地元の人びとが期待を寄せる新幹線の整備事業が、腐敗行為の舞台になっていた。

 来春の開業をめざす北陸新幹線の工事の入札で談合が発覚した。発注した独立行政法人も協力した疑いが持たれている。

 事業には国や自治体も出資しており、負担のツケは納税者やJR利用者にも回ってくる。

 許しがたい行為であり、公正取引委員会と東京地検には早急に全容を解明してもらいたい。

 問題になっているのは、線路の雪を溶かす設備の工事だ。業者の会合後、予定価格に肉薄する価格で落札が相次いだ。

 談合には都市部の大企業が関与しており、放っておけば各地で同様に競争がゆがめられるおそれが高い。

 ひときわ深刻なのは、いわゆる「官製談合」の疑いもあることだ。発注側の「鉄道・運輸機構」の担当者は、業者に入札の情報を伝えていた。

 入札の不調で工事が遅れ、来春の開業に間に合わないと問題になる。その重圧があった、と機構の幹部は語っている。

 だが、工期を優先して談合に目をつぶったとすれば言語道断だ。公取委と地検は官側の責任にも厳格に切り込むべきだ。

 せめてもの救いは、一部の関係者の自発的な申告が解明の手がかりになっていることだ。

 違反行為を自ら申し出た企業は課徴金や刑事告発を免れる。この減免制度は2006年の独占禁止法改正で導入され、その4年後に拡充された。

 導入が欧米より遅れた背景には司法取引的手法への懸念があった。仲間の告げ口が、日本の企業風土で期待できるかどうかも疑問視されていたが、着実に成果は出ているといえる。

 現実的に、こうした制度なしには、闇にはびこる談合やカルテルをつかむのは難しい。

 違法行為を申告せず課徴金を減免されなかった企業が、株主から訴訟を起こされるケースも出ている。コンプライアンス(法令順守)に対する株主や社会の目は厳しさを増している。

 企業が率先して違法行為がないか目を光らせる。それが企業自身のリスク回避に役立つ。そんな仕組みをめざしたい。

 談合を主導した企業への課徴金の割り増しや、懲役刑を引き上げる法改正が4年前にあった。だが、それでもまだ、欧米と比べれば制裁は緩い。一度摘発されても、違法行為を繰り返す企業もある。

 談合は、隠せないし、割にも合わない。そう実感させる制度へ向けて、ルールの強化を続けていくべきだ。