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「チャイナ・リスク」への市場の認識は大げさ
すぎる。ただし、本格的な危機はこれからだ

2014年02月07日(金)東京時間 18:06
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■米金融政策の転換期とチャイナ・リスクがショックを増幅

 では今回、新興国市場の混乱でなぜマーケットが大きく反応しているのか。

 どうしてもファンダメンタルズ上の理由づけを出さなければならないのであれば、それはやはり、米金融政策の転換期に位置していることが大きかったのではないか。

 FRB史上最大規模の量的緩和策から大きな路線転換が図られている今、外資に依存している国々が投機筋に攻撃されやすいことは容易に推測でき、また、こういった国々自身が持つ構造的な問題が引き金になあったことも言うまでもない。

 と同時に、今回マーケットのショックが大きかったもう1つの問題も見過ごせない。いわゆる「チャイナ・リスク」だ。

 チャイナ・リスクに関しては、日本ではよく語られる懸念であり、よく知られている。中国崩壊を予測する書籍は、筆者が来日した1992年当時に比べ、非常に多くなっており、今や書店にあふれている。10年ぐらい前からこの類の本が圧倒的に多くなってきたのも世間の大きなトレンドを示している。

 問題はこの類の本は、一部の真面目な研究者を除き、ほとんどの作者が「ポジション病」にかかっていることだ。毎年予測を出し続けても、それが実らないのも周知のとおり。

■あなたは「ポジション病」にかかっているか?

 「ポジション病」とは何か。

 たとえば、自分が円売りポジションを持った場合、チャートを見ても円売りのサインしか見えないし、新聞を見ても円売りの材料しか目に入らないとしよう。それは間違いなく「ポジション病」だ。

 要するに、自分の結論ありきで、最初から色眼鏡をもって材料を探し、分析していくから、正論にたどり着くわけがないのだ。

 話が長くなったが、要するにチャイナ・リスクというものは「今年こそ」と繰り返されてきたし、新しいものではないが、中国の景気が懸念され、成長の減速が鮮明になってきた足元では、「今年こそ」が正論のように見えてくる。

 こういった疑心暗鬼の元、世界最大の外貨準備高を有する一党独裁の体制にもかかわらず、中国の銀行がデフォルトを起こし、金融大混乱で国が崩壊するといった憶測が氾濫、チャイナ・リスクがくすぶって、マーケットの恐慌を引き起こしたわけだ。

「今年こそ」と語られ続けてきたものの、いっこうにやってこなかった「チャイナ・リスク」だが…。写真は中国の中央銀行である中国人民銀行の上海支店。

■一党独裁の国だからこそ、問題はコントロールできる

 しかし、中国の事情を感情抜きで冷静に分析すれば、誰でも以下の結論にたどり着くだろう。

中国は一党独裁の国だから、銀行に本格的なデフォルトを起こさせて、金融の大混乱を許すわけがない。

 「金満中国」、少なくとも今はこういった問題を処理する体力を持っているから、いわゆる「シャドーバンキング」の問題はコントロールできる範囲にあり、処理をしていく公算が大きい。

 皮肉にも、シャドーバンキング問題にしても、不動産バブルにしても、一党独裁の中国だからこそ、コントロールができるわけだ。

 もっとも、中国がくしゃみをすれば、新興国は風邪をひく、といった構造が近年できあがりつつあるから、それが今回の新興国の騒動へつながっている。

 しかし、中国の存在感が語られると共に、存在感自体が過大評価されている側面も否定できない。

 まとめてみると、チャイナ・リスクに対するマーケットの今の認識は大げさで、そろそろ鎮火されていくだろう。それと連動した形で、新興国の混乱も、まず一服していく可能性もある。

■雇用統計後もドル/円は当面100.15円前後に留まるだろう

 今晩(2月7日)の米雇用統計次第で、相場はまた一波乱の可能性があるが、米ドル/円は当面、200日移動平均線(≒100.15円)前後に留まるのでは。 

米ドル/円 日足

(出所:米国FXCM

 日経平均もセンセイたちの言うとおり、当面1万4000円の大台にサポートされる可能性が大きい。 

日本株 日足

(出所:米国FXCM

 しかし、胸をなでおろして安心するのも早い。昨年(2013年)最後のコラムでは、イエレン・ショックの可能性を書いたが、今の下げをもって同ショックが過ぎたと見るのは早計だ。

 そもそも筆者は今回の下げをイエレン・ショックと見ていないし、本格的な危機はまだこれからだと思う。

【参考記事】
2014年春にイエレン・ショックの可能性! 米ドル/円の上値目標は110円と控えめに(2013年12月27日、陳満咲杜)

2014年2月3日(月)、ジャネット・イエレン氏はFRB史上初の女性議長として、第15代FRB議長に就任した。果たして、イエレン・ショックはこれから来るのだろうか?

■NISA口座の保有者は引き続き我慢を!

 ところで、「NISAで損した」と最近多くの知人に泣きつかれた。彼らに対し、筆者は以下のように慰めさしあげている。

 「NISAとは日本株・いざとなったら・サービスとしてのアソシエイツの略だから、別にいいではないか」と。そういえば、NISA口座の保有者は、今はとにかく我慢と本コラムでは言っていなかっただろうか?

【参考記事】
今はもう、すでにポスト・アベノミクス。相場の春吹雪を覚悟したほうが良い!(2014年1月10日、陳満咲杜)

 我慢できなかった者は自分のお金をマーケットにサービスするしかない。とはいえ、マーケットがいつか我々にサービスしてくれる時期も必ずくるので、NISA口座はそのまま保有を。

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陳満咲杜のマーケットをズバリ裏読み
陳満咲杜 (ちん・まさと)

中国・上海生まれ。1992年に所持金5000円で来日し、日本語学校を経て日本大学経済学部に入学。生活費と学費をアルバイトでまかないながら在学中より株式投資を開始。大学卒業後、中国情報専門紙の株式担当記者を経て黎明期のFX業界へ。香港や米国の金融機関で研修を重ね、トレーダーとしての経験を積む。GCAエフエックスバンク マネージングディレクター、イーストヒルジャパン チーフアナリストを経て独立。現在は陳アソシエイツ代表/アナリストとして活躍している。日本テクニカルアナリスト協会検定会員。最新刊は『勤勉で勉強家の日本人がFXで勝てない理由』(ダイヤモンド社)、その他、『相場の宿命 2012年まで株を買ってはいけない!』、『CFDトレーディングの真実』『FXトレーディングの真実』(以上、扶桑社)、『着物トレーダーを卒業せよ 陳満咲杜の為替の真実』(青月社)などの著書がある。

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