生活保護法:「受給手続き厳格化」への改正など2法が成立

毎日新聞 2013年12月06日 19時59分(最終更新 12月06日 21時23分)

 就労支援による「脱・生活保護」を鮮明にした生活保護法改正案と、生活困窮者自立支援法案(ともに参院では可決済み)が6日、衆院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。生活保護法の抜本改正は1950年の施行以来初めて。保護脱却に力点を置く一方、受給手続きは厳格化するとあって「受給へのハードルが上がる」との懸念も出ている。

 8月の生活保護受給者は約216万人と過去最多水準が続く。政府は8月から、保護費のうち食費など「生活扶助」の最大10%削減に着手済み。これに続く2法の成立で「アメとムチ」の枠組みがそろうが、財務省は今後、家賃相当の「住宅扶助」などにも切り込む構えだ。

 2法のうち、改正生活保護法では「就労自立給付金」を新設する。受給者が働くと控除分を除いた稼ぎが保護費から減額されるため、就労意欲がわきにくいとされる。このため2014年7月からは賃金の一定額を積み立てたとみなし、保護を抜ければ負担が必要になる税金や社会保険料に充てられるようにする。一方、生活困窮者自立支援法は生活保護寸前の人を支えるため、各地の自治体に相談窓口を置くなどの内容だ。

 両法とも就労支援による自立を強く促している。だが、埼玉県の元受給者、高野昭博さん(58)は3年近く就労指導を受けながら就職できなかった。今は知人の紹介先で働くものの「受け皿がないと無理。雇う側に生活保護への差別意識があるのも問題」。ある自治体の担当者は「低賃金の職場に押し込んでも(保護費で暮らせるため)劣悪な就労環境の維持を手助けするだけ」と指摘する。

 改正生活保護法は受給申請時に資産や収入、親族の扶養状況を文書で提出することを義務付けた。「窓口で申請をはねる『水際作戦』の法制化だ」との指摘を受け、口頭申請も認めるとしたが、一連の改革は困窮者を就労指導に招き寄せ、生活保護から遠ざける「沖合作戦」とも批判される。一度保護を抜け、体調を崩して再び受給を始めた千葉県の適応障害の女性(34)は「『助けて』と訴えても救われないのでは。保護から抜けるのが怖くて仕方ない」と話す。【遠藤拓】

 ◇改正生活保護法・生活困窮者自立支援法の骨子

 <改正生活保護法>

・健康保持、収入・支出の把握を受給者の努力義務に(2014年1月〜)

・就労自立給付金の創設(14年7月〜)

・自治体の調査権限拡大(同)

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