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調味液が決め手「辛子明太子」
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たらこや辛子明太子をつくりたい!! そう思ってから何度かスーパーの魚コーナーをのぞき込みましたが、そこにあるものはみんな調味済みの「たらこ」ばかりでした。辛子明太子を作るのに、調味済みのたらこを使ったのではおもしろくない。ましてや、たらこを作るのに、保存料など合成添加物がバンバン入れられているたらこを使っていたんでは何の意味もない。
そういう意味では企画倒れになりかけていた辛子明太子ですが、夏も終わり、秋の気配が近づくころ、生のたらこが出回るようになりました。文献を調べると、たらこの原料であるスケソウダラの漁期は11月〜3月であり、旬としては12月末〜1月とのこと。やったぁ、時期さえくれば、生たらこもゲットできる!! こりゃぁ辛子明太子に挑戦するしかない p(^^)q
辛子明太子を作る基本的な材料
用意しておきたい器具
Let’s start!
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作り方 |
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1 |
【酒で洗う】 生たらこに分量外の塩をぱらぱらと振りかけて冷蔵庫などで1時間ほどおき、でてきた水分をキッチンペーパーなどでふきとります。下漬け用日本酒に生たらこを入れて、酒で洗っておきます※4。アルコールで消毒しているわけですね。
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2 |
【下漬け用調味液の準備】 生たらこを洗った日本酒を、目の細かいザルで濾してカスを取り除いてから、塩を加えて火にかけて沸騰させます。このまま弱火で5分間加熱してアルコール分を飛ばします。これが下漬け用調味液になります。
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3 |
加熱を終えたら火からおろし、ボールなどに氷水を張って、鍋ごと浸して十分に冷やします。 |
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4 |
【下漬け】 生たらこをきっちりと封ができるポリ袋に入れて、下漬け用調味液を入れ、しっかりと封をして,、10時間前後(7時間〜12時間ほど)下漬け(塩漬け) ※5します。
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5 |
【整形】
たらこは、たらのお腹とつながっていた「卵管」の部分がかならず破れています。たらこをスプーンですくって、この破れていた部分を下にして、ザルに並べます。
ザル全体をラップで覆ってから、冷蔵庫で10時間ほど「整形」します。
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6 |
【唐辛子の準備】 唐辛子、砂糖、醤油を計り入れ、ゆずを絞っておきます。
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7 |
【本漬け用調味液の準備】 本漬け用の調味液を作ります。まず本漬け用の日本酒を火にかけて沸騰させ、弱火で5分間加熱してアルコール分を飛ばします。
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8 |
【出汁をとる】 加熱を終えたら火からおろし、ボールなどに氷水を張って、鍋ごと浸して十分に冷やしてから、昆布を入れて30分間置いておきます。30分後火にかけて沸騰してから、かつお節を加え1分間弱火で加熱して、火からおろします。
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9 |
【本漬け用調味液】 かつお節などが入らないように目の細かいザルで濾しながら、熱いうちに唐辛子に加えます。これを容器ごとボールなどに張った氷水に浸して十分に冷やしておきます。これが本漬け用調味液になります。
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10 |
【本漬け】 生たらこをきっちりと封ができるポリ袋に入れて、本漬け用調味液を入れ、しっかりと封をします。これを冷蔵庫の氷温(0度〜5度)に入れて、1週間本漬け ※6します。途中、何度か上下を返すと良いでしょう。
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11 |
【できあがり】 本漬けからあがったら、半日〜1日間、ザルなどに入れて冷蔵庫の中で液切りをします。脱水シートがあれば、シートに載せておくのもひとつの手です。食べきれない分は、一腹ずつラップしてくるみ、冷凍すれば2〜3ヶ月保存できます。着色料が入っていないので、ちょっと鮮やかな色にはなっていません
※7が、辛子明太子のできあがりです。
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ここでの「こつ」
※1 【生たらこ】
