ひどい働き方をさせられていると思ったら、役所に相談するなど行動を起こそう。社会の側はそれを受け止め、企業に是正させる仕組みを整える。この二つをかみあわせ、ブラック企業を根絶していきたい。

 過労やパワハラで社員が精神障害になった事業所で、その後も月80時間超の残業が続く。ある会社は、残業代が支払われない「管理職」が社員の7割を占め、うち半分は20代……。

 「若者の使い捨てが疑われる企業」への対策として、厚生労働省が実施した調査からは、すさまじい実態が伝わる。

 対象になった5111事業所のうち82%で、違法残業や賃金不払いなどの労働法令違反が見つかった。

 こんな風に思う人がいるかもしれない。「若いときには、がむしゃらに働いて当たり前。オレもそうだった」と。

 確かに、これまでも長時間労働や過剰なノルマはあったし、労働法令がいつも守られていたわけではない。

 それ自体、問題ではあるが、そこには「メンバーシップ型」と呼ばれる日本独特の雇用システムもあった。会社はいったんメンバーになった正社員に厳しい要求をするかわりに、育成の機会と雇用の安定を保障するのが前提だった。

 ブラック企業には、この前提がない。体力と気力のあるうちは徹底的に働かせ、心身をこわしたりして「能力不足」と判断したら、退職に追い込む。まさに使い捨てだ。

 どう対応するか。

 今回の調査はハローワークへの相談電話や投書など、労働者の行動が手がかりになった。

 働く側が労働時間や賃金、採用・解雇について、労働法の基礎を身につけておくことが肝要だ。それがないと、会社の言いなりになってしまう。学校も、就職率を競うだけでなく、学生・生徒に命と健康を守る手立てを伝えてほしい。

 ただ、行動を起こしても、それを受け止める枠組みがなければ孤立するだけだ。

 労働者の不満の受け皿であるはずの労働組合の組織率は今年17・7%まで落ち込んだ。ブラック化しやすい新興企業では、組合がないのが普通だ。

 個人でも加入できるユニオン、労働相談を受けるNPOや弁護士、そしてなにより、労働行政の奮起にかかる。

 事後的な摘発はもちろんのこと、「使い捨て」の判断材料のひとつである離職率の調査・公表など、あらゆる取り組みを強化すべきだ。