが、実はソチはソ連時代から国内で最も性的指向の違いに寛容な都市の一つだったという。街最大のゲイクラブを訪れると「海外は騒ぎすぎ」と冷静な当事者たちがいた。
アドレル地区の五輪公園から約30キロのソチ中心市街地に、2005年開業のゲイクラブ「マヤック」(ロシア語で灯台の意味)がある。海岸沿いの観光エリアに位置し、最大収容人員250人を誇る。同性愛者に限らず、成人であれば入店を歓迎。深夜には名物の「ニューハーフ・ショー」が繰り広げられる。落ち着いた雰囲気の中、バーカウンターの片隅に性的少数者(LGBT)の尊厳を象徴する虹色の小旗がひっそりと飾られ、女装した客の姿もあった。
共同経営者で自身もゲイのロマン・コチャゴフさん(42)は「ソ連当時、一般市民の海外旅行は禁じられていたため、リゾート地としてソチがもてはやされた。1960年代からは同性愛者たちも訪れるようになり、気に入って住み着いた人が多い」と話す。自身もモスクワからの移住者で、「ソチの同性愛者の人口比率は国内一だろう」とみる。
旧ソ連で同性愛は法律違反とされたが、ソチでは取り締まりの実態は緩やかで、問題なく生活ができたという。寛容さの伝統は今に続いている。
問題となっているロシアの同性愛宣伝禁止法について、コチャゴフさんやゲイの常連客は「何も恐れることはない」と淡々と受け止め、「海外の活動家はソチの現状を分かっていない」ときっぱり。五輪のための街の開発も「チャンスが広がる」と肯定的にとらえていた。
ソチのパホモフ市長は先月下旬、英BBCのインタビューに「我が街には彼ら(同性愛者)はいない」と断言し、物議を醸した。一方で「ロシアの法律を尊重すれば誰でも歓迎する」とも述べた。