脱法ハーブ:吸引原因の事故相次ぐ 追いつかぬ対策
毎日新聞 2014年02月06日 07時40分(最終更新 02月06日 10時14分)
福岡市の中心部で4日夜、乗用車が暴走し計15人が重軽傷を負った事故は、運転していた男らが「脱法ハーブを吸っていた」と供述し、改めてその危険性を見せつけた。吸引が原因とみられる暴走事件は全国で相次ぎ、厚生労働省は一部を「指定薬物」として製造・販売を禁じている。しかし、九州・山口でもいまだに脱法ハーブ販売店は多く、対策が追いついていない。【野呂賢治、川上珠実、遠山和宏、尾垣和幸】
「運転していた男が頭から血を流し『オラー』と奇声を上げ、警察官5、6人に取り囲まれていた。助手席の男は窓ガラスを足で蹴っていた」。福岡市の事故現場に居合わせた男性(18)は、異様な男たちの様子を目にした。
脱法ハーブは乾燥した植物片に化学物質を混ぜたもので、いぶして煙を吸引する。製造元は不明なものが多く「お香」と称して販売されている。厚労省によると、昨年9月時点で九州・山口では▽福岡17店▽沖縄16店▽熊本4店▽宮崎、山口各1店−−の販売店がある。インターネットでも入手可能だ。
吸引して救急搬送されるケースも多い。「意識がもうろうとした」などと訴え、昨年、福岡県で56人、沖縄県で19人が運ばれた。熊本県は昨年度、6人が搬送された。
国立精神・神経医療研究センター(東京都)の舩田正彦・依存性薬物研究室長によると、脱法ハーブは成分に「合成カンナビノイド」と「カチノン系化合物」を含むことが多い。前者は大麻、後者は覚醒剤に似た作用があり、興奮やけいれん、幻覚を引き起こすことがある。
厚労省は2007年施行の改正薬事法に基づき、脱法ハーブに使われている化学物質を規制対象として順次指定し、現在は1360種に及ぶ。しかし、指定されれば成分を替えた新構造の脱法ハーブが出回りイタチごっこの状態。また、指定薬物の単純所持・使用に罰則が科されるのは今年4月からで、今回の事故のドライバーらは対象外。福岡県警は危険運転致傷容疑を視野に捜査している。
◇脱法ハーブ吸引が原因とみられる主な交通死傷事故◇
2012年
5月 大阪市福島区で20代の男が妄想や幻覚の症状が出た状態で商店街をレンタカーで暴走、2人に重軽傷を負わせた
同月 大阪府摂津市で錯乱状態になった20代の男がアクセルを踏み続け、多重衝突事故で5人を負傷させた