自民党の憲法改正草案

自民党の憲法改正草案への総論的傾向

2012年の4月27日に発表された、自民党の憲法改正草案を、総覧的に眺めてみますと、ひとつの統一的な傾向が見られることに気づきます。それは、憲法も含めた国家による意思決定をと、国民は尊重すべきである、という態度です。もちろん原理原則論から言うなれば、憲法であれ法律であれ、国会で制定される法律も、その法律の範囲に基づいて実行される裁判所の判決や、内閣及び公務員が実施する行政も、国民自身が議院内閣制と言うシステムを介したアウトプットのひとつなのですから、それを尊重し、遵守する必要があろう、というのは、理路としては理解できます。

 

自分たちのことは自分たちで決めるという理念に照らすならば、国会議員や公務員、閣僚、裁判官に、国家的意思決定についてのあらゆる責任を押し付けるという態度は、必ずしも誉められたものではないでしょう。彼らはあくまでも我々の意見を、ある固有の仕方で集約するため、我々が税金を用いて雇っているスタッフであるに過ぎません。

 

しかし憲法というものは、それに準ずる法律も含めて、解釈の自由度に開かれています。そして何よりも問題なのは、その解釈の仕方が、いま述べたような原理原則論的な範囲からなされるとは限らない、という点です。私たちは、憲法や法律の条文を、論理内在的な観点からだけ眺めるわけにはいかず、その条文が、どのような「解釈の余地を残しているのか」に目を光らせる必要があります。

 

その意味で言うと、自民党の憲法改正草案には、冒頭で述べたような、一種の「クセ=国家を尊重せよ」があり、ここに解釈の自由度がどの程度宿るのか、をきちんと測定する必要があります。


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