WEDGE REPORT

いま、なぜ韓国映画なのか グローバル時代に躍進する秘訣

松谷創一郎 (まつたに・そういちろう)  ライター、リサーチャー

1974年生まれ。商業誌から社会学論文、企業PR誌まで幅広く執筆。国内外各種企業のマーケティングリサーチも手がける。得意分野は、カルチャー全般、流行や社会現象分析、社会調査、映画やマンガ、テレビなどコンテンツビジネスについて。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(原書房/2012年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(共著・羽渕一代編/恒星社厚生閣/2008年)、『文化社会学の視座:のめりこむメディア文化とそこにある日常の文化』(共著・南田勝也・辻泉編/ミネルヴァ書房/2008年)等。

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ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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 映画の輸入・輸出は以前から活発に行われているが、昨今目立つのは国際共同製作だ。日中韓それぞれの国の映画会社・監督・俳優たちがともに映画を創るのである。

『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』提供:ハピネット 配給:アスミック・エース  2013/韓国=日本/カラー/120分 Genomehazard.asmik-ace.co.jp 2014年1月24日(金) TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー

 まず、日韓の映画会社やスタッフが協力した映画では、2009年の妻夫木聡、ハ・ジョンウ主演の『ノーボーイズ,ノークライ』など、これまでもいくつもある。最近では、1月24日公開の『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』がそうだ。原作は司城志朗のミステリー小説で、映画の舞台はほとんどが日本。スタッフは、監督・脚本がキム・ソンス、キャストは主演に西島秀俊、脇をキム・ヒョジンや真木よう子など日韓の俳優が固める。製作は韓国のロッテ・エンタテインメントを軸に、日本のハピネットも参加している。このように、完全な日韓共同製作なのである。この作品は、日本映画でもあり、韓国映画でもあるのだ。

 韓国映画は中国にも積極的に進出している。日本では2月に公開される『最後の晩餐』は、全編中国が舞台の恋愛映画だ。監督は韓国のオ・ギファン、製作も韓国のCJエンタテインメントが主導だが、キャストは、主演が中国のバイ・バイホーと台湾のエディ・ポンと、中華系の俳優たちが配されている。すでに公開された中国では、興行収入1億9200万元(約33億2000万円)と大ヒットとなっている。

 東アジアでの国際共同製作では、2008年の『レッドクリフ』2部作のように、傑出した成功例がある。『三国志』を映画化したこの作品は、中国・日本(エイベックス)・韓国・台湾・香港の各映画会社が8000万ドルの製作費をかけ、興行収入は2億5000万ドルの大ヒットとなった。出資した5つの国・地域だけでなく、シンガポールやマレーシアなど、他の中華圏でもヒットしたのが特徴だ。

 90年代までの世界の映画地図は、北米・ヨーロッパ・日本という構図で描かれていた。しかし2000年代以降は、それが北米・東アジア・ヨーロッパという構図に塗り変わったのである。

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著者

松谷創一郎(まつたに・そういちろう)

ライター、リサーチャー

1974年生まれ。商業誌から社会学論文、企業PR誌まで幅広く執筆。国内外各種企業のマーケティングリサーチも手がける。得意分野は、カルチャー全般、流行や社会現象分析、社会調査、映画やマンガ、テレビなどコンテンツビジネスについて。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(原書房/2012年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(共著・羽渕一代編/恒星社厚生閣/2008年)、『文化社会学の視座:のめりこむメディア文化とそこにある日常の文化』(共著・南田勝也・辻泉編/ミネルヴァ書房/2008年)等。

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