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第二章
15話 できる魔法使いにも悩みはある 【画像エリザベス】
 翌日もほぼ同じような展開だった。戦闘はあるものの、すべて前のパーティーで処理されて、こちらは平和なものだ。だが、昼前に少しトラブルがあったようだ。軍曹どのがみなを集める。

「この先にオークの集団が見つかった。見えた範囲だけでも約30。多ければその倍はいると考えられる」

「我々の目的は調査だ。回避するべきではないか?」

「いや、放置して後背をつかれればまずい。殲滅しておくべきだ」

「ついでだ。やっちまおうぜ。たかがオーク、50が100だとしてもこの戦力なら問題ないだろう?」

 ラザードさんの意見であっさり殲滅することに決まった。

「やつらは現在停止中だ。休憩してるのか、何かを待ってるのかわからんが、奇襲するのには悪くない位置だ。まず魔法使い2人で先制をしてもらう。その後、弓で数を減らす。さらに一部隊を背後に回し、こちらに注意が向いてるすきに強襲する。余裕があれば、残った部隊も突撃だ」

 おれと暁の戦斧の魔法使いで先制。アリブールとヘルヴォーンで弓攻撃。暁と宵闇で後ろから奇襲だ。


 黒ローブがやってきた。暁の戦斧の魔法使いだ。手に小さい杖を持っている。こちらの正面にやってきてフードを脱ぐ。女の子だった。高校生くらいだろうか。背はおれより少し小さい、体型はローブでわからない。金髪がローブの中に伸びており、顔は整って美人だ。アンジェラと同じ金髪でも、こっちはかわいい系だな。目がぱっちり大きい。でもなぜかおれをぎっと睨んでる。

「私はエリザベス。風メイジよ!いい?絶対に私の足をひっぱらないでよね!わかった!?」

「あ、はい」

 この子は何をこんなにけんか腰なんだろう。

「あの、何をそんなに怒ってますか?」

「あなた!誇り高いメイジなのに、荷物持ちなんて言ってへらへら笑ってるなんて!同じメイジとして許せないわ!!恥を知りなさい、恥を!」

「はあ、ごめんなさい」

「もう!もういいわ!」

 そういうと、ずんずん行ってしまった。慌てて追いかける。

「でも荷物持ちで雇われたのはほんとだしなー」

「そんなもの、メイジの仕事じゃないわ!私が本当のメイジってものを見せてあげる。ついてらっしゃい!」

 言われなくても行く方向同じだし、同じ任務割り振られてるし。

 すぐに軍曹どのがいる攻撃地点につく。谷のようになっていて、下をのぞくとオークがいっぱいいた。

「奇襲部隊もそろそろ配置についた頃だ。魔法使い2人の攻撃を合図に攻撃を開始する。では2人とも頼んだぞ」

「あなたはあっちのほうを狙いなさい。わたしはあっちをやるわ。いい?タイミングはわたしに合わせるのよ」と、エリザベスが小声で指示を出す。

 攻撃する場所を確認し、うなずく。

 エリザベスが詠唱を開始したのでこちらも【小爆破】の詠唱を開始する。エリザベスが聞こえないような小さな声でぶつぶつ言ってる。何か呪文でも唱えてるんだろうか?おれの場合は魔力の集中だけで特に何もしてないが、他は違うんだろうか。

「ウィンドストーム」と、エリザベスが小さく声を発する。おれもそれに合わせて小爆破を発動した。

 突然の攻撃にオークたちは混乱している。続けて弓の攻撃が始まってばたばたとオークが倒れていく。だがすぐに反撃が始まった。散発的ではあるが、オークからも矢が飛んできたのだ。一本の矢がすぐ手前に突き刺さる。すばやく木の陰に退避した。エリザベスはと見るとすでに隠れている。

 矢の飛んでくる方向を探す。いた。【小爆破】を詠唱する。弓を撃ってるオークを狙い、発動。数匹まとめてオークが吹っ飛び、レベルアップした。ステータスのチェックは後回し。向かってくるオークがいたので【火槍】で始末する。

