(cache) 難波和彦＋界工作舎






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2013年11月30日（土）

7時起床。8時半出社。ピ－カンの快晴でやや寒い。9時に事務所を出て副都心線、東武東上線を乗り7時起床。8時半出社。ピ－カンの快晴でやや寒い。9時に事務所を出て副都心線、東武東上線を乗り継ぎ東松山駅で下車。都内より気温が低いが日向は暖かい。歩いて10分で10時半に「146阿部邸」に着く。TH-1の御厨さんと栃内が待機している。施主と事務所の完了検査だが電気工事がまだ残っている。まず建物外周を観て回る。ほとんど問題はないが外構の砂利敷きの徹底と縦樋の修正工事を指示。室内は電気の残工事以外はほとんど問題なくきれいに仕上がっている。2階中央にある屋外テラスの働きで室内は1階の方が2階よりも明るいのが不思議である。床仕上げのフレキシブルボードが冷たいので来週土曜日の引渡3日前までにアクアレイヤー床暖房の試運転を行うように依頼する。アクアパック内の水だけでなくRCの基礎スラブも蓄熱槽として外断熱しているので、床温を30度まで上げるにはかなりの時間がかかると予測されるからである。11時に阿部一家とお母さんが到着。室内を案内しながら残工事を報告する。北面の高窓の開閉によって負圧換気を行うことも説明する。引渡前の登記の手続を依頼し11時半に現場を発つ。駅前で簡単な昼食をとり午後2時に事務所に戻る。大急ぎで雑用を済ませ2時半に事務所を出て半蔵門線で神田の神保町駅で下車。歩いて10分で学士会館へ。3時から首都大学東京の深尾精一さんの退職記念講演会に滑り込む。深尾さんは僕の2年後輩で内田祥哉研究室出身だが、どのような研究を展開して来たのかほとんど知らないので、研究のまとめを聴くつもりで参加した。かなり大きな会場はほぼ満員である。200人以上はいるだろうか。講義テーマは天井の構法と歴史である。講義を聴きながら「箱の家」には天井がないことにあらためて気づいた。たまに天井を張ることもあるが、その場合でも天井裏はほとんどとらずに屋根と一体の版のように納めることがほとんどだし、現在の構法では外断熱した箱の外側に輻射熱防止の小屋裏を載せるので完全に天井が存在しない納まりになっている。僕には独立した天井を張るという発想がハナからないので、天井の存在を当然の前提にした深尾さんの講義は最後までピンと来なかった。確かにオフィスや公共建築におけるシステム天井は天井裏の配線配管やダクトを隠すためには必要だろう。しかし最近の建築家は疎らで皮膜的な天井によって天井裏を半ば露出させるようなデザインを追求している。要するに天井を除去する方向へと進んでいるように思えるのである。ともかく屋根垂木をそのまま仕上げに見せた重源の浄土寺浄土堂の大仏様が日本に根づかなかった理由を改めて確認するような講義である。5時から懇親会。建築家の顔はほとんど見えないが大学関係の懐かしい人たちに再会する。大部分の人たちが界工作舍の神宮前日記を読んでいることを聞き少々ビックリする。同級生の工学院大学の吉田倬郎さんは放送大学の僕の講義をフルに聴講してくれたそうで突っ込んだ批評をもらう。首都大学東京の出身で界工作舍OGの田中幸子さんは子育てと仕事を両立させながら母校で設計を教え始めているとのこと。深尾さんの退職記念論集『建築を広く、時には深く』をもらって6時半に退席。7時過ぎに事務所に戻る。秋田の工務店から「148天雲邸」の地盤調査結果が届き地盤改良が必要であることが判明。予想はしていたがその通りになった。直ちに天雲さんとメールのやり取り。鉄骨造の駐車場を取りやめてその費用を地盤改良に回すことを検討することになった。この結果、歩道の切下範囲も再検討する必要があるかも知れない。来週月曜日に現場説明を行う「151小舘邸」の詳細に関して小舘さんとのメールのやりとリが続く。8時過ぎに帰宅。ビールを飲みながらゆっくりと夕食を摂り今日一日の出来事を反芻する。『小さな矢印の群れ』を読みながら夜半就寝。

2013年11月29日（金）

7時起床。8時半出社。昨夜はベッドの中で延々と『マネーの進化史』を読み続けた。1時過ぎに読み終わったのだが興奮してなかなか寝つかれず、あれこれと考えを巡らせているうちに明け方近くなって眠りに落ちた。おかげで今朝は身体がダルいが頭はクリアである。10時半にムジネット一行、川内、本多、永田三氏が来所。狭小版・木の家シリーズについての打ち合せ。最近ではさらに狭い敷地も出てきているらしい。したがって個々のタイプについて議論するよりも基本方針を固める方がフレキシブルに対応できると踏んだ。3層以上のタイプを外して今後は間口の狭い町屋型のタイプについて検討を進めていくこととし、叩き台をムジネットが作成することを確認して12時過ぎに終了。午後は『マネーの進化史』のストーリーを日記にコンパクトに整理することに集中する。いつもは30分程度で終わるはずが数時間もかかってしまう。赤線を引いた部分と印を付けた部分を読み返しても分からないことが何カ所もあるので再度全体を読み返そうかとも思ったが諦めてポイントだけを整理する。それにしても日本がいかにアメリカに影響を受けているかに思い知らされる。しかしアメリカにおけるサブプライム・ローンの焦げ付きのような事態が日本で生じなかったのは、日本の住宅ローンが土地を除いてその上に建つ住宅や建物に欧米ほど大きな価値を認めていないこと、つまり建物の担保価値を認めず、土地と借手の返却力を担保にしているからである。夕方までにまとめてアップする。夜は「縦ログ住宅」の敷地模型、「151小舘邸」についての小舘さんからの質問メールの返答、「150河合邸」の設計監理契約の書類作りなど。9時半帰宅。『マネーの進化史』にもう一度目を通しながら夜半就寝。

2013年11月28日（木）

7時起床。8時半出社。晴れでやや寒い。9時前に事務所を出て外苑前の診療所へ１ヶ月半振りに定期検診。海外旅行中は薬を飲まなかったせいか血圧は小康状態だが改善もない。長時間、飛行機や新幹線に乗リ続けたりデスクワークで椅子に座り放しだと足に浮腫みが出て乾皮症のような症状が出る。寒くなって空気が乾燥していることも一因だろうと医者はいう。血圧降下剤と塗薬を処方してもらい１ヶ月後の再診を予約して10時前に診療所を出る。青山の薬局で薬を購入し10時前に事務所に戻る。11時前に博多の「箱の家045」のクライアントである村岡さんが来所。東京のパン教室で焼いたパンとケーキを届けてくれる。石山研究室からXゼミ原稿「石山修武第101信作家作品評04」が届いたので直ちにサイトにアップ。河内一泰の住宅「アミダハウス」の批評である。僕も急いでまとめねばならないが、いつものようにスケッチを続けながらテンションを上げていく。

