ゴルフ7、1.2TSIコンフォートライン試乗。
オリックス・レンタカーにてゴルフ7、1.2TSI コンフォートライン(正式名称 Golf TSI Comfortline BlueMotion Technology)を借りて一日ドライブしてきました。当初は1.4のハイラインかなと思っていたのですが、自分は1.2のコンフォートラインの方に興味があったので、嬉しい誤算でした。
各方面で大絶賛のゴルフ7、果たして実際に体験してみてどういう感じなのか? まず、福野礼一郎氏がエフロード9月号のEクラスの試乗記で言及していた「1.2のゴルフはE400ハイブリッドの快適性、静粛性、乗り心地と大差ない」という部分が本当なのか確かめてみたかったのが一つ。で、結論としては、マンホールなどの凸凹を踏んだときの足のいなし方は確かにうまいけど、凸凹が連続する場面でのボディのブルブルとした揺れ残りが気になるというもの。これ、ゴルフ7のボディ剛性が低いはずもないので、単にサイズや重量の物理量の限界からくるものなのか、タイヤの設定によるものなのか(205/55R16のミシュラン・エナジーセイバー)、私の感覚がずれてるのか、等々が考えられるのですが…
平たく言うと、Cセグのハッチバックとしてはものすごくよく出来ているけど、じゃ、ゴルフがCクラスやEクラスになったのかと言われると、それとは違うかな、と。
あと、静粛性もクラウン並という試乗記も以前見かけましたが、それもちょっと違うような。勿論、絶対的な静粛性は高いのですが、じゃ、ロードノイズが究極に低いかと言われるとそこまでじゃないし、そもそも1.2のターボなのでエンジン音もそれなりに室内に侵入してくるし、高級車っぽい静粛性とはまた違うのです。Cセグのハッチバックの範囲内で、十分静かというレベル。
そもそもいわゆる高級車は、物理的にも大きく重い。遮音材、制振材もふんだんに使っている。ゴルフのようなハッチバックは、それとは全く設計思想が違って、軽量化も一つの命題だし、遮音材、制振材も湯水のように使うというよりは、適材適所、素材の性能アップとともに使用量、使用部位を極限まで吟味して使っての静粛性。若干、ニュアンスが違うんですね。単に数値(デシベル)などで測れるものとは違うニュアンスというか。
ただ、ゴルフの名誉のために言っておくと、歴代ゴルフが持つ抜群の安定感、肝っ玉母さんと評されるクルマに身を任せてどこまでも走っていけるような図太さは健在でした。いい意味でどこにも突き刺さるものがないから、ずっと運転していられる。このクルマなら長距離も全く問題なく走って行ける。そういう安定感はCセグのハッチバックとしては依然としてトップレベルにあると思います。
新型で印象的だったのは、数々の安全装備。特にレーンアシストは、ステアリングを常に車線間の中央に寄せようとする力が働き、慣れるまではかなり違和感がありました。じゃ、ステアリングを離したらどこまでも自動操舵してくれるかというとそうではなくて、ちゃんと「ステアリングを操作して下さい」と警告が表示されます。つまりこのシステムをonにしている時は、ゴルフならではの「矢のような直進性」を味わうことが出来ず、常にクルマが生み出した反力を感じながら走るということに。自分はこれが途中から煩わしくなってきて、システムをoffにしてしまいました。ドライバーの意識がハッキリしている限りは不要な装備。逆にドライバーが居眠りなどで意識がもうろうとしている場合には、とても有効な装備だと思いました。長距離をただただずっと走らなくてはならない場面ではonにしておくと、保険としては有効かと。運転の楽しさと、安全性を担保されるという二つの要素をどこでバランスさせるか、という問題ですね。
また全車速対応車速感応クルーズコントロール(ACC)もなかなか秀逸。渋滞時でもいつでもシステムをonに出来て、のろのろ走行でもちゃんと前車に追従してくれます。ただ、渋滞でこまかく停車、発進が繰り返されるときに、停車直前でいきなり急ブレーキを踏むような動作をする場合があり、詰め詰めでひっついてくるトラックなどが後ろにいる場合は結構ひやっとします。この辺りの制御はもう少し煮詰める必要がありそう。そもそもDSGは停車直前の制御がかなり難しいみたいで、単にACCだけの制御の問題ではない気もしますが。