味付け済みの「たらこ」ではありません 味付けをしていない「生たらこ」を使います。たらこを使ったのでは、すでにいろいろな酸化防止剤、保存料、発色剤、着色料など各種の添加物が含まれており、味付けもしてあるので思ったようなできあがりは期待できません。またたらこは、表面が緑色や紫色に変色していることがありますが、これはスケソウダラが捕れたときに、内臓が破裂して胆汁が卵巣に付着したものであり、痛んでいるわけではないそうです。
あと生たらこは、一度凍結しておくようがいいよ、、というコメントを明太子業界の方からいただきました。
魚介類のうち、刺身で食するものの場合、多かれ少なかれ、寄生虫という問題を避けてとおることはできません。スーパーなどで市販されているものは、それなりの処理がされていることが多いようですが、それも絶対かというと、はっきりとは申し上げられません。特に漁港で仕入れたものなどは、正真正銘の「生」であるため、寄生虫も生きている恐れがあります。
ただし寄生虫は、凍結することで死滅させることができます。アニサキスは、摂氏マイナス20度で1晩以上冷凍すれば死滅すると言われています。家庭用冷凍冷蔵庫でも、十分にマイナス20度になりますので、ご安心ください。家庭用冷凍冷蔵庫の温度推移図を右に示しておきます。
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私は鯖ずしでご対面して、胃カメラ+点滴+3日間の入院でした。こんなことをレシピに書いて脅すのは私くらいでしょうね。中毒自慢なら他にもあります。生ガキでまる1日間寝込むというのもありました。 (^_^;)
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※2 【日本酒 170cc】
下漬け用調味液としては、アルコール分としての日本酒の蒸発量が50ccとして、できあがり分量が、
生たらこ : 加熱後の日本酒 : 塩 = 120g : (170cc−50cc) : 30g = 4 : 4 : 1
↑ 比重の差を考慮しろっ、などというツッコミはしないでくださいネ (^.^)
※3 【日本酒 190cc】
本漬け用調味液としては、アルコール分としての日本酒の蒸発量が50cc、かつお節が吸水してしまう分量が20ccとして、
生たらこ : 加熱後の日本酒 = 120g : (190cc−50cc−20cc) = 1 : 1
※4 【酒で洗っておきます】
水ではうま味が流れ出してしまうので、日本酒で汚れを洗い流すと共に、殺菌を行います。
※5 【下漬け(塩漬け)】
塩漬けすることで、卵の水分を排出し、また卵膜のタンパク質が変成して、プチプチとした食感がでてきます。
※6 【冷蔵庫で10時間ほど「整形」】
生たらこの破れた方を下にして、冷蔵庫で整形すると、卵が締まり、調味液の吸い込みが良くなるそうです。この方法は、明太子業界の方から教わりました。Hさまありがとうございます。
「おいしさにかかわることで言うなら、塩漬け後一度ザルなどにあげて形を整えてから卵管(たら子ののおなかのところの皮が破れたところ)を必ず下にして冷蔵庫に保管します。これは、明太子のなかでも国内産の高級品を作るためのたらこ作りでは必須です。
ちなみにこの塩漬け液から上げて、整形して冷蔵庫に保管するまで、鮮度のよい卵ほど見る見るうちに塩が食品を締めていくのがわかります。
さて、冷蔵庫で一晩ザルに上げて保管し、塩と卵をなじませてから、余分な塩水を十分落としてください。この段階ではたらこが「ゴムでできているのだろうか?」 というほどに弾力性と硬さを持ちます。そうなって初めて、辛子の調味液に漬けたときに卵の隅々にまで液を吸い込みおいしさを演出するのです。
調味液自体はお好みがあると思いますので、お好みに合わせて作られるとおもしろいと思います。」 |
※7 【1週間本漬け】
本漬け後、3日目くらいから食べることができます。でもじっくりと1週間熟成させてみませんか?
※8 【鮮やかな色にはなっていません】
生たらこは、黄土色に近い色をしたものや、きれいなピンク色をしたものなど、個体によってピンキリでさまざまな色のものがあります。通常製造業者が無着色として仕上げる辛子明太子やたらこの場合は、見栄えが悪くならないように、色つやの整ったものだけを厳選して、辛子明太子やたらこの材料として利用するそうです。
手作りの場合は、買ってきた生たらこから色つやの良いものだけを厳選などしていると、歩留まりが悪くなりすぎるので、そのまま利用することになりますね。まぁ派手な赤色になっていないのが、手作りの証ということで、許してつかぁさい。
※9 【警告】
注意喚起です。手作り食品のなかでも発酵食品は、器具や器具を扱う手などに雑菌がついていると思わぬ事故を招く場合があります。衛生には十分に気をつけて、楽しい食品づくりを心がけるようにしましょう。また、嫌な臭いがちょっとでもしたら口にするのは止め、廃棄する勇気をもちましょう。何事も自己責任の意識をもって行動してください。
2003.2.25 一部加筆修正あり
2003.10.23 修正 生たらこの冷凍をお勧め
2003.10.27 修正 下漬時間および、整形
※10 【お勧めコーナー】
明太子開発史―そのルーツを探る (単行本)
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「やまや」の辛子明太子(切子)450g
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参考文献)
博多の味・辛子明太子のやまや さん http://www.yamaya.com/
山口油屋福太郎(ふくふく島) さん http://www.fukutaro.co.jp/