原子力災害:早期帰還に賠償金 復興加速の新指針
毎日新聞 2013年12月20日 11時57分(最終更新 12月20日 12時41分)
政府の原子力災害対策本部(本部長・安倍晋三首相)は20日、東京電力福島第1原発事故からの復興を加速するための新たな指針を決めた。来春から一部自治体で避難指示が解除されるのを念頭に、住民の帰還に向けた支援を拡充する。一方、帰還できない状態が長期化する見通しの住民には、移住による新たな生活再建を後押しする。震災から3年の節目を前に「全員帰還」の原則を転換、生活再建に向けた施策を具体化させる。【大久保渉、村尾哲】
新指針の柱は、立ち入り制限などがかかっている「避難指示区域」(約8.1万人)の生活再建支援。比較的早く避難指示が解除される見通しの「避難指示解除準備区域」(年間積算放射線量20ミリシーベルト以下、約3.3万人)と「居住制限区域」(20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下、約2.3万人)の住民には、安心して帰れるための支援策を拡充する。
荒廃した住宅の修繕や建て替えにかかる費用を東電に追加賠償させるほか、インフラが整わない中で不便な生活を強いられる住民には「早期帰還者賠償」として数十万円を渡す。今年度補正予算で新設した「福島再生加速化交付金」などを使い、農業や商業施設再開のための環境整備を進める。健康不安を和らげるため、住民が浴びる放射線量は、個人単位で管理する。
長期にわたり避難指示が続く見通しの「帰還困難区域」(50ミリシーベルト超、約2.5万人)を中心とした地域には、移住に向けた支援策を示す。土地取得と住宅建設の費用や、精神的苦痛への損害賠償を東電に支払わせ、新生活を始める費用に充ててもらう。地域のつながりを維持するための拠点を整備するほか、除染を含め地域をどう再生させていくかについて、住民とともに検討する仕組みを用意する。
移住支援の対象は、原則として帰還困難区域の住民だが、地域の事情に配慮し柔軟に対応する。追加賠償の具体的な基準は、原子力損害賠償紛争審査会が26日に決める見通しだ。
新指針は、自民、公明両党が11月にまとめた提言をもとに政府が検討を進め、福島第1原発の廃炉・汚染水対策や東電の資金繰り支援策の強化も盛り込んだ。
首相は同本部会議で「福島の復興なくして日本の再生はない。避難生活を余儀なくされている10万人を超える方々に一日でも早く生活再建を果たしていただくことが我々の使命だ」と語った。
◇国の福島復興指針の主な内容◇
■早期帰還支援