公開日:2010.04.09
2009年度 訪問介護事業者の倒産状況
倒産件数が前年度比84.6%増の24件、過去10年間で最多
2000年4月から始まった「介護保険制度」は、今年3月で丸10年を経過した。高齢化社会を背景に、時代の脚光を浴びながらも訪問介護事業者の倒産は右肩上がりで増減を繰り返し、2009年度はこの10年間で最多となった。倒産企業は過小資本の小規模企業が多く、業績不振や低収益などから再建の可能性が乏しく、9割が破産を選択していることがわかった。
◎2009年度の訪問介護事業者の倒産件数 2000年度以降最多の24件
訪問介護事業者は、老人、障害者等の居宅において入浴や食事等の介護、その他の日常生活上の世話を行う。訪問介護事者の2009年度(2009年4月~2010年3月)倒産件数は、前年度比84.6%増の24件となり、介護保険法が施行された2000年度以降で最多となった。
訪問介護事業者の倒産は、年度(4月~3月)ベースで、2000年度、2001年度が0件、2002年度1件、2003年度0件、2004年度4件、2005年度7件、2006年度14件、2007年度21件、2008年度13件と推移してきた。
◎原因別、販売不振が前年度より3倍増
原因別では、「販売不振」が前年度比216.6%増の19件(前年度6件)で3倍増になった。形態別では、破産が同75.0%増の21件(同12件)で構成比が87.5%と約9割を占めた。
負債額別では、1億円未満が前年度比83.3%増の22件(構成比91.6%)となった。内訳は、5,000万円未満が同54.5%増の17件(前年度11件)、5,000万円以上1億円未満が同400.0%増の5件(同1件)だった。また従業員数別では、5人未満が同45.4%増の16件(前年度11件)と全体の約7割(構成比66.6%)を占め、小規模企業の倒産が中心になっている。
「介護保険制度」創設により、保険料を元に安定的な収入が見込めることや、大規模な事務所が必要でないことから新規参入する訪問介護事業者が多かった。しかし、事業所乱立で競争が激しく、介護報酬の引き下げもあって厳しい経営環境に直面した。また、現場介護担当者の賃金が低く、人手不足に拍車がかかった。さらに介護報酬改定をきっかけとしたサービス時間の短縮および利用回数の制限を受け、介護報酬が大幅に落ち込んだ事業者も少なくない。このため慢性的な赤字経営から倒産に至らずとも、事業縮小や廃業に追い込まれる事業所の増加が憂慮される。
◎訪問介護事業者の倒産状況 (金額単位:百万円) ======================================= 年度(4~3月) 倒産件数 負債総額 ======================================= 2000 0 0 2001 0 0 2002 1 20 2003 0 0 2004 4 110 2005 7 190 2006 14 360 2007 21 994 2008 13 500 2009 24 6133 =======================================
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