2014.2.6 05:00

【甘口辛口】震災復興事業費を私的流用、事業委託した山田町もお粗末すぎる

■2月6日

 どうしてこんな男にやりたい放題させたのか、ハラワタが煮えくり返る思いだ。東日本大震災の復興事業費を私的に流用したとして4日、岩手県警に逮捕されたNPO法人代表、岡田栄悟容疑者(35)。津波で大きな被害を受けた岩手県山田町から入浴施設の運営など緊急雇用事業を委託されたが、事業費の使い方がでたらめだった。

 放漫経営で平成24年度の事業費約7億9000万円を年度途中に使い切り、全従業員140人を突然解雇した。県はそのうち5億円が使途不明など不適切な支出として補助金の対象外と判断した。不明者捜索の軍事用ボートや従業員全員に支給した高級ブランドの制服、研修名目の出張に豪華な食事…。

 よほどテレビ好きなのか、逮捕当日は早朝からテレビカメラを自宅に入れていた。「私はきょう逮捕されるんですか」と警察に電話し、「どうせパクられるんなら、もっとすごいことやればよかった」とうそぶいた。単なる巨額横領事件と違って、被災地の弱みにつけ込み人々の心を踏みにじった罪の重さは計り知れない。

 こんな人物に事業委託した山田町もお粗末すぎる。人手不足で猫の手も借りたかったのか、履歴書の提出も求めず「社会福祉協議会に依頼されてきた」という言葉を丸呑みしてしまった、という報道もある。NPO法人として義務づけられた収支報告もなかったという。

 復興名目の税金がどこで何に使われているのか依然としてよくわからないが、こんなドブに捨てるような使い方をされては国民はたまらない。「私的に使ったとしたら言語道断」と町長が容疑者を非難するのはわかるが、同時にチェック体制の大甘ぶりも猛省してもらいたい。 (今村忠)

(紙面から)