秘密保護法:自民党が批判的報道への「反論指南書」

毎日新聞 2013年12月18日 05時30分

 国家機密を漏らした公務員らに厳罰を科す特定秘密保護法を巡り、自民党が法律の公布された13日以降、批判的な新聞報道への反論文書を作り、党所属の全国会議員に配っていたことが分かった。有権者に対し議員らが説明する際に使う資料とみられる。世論調査で約8割が慎重審議を求める中、強行採決したのは自民党などの政権与党で、識者からは「説明不足を反省すべきなのに、メディア批判をするのは筋違い」との声が上がっている。

 文書は「特定秘密保護法に関する誤った新聞報道への反論」。A4判5ページの本文と8ページの別紙から成る。本文には「一部新聞は誤情報を流して国民を不安に陥れている」と記載。別紙に国会審議終盤に毎日、朝日、東京の各新聞が掲載した計23本の記事を取り上げ、いずれも「事実に反する」などと批判している。

 毎日新聞の記事は4本取り上げられている。このうち、6日の社説「国会や司法のチェックも及ばない」に対しては「事実に反します。(中略)国会の求めに応じ、特定秘密を提供しなければならず、国会で必要な議論ができます」と反論している。確かに法律上、国会への秘密提供は規定されているが、「安全保障に著しい支障がある」と政府が認めた場合は提供されない。さらに、国会法や議院規則の改正が必要で、こうした疑問点への言及はない。

 6日の朝日新聞社説「『行政機関の長』が、その裁量でいくらでも特定秘密を指定できる」についても、文書は「秘密の範囲が際限なく拡大することや、恣意(しい)的な運用が行われることはない」としている。しかし、指定の妥当性をチェックする「第三者機関」は、設置方針はあるものの、具体的内容が決まっていない。

 反論書を作った自民党政務調査会の担当者は取材に対し「執行部の指示で作った」とだけ説明。作成の意図を尋ねたが回答しなかった。【青島顕】

 ◇山田健太・専修大教授(言論法)の話

 公党として政策への賛否を色分けし、反対意見を認めないように思える。民主主義のありようや、言論の自由の大切さに対する理解がないことの表れだ。文書は「恣意的な秘密指定がない」と断言するが、政府はその点を国会で明快に答弁できなかった。説明不足を反省すべきなのに事後にメディアを批判し、反省を求めるのは筋違いではないか。

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