岩手のニュース
「大雪」元代表ら5人逮捕 3000万円横領の疑い
| | |  |  | 岩手県警に逮捕され、捜査車両に乗り込む岡田容疑者=4日午前10時30分ごろ、旭川市 | 
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 東日本大震災の緊急雇用創出事業の事業費を私的に流用したとして、岩手県警捜査2課と宮古署は4日、業務上横領の疑いで、事業を岩手県山田町から受託したNPO法人「大雪りばぁねっと。」(北海道旭川市、破産手続き中)の元代表理事の無職岡田栄悟容疑者(35)=旭川市=ら5人を逮捕した。
 県警は5人の認否を明らかにしていない。県警は同日、5人を旭川市などから盛岡市に移送。宮古署に捜査本部を設置し、役割分担や巨額の事業費の流れ、使途などを調べる。
 5人の逮捕容疑は2012年10月上旬、12年度事業の事業費約7億9000万円の前払い金3000万円を横領した疑い。山田町が3日、県警に告訴状を提出し、受理されていた。
 捜査関係者によると、5人は前払い金をリース会社「タレスシステムアンドファシリティーズ」(旭川市)の口座に移し、私的に流用した疑いがある。同社社長は岡田容疑者の義弟で、同じく逮捕された会社員大柳彰久容疑者(30)=旭川市=が務めていた。
 町の内部資料や河北新報社の取材によると、町は法人の請求により、12年8月28日に3000万円の支出命令票を稟議(りんぎ)し、9月4日に支出した。
 タレス社が設立されたのは翌5日。法人は振り込まれた金をいったん別口座に移した上で、10月9日にタレス社の口座に移した疑いが持たれている。
 タレス社は直後の10月10日、旭川市内に土地やマンションの一室を相次いで購入。関係者によると、マンションには岡田容疑者の母で、同じく逮捕された自称法人元職員岡田かおり容疑者(53)=旭川市=が住んでいるという。土地、マンションともに金融機関から融資を受けたことを示す抵当権は設定されていない。
 町総務課によると、法人は当時、前払い金の請求理由を「事業費が足りなくなった」とだけ述べ、具体な使途は明らかにしなかった。前払いは法人が請求する都度、請求通り払っていたという。
 町は11、12両年度に法人に事業を委託し、2年間の総事業費は12億2000万円に上った。
 3人のほかに逮捕されたのは、岡田容疑者の妻で無職岡田光世(32)=旭川市=、法人の現地団体元幹部の派遣社員橋川大輔(35)=千葉県市川市=の両容疑者。
◎問われる町の責任
 東日本大震災の巨額の復興資金が不明朗に使われた問題は4日、岩手県警の捜査のメスが入り刑事事件に発展した。NPO法人が被災地の混乱に付け込んだ事件は、全容解明へ一歩前進した。一方で、法人に事業を委託した岩手県山田町も、ずさんな運営を許した責任を厳しく問われそうだ。
 業務上横領容疑で逮捕されたNPO法人「大雪りばぁねっと。」(北海道旭川市)の元代表理事岡田栄悟容疑者らは震災直後の2011年3月下旬、山田町で活動を開始。水難救助技術の普及に取り組んだ経験を生かし、行方不明者の捜索や支援物資の配分などをした。
 同年5月に町から事業を委託され、無料入浴施設の運営も始めるなど事業費は膨らんだ。被災者約140人を雇用するまでになった。
 しかし、12年度の事業費を途中で使い切り、法人は破産。その後、橋川大輔容疑者が代表を務めるリース会社を通した無計画な備品調達や使途不明金が次々明らかになった。
 元従業員の中には「震災後の苦しい中、給料を払ってくれた」と法人に感謝する声もあるが、結局はつけを町に残した。ボランティアのイメージを悪くした罪も大きい。
 山田町の佐藤信逸町長は同日記者会見し「補助金を被災者以外に使った。言語道断だ」と怒りをあらわにした。
 ただ、町は岡田容疑者の経歴も確認せずに事業を委託。震災で混乱していたとはいえ、その後、対応を再考する機会はあった。町の危機管理の検証も求められている。
◎岡田元代表、震災前まで地道に活動
 東日本大震災から15日後の2011年3月26日、盛岡市の岩手県社会福祉協議会の電話が鳴った。「被災地支援をしたいが、どこに行ったらいいか」。電話の主は北海道のNPO代表を名乗る人物。県社協の担当者は、他の被災地と比べ支援が手薄と聞いていた山田町を薦めた。これが4日逮捕されたNPO法人「大雪りばぁねっと。」元代表理事岡田栄悟容疑者と山田町との「なれ初め」だった。
 翌27日、岡田容疑者は山田町に現れた。「国や県から山田町に行くよう指示された」。町幹部にはこう触れ込んだ。水難救助のプロを名乗る大柄な人物は、頼りになる存在に映ったかもしれない。
 岡田容疑者は旭川市で生まれ、幌加内高3年生の夏、川で溺れていた6歳男児を救助。消防から表彰された経験から、「縁を感じた」と言う水難救助をその後本格的に学び05年に大雪を設立した。
 NPOとしてレスキューボランティアや川のごみ拾いなどを手がけ、10年度までの事業規模は年600万円程度。地道な活動をしていたが、大震災で被災地入りしたのを機に一気に億単位の資金を扱うことになった。
<山田町NPO問題>NPO法人「大雪りばぁねっと。」(北海道旭川市)は岩手県山田町から国の緊急雇用創出事業を2011年5月に受託したが、12年12月に12年度の事業費約7億9000万円を使い切ったことが明らかになった。全従業員約140人は解雇され、事業も打ち切りになった。その後の調査で多額の使途不明金が見つかり、県は11、12年度事業費のうち約6億7000万円を補助対象外とした。町費での穴埋めを強いられた町は損害賠償を求め法人元代表を提訴。現在、盛岡地裁で係争中。
2014年02月05日水曜日
 
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