■品質安定、香り高める効果も
なぜ加えるのか。浜田理事は言う。
「日本酒にアルコールを加えること自体は江戸時代にもありました。当時はアルコール度数を高めて雑菌を防ぐ目的があったようです。酒かすから造るかす取り焼酎を使っていたようです」
「戦時中にはコメ不足に対応するため、焼酎などの添加が求められるようになりました。1944年(昭和19年)からです。増量目的でした。戦後もこの流れが続く中で、純米酒より飲みやすいとの評価が生まれました」
浜田理事によると、醸造アルコールを加えると味がすっきりするという。淡麗辛口になりやすいともいわれている。消費者の間からも、純米酒に比べて飲みやすいとの声があった。
吟醸酒などの高級酒では、添加数量の上限が定められている。白米の重量の10%以下となっており、増量目的というよりは品質面への効果が期待されている。
特に注目されているのが香りへの影響だ。「吟醸酒の香りの成分はアルコールに溶けやすい。醸造アルコールを添加することで、それまで酒かすに移っていた香りが酒にとどまるようになったのです」。実際、全国新酒鑑評会では吟醸酒をはじめとして出品される酒の大半が醸造アルコール入りだ。
時には酒質を安定させる役割も担う。純米酒はコメの品質や気候などに大きく左右される。それが面白みであり酒の個性でもあるのだが、安定した味を求める消費者が多いのも事実。大手酒造会社は純米酒同士をブレンドするなどして味を調整できるが、小規模な蔵だとそうもいかない。今回の一連の混入騒動は、こうした事情も背景にありそうだ。
ただ、醸造アルコールのこうした「効果」は誤解を招きやすい。外国人ともなるとなおさらだ。日本酒を海外に紹介しているジョン・ゴントナーさんは以前の取材で「米国人に醸造アルコールの話をすると混乱してしまう」と話していた。「安酒には増量目的、高級酒には香りを高めるために添加している」との説明が理解できないようだ。
日本酒、醸造アルコール
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