というわけで、結論としてはいいクルマだったけど欲しいとは思わなかった、というもの。人に勧めるのなら太鼓判を押しますが、自分がいざ買うとなると食指が動きませんでした。たぶん、自分が欲しているものが単に「いいクルマ」じゃないからだと思います。以前所有していた初代(BMW)MINIのことを思い返すのですが、あれはエンジンもクライスラーとの共同開発でかなり古くさいもの、足回りもランフラットタイヤの影響でかなり硬く、乗り心地はお世辞にもいいとは言えませんでした。轍ではステアリングを取られるし、ゴルフのようなFF造りに長けたメーカーの作品とは洗練度が明らかに下。でも、そういうクルマがなぜか運転していて楽しいのです。
ゴルフ7コンフォートラインも、例えばSレンジにしてエンジン回転を上げ気味にするとかなりスポーティな走りを楽しめます。要するに楽しいか楽しくないかは運転する人の心持ちで変わってくるのですが、自分の場合は、ダウンサイジング・ターボ&DSG(S-Tronic)という組み合わせはA3 Sportback 1.4TFSIと生活を数年共にしていたので、大きくは大差ないな、と思ってしまいました。
ということは、今ゴルフ6に乗っている人が7に買い替えても、大きく性能が向上したという感覚は抱きにくいのでは?と。MQBという新しいプラットフォームを使い、性能向上と共に大幅な軽量化が図られているゴルフ7。結局、ゴルフ6からの向上代(しろ)は、例えばDSGの変速がスムーズになった、静粛性が少し上がった、燃費が少し上がった、乗り心地が少しよくなった、と、各部が少しずつブラッシュアップされていることのような気がします。
決して、これまでゴルフだったクルマがEクラスになったわけではないというか。それに運転していて、クルマの色々な挙動がまさにゴルフのそれであることはいうまでもなく。運転していて常に「あ、こういう動きがゴルフだね」と何度も感じていました。それはこのフォーマット、Cセグ、ハッチバック、FF、ダウンサイジングターボ、DSGというゴルフがゴルフである要素が揃っているから。
買い替える価値があるとすれば、多くは安全装備の飛躍的な向上だと思います。そういう点ではレーンアシストやACCなどがop設定されているグレードは、それらを付けた方が買い替えた実感を味わえるような気がします。
というわけで、ゴルフ7は紛れもないゴルフだったというのが結論です。
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ということを踏まえた上で、今度はエフロード8月号の福野さんと荒井さんのゴルフ7試乗記事を読むと面白いですね。基本的には大絶賛なのですが、自分がなぜそのように感じたのかの理由もなんとなくわかりました。試乗車のバラツキ、タイヤの銘柄、そして軽量化されているのに同じフィーリングを出せていることなどなど。
あと、自分は飛ばさないので、この1.2のパワーで充分ですね。いわゆるターボラグも感じなくはないけど、極めて自然にパワーを出してきます。Sレンジにした時の活発さも清々しいです。
Posted by: skichi | Aug 24, 2013 at 12:27
mobileCGの連載「水野和敏的視点」 vol.12「V40 T4」vs「ゴルフTSIコンフォートライン」(後編)に、なぜ私が悪路でブルブルとした揺れ残りを感じたのかの理由が書いてありました。やっぱり原因があるようです。ただ、これは有料記事なので、リンクを貼っておくにとどめておきます。^^
http://www.webcg.net/articles/-/29111
Posted by: skichi | Aug 24, 2013 at 22:31