『マネーの進化史--- THE ASCENT OF MONEY: A Financial History of the World』（ニーアル・ファーガソン：著　仙名紀：訳　早川書房 2009）を一気に読み通す。後半はあまりにも面白くて興奮しながら読んだ。もう少し早く読んでいれば放送大学のプログラムも少し変ったかも知れない。特に住宅ローンの証券化とサブプライム・ローンに起因するリーマンショックに関する話題には目から鱗が落ちた。本書全体は金融システムの技術革新の歴史に沿って構成されており、信用制度（銀行）、債権（国債）市場、株式市場、保険と社会保障、不動産、金融市場というテーマ毎の章立てである。各章で紹介されている代表的なエピソードが実に興味深い。銀行（第1章）ではメディチ家の銀行ネットワークと宗教・芸術の関係、債権（第2章）ではナポレオン戦争とロスチャイルド家による債券市場の支配や、第一次大戦後のドイツや第2次大戦後のアルゼンチンにおける超インフレと債務不履行の顛末が紹介される。1920年代にケインズがインフレは「（債権による）利子生活者の安楽死」をもたらすと予言し第一次大戦後にその通りになったが、1980年代に債権は住宅ローンの証券化として姿を変えて復活した。株式市場（第3章）では17世紀初頭のオランダにおける株式会社の誕生とアムステルダムにおける株式取引所の開場が紹介され、そこで株式市場のメカニズムを学んだスコットランド人ジョン・ローがフランス絶対王政をバックに18世紀初頭に引き起こした世界最初の株式バブルとその崩壊が紹介されている。1980年代末の日本のバブル経済と90年代初頭のバブル崩壊や9.11（2001）の世界貿易センターテロ後のエンロンの詐欺的な粉飾倒産の内実も興味深い。保険と社会保障（第４章）ではハリケーン・カトリーナによる自然災害における保険の機能不全化、海上保険から始まった英国ロイズ保険会社の誕生、エディンバラのプロテスタント牧師が発明した生命保険システム、第2次大戦後の英国の社会保険制度の充実がひき起こした1970年代の景気停滞、日本における戦時総力戦体制の延長上に制定された国民年金制度がもたらした昨今の福祉政策の行き詰まり、1970年代の南米チリの軍事政権に対して年金改革（社会保障の自由化）と新自由主義経済体制を説いたミルトン・フリードマンのスキャンダルなど話題満載である。不動産（第5章）ではもっとも安全で「真の財産（real estate）」と考えられてきた不動産（土地と住宅）を住宅ローン政策によって国民に浸透させようとしたのが大恐慌（1930年代）以降のニューディール政策に始まるアメリカの「財産所有民主主義」であることが紹介される。これに対してヨーロッパ諸国は公共住宅の供給政策を採ったが1980年代になるとサッチャー政権は公共住宅を民間に払い下げることで「財産所有民主主義」に転換した。アメリカでは長期住宅ローンのために「連邦住宅局」が「連邦住宅抵当金庫」（1937）を設立したが、この制度が日本の「住宅金融公庫」（1950）の起源であることは言うまでもない。日米に共通する「持家政策」は戦後復興の経済政策であると同時に資本主義を支える「財産所有民主主義」政策の重要な一環だったという訳である。しかしアメリカの「貯蓄貸付組合」は1980年代に安全な不動産への投資というそれまでの神話に乗じたモラルハザード（倫理の欠如）による不動産バブルを惹き起こし貸付組合制度は崩壊した。その教訓から住宅ローンを束ねてそれを担保に従来の国債や社債の代替として販売する証券化の手法が生み出され新たな債券市場が再開された。この手法によって信用履歴の低い低所得者層に貸し付けられた住宅ローンが「サブプライム・ローン」であり、このローンを束ねた証券がなぜか国債と同等に高く評価されたために世界中で販売されるとともに、サブプライム・ローンの急速な普及によって2000年代初期にはアメリカの住宅所有者は急激に増加することになった。しかしローンの利子率の変化に無知な大多数の借手が債務不履行となり不動産市場が暴落した結果、世界的なリーマンショックをひき起こし「財産所有民主主義」も破綻したのである。最後の金融市場のグローバリゼーション（第6章）では1914年までの第一次金融グロ－バリゼーションと第一次世界大戦による破綻、第2次大戦後の国際通貨基金と国債復興開発銀行を軸とするブレントンウッズ体制による反グロ－バリゼーション、金本位制の中止と変動為替制への移行による1971年のニクソン・ショック。1980年代のヘッジファンドの出現とその代表格であるジョージ・ソロスの再帰性の理論、1990年代の数学を応用した金融工学の成功と挫折、アメリカの国債を買い支えている中国のマネーのパワーなど最近の話題が紹介されている。本書の改訂版は2009年にまとめられているのでリーマンショック以降の詳しい経緯は書かれていないが、金融市場の不確定性は数学や論理よりも歴史から学ぶことが多いというのが著者の結論のようである。上に短くまとめたように僕にとっては本書によってこれまで断片的だった歴史的事件がひとつながりになったことが最大の収穫だった。

2013年11月27日（水）

7時起床。8時半出社。ムジネットから先日、提案した狭小版「木の家」シリーズに関する質問状が届く。金曜日にムジネットとの打ち合せがあるので、その際に回答する予定だが、10年を経過しても僕が回答するのも少々不思議な感じがする。販売の窓口はあくまでムジネットだから、購買層については僕以上に正確に把握しているはずだからである。どちらかというと僕は「箱の家」のコンセプトにもとづいて構法システムを提案しているので、現実の客の反応についてはむしろ僕の方が教えて貰いたいくらいである。とはいえ質問されたので、とりあえず議論の叩き台として僕なりの回答をまとめてみる。INAX出版から『食と建築土木』（後藤治＋二村悟：著　小野吉彦：写真　LIXI出版 2013）が届く。食物を得るためにつくられた建築的、土木的な仕掛けを収集した本である。なぜか稲作関係の仕掛けは収められていない。著者と藤森照信さんとの対談も収められている。昼過ぎ散歩ついでに青山の銀行に行く。しばらく内装工事が続いていた「表参道けやきビル（通称BOSSビル）」の仮囲いが除去されて全貌が姿を表わしている。直ぐ隣の「TODS表参道」も同じコンクリート打ち放し仕上げの外装だが対照的な外観である。モダンとポストモダンの対比と言ってもいいかもしれない。界工作舍のXゼミサイト「作家作品批評04」に河内一泰君の「アミダハウス」（2011）をアップする。今週末に僕の評をまとめる予定で原稿のスケッチを始める。はりゅうウッドスタジオの芳賀沼さんとNPOの活動についてメールで意見交換する。建築学会『建築雑誌』2013年11月号の冒頭記事に日大郡山の浦部智義さんとの共著で仮設住宅の移設と再利用に関する報告が掲載され、僕たちのNPO活動も少し報告されているが、本格的な活動はなかなか発火していない。現在まとめている「縦ログ住宅プロジェクト」がきっかけになればいいのだが。『マネーの進化史』は銀行、債権、株式、保険から不動産にまで進みいよいよサブプライム・ローンの話になってきた。放送大学のプログラムづくりの前に本書を読むべきだったと反省させられるほど学ぶべき所見がテンコ盛りの本である。

2013年11月26日（火）

7時起床。8時半出社。昨夜から２度届いた歩道の切下範囲と駐車場の関係についての天雲さんのメールに返信。建物本体の基礎工事後に実際の車でシミュレーションした後に駐車場を決めることを提案する。引き続き飯田の河合さんから届いたメールに返信。先日の大雨で飯田付近はかなりのダメージを受けたようだ。10時過ぎに事務所を出て千代田線で湯島駅下車。歩いて国立近現代建築資料館へ。11時から「人間のための建築---建築資料にみる坂倉準三」展のオープニング。狭いロビーは人で一杯だが建築家の顔は少ない。安藤忠雄さん、鈴木博之さんに挨拶。まもなく石山修武さんと中川武さんも来席。11時半から会場を見て回る。まずはパリ万博日本館（1937）の原図を観る。水彩誌にグワッシュ（不透明水彩）で描いた図面である。寸法を見ると75cmモデュールの鉄骨造であることが分かる。柱のスパンは3mと4.5mで意外に狭い。床版は75cmの乾式構法である。坂倉事務所が製作した1/50の精巧な模型を見ると空間構成がよく分かる。当時はおそらく建築とはまったく異なる趣向の展示物で一杯だったのだろうが建築だけ見ると透明で軽快な空間である。鎌倉近代美術館の原図はディテールまであり実に興味深い。その他も東急文化会館を初めとして坂倉事務所の初期建築の原図も充実している。数年前に鎌倉近代美術館で開催された坂倉準三展も面白かったが原図と模型を中心とする今回の展覧会はそれ以上に興味深い。今日は招待客でごった返しているので改めてじっくりと観てみたい展覧会である。会場では久しぶりに菊竹清訓夫人のスミス睦子さんに会いしばらく歓談。この夏に内之浦で会った鹿児島大の鰺坂徹さんにも再会。坂倉事務所の阪田誠三さんにも久しぶりにお会いした。鈴木博之、石山修武両氏と12時半に会場を出てタクシーで上野精養軒のレストランへ。1時過ぎ安藤忠雄さんも加わりXゼミの会食。安藤さんは新国立競技場の有識者会議に出席した帰りで会議の結論を具に話してくれた。それによれば８万人収容と開閉式屋根は変わっていないが、当初のプログラムはかなり縮小され現在の国立競技場の敷地内にコンパクトに納まったようだ。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20131126/641949/
槇文彦さんたちの運動がある程度功を奏した感じだが、安藤さんはその点についても言及し、槇さんたちの今回の働きかけが今後続々と進められる一連のオリンピック施設の計画を公開コンペにする運動へと展開すべきだと主張した。石原慎太郎知事の時代に安藤さんはそのことを都に進言し続けてきたのだという。その点においても今回の建築家の運動は安藤さんを含む新国立競技場コンペの審査委員に対しても働きかけることによって建築界全体の運動へと拡大すべきではないかと思う。でないと運動は中途半端に終わってしまうだろう。話は最近の公共建築の入札不調についても広がる。安藤さんの意見では一連の入札不調は職人とりわけ現場監督の不足が最大の原因であるという。それは1990年代以降続いている「失われた20年」がもたらした結果ではないだろうか。最近の東京大学建築学科の低迷の遠因は意外にその辺りにあるのかもしれない。しかしホワイトカラーがいくら増えてもこの問題は解決しないというのが安藤さんの結論である。2時半に解散。ロビーでは朝日新聞記者が安藤さんの取材のために待機している。上野駅で鈴木、石山両氏と別れ3時半に事務所に戻る。栃内と「151小舘邸」の実施図面の打ち合せ。飯塚と「縦ログハウス」の模型の打ち合せ。ニチハコンペの発表原稿校正その他。9時半帰宅。『マネーの進化史』を読みながら夜半就寝。

