高代延博コーチから指導を受ける阪神・新井貴=沖縄県・宜野座村営野球場(撮影・彦野公太朗)【拡大】
不思議な光景だった。プロ16年目の37歳。チーム最年長世代にして、ゴールデングラブ受賞(2008年)経験者が、少年野球のような基本動作を繰り返す。南国の西日が照らすサブグラウンドで行われた1時間20分以上に及ぶ特守で、新井は守備に目覚めた…らしい。
「ムッチャ分かりやすかった。新鮮だった」
高代内野守備走塁コーチが繰り出すノックを、三塁(ここがミソ)のポジションで処理していく。軽くだが一塁送球も繰り返す。何度も中断して高代コーチが身ぶり手ぶりの野球教室が繰り返される。
一塁しか守れない、のレッテルをはがす作業が、想像以上に早く始まったのかもしれない。
「(三塁を守るとは)僕は聞いていませんが、何が起きてもいいように…。(指導されたのは)グラブを出すタイミングだったり、位置だったり。自分は(捕球の)準備が遅いから、早め早めにやりなさいと言われました。捕る位置は自分の近くに、と。今までと全く逆でした」
お世辞にもうまいとは言えない新井の守備。右肩の故障もあって、昨年は一度も三塁を守ることはなかった。そんな男が意識改革に成功!
高代コーチも「あそこまでやれるとは思わなかった」と初日は合格点を与えた。
一塁なら、立ちはだかる新外国人ゴメスの壁がある。来日遅れとはいえ、ライバルの存在感は強大。三塁なら弟・良太との兄弟決戦も。スローイングを見る限り、三塁守備にはまだ時間がかかりそうだが、元気なお兄ちゃんを使わない手はない。
(紙面から)