コラム:巨額貿易赤字が示す経済構造の大変化=佐々木融氏
要するに、貿易収支悪化の主因を原発の稼働停止に伴うエネルギー輸入の増加に求めるのは正しくない。7.5兆円分について適切な枕詞を考えるならば、「原油価格などのエネルギー価格上昇と円安の相乗効果によって」ということになろう。
<景気回復でアジアから輸入が増える構図>
では、残りの10.6兆円は何で説明できるのか。筆者の試算では、大部分は対アジア貿易収支の悪化で説明可能だ。
対アジアの貿易黒字は10年の10.3兆円から13年の1.9兆円まで実に8.4兆円も減少している。つまり、過去3年間の18.1兆円の貿易収支悪化のうち、8.4兆円は対アジアの貿易収支悪化で説明可能なのである(エネルギー価格上昇と円安効果以上に貿易収支悪化の大きな要因となっている)。ちなみに、このうち対中国の貿易赤字は10年の0.3兆円から13年には5.0兆円へと4.7兆円拡大している。
こうした傾向は、昨年1年間だけで見ても顕著である。13年の貿易赤字は前述の通り前年の6.9兆円から11.5兆円まで増加したが、背景には輸出が9.5%しか増加していない一方で、輸入が15.0%も増加したことがある。そして、輸入の増加15.0%のうち、アジアからの輸入増の寄与度は6.6%ポイントとなっている。言い換えれば、半分近くはアジアからの輸入増が寄与しているということだ。
アジアからの輸入で多いのは、「一般機械」「電気機器」「衣類・同付属品」である。これらの項目はアジアからの輸入額が全体の輸入額の7―9割を占めている。そして昨年、特に増加したのもこれらの輸入品だ。「一般機械」は前年比17.8%、「電気機器」は同23.4%、「衣類・同付属品」は同20.9%の増加となっており、これらだけで昨年のアジアからの輸入額増加の半分以上を説明している。
こうした状況は明らかに、製造業が過去数年間、生産をアジア諸国にシフトしていった結果だろう。日本は景気が良くなって人々がものを多く買い始めると、輸入が大きく増える構造になっていると考えられる。逆に、円安になっても輸出数量が伸びないのも同じ理由によるものだろう。したがって、原油価格が今後下落すれば貿易赤字はそれなりに減少する可能性が高いが、一方でアジアからの輸入増は構造的な変化であるため、簡単には変化しないと思われる。
日本の貿易収支の急速な悪化は、原発の稼動停止が原因なのではなく、経済構造の変化によるものとの認識を持つことが必要だ。 続く...