2013年11月25日（月）

7時前起床。8時出社。曇りで肌寒い。直ちに事務所を出てラッシュアワーの中地下鉄で東京駅へ。9時前発のスーパーこまちに乗車。発車寸前に栃内が滑り込む。午後1時前に秋田着。曇りで風が強い。歩いて10分で「148天雲邸」の敷地へ。地鎮祭用のテントが張ってある。タムラアシスト社長の田村斎さんに挨拶。まもなく天雲さん、西方さん、スタッフの前田剛さんが到着。雨が近そうなので大急ぎで略式の地鎮祭を済ませる。乾杯の後、歩道の切下工事について現地を見ながら議論。雨が降り始めたので中通のいつもの喫茶店に移動し工事契約の手続を行う。その後、敷地の測量、歩道の切り下げ範囲と駐車場の関係、地盤調査、設備工事の詳細などについて話し合い。年内は申請作業と歩道切下工事で精一杯になりそうだ。スケジュールについて緊密な確認を依頼して3時過ぎに解散。天雲さんと秋田駅まで歩き改札口で別れる。4時前発のスーパーこまちに乗り8時前に東京駅着。駅近の寿司屋で簡単に夕食を済ませた後9時前に事務所に戻る。雑用を済ませて9時半過ぎに帰宅。その後急に雨が降り始めて土砂降りになる。

小嶋一浩さんから『小さな矢印の群れ---ミース・モデルを越えて』（小嶋一浩：著　TOTO出版 2013）が届く。これまでの小嶋さんの仕事を振り返り、そこに通底する建築のイメージについて書き下ろしたコンパクトな本である。小嶋さんがどこかでピーター・ブリューゲルの絵画「子供の遊び」について言及していたことに僕はいたく共感したことがある。僕もかつて自分の建築のイメージ源としてブリューゲルのこの絵を引用したことがあるからである。それを本書で小嶋さんは「小さな矢印」と言い換えている。それがミースを越えることになるかどうかは僕にはやや疑問ではあるが、建築的には違った物になることは間違いないだろう。まえがきの「空気」に関する議論は山本七平の「空気の研究」を連想させるので少々首を傾げた。ひとつのキーワードにさまざまな意味を盛り込むのは原広司研究室の伝統かもしれない。ともかくじっくりと読んでみよう。

2013年11月24日（日）

８時起床。晴れでやや涼しい。10時前に妻と家を出て代々木公園へ向かう。日蔭はやや寒いが風もなく日向を歩くと汗ばむくらいである。休日なのであちこちに人だかりができている。ドッグランの脇のベンチに座りしばらく遊ぶ犬を見て過ごす。飼い主と犬とを見比べるのが面白い。公園内をゆっくりと大回りして11時半に帰宅。午後は図面のチェックと読書。久しぶりにDVDを見ようとしたらドライバーが動かないので諦めてデスクワークに集中する。「縦ログ住宅」と「151小舘邸」の図面に目を通す。今週中がまとめの山場である。

『マネーの進化史』の再読を開始する。ルネサンスの最大のパトロンであるメディチ家がヨーロッパ全土をネットワークする初期の銀行家であったことや、パッツィ家との確執がフィレンツェの金融覇権争いであったことを知る。後者をパトロンとする建築家がブルネルスキであった事と何か関係があるのだろうか。リドリー・スコット監督の『ハンニバル』では確かその辺りの時代状況を描いていた。19世紀初期のナポレオン戦争の背景には戦費捻出を巡る債権システムの進化があり、英国の勝利をバックアップしたのはロスチャイルド家によるヨーロッパ全土にまたがる債権ネットワークだった点も新しい所見である。銀行の誕生や債権システムの確立はいずれも金融システムの進化の一環である。

2013年11月23日（土）

7時起床。8時半出社。昨夜までに栃内がまとめた「151小舘邸」の見積用図面一式に眼を通す。幾つか細かな納まりが気になり赤を入れる。特に前面道路に面したスクリーンや階段の見え方が問題だが、それ以上にこれまでの鉄骨造の直射日光による輻射熱とヒートブリッジの対策方法を完全なものにしたい。午後は『箱の家』本の第3弾や『メタル建築論』のまとめ本についてスケッチ。来年には何とかこの2冊をまとめたい。

『與那覇潤対論集---史論の復権』（新潮新書 2013）を一気に読み通す。第3章「ソ連化した団地とアメリカ化する郊外」は『団地の空間政治学』の著者である原武史との対談である。日本住宅公団の団地における政治活動の展開が奇しくもソ連化したという指摘なのだが二人とも少々認識不足と言わざるを得ない。豆腐型の団地的集合住宅は戦後のアメリカでも大々的に建設されておりセントルイスのプルーイット・アイゴー団地の解体はモダニズム建築の終焉を象徴する事件として余りにも有名である。そのような事例に焦点を当てれば二人の議論はまったく様相が変わるだろう。第4章の大塚英志との対談『中国化する日本・近代化できない日本』では柳田国男が大々的に論じられている。言葉の近代化の重要性や日本のサブカルチャーの普遍性に関する議論が妙味深い。第5章以下の3章は小津安二郎を初めとする日本の映画やテレビドラマなどサブカルチャーに思想史を見ようとしている。総じてエリート知識人ではない一般メディアとくに視覚メディアに注目する視点が新しいのだが、第4章と微妙にトーンが異なる点がやけに気になる。同じサブカルチャーを論じていても大塚英志は依然として知識人寄りである。

2013年11月22日（金）

7時起床。8時半出社。10時前に会計事務所が来所。今年度の決算の説明を受けた上で署名捺印。11時に終了。支払計算書一式を貰ったので直ちに銀行に直行し振込を済ませる。これで今年度の決算は終了。帳簿は１年をまとめて処理するよりも１ヶ月毎にまとめていく方がずっと楽だし事務所の経営状況が具に把握できることが分った。午後はひたすら「縦ログ住宅」のエスキスを続行する。飯塚がまとめた一般図に手を入れて模型製作用に配置図の密度を上げる。南北に長い斜面地に何とか2戸のコンパクトな縦ログ住宅を配置することができた。縦ログ壁の壁量の正確な計算は実験後になるが縦ログ構法に合わせて開口部をできるだけ縦長に納めるように努めたので問題はないだろう。模型台のサイズはB4版とし来週初めから模型製作に着手するように飯塚に指示する。「150河合邸」の設計監理契約書の叩き台をまとめて飯田の河合さんに送信。来週月曜日の「148天雲邸」の地鎮祭について秋田の工務店にリマインドメールを送信。雨模様の天気らしいが縄張りを済ませておくように依頼する。夜は読書と原稿スケッチ。9時半に帰宅。『史論の復権』を読みながら夜半就寝。

2013年11月21日（木）

7時起床。8時半出社。散歩がてら原宿駅まで行き予約しておいた来週初めの秋田往復乗車券を受け取る。秋田の工務店にリマインダーメールを送り縄張りを依頼する。10時に小舘さんが来所。「151小舘邸」の詳細打ち合せ。細部まで打ち合わせて見積要領までを確認して午後1時前に終了。現場説明は再来週の月曜日である。飯田の河合さんから電話が入り「150河合邸」の敷地と建物配置についての相談。近くに竹薮と崖地があるようだが写真でははっきり分からないので再度メールで質問する。『アエラ』編集部から新国立競技場に関する電話取材。一昨日の僕の日記を読んだらしいが、書いたこと以上のことは応えられないと返答。文科省、日本スポーツ振興会、東京都の三者の間で複雑なやり取りがあるようだ。午後はXゼミ「博多百年蔵の再生」評の原稿に集中。あれこれスケッチしたが結局考えたことの7割程度しか書けずにタイムアップ。時間をかけたリノベーションなのでタイトルを「リノベーションのリノベーション」として石山研究室の渡邊さんに送り界工作舍のXゼミサイトにもアップする。今週末には河内一泰の「アミダハウス」をとりあげる予定。夜は飯塚と縦ログ住宅についての打ち合せ。基本コンセプトは「箱の家」だが縦ログ構法の条件を活かしたデザインにするため屋根の形態と開口の配置についてエスキスする。今月中には何とか模型までまとめたい。

アマゾンから『與那覇潤対論集---史論の復権』（新潮新書 2013）が届いたので『マネーの進化史』を一旦休止して読み始める。『中国化する日本』を踏まえた上での対論集である。「中国化」と「再江戸化」の二極モデルがキーワードなので「中間的議論がない」という世論への著者の批評が自己批判のようにも読めるがどうだろうか。最初の2章を読む限りグローバリゼーションとしての中国化の反省というか生産的な中和化が読み取れる。

2013年11月20日（水）

7時起床。8時半出社。快晴。直ちに事務所を出て副都心と線丸ノ内線を乗り継ぎ西新宿へ。ラッシュアワーの時間のせいでホームも改札口も異常な込み方である。9時から3年振りの1級建築士定期講習会。間に休憩を挟んで9時から16時までテーマ毎に5回のレクチャーの連続。とはいえテキストの下線部分について読み上げるだけである。それでも真面目に聴いていると普通では得られない多種多様な知識がテンコ盛りである。放送大学で15回のレクチャーを編集したがテキストでとり挙げられているテーマを概ねカバーしていることを確認できた。高齢者対応、省エネルギー、ストック活用が現在の大きな課題であることも分かった。４時から1時間の最終試験。40問の正誤問題である。レクチャーを真面目に聴いたおかげか40分で終了。見直す気分にはならないのでそのまま提出する。最後にこれまで講習会を一度も受けていない人が東京だけでも数百人いるという告知。おそらく引退した人たちが大部分なのだろうが、逆に見れば登録後の建築士の活動状況がまったく把握されていない証拠でもあるだろう。6時過ぎに事務所に戻る。一日集中したので憔悴。夜はぼんやりして過ごす。9時半帰宅。