「攻撃停止!」と軍曹どのから号令がかかる。奇襲部隊の攻撃が始まったようだ。

 シルバーがこっちにやってきた。

「クルックが足に矢を食らった。みてやってくれないか?」と、シルバー。

 クルックは脂汗を浮かべている。太ももに矢が刺さってる。クルックは弓担当で隠れるわけにはいかなかったし、シルバーほど重装備じゃない。この程度で済んでよかったと言うべきだろう。

「シルバー、矢を引っこ抜いてくれ。すぐに回復魔法をかける。クルックちょっと我慢しとけよ」

 シルバーが矢を抜くのにあわせて、【ヒール】をかけてやる。少し血が吹き出たがすぐに傷はふさがった。

「おい、おまえら。ここで待ってろ。おれたちは残りのオークを殲滅してくる」と、ラザードさん。

 その場にはおれとシルバーとクルック、軍曹どのとエリザベスのみになった。

「軍曹どの、もう終わりでしょうか?」

 先ほどまでしていた戦闘音がなくなっていた。

「そうだな。あとは逃げ出したやつくらいだ。しばらくここで待機するぞ。あたりを警戒はしておけ」

 クルックとシルバーはあたりを警戒している。おれがステータスを見ながら、スキル振りを検討していると、エリザベスが話かけてきた。

「あなた、なかなかやるじゃない。名前はなんて言ったっけ?」

「マサル。そういえば、さっき魔法うつのに何かぶつぶつ言ってたけど、あれ呪文か何か?」

「そうよ。きちんと呪文で詠唱するのが正式なのよ」

「へー、おれの知り合いはやってなかったけどな」

 アンジェラやシスターマチルダたちも特に何も言ってなかったし。

「そいつらは素人ね。ちゃんと呪文を詠唱して最後に呪文名を叫ぶと、威力が2割増しになるのよ!」

 杖をこちらにつきつけ、ポーズをつけてエリザベスがいう。

「2割増しはわからんが、撃つ前に呪文名を言うのは間違っていない。パーティーで戦う場合、後方の魔法使いがどの呪文を使うか、前衛に知らせねばならないからな」と、軍曹どの。

 なるほどなー。無言で詠唱して、どかんじゃ、前衛はびびるだろう。エリザベスはドヤ顔をしている。

「どうやら散っていた部隊が戻ってきたようだ。我々も下に降りよう」

 谷底に降りると、指示に従ってオークの死体を収納していく。ばらばら死体になっていたのはおれの倒したやつだろう。損傷の激しいのは価値も低いので放置していく。

「適当にアイテムにいれていってますけど、誰が倒したとかどうするんです?」

 分配で揉めないのかな、これ。

「あとでギルドカードを照らし合わせて分配を決める。損傷して持って帰れない素材もあるし、細かいことはやっていられないからな」と、軍曹どの。

 なるほど。おれのぶっ飛ばした死体のことですね、わかります。他は大抵、矢や剣で倒されてるもんな。エリザベスのやったのさえ、形がわからなくなるほどじゃない。火魔法、火力はあるけど、こういうとき不便だな。

 ギルドカードをチェックするとオークを9匹倒していた。1匹は火槍でそれほど損傷してないから、8匹はほぼ無価値になった計算だ。オークの死体は1匹200ゴルドで引き取ってもらえるから、結構痛いな。

 全部収納するとオークは41匹だった。昨日の分をいれると62匹。1匹80kgくらいとしても5000kg近くある計算だ。相変わらずアイテムボックスチートすぎる。暁の人に全部入ったって言ったらすこし驚いてた。

 2人ほど軽い怪我をしていたので治療して、簡単な食事をしたあと出発となった。

 予定より遅れるかと思ったら、特に急ぐこともなく、日が落ちる前に2日目の野営地に到着。この程度のトラブルは織り込み済みで行程は立てているんだそうだ。手際よくキャンプを設営し、食事を済ませる。明日はここをベースにして、湖周辺の調査となる。


