『輝く夜』 百田尚樹
2010年、121冊目。百田尚樹『輝く夜』
クリスマス・イヴの夜の5つの奇蹟。
そんな5つの話を綴った短編集。
しかし、「泣ける話」という謳い文句に惹かれて呼んだんですが、ちょっと期待はずれ。全く泣けない。泣きどころがない。
「泣こう」と思って読むのなら、ちょっとハズレかもしれません。
今の季節にあった軽いドラマのような話として読むのがいいのじゃないでしょうか。
第一話 魔法の万年筆
クリスマス・イヴ。
恵子は7年働いた運送会社をクビになる。
突然のことに途方に暮れる恵子は、街でホームレスに目を止める。
貯金もなく、今後のことも気になる恵子だったが、ハンバーガーショップでハンバーガーと熱いミルクをテイクアウトすると、ホームレスに手渡す。
恵子を追いかけてきたホームレスはサンタクロースだと名乗ると、お礼として3つ願いが叶うという魔法の万年筆を恵子にプレゼントするのだった。
第二話 猫
派遣社員の雅子はクリスマス・イヴに残業を志願する。
これに34歳の社長石丸幸太がつきあう。
派遣社員と正社員を区別しない現在の会社に好感を持ち、そして、そんな会社の雰囲気をつくる社長石丸にも好意を抱いていた。しかし、そんな石丸に憧れる女性は数多い。
もう派遣期間も終わり、最後の仕事となる。
雅子が仕事が終わるのを待っていた石丸は雅子に緑茶を入れて話しかける。
雅子は石丸に促され、同居人である猫の話を始めた。
第三話 ケーキ
502号室の杉野真理子は癌で最期を迎えようとするなか、走馬灯のように、これまでの不幸だった過去が蘇る。
両親に捨てられ、施設で育てられた真理子は中学を出て美容学校で学ぶ。
美容院に就職した後も研鑽をつみ、店長に薦められて出たコンテストで準優勝。しかし、間もなく病魔が襲う。
入院して初めて男性に胸がときめく。主治医の大原先生に。
クリスマスの夜。真理子はサンタに願う、死にたくないと。
奇蹟は起こった。
第四話 タクシー
クリスマス・イヴの夜、タクシーに乗り込んだ香川依子は運転手相手に過去の恋の話を始める。
鞄の縫製工場に勤める依子は友人の和美とともに、5年前の夏休み、沖縄の阿嘉島にダイビングに出かける。
そこで彼女たちをナンパしてきたのはテレビ局のディレクター二人組。
依子と和美は所詮一夜の話と、自身たちをスチュワーデスだと偽る。
しかし、依子は純朴そうな島尾に惹かれ、島尾もまた依子に関心を示す。
東京に戻ってから、島尾からの連絡を受けて、依子は躊躇する。スチュワーデスだと偽ってしまったからだ。
第五話 サンタクロース
和子は敬虔なクリスチャン。
クリスマスの夜、子ども達に囲まれ、幸せを噛みしめつつ、夫賢治にこれまで告げたことのないキリスト教に帰依するにいたった経緯を語りはじめた。
両親を亡くし、更にその後、和子を支え続けた恋人亮介を結婚間際に突然の交通事故で失ってしまった和子は、天涯孤独の身を憂い、絶望的な孤独に苛まれた。
そんな矢先、妊娠していることが発覚する。しかし、育てていく自身もなく、見知らぬ地で死ぬ決意をした和子はJRで西へ向かった。
見知らぬ街を彷徨い歩くいた和子は高いクスノキに色とりどりの豆電球を飾り付けた大きな洋館の前に立っていた。洋館と見えたのは教会。
教会の建物の影から姿を現わしたサンタクロースの格好をした牧師は和子を招き入れるのだった。
ちょっとご都合主義的な、一種ドラマ向きの話で、あまり小説っぽくはありません。
『夜にも奇妙な物語』のテイストですね。
なんというか、展開が派手だったり、予想がつきやすかったり、とか。これはこれで悪くはないんですが、ちょっと安っぽい感じです。なんだか、先が読めてしまうんですよね。
また、第三話なんかは、いわゆる「ドラえもんの最終回」みたいな感じです。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:☆☆☆☆☆
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