ニーアル・ファーガソンの『マネーの進化史』を読み始める。『劣化国家』の前の著書である。「はじめに」で本書の出版が2008年のリーマンショックの直後だったことを知る。ベストセラーになったのはそのせいだろう。ともかく貴重な金融史であることは確かなようだ。

2013年11月19日（火）

7時起床。8時半出社。快晴でやや寒い。9時前に事務所を出て副都心線で池袋まで行き東武東上線に乗り換える。和光市行の副都心線が遅れたのでやむを得ない対応である。途中jt編集長の中村光恵さんから京浜東北線がストップしたので同行できない旨のメールが届く。東松山駅に10時半前着。改札口でjt編集部の雨川さんと栃内と待ち合わせ歩いて「146阿部邸」の現場へ。足場は取れていないがファサードだけはシートが外れている。建物概要を雨川さんに話しながら内装と家具工事がほぼ終わった室内を案内する。3つの吹き抜けと1つの屋外室がコンパクトに納まった構成がよく分かる。残すところは設備工事と外構工事である。工事の仕上りにはほとんど問題はないがファサードのスクリーン工事だけに引っかかる。縦枠の太さは設計の問題だが亜鉛ドブ浸けメッキのラフ過ぎる仕上がりは工事の問題である。雨川さんへの細かな説明は栃内に任せてファサードに見ながら対処法についてあれこれ考え栃内に伝える。雨川さん朝倉社長と11時半過ぎに現場を発ち和光市駅で別れて1時過ぎに事務所に戻る。途中石山修武さんから電話が入る。Xゼミサイトの建築批評の範囲をさらに拡大する件についての相談を受ける。石山さんは日建設計や竹中工務店さらには安藤忠雄や隈研吾にまで批評の対象を拡げようとしている。既に二人の承諾は得たとのこと。だんだん本格的になってきた。3時過ぎ安藤忠雄さんから電話が入る。jt12月号の特集記事についてのコメントをもらう。僕は新国立競技場の件について質問する。当初のプログラムは文科省からの天下りで審査員が口を挟むことはできなかったそうだ。だとすれば安藤さんには何の責任もないはずだが、昨今の一連の議論が審査員抜きで進められている点は片手落ちであり「開かれた議論」とは言えないだろう。当初のプログラムについて公開の議論をすべきだと主張している当事者が審査員抜きの議論に閉じているのは自己矛盾にほかならない。河内一泰君から次回の建築評のデータが届いたので石山研に転送。Ｘゼミ建築評のスケッチを続行するがなかなか発火しない。一両日中には何とかしなければならない。

東松山への往復の電車の中で『柳田国男論』（柄谷行人：著　インスクリプト 2013）を読み終わる。考えるべきテーマが多くてなかなか頭を整理できない。様々なキーワードが頭に浮かぶ。柳田民俗学の本質としての方法的懐疑（の客観性、普遍性）、現実をつくる言葉と風景をつくる言葉、さらに風景だけでなく風景を見る眼をつくる言葉、「もの」としての言葉などなど。これらは同時期の『日本近代文学の起源』のテーマでもあった。以前、鈴木博之さんとも議論したことがあるが、ある特定の行為自体がその前提のメッセージとなることを柄谷は柳田民俗学を例にして主張しているように読める。というか対象化することができず具体的な行為でしか伝えることができないような「現実＝もの」があるという主張でもある。そのような例として柄谷は本書の中で柳田が『山の人生』の第1章で紹介している炭焼きによる子殺しのエピソードを2度も引用している。それは柳田が受けた強い印象であると同時に柄谷が受けた感動のパフォーマティブなメッセージでもある。その方が「感動した」と明示するよりもよほど強いメッセージになっている。

2013年11月18日（月）

7時起床。ピーカンの快晴で暖かい。8時半出社。jt2013年12月号が届く。先頃取材を受けた「住宅白書2013」の特集である。基本的には吉岡賞を受賞した住宅をフォローしているようだ。古谷誠章、青木淳、堀部安嗣、石田敏明、岸和郎、木村博昭、佐藤光彦。宮本佳明といったラインアップである。住宅の年の重ね方が多種多様であることが明らかにされた貴重な特集である。「151小舘邸」の前面道路が私道なのでインフラ工事のために承諾書が必要であることが分かった。幅員も４m以下なので区による拡幅工事も必要になる。小舘さんの委任状を含めて書類をまとめ手紙を添えて所有者に送付する。縦ログ住宅の詳細図スケッチを始める。建築レベルの納まりを検討していると耐力壁の実験のスタディ段階では分からなかった条件が次々と明らかになってくる。床や屋根の納まりのスケッチでは面剛性や外壁保護のための庇の条件が新しくでてくる。構造体と外壁が一体なので建具や開口のスタディはもちろんだが配線配管の問題はさらにややこしくなりそうだ。これも産みの苦しみだろう。６時前に事務所を出て代々木公園の佐々木事務所へ。ギリシア土産のウゾ（グラッパ）とアクロポリスの石片を届ける。佐々木さんから先週末の大江宏シンポジウムの話を聞く。大江宏、丹下健三、浜口隆一の3人は同級生だったがそれぞれの卒業設計はアスプルンド、ル・コルビュジエ、グロピウスの引用で、そのなかでも大江宏のアスプルンドの模倣がもっとも優れていたという磯崎新の話が興味深い。佐々木君がバックアップしている最近のSANAAの仕事はミースよりもアスプルンドに近いのではないかという佐々木君のコメントに納得する。その後代々木上原まで歩き蕎麦屋で夕食。冷酒をいただきながら互いの近況報告。最後は鴨せいろ蕎麦で締めて9時前に解散。9時半に事務所に戻る。

アマゾンからクリストファー・アレグザンダーの『形の合成に関するノート』がSD選書（鹿島出版会）として再版されるという知らせが届く。「都市はツリーではない」も一緒に納められるようだ。これまでほとんど絶版に近くアマゾン古書でもかなり高価だったが、これで1960年代中期のアレグザンダーの活動がようやく明らかになるだろう。是非読み返してみたい。

2013年11月17日（日）

8時起床。快晴。ゆっくりと朝食を摂り9時半出社。直ちに妻と一緒に久しぶりの散歩に出掛ける。日曜日の表参道は10時前というのにかなり人通りが多い。人混みを避けて明治通り手前のエレベーターで地下鉄連絡に降り神宮橋手前のエレベーターで地上に出る。明治神宮境内は七五三祝の子供連れ家族と観光客で一杯。本殿前の広場はいつになくごった返している。余りにも忙しないので早々に退散し同じ経路で11時過ぎに帰宅。午後はXゼミ原稿のスケッチと読書。

『柳田国男論』（柄谷行人：著　インスクリプト 2013）は序文、1986年の「柳田国男論」を読み終えて1974年の「柳田国男試論」の半ば過ぎまで進む。序文では本書は来年に出版予定の『遊動論---山人と柳田国男』への序論として位置づけられている。本書の中心を成す『柳田国男試論』ではマルクス、フロイト、本居宣長、夏目漱石と比較しながら、柳田民俗学の内容にではなく方法論、あるいは民俗学に向かう柳田自身の「態度」に焦点を当てて論じている。1974年（33歳）当時の柄谷は徹底した形式主義者＝構造論者だったから当然ともいえるが、現在から見るとやや隔靴掻痒の感は否めない。ただし唯一気になるのは、柄谷が構造に拘るのはモノ＝物自体（カント）に向かうためであるように思える点である。その延長上で今回の『遊動論』においてようやく構造と対象、形式と内容を統合する柳田民俗学の可能性の中心に到達したといえるのかもしれない。

2013年11月16日（土）

7時起床。8時半出社。快晴。いわきの縦ログ住宅のスケッチ続行。1/100の敷地図に正確な寸法で描き入れてみる。細かなレベル差は写真から読み取るしかないが何とか配置できそうなのでスケッチをまとめて飯塚に清書を指示する。栃内と「151小舘邸」の詳細図打ち合せ。外装とスクリーンについて検討。その後設備類の打ち合せ。来週の小舘さんとの打ち合せに向けてまとめをスピードアップする。「箱の家146」のオープンハウス案内がまとまったので阿部さん以下関係者に送り界工作舍のHPにアップする。12月7日（土）の午後に開催予定。石山研究室からXゼミ作品批評03のデータが届いたのでサイトにアップする。福岡で活動している高木正三郎さんの酒蔵のリノベーションである。石山修武さんの評も掲載されている。ちょっと更新のピッチが早過ぎるような気がするが僕の評も何とかまとめねばならない。5時半終了。事務所内の掃除をして6時過ぎ解散。６時半に妻と家を出て赤坂へ向かう。今夜は満月だろうか。快晴の夜空に月が煌煌と輝いている。妻の希望で久しぶりに鰻を食する。食事中に北野武の一行数人が店に入ってくる。近くに北野企画の事務所があるのでよく食事に来るという店主の話。8時半に店を出てタクシーで家に戻る。ウィスキーを吞み直し11時過ぎ就寝。

