首都直下地震は、今後30年間に70%の確率で起きるという。最悪で2万3千人が亡くなる大災害が近い将来、ほぼ確実に来る。そう覚悟したうえで、対策を急がねばならない。

 東京都区部の一般道はひどい渋滞が数週間続くという。消防や救急、救援物資はすぐには来ない。まずは自衛が大切だ。

 正しく備えれば被害は大幅に減らせる、と内閣府と中央防災会議は強調している。

 例えば、この地震で最も怖いのは火事だが、揺れたら自動で電気を止めるブレーカーの全戸普及などで半分に減らせる、という。実際、東日本大震災の直後に起きた火災の5割は、電気系統が原因である。木造住宅の密集地域を中心に、設置の義務づけと助成を進めるべきだ。

 しかし、より根本的には、東京一極集中の弊害にもっと目を向ける必要がある。

 日本は首都への依存度が高い国だといわれる。資本金1億円以上の大企業は、半分以上が東京圏にある。製造業の集積も、首都にしては厚い。

 このたび成立した国家戦略特区法で都心の容積率が緩和されると、高層オフィスビルやマンション建設がしやすくなる。東京五輪もあいまって、集中はますます進みそうだ。その東京が大打撃をうければ、その被害は全国に連なる。

 想定では、地下鉄は発生から1週間、在来線は1カ月動かない可能性がある。会社や役所は無事でも、職員が出勤できずに業務がまひする恐れが強い。

 財政難を考えると、大がかりな首都機能の移転や分散は現実的ではない。なるべく今あるものを使って人、モノ、権限のバックアップを進めるべきだ。

 官公庁には、緊急時は地方部局の長に権限を委任することが提言されている。民間企業も本社にかわる拠点の機能を整えておくのが得策だろう。

 それには、東京にお伺いを立てなくても判断できる人材の配置と養成も要る。官民ともに中央から地方への権限移譲が被害軽減に役立つといえる。

 民間シンクタンクの木下祐輔研究員は、大阪にもデータセンターを造る、日本海側にも倉庫を造るといったバックアップ投資を企業に促す減税を提案している。検討すべきではないか。

 ワーク・ライフ・バランスの推進を兼ね、在宅勤務者の率を高めれば、帰宅困難者を減らすことや業務の早期復旧に役立つかもしれない。これも一種の「人の分散」である。

 地震は防げないが、防げる被害はたくさんある。