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第一章
9話 戦闘で死んだら労災は降りますか?
 寝る前に魔力の指輪をもらっていたのを思い出しつけてみる。何もついてない、飾り気のないリングだが、銀か白金だろうか、きれいな指輪だった。鑑定がないので効果がわからなかったが、つけると最大MPが倍になった。さすが神様がくれたアイテムだ。つけたまま寝て起きると魔力が全回復していた。どうやらMP+100%と魔力回復アップの効果のようだ。こっちにきて初めて、ちょっとだけ伊藤神に感謝した。

 朝一でギルドに向かう。アンジェラ先生からは午前中は治療があるから午後から来い。午前中は好きにしろと言われてたので何か依頼を探すことにした。ギルドに入り、まっすぐ受付のおっちゃんのところに行く。常時隠密を発動するようになってから、声をかけられることが減ってきた。受付カウンターも個別のブースになってて一度はいれば後ろ姿しか見えなくなってる。おっちゃんに無事回復魔法を教えてもらえることになったことを報告する。

「それはよかった。それで今日も回復魔法の?ふむ、午前中だけでできる依頼か。じゃあ昨日の森を調査してきてくれないかな。森の中には入らなくていいよ。草原と森の境界あたりを調べて危険なのがいないか見てくるだけでいい。いいかい?森の中には入らないようにね。何か出てきたら戦おうとは思わないですぐ逃げるんだよ」

 見てくるだけで100ゴルドか。おいしいな。ついでに狩りもしていけばいいし。依頼を受けて即出発する。おれに気がついて声をかけてくるやつもいるが、急いでますのでと言って素早くかわし町の外へ向かう。

 今日はいつもの門番の兵士がいなかった。休暇なのだろうか。特に何もなく町の外へ出る。気配を探りながら草原を移動する。隠密と忍び足は使ってるが今日は目的地があるので少しペースを早めるが途中で見つけた野ウサギはきっちりしとめていく。昨日のオークのいたあたりにつくまでに8匹狩れた。

 ゆっくりと森に近寄るが特に何もいない。森の中には小動物のものらしき気配はするが姿は見えない。これで調査完了して帰るのもなんだろうと思ったので森の境界にそって移動していく。森に近いあたりだと野ウサギも出ないようだ。しばらく進むと何かいた。ゆっくり近寄っていく。人型だが小さいな。草に隠れて見えづらいが10匹くらいはいそうだ。ゴブリンかな?身長は1mほど。オークより弱いが数が多い。群れで行動する。死体は食べれるが骨っぽくてまずいから売り物にはならない。討伐報酬はあったが安かった気がする。

 ちょうど固まってるから爆破で殲滅できそうだ。【小爆破】をゴブリンの集団に撃ち込む。ゴブリンたちは吹き飛んで、倒れなかったやつも混乱してまだこちらに気がついてない。【火矢】で1匹ずつ仕留めていく。残り3匹くらいなのにまだ逃げる様子はない。頭が悪いんだろうか。

 ようやくこちらに気がついて襲い掛かってきたが時はすでに遅し。剣を抜く必要もなく【火矢】だけでゴブリンは全滅した。念のために1匹1匹とどめを刺してまわる。2匹ほどまだ息があった。やっといてよかった。

 こういうときゲームだと雑魚でもお金を少しくらい持ってるもんなんだが、こいつは何も持ってなかった。オークはぼろを着て棍棒を持っていたが、こいつらは素手で服すらきてない。一応食べれるそうなので状態がよさそうなのを5匹ほど回収。ギルドカードを見ると12匹討伐になっていた。


 休憩してそろそろ切り上げて町に帰ろうかと考えていると、森からがさがさばきばき、騒々しい音がこっちに接近してきた。気配察知の範囲より遠い。音はまっすぐこっちにむかっている。すばやく立ち上がり森から離れ草むらに伏せて気配を絶つ。

「ブヒー」

 馬鹿でかい猪が出てきた。2本の立派な牙と黒い剛毛、サイズは小型トラックくらいあるだろうか。ふごふご言いながらゴブリンの死体を漁り始めた。

「うわあ、頭からぼりぼりいってるよ……」

 オーク肉やら食うのは慣れたが、さすがにそのままかじるのは少々グロテスク。

 2匹目を食べ始めたのを見ながらゆっくりと後ずさる。ここは撤退の一手だ。

 パキッ。

 枯れ木を踏んでしまう。こっちを見る大猪。あ、目があった。やべえ。大猪が突っ込んできた。

 【火槍】を発射。命中するが毛皮が焦げたくらいでダメージを受けた様子はない。もう魔法を撃つ余裕はない。剣を構え必死に避ける。でかいだけあって方向転換はあまり素早くないようだ。

 【小爆破】の詠唱にかかる。猪はゆっくり方向転換をするとこっちに突撃してきた。やばい、詠唱が間に合わん。詠唱を中断して突進をかわそうとするが、避けきれず吹き飛ばされる。とっさに大猪の体に剣をつきたてるのに成功したが、刺さったまま持っていかれてしまった。

 立ち上がり、アイテムから鉄の剣を出すが、こんなか細い剣じゃどうにもなりそうにない。

 くそ、どうする?威力のある魔法は詠唱時間がかかりすぎる。火槍程度じゃ倒せない。あの突進をかわし続けて剣でダメージを与えて……せめて動きを止める魔法でもあれば。

 いや、足止めならいけるんじゃないか?【火槍】を詠唱する。大猪はこちらに向かって突進を始めている。狙うのは足だ。発射!火槍は大猪の前足に命中する。大猪は体勢を崩しておれのすぐ手前で止まった。

 すばやく距離を取る。大猪は立ち上がりこちらに向かおうとするが足のダメージのせいで歩くような速度しか出ない。再び【火槍】を大猪に撃ち込む。もう1本の前足も奪い大猪は完全に身動きが取れなくなった。

 ゆっくりと【小爆破】の詠唱をする。ぶぎーぶぎーと怒りの叫びを上げる大猪の頭に、小爆破をぶつける。頭がはじけとび大猪が倒れ、レベルが一つあがった。

 周りを見回しもう何もでないことを確認し、大猪をそのままアイテムに収納。急いで森から離れ町にむかう。

 今回は危なかった。一つ間違えたら死んでた。怪我したり死んだりしたら労災は降りるんだろうか。果たしておれは正社員なのかパートなのか。日誌で伊藤神に聞いたら答えてくれるだろうか。


その日の日誌に質問を書き込んでおくと、次の日には返事が来ていた。

『20年の期間従業員という扱いになります。怪我は保障しません。日本に戻るときに治しますから。死んだ場合、労災を認定し遺族に6000万円を支給します(月給25万円×20年分)。受け取る遺族を指定しておいてください。伊藤』

 受け取りは母親にしておいた。
誤字訂正
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