2013年11月15日（金）

7時起床。8時半出社。快晴。今日は一日いわきの縦ログ住宅のスケッチを続ける。煮詰まると頭を切り替えるために読書や雑用を挟む。夕方までにおおよその方針がまとまったので1/100の敷地図に落とし込んでみる。南北に長い敷地でおまけに西側が崖地なので2軒の配置の仕方が難しい。北側と東側が道路に面しているのだが東から西向きの斜面なので東側の境界には擁壁があり道路は一段高いレベルにある。したがって実質的に敷地に入ることができる道路は北側だけである。同じサイズの住宅では配置が難しいことが判明したのでサイズの異なるふたつの住宅に分棟することにする。夜8時過ぎ芳賀沼さんが来所。幾つかのプロジェクトについての相談。今月末から縦ログ構法の構造耐力と防火の実験が始まるのでその仕様について再確認する。秋田県立大の板垣直行さんから実験仕様詳細のメールが届く。つくばでは縦ログ住宅を用いた別のプロジェクトが動きそうだがNPOとは直接関係ないので僕はコンサルタント役に徹する。会津田島でも年末から年始に掛けてもうひとつのプロジェクトが始まりそうだがまだ不確定である。今日は妻の誕生日なので娘が里帰りしている。今日は一緒に夕食を食べるだけで誕生会は明日土曜日の夜に開く予定。「146阿部邸」のオープンハウス案内の叩き台を作成する。来週にはjt編集部が視察に来てくれるがさてどうなることやら。

Xゼミの作家作品批評に対して遠藤政樹くんからコメントが届く。彼としてはXゼミサイトへの掲載を希望しているのかも知れないが、基本的に「Xゼミ・作家作品評」の趣旨に合わないことと、内容が少々主観的に過ぎるように思われるので、サイトへの掲載は取りやめてここに転載する。僕の考えでは、私的でシリアスな経験から発してはいても、批評というものは読者の想像力に寄りかかり過ぎたのでは成立しない。その意味でこの文章は批評としての返答になっていないことを一言指摘しておきたい。

遠藤政樹コメント
「私が界工作舎に在籍していた80年代後期、メニルコレクション（設計ピアノ＋ライス）の講演最後の、確か槙文彦氏の質問に対する構造家ピーターライスの応えはとてもショッキングでした。それは、メニルコレクションの屋根に、フェロセンメント＋ダクタルアイアンという素材を使用した理由を問うものでした。ピーターライスは、当然のことのように、ピアノと以前からこの技術を使いたかった、その機会をうかがっていた、と応えたのです。ピアノ＋ライスのフェロセンメントは、新しい方向性を展開しています。それが、演繹的にできたのではなく、信念がプロジェクトに馴染むことによって、全く新しいものに生まれ変わったのです。それを知った驚きでした。
その後、池辺陽氏の住宅に接して同じような経験をしました。NO65(1950)の屋根と壁が一体になった構成は、集成材の構造とスレートのオートクレープ技術を応用したものであること、NO90(1970)がALC版を当初構造として使用しようとしたこと、を知ったのです。まさに、「デザインの鍵」（池辺陽著）の「41機能と構造」を実感しました。
同例として、高校時代から不思議に思っていたB・フラーの世界地図や、フォードT型車と同時期に生まれたダイマキシオンカーが、三角形の徹底であること、あるいは、Ｊ・プルーヴェのアルミというように、同様の発見が次々と展開していったのです。

私たちは、既成のしがらみに完全に縛られています。たとえちょっとした疑問を抱えても、一端社会化すると、淘汰されてしまう程社会は成熟しています。真実を探求する自然科学の分野でさえも同様で、ポランニーやファイヤアーベント「方法への挑戦」からその事実を知りました。「第一機械時代の理論とデザイン」におけるバンハムのコルビュジエの位置づけもまさにそれであったと思います。
上記に述べた建築家たちは、基準は定かではありませんが、ある本質を掴むことに成功しています。一方、そのころから接していたＣ・アレグサンダーも、近著「Nature of Order」に代表されるように、モノの本質を真正面から説明しようとしています。しかしなかなか理解されず、社会にそれを示すまでに至っていないこととは対称的です。

プロジェクトにおいて、自ら課す目標を、できるだけ遠くに置くことをはじめるようになったのはこの頃からです。むしろ、それに向かってプロジェクトに携わる人全てが問題解決に精進し、様々な角度から検討を重ねること、これを少しでも拡げられれば、その分だけ既存枠に抵抗でき、本質をみる可能性が拡がると思い、今に至っています。施主も巻き込まれ変化します。彼らは、家族のこと、お金の出所、将来の見通しをはじめ設計条件を改めて話合うことになります。法規的な矛盾も巻き込みます。土地制度とかを巻き込みます。なぜそうしたものが製作できないか？を考え、生産の問題も抱え込むようになりました。
人あるいは社会が、様々な観念やプロセスの間に内部矛盾がない方向に動き、自己修復を開始することを、Ｇ・ベイトソンが「MIND AND NATURE」の中で言っていたのですが、その過程で、ひとつ論理型上に導かれることを、同様に建築で試したい、と思ったのでした。作品のタイトル「ナチュラル」は、それに倣っています。過剰ともとれる表現は、そうしたことの積み重ねの顛末から来ているからで、自己矛盾をきたしているのは、解決至らなかったことによると思います。

ご指摘の通りテクノロジーは、私の中で大きなウエイトをしめます。テクノロジーは、原発処理が難しい現状を上げるまでもなく、自己暴走をする恐るべきモノです。池辺さんが70年代以降にヒューマンアセスメントに方向転化していった理由も理解できるようになりました。そうしたテクノロジーの力を借りているところを、独立初期の段階に、難波さんに「数寄屋化」と言われて、悔しい思いをしたのを覚えています。ただ、当時からその他の問題を含めて、拡散させているという点で、スノビズムな数寄屋を避けたいと思ってはいました。
「トートロジカルにしてエコロジカルであること」が、先のＧ・ベイトソンの主張です。それが正しければ、外側からの攪乱があって、そこからトートロジーに向かって収まることを見ることができます。言いにくいことだけれども、条件付きで、モラルのある攪乱は必要とも思うのです。ピーターライスの講演から考え続けてきたことでした。」

2013年11月14日（木）

7時起床。8時半出社。快晴。飯田の河合さんから「150河合邸」の敷地に関するメールが届く。畑地を住宅用地に変更する手続きのためである。最終的な確定には現地に行って再度確認する必要があるが、基本設計は一通り終了したので実施設計に入る前の手続を提案する。縦ログ構法による復興住宅計画の一環としていわき郊外に建売住宅を設計することになった。先日敷地を見学したが地形がかなり厳しい条件である。他の仕事が一区切りついたのでスケッチを始める。基本計画の段階ではいつもそうだがただ敷地を眺めているだけではボンヤリとしているのに具体的な案をスケッチし始めると一気に問題が浮上してくる。問題点を整理してはりゅうウッドスタジオにメール連絡する。遠藤君からXゼミの批評に対するコメントが届く。批評を読んでいろいろ考える所があったらしい。サイトに掲載するかどうか検討するために石山さんに転送する。

『箱の産業』は大野勝彦さんが提案したセキスイハイムに関するインタビューだけを読んだ後に、他のインタビューは飛ばして4人の編集者のコラムだけを読み通す。建設省を介したハウスメーカー（プレハブ住宅）と住宅金融公庫の「癒着」とさえ呼びたくなるような緊密な関係の歴史的経緯を報告した佐藤考一さんのコラムが興味深い。さすがに名前は伏されているが建築アカデミズムも少なからずそれに手を貸しているようだ。3.11後の仮設住宅とプレ協との関係はその延長上にあるのだろう。高度成長期にはやむを得ない結びつきだったのかも知れない。しかしいくら緊急を要するとはいえ、東北の寒冷地に断熱性のない仮設住宅をぬけぬけと供給するようではその関係は完全な動脈硬化に陥っているとしか考えられない。それでもプレ協をバックアップしようとするアカデミストに会ったことがあるが何をか況やである。今回初めて提案された木造仮設住宅によって少しはフィードバックされることを期待するばかりである。