 夕食後、焚き火に当たりながら水球をふよふよ浮かせて水魔法の練習をしてると、シルバーが何やってんだと聞いてきた。

「魔法の練習」

ふーんといいながらつつこうとしたので、

「よせ!触ったら死ぬぞ!?」というと、びびって後ずさった。ゆっくりと水球を近づけるとさらに後ずさる。もちろんただの水である。

「こら、やめろって!」

 逃げ出したので水球で追いかけてみる。あ、こけた。そのまま水球をぶつけてやる。シルバーは頭から水をかぶって、呆然としている。

「残念だがおまえは死ぬ。風邪をひいてな!」

 やっと冗談だと分かって怒り出した。

「あははははは。すまない。ごめんってば。ほら、いまのですりむいただろ?回復魔法かけてやるから」

 シルバーと楽しくたわむれていると、エリザベスがやってきた。

「ちょっと話があるのよ。できれば2人切りでね」

 そういうと、シルバーのほうをちらりと見る。シルバーは察してすぐにどこかへ行ってくれた。

「それでなんの御用でしょう、エリザベスさん」

「うん、その……ね」

 なんだかもじもじして言いにくそうだ。これはあれか?モテ期ってやつか!?今日のおれの戦いぶりを見てほれちゃったのか?

「その……アイテムボックスの魔法があるでしょう?わたし、空間魔法が苦手でね。そりゃあ普通の人よりは沢山入るんだけど、うちのパーティーくらいになると戦利品もすごくて、すぐにいっぱいになっちゃうのよ。マサル、すごく得意そうじゃない?何かこつとか練習法とかあるのかしら?」

 ですよねー。ほれるとかないわー。30秒前のおれをしばき倒してやりたい。

「うーん、なんとなく最初からこんな感じなんで、こつとかわからないなあ」

 チートですから、説明のしようもない。

「そう……」と、しょんぼりしている。力になってやりたいが、こればっかりはなあ。

「ほら、まだ若いんだからさ、使ってるうちに上手くなるって」

「やっぱり地道にやっていくしかないのね。わかったわ」

 そういうとふらふらと自分のテントのほうに歩いていった。人生勝ち組みたいな顔をして、誇り高いメイジも色々悩みがあるんだな。

 おれの悩みといえば、火力のありすぎる火魔法の運用だ。今日みたいに獲物ごと爆破していたら、報酬的にきつい。スキルリセットを使えば火魔法を他に振り替えもできるんだけど、よく考えたら、明日急に、火魔法が使えなくなりました。土魔法がマックスレベルですとか、怪しいことこの上ない。リセットでMP消費量減少やMP回復力アップを削ってもいいんだが、それよりもレベルアップ狙ったほうが早そうな気がする。明日も戦闘参加できないかなあ。

 クルックとシルバーは、夜のはじめのほうの見張り担当だったので、その日は一人で寝た。オークに矢を射られたのがちょっと怖かったので、寝る前に火魔法のレベルを一段階あげておいた。


山野マサル ヒューマン 魔法剣士
【称号】野ウサギハンター
野ウサギと死闘を繰り広げた男
ギルドランクE
レベル6

HP 264/132+132
MP 398/199+199
力 32+32
体力 33+33
敏捷 21
器用 26
魔力 50
スキル 6P
剣術Lv4 肉体強化Lv2 スキルリセット ラズグラドワールド標準語
生活魔法 時計 火魔法Lv4
盾Lv2 回避Lv1 槍術Lv1 格闘術Lv1 体力回復強化 根性
弓術Lv1 投擲術Lv2 隠密Lv3 忍び足Lv2 気配察知Lv2
魔力感知Lv1 回復魔法Lv3 コモン魔法 MP消費量減少Lv3
MP回復力アップLv2

【火魔法Lv4】火矢 火球 火槍 火壁 小爆発 火嵐 大爆発
エリザベスさんは釘宮ボイスで。


挿絵(By みてみん)
知り合いの絵師さんからのいただきものです

>>呪文名を叫ぶと、威力が2割増しになるのよ!
そういう魔法の流派があるって感じで
アンジェラも普通になしでやってたし、軍曹どのも2割増しはわからんがと言っております。

次回、明日公開予定
16話 人は知らず知らずのうちに死亡フラグをたてる

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