2013年12月17日05時31分
【阿部彰芳】生理痛の治療や避妊でピルをのんだ後に、血の固まりができる副作用によって、この5年間で11人死亡し、重症例が361件報告されていることがわかった。日本産科婦人科学会(日産婦)は緊急に注意を呼びかけたほか、厚生労働省研究班も実態調査に乗り出した。
医薬品の安全を管理する独立行政法人の集計などによると、2008年~13年上半期に、低用量ピル11品目で、血の固まりが血管をふさぐ血栓の重症例が延べ361件、副作用として報告されていた。死亡は11件で10代1人、20代2人、30代4人、40代1人、50代2人、不明1人だった。
血栓は血の流れが遅い静脈にできやすく、ピルを使わなくても10万人あたり年5人の頻度で起きる。ピルはこのリスクを3~5倍引き上げる。ピルに含まれる女性ホルモンが血液を固める成分の合成を促すためだ。副作用の報告はピルとの因果関係が不明の例も含むが、08年の33件から12年の105件に増え続けていた。
ピルは避妊だけでなく重い生理痛や子宮内膜症などの治療薬として広がっている。子宮内膜症は、治療しないと不妊や卵巣がんのリスクが高まるからで、08年以降、2品目が保険適用された。日本家族計画協会専務理事の北村邦夫医師によると、ピルの売り上げは08年から4年間で約1・5倍に増え、利用者は推定100万人に上る。
日産婦は今年2人死亡したことを受け、注意喚起した。血栓の前兆になる頭や胸、ふくらはぎの痛み、視野の異常などがあれば、すぐに専門医に診断を頼むよう求めた。北村さんは「事前に血栓が起きるかわからない。血栓は治療薬があるので、早く見つかれば重症化を防げる」と話す。
厚労省研究班(担当=小林隆夫・浜松医療センター院長)は2千超の医療施設を対象に、ピルなどの女性ホルモン剤と血栓の頻度など副作用の詳しい実態を調べ、安全策を提言する。小林さんは「ピルは比較的、副作用が少ない薬だが、血栓が起きうると思って使うことが大事だ」と話す。
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朝日新聞社会部
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