2013年11月13日（水）

7時起床。快晴で寒い。8時半起床。昨夜届いた鈴木博之第28信をXゼミサイトにアップ。秋田の工務店と工事契約の書類について何度かメールのやり取りを行い契約条件の詳細を詰めてその結果を天雲さんに報告する。合わせて地鎮祭の手順についても打ち合せ。引き続き能代の西方里見さんにもメール連絡しこれまでの経緯を説明した上で地鎮祭への同席と確認申請の手続を依頼する。直ちに快諾の返事が届き胸を撫で下ろす。何しろ西方さんに紹介してもらった工務店との話し合いが不調に終わったので恐縮していたからである。スケジュールが確定したので駅ネットで秋田往復の新幹線を予約する。午後はXゼミの「ナチュラルスティックⅡ」の講評に取りかかる。石山修武さんにかなり手厳しい批評を貰っているのでそれに対する反論も兼ねて遠藤君のキャリアについて一通り説明し界工作舍から独立後の設計活動の連続性と時代的背景について論じる。とはいえ僕としても理解できない面があるので若干の疑義を付け加える。夕方までに８枚弱をまとめ遠藤君が界工作舍にいた頃の「別荘情報館（1990）」と「網代の別荘（1993）」の写真を添えて石山研に送信。界工作舍のXゼミサイトにもアップする。かなり集中して書いたため頭が疲れたので夜は文献を散読。『atプラス18』2013年11月号の「起源の反復」（安藤礼二）と「山人双極論」（大塚英志）を読む。大塚の柄谷批判に瞠目し独特の文章スタイルに惹かれる。『柳田国男論』（柄谷行人：著　インスクリプト 2013）を読むかどうか判断の分かれ目だが、今、柳田国雄が再評価されている理由は山人の遊動性が持つ社会主義的な可能性が震災復興に結びついている点にあることが分ったのが大きな収穫である。

2013年11月12日（火）

7時起床。快晴で寒い。一気に秋を通り越して初冬になった感じである。8時過ぎに出社。直ちに事務所を出て歩いて青山歯科医院へ向かう。出勤途中の人たちは皆冬の服装である。表参道の欅の落ち葉も本格的になっている。8時半から１ヶ月ぶりの歯のメンテナンス。9時過ぎに終了。9時半に事務所に戻る。「148天雲邸」の査定回答を天雲さんに転送したら承認をもらえたので、ようやく工事契約締結の運びになった。ここまではかなり時間がかかったけれど収斂する時は早い。直ちに請負を依頼する工務店にその旨を伝え工事契約の準備に着手するように依頼。見積に参加したもう１社には見積の比較表を添えて断わりのメールを送る。合わせて天雲さんにも2社に電話連絡するように依頼する。その後スケジュールを調整し今月下旬に秋田に赴き工事契約と地鎮祭を同時に行うことになった。石山修武さんから電話がありXゼミサイトの作家作品批評の今後の展開について相談。北園徹、遠藤政樹に引き続いてとりあげる2組のラインアップを決める。界工作舍からは河内一泰、中川純、石山研からは福岡の高木正三郎と佐藤研吾をとりあげるそうだ。夜遅く鈴木博之さんからXゼミ原稿が届く。２人の作家作品批評へのコメントである。明日サイトにアップしよう。僕も遠藤評を早急にまとめねばならない。

『箱の産業』を読み始める。1950年代からのハウスメーカーの歴史を辿ったインタビュー集である。松村秀一の序文「日本の住宅産業とプレハブ」はハウスメーカーの誕生と今日まで展開をコンパクトにまとめていて興味深い。しかしそれに続く各ハウスメーカーの技術者へのインタビュー記録は会話をそのまま掲載しているので冗長で読みにくい。よほどハウスメーカーの歴史に興味がある人でないと読み続けられないだろう。できればトピック毎に焦点を整理しインタビューを付加するような構成にすべきではなかったか。要するに編集の問題である。
『歴史という武器』（山内昌之：著　文藝春秋2013）を読み始める。著名な歴史学者であることとタイトルに惹かれて読み始めたが、新聞に連載した短文を集めたもので少々突っ込みが足りない。序文の「今後の日本と世界はどうなるか---「歴史という武器」から学ぶ」はまとまった文章だがこれも広く浅くで学ぶ所はあまりない。

2013年11月11日（月）

7時起床。曇りで肌寒い。頭痛は鎮静したが身体全体の脱力感が残っている。気を奮い立たせて8時半出社。飯塚と「152岡田邸」の第5案エスキス。夕方までにまとめるように指示。先にXゼミサイトに「作家作品批評01」としてアップした北園徹さんの「新鍛造工場」に引き続き、界工作舍OBの遠藤政樹君の「ナチュラルステッィクⅡ」を掲載することになった。まずは建築紹介の資料を「作家作品批評02」として掲載し、その後に石山さんと僕の講評を掲載することになる。遠藤君から届いたデータをXゼミサイトに早速アップする。先日石山さんに頼まれた椅子の資料を探すが見つからない。1980年代に製作したスチール製の椅子で現在も事務所にあるが幕張メッセに展示した際の資料や図面が見つからない。ボンヤリとした頭のまま今日が締切の『家の理』のあとがき原稿に取り組む。1,000字という短い文章だがなかなか進まず午後までかかってようやく完了。直ちに編集部に送信。これで僕の仕事はすべて終わる。引き続き今年度のユニバーサルコンペの講評会の記録原稿を校正する。これも夕方までに終えて玉田さんに送信。栃内と佐々木事務所から届いた「151小舘邸」の構造図を見ながら打ち合せ。基礎のピットや釜場について再検討する。これで構造システムの概略はほぼ確定した。「152岡田邸」の第5案がまとまったのでコメントを添えて岡田さんに送信。エレベーターがないのが残念だが予算上やむを得ない。夕方に俄か雨が来てその後直ぐに晴れたが今度は強い北風が吹き始めて一気に寒くなった。夜になると少し気分が回復し頭もはっきりしてきたので『atプラス18』2013年11月号の巻頭対談「柳田國男と遊動性」（柄谷行人＋赤坂憲雄）を読む。二人は東北の震災復興における協同組合の可能性を柳田國男の「山人論」から引き出そうとしている。論としては理解できるのだが何だかやけに遠回りをしているような気がする。というか具体的な活動に結びつける経路がなかなか見えてこない。9時半過ぎに帰宅。

『デモクラシーを〈まちづくり〉から始めよう』（竹井隆人：著　平凡社 2013）を読み終わる。第2部「見当違いの処方箋」で著者は景観法、コミュニティ論、住民参加といった政治的「正義」の問題点を抉り出し、逆にゲーティッド・コミュニティの閉鎖性を批判する一連の動きを逆批判する。要するにまちづくりに関する世の中の通説すべてに反批判を加えるのである。それを受けて第3部「地方自治から市民社会へ」では都市、市民、政治といった概念を歴史的に見直すことによって、現代におけるゲーティッド・コミュニティとしての「まちづくり」の可能性を追求しようとする。たとえば著者はこう主張している。「ある空間や施設の私的独占を許さずに、それを「公共」の範疇に入れるべきだ、などという言説が、そもそも「公共」が「私立」を前提としている事実に鈍感である理由は、ひとつにはこの「公共」が「お上」であるとして自身とは別物ととらえられているしまう特異さによるものだろう」。著者の結論はこうである。
「私が主張したいのは「直接性デモクラシー」を介した政治的過程や決定論を通じて、同一社会内のあらゆる見知らぬ他者とも関係をつなぐことだ。そして、その社会を維持する人を担うことで、より大きな社会に対しての「責任」を追わせることである。（中略）これらの社会が普遍性をもち得るのは、〈まち〉、自治体、国家そして全世界という社会を組成していく原理にのみあるのであり、「コミュニティ＝仲良し」はその原理としては不十分、かつ適性をいちじるしく欠いている。（中略）まず人々が自らの〈まち〉について直接的に「政治」に参加することで社会組成原理を身につけ、それによって醸成された「責任」をもって、より上位の社会である地方自治体、国家においても、「社会をつくる自由」を発揮することだ。」
いかにも真っ当な主張で否定し難い論理だが何だか息苦しいのはなぜだろうか。それは自分の興味（この場合「政治」）がすべてを司り人々はそれに興味を持つべきであるという専門家にありがちな独りよがりの論理のように思える。著者の主張通りに行動するには他のことは何もできそうにない「逃げ」のない論理である。しかしながら人々はそれぞれ自分の興味と仕事の中で生きている。本来の「政治」とはそういう余地を許容するもっと懐の深いものではないか。

2013年11月10日（日）

8時起床。曇りで肌寒い。頭痛と寒気。二日酔いと風邪のダブルパンチである。9時過ぎ京都の茶会に出掛ける妻を見送った後にしばらく散歩に出掛けるが寒気に襲われて急遽帰社する。千駄木の岡田さんから「152岡田邸」に関するフィードバックが届いたので第5案のスケッチ。原稿に取りかかろうとするが頭痛に襲われ集中できない。やむなく昼前に帰宅。今日は一日休息日とする。夕食は熱いおでんで身体を温め再び横になりそのまま眠り込む。夜中何度も目が覚めたのでその都度iPadでメールチェック。音楽を聴きながら微睡み続けるうちに夜が明ける。頭痛は消えたがまだ熱っぽさが続く。体調が悪いと気分も萎える。

2013年11月09日（土）

7時起床。曇りで肌寒い。8時半出社。事務所回りを30分余の散歩。すっかり秋らしくなりあちこちで落ち葉が舞っている。10時半飯塚と「152岡田邸」のエスキス。コストダウンのために間口を狭めエレベーターを中止した案をまとめる。午後、エレベーターを残した3案と一緒に岡田さんに送信。「151小舘邸」の前面道路が私道であるためインフラ工事には所有者の承認が必要であることが判明する。工事前に承諾を得ておかねばならないので関係書類の作成を指示。表参道ヒルズの真裏なのに今だにこのような敷地が残っているのが驚きである。3時前に事務所を出て副都心線、東横線、根岸線を乗り継いで関内駅で下車。歩いて5分で4時前にリッチライフ社ビルに着く。4時から1階ホールでリッチライフコンペ「集合住宅と戸建住宅。その境界線」の表彰式開始。応募者が各自の作品をスライドで説明し僕が講評を加えた上で専務が賞状と賞金を渡す手順で優秀賞5点、リッチライフ賞1点、最優秀賞1点を表彰。かなり突っ込んだ講評を話したが応募者は理解したかどうか疑問。5時半過ぎにすべて終了。その後、同じ場所で懇親会。学生たちは就職用のポートフォリオにこのコンペを使うらしい。6時半過ぎ終了。その後、玉田敦士、河内一泰両氏と関内駅南の居酒屋へ移動し打上げ。魚料理と焼酎で四方山話。何か重要な話をしたような気がするが記憶は定かではない。3人ともかなり酩酊し9時過ぎに店を出る、2人はラーメンで締めたいと言い出したが僕は遠慮してそのまま関内駅へ。10時半に事務所に戻る。松村秀一さんから『箱の産業---プレハブ住宅技術者たちの証言』（松村秀一ほか：編著　彰国社 2013）が届いている。日本のハウスメーカー８社の技術者へのインタビュー集である。現在では日本のハウスメーカーも転機を迎えているのでいいタイミングかも知れない。ぜひとも読んでみよう。SUEPの末光弘和＋陽子夫妻から先日南青山のギャラリーで開かれたSUEP.展「自然循環系の一部としての建築」のパンフレットが届く。11時前に帰宅しそのままベッドに倒れ込む。

2013年11月08日（金）

7時起床。快晴でやや涼しい。腰痛は徐々によくなっているが微かな鈍痛が続く。飯塚と「152岡田邸」のコストダウン案を検討。微妙な寸法でエレベータ―と階段の共存が難しい。思い切ってエレベーターを外す案を検討してみることにする。今日の鼎談のテーマスケッチ。幾つかの文献に眼を通す。午後３時過ぎに事務所を出て銀座線で京橋駅下車。八重洲ホテルに4時前着。ユニバーサルホーム社員に迎えられて3階の談話室へ。まもなく濱野智史さんと藤村龍至さんが到着。河内一泰君が加わり玉田敦士さんの司会で4人の対談。僕がコンペの概要について説明することから開始。僕としては3.11以降の住宅のあり方に関する話し合いにしたかったが、他の3人は今年のコンペのテーマ「育てる家、育っていく家」に即して話そうとする。『生きられた家』において多木浩二が言ったように、僕としては基本的に住宅における「時間」をデザインすることはできないと考えているので、最初の内はすれ違いが続く。現代社会における住宅のあり方の話になり濱野さんがAKB48の握手会を例に挙げながら住宅の閉じた箱とイベントの巨大な箱を往還する若者の生態について話し始めたあたりから俄然話題が展開し始める。僕としては祭のような巨大イベントが日常的な住宅空間をどう変えるかという話題に繋ごうとするが空振り。藤村、濱野両氏とも都市や公共建築に関する話題は得意でも住宅になると自分の住経験からしか話すことができないようだ。住宅はそれだけ私的で個別的な世界だからだろう。玉田さんもあまり手綱を引かないので徐々に話題が拡散して行く。それでもコンペのテーマに即して話そうとする3人の努力に感謝したい。最後には再び時間の問題に戻ったので僕としては同じ主張をくり返して終わることになった。４時過ぎ終了。玉田さんのまとめの至難さを想像するがお手並み拝見である。4時半に解散。5時過ぎに事務所に戻る。明日の「リッチライフコンペ」の表彰式と講評会のために講評のスケッチを始め夜までにまとめる。「152岡田邸」の階段案をエスキスした後9時半に帰宅。『デモクラシーを〈まちづくり〉から始めよう』は第3部「地方自治から市民社会へ」に進む。

2013年11月07日（木）

7時起床。快晴でやや暖かい。8時半出社。今日は一日中事務所で仕事。腰痛はやや納まってきたがまだ完治しない。とくに長時間椅子に座った後に立ち上がる時が辛い。昨日のXゼミミーティングで鈴木博之さんにもらった『世界遺産をもっと楽しむための西洋建築入門』（鈴木博之：著　JTBパブリッシング　2013）に眼を通す。パルテノンとエレクティオンは今回の旅行で訪れた。他のラインアップもかなり見ているがドイツ系の建築をほとんど見ていないことを確認する。ならば次回の旅行はドイツだろうか。「152岡田邸」のコストダウン案をあれこれ模索する。飯塚がまとめているがなかなか突破口が見つからない。何とか今週中に見通しを立てたい。栃内が水道局に行って調べたところ「151小舘邸」の前面道路が私道なのでインフラ工事の承諾が必要であることが判明した。電柱については手配済だが東電でも手続きに手間取っている。実施設計に並行して承諾の手続を進める必要があることを小舘さんに連絡する。『家の理』の表紙のメッセージとあとがきをスケッチ。MOSAKIの田中元子さんがまとめたコラム原稿に眼を通す。これまでとは異なる「箱の家」のコメントが興味深い。玉田敦士さんからコンペ評の原稿が届く。早急にチェックバックしなければならない。夕方日本デザイン振興会から今年のグッドデザイン賞入賞者の発表HPが届く。一般投票と最終審査会でグランプリになった「Google Map」が通産大臣賞の授与を却下されたので事務局では急遽「グローバルデザイン賞2013」という新しい賞を設定することになった。その旨をfacebookにアップしたらそのような事態を予測しなかった審査会の判断を揶揄するような書き込みがあったので唖然とする。思わず反論したが世の中には如何にも訳知りな評論家的デザイナー（とさえ言えないような人）がいるものである。経産省は特に優れたデザインではないという理由をこじつけているが、要するに竹島や北方四島の表示に日本名がないことに対する政治的な判断である。Googleとしてもこれを機会に両国名を併記するなどの微修正を行ってもらいたいものである。
https://www.facebook.com/kazuhiko.namba?sk=wall
http://nkkp.jp/a/bn/20131107/639210/

『パターン・ランゲージ』の最終第４章「パターン・ランゲージとネイチャー・オブ・オーダー」を読む。新刊の『Battle』もとり挙げられている。中埜博さんはアレグザンダーの思想を東北の被災地復興に適用しようと努力している。そのことに全く異存はないがさまざまな復興活動を横につなげるネットワークが生まれないのはアレグザンダーのデザイン思想に対する一抹の疑問があるからである。しかしそれを払拭する方法はあるだろうか。

2013年11月06日（水）

7時前起床。ホテルが幹線道路と新幹線に挟まれた三角地帯にあるので交通騒音がうるさく昨夜はあまり眠れなかった。シャワー浴びて目を醒し2階のレストランで朝食。8時にロビーに集合し坂口大洋さんの車に同乗して卸町の敷地へ。やや寒いがピーカンの快晴である。卸町の芝居練習場「10ボックス」を見学し公営復興住宅敷地を見て回る。9時に卸町会館2階のヒアリング控室に入ると冨永譲さんがいる。9時からヒアリング開始。僕たちは冨永チームの後の2番目で9時25分に開始。楕円状の机にゆったりとした椅子が並ぶ。小野田泰明審査委員長を中央に本江正茂さん以下十数名の審査委員が並ぶ。8分のプレゼンテーションと12分の質問。プレゼンテーションは僕、坂口大洋、遠藤政樹、芳賀沼整の４人で分担する。質問はほぼ想定内だったので的確に応えることができた。終了後控室に戻ると3番目のチ－ムは見当たらないので2チームだけだったのかもしれない。坂口さんの車で仙台駅まで送ってもらい10時半の新幹線に乗車。1時過ぎに事務所に戻る。石山研究室から届いたXゼミ原稿「作家作品批評01：北園徹の新鍛造工場」をサイトにアップしようと試みるがなかなかうまく行かない。やむを得ずホームページをデザインした界工作舍OBの中川純君に問い合わせる。6時前に事務所を出て新大久保駅前の近江屋へ。6時半から1ヶ月振りのXゼミミーティングである。鈴木さんと石山さんにギリシア土産のグラッパ「ウゾ」とアクロポリスの丘のカケラを贈呈する。その後は焼酎を飲みながら互いの近況報告。Xゼミの新企画「作家作品批評01」についても話し合う。鈴木さんに追加のコメントを依頼し今年中に2ラウンド掲載した上で次の展開に進むことで合意。最後に親子丼で締めて8時に終了。8時半に事務所に戻る。石山さんからのXゼミ原稿も届いたので再度サイトへのアップを試みる。石山研から届いた原稿にアップを阻む書式が紛れ込んでいることが分りその部分の書式を修正すると無事アップできた。第1回目に紹介する北園徹さんは石山研究室の第１期生で「新鍛造工場」は数年前にJIAの環境建築賞で審査したことのある秀作である。10時過ぎ帰宅。デモクラシーを〈まちづくり〉から始めよう』を読みながら夜半就寝。

2013年11月05日（火）

7時起床。晴れだがやや肌寒い。8時半出社。腰痛はまだ続いている。スタッフに幾つか仕事を指示するメールを送った後、9時半に事務所を出て六本木のミッドタウン地下のホールへ。グッドデザイン賞特別賞の審査会である。途中で芳賀沼さんと合流する。昨年度の金賞受賞者も審査員に加わるからである。今年の100点を再度じっくりと見回し金賞候補の目星をつける。10時から審査会開始。審査員は70数名。海外からの参加者は10人を超える。審査手順の説明の後に各審査委員が20点をピックアップして投票。11時半に第1回目の審査を終了。集計の間に昼食を摂る。第一回目の集計結果は建築部門の惨敗である。これはいかんと思い立ち、まず最初に私見を述べる。芳賀沼さんも別の角度から意見を述べてくれる。その後様々な意見が噴出し最後あたりに古谷誠章さんが建築に関する意見を述べた後に再投票。予想通りラインアップはガラリと変わる。ジャンルの異なる審査員は説明を受けて初めて作品の理解を深めるからである。逆に言えば審査講評を読んでもなかなか理解には至らないようだ。この手順は例年のプロセスだが初めての審査員には不可解に映るらしい。確かに偏ってはいるが他に代わるいい方法がない。各ユニット長が改めて全作品の説明を行うのがベストだがとてもそのような時間的余裕はない。金賞を20点に絞る段階で議論が白熱する。最後は挙手で決定。3時半に終了。それ以外の幾つかの特別賞については拍手で決定し4時前に全て終了。正式な発表は2日後である。これで今年の作業はすべて終了した。直ちに会場を出て地下鉄で東京駅へ。16時半東京発の盛岡行のはやてに乗車。18時過ぎに仙台着。歩いて10数分の駅北のビジネスホテルへチェックイン。東京よりも幾分寒い。部屋で待つ間に石山研とXゼミ原稿に関するやりとり。jtの原稿のチェックバック。約30分遅れて遠藤事務所の2人が到着。歩いて5分の居酒屋で牛タンの夕食。熱燗で身体を温める。次回のXゼミで取り上げる若手建築家を遠藤政樹君にすることを思いつき相談したら快諾してくれた。8時半にホテルに戻る。9時過ぎに仙台高専の坂口大洋さん、間も無く福島の建築家陽田秀夫さんが到着。10時前に芳賀沼さんが加わり明日のプレゼンテーションについて打ち合せ。約1時間シミュレーションした後に明日の待ち合わせ時間を決めて11時に解散。

2013年11月04日（月）

8時起床。依然として腰痛が直らないので朝食後もずっとベッドの中でメールチェック、日記の書き込み、原稿スケッチ、読書などをして過ごす。横になったままでいると時折眠気に襲われ何度も居眠りをくり返す。午後3時頃まだ腰痛は残っているが思い切って出社し先週から宿題になっているXゼミの若手建築家の作品講評に取り組む。厳しい環境条件を建築的に解決した興味深い工場である。厳しい外的環境から内部環境を守るというのが通常の場合だが、この建築の場合はその逆で内部の厳しい環境を外部に漏らさないという問題の解決である。夜までに5枚弱をまとめて石山研究室に送る。明日の仙台出張の準備をして9時半に帰宅。腰痛の湿布を貼り替えた後『デモクラシーを〈まちづくり〉から始めよう』を読みながら早目に就寝。寝返る度に痛みが走るので浅い眠りが続く。

2013年11月03日（日）

朝早く妻が胃痛を訴えたのでしばらく看病する。海外旅行の疲れが出たのかもしれない。8時過ぎに何とか治まったので僕だけ起床。ゆっくりと朝食を摂り10時に出社する。メールをチェックし日記を書き込む。昼までプロポーザルの書類を検討。遠藤君からプレゼンテーションのシナリオが届いたので僕の担当部分に加筆してメンバー全員に返送する。午後3時に岡田勝治さん一家が来所。「152岡田邸」の第1案の基本図を渡して概要を説明する。設計の内容は理解してもらえたようだが昨今の建設事情から工事費の概算が見えない点が最大の問題である。ともかく持ち帰って検討してもらうことになった。『デモクラシーを〈まちづくり〉から始めよう』を読み続ける。第1部「〈まちづくり〉の正義とは何か」は原発問題、シャッター街問題、騒音問題、景観問題などに関する突っ込んだ分析である。まさに「再帰性」のお手本のようだ。9時過ぎに帰宅。日本シリーズのTV中継の最後あたりを観る。何だがシナリオのあるドラマを見ているようだがそれなりに気分はスッキリする。典型的な判官贔屓である。いい気分で風呂に入った後に浴槽を洗っている時ギックリ腰が再発する。やむなくそのままベッドに横になり痛みに耐えながら翌朝までまんじりともせずに過ごす。連休中は静かに休むしかなさそうだ。家早何友。

2013年11月02日（土）

7時起床。8時半出社。僕はほぼジェットラグから脱したが妻はまだのようだ。比較的天気がいいので事務所の回りを約30分の散歩。昨夜仙台復興住宅プロポーザルの第１次審査をパスしたという知らせが届く。11月6日（木）に現地でヒアリングが開かれるので何とかスケジュールを調整して出席する手配をする。ヒアリング前に遠藤、芳賀沼両氏と打ち合せを持つことになった。海外出張中にまとめてもらった提案書に再度じっくりと眼を通しプレゼンテーションの方針について考える。スライドは使えない喋りだけのヒアリングなのでメンバーで役割分担を決めコンパクトにまとめたい。「148天雲邸」の正式な見積書類が届いたので直ちに天雲さんに送付する。引き続き査定についての打ち合せ。初めての工務店なので僕たちの設計が十分理解されていない仕様については参考資料をつけるように指示する。夕方までにまとめて工務店と天雲さんに送信する。5時から事務所内の掃除。6時に解散。9時遠藤事務所が来所。引き続き9時半に芳賀沼さんが到着。11月6日（水）のヒアリングに関する打ち合せ。プレゼンテーションの基本方針を決めシナリオのまとめを遠藤君に頼む。前日5日の夜に仙台に入り翌朝のヒアリングの前に敷地調査することとしホテルを予約する。５日夜にメンバー全員で顔合わせすることを約して11時半終了。12時前帰宅。今日アマゾンから届いた『デモクラシーを〈まちづくり〉から始めよう』（竹井隆人：著　平凡社 2013）を読み始める。

2013年11月01日（金）

7時起床。8時半出社。少し寒いがいい天気なのでひさしぶりに散歩に出かける。キャットストリートを西進し明治通りに出て表参道を下り約1時間歩く。途中の竹下通り出口のau販売店では新しいiPad Airのキャンペーンが開かれている。青山通りの銀行に寄り9時半に帰社。10時に小舘和美さんが来所。「151小舘邸」の詳細図と展開図についての打ち合わせ。今後のスケジュールと見積依頼する工務店を決めて12時過ぎに終了。昼過ぎに安藤忠雄さんから電話が入る。今月下旬に近現代建築資料館で開催される坂倉順三展のオープニングの日にXゼミ昼食会を開く件について相談。午後「箱の家」で世話になっている工務店に「151小舘邸」の見積参加の依頼のメールと電話。幸い3社とも快諾してくれたのでその旨を小舘さんに連絡する。午後は帳簿を整理し資料をまとめて会計事務所に送付する。夜は設計資料の検討と読書の繰り返し。9時半に帰宅。

『日本人はなぜ存在するか』（與那覇潤：著　集英社インターナショナル 2013）を読み終わる。最初はあまり乗らなかったが途中から引き込まれた。現実の認識におけるカント的な図式、つまり現実が先にありそれを認識するという古典的認識論ではなく認識図式が現実を構成するというカント的認識論からスタートしている点に惹かれる。本書では認識と現実との間でループ現象が生じることを「再帰性reflectivity」と呼び、これをキーコンセプトしてあらゆる社会現象を分析している。著者によれば再帰性が社会を変化させるように作用するようになったのが近代社会であり（アンソニー・ギデンズ）再帰性があらゆる社会的事象に適用され現実がそれを見る人の視点に送り返されるようになった時代がポスト近代である（ジャン=フランソワ・リオタール：小さな物語）。歴史の記述は物語の創成であるというヘイドン・ホワイトのメタヒストリー論も再帰性の重要なヴァリエーションであるという指摘が興味深い。僕の考えでは再帰性の概念はこれまで建築において使われてきた批評性の概念にとって換わるのではないかと思う。3.11以降多くの建築家が批評の時代は終わったと主張しているが、一方で再帰性はあらゆる社会現象に浸透しているからである。本書に並行して『パターン・ランゲージ---創造的な未来を作るための言語』（井庭崇：編　慶応義塾大学出版会　2013）を読んでいるが、どうしても拭えない違和感は再帰性の欠落に起因しているような気がする。僕の見るところアレグザンダー自身は再帰性を意図的に抑圧しているのに対し、彼の思想の受け手はそれをベタに解釈しているのではないかと思う。

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