空飛ぶ円盤:産業技術短大がチャレンジ 救助用の1人乗り
2013年12月12日
災害救助現場で使用する空飛ぶ円盤を開発中の久保田憲司講師(右奥)ら=兵庫県尼崎市の産業技術短期大で2013年12月10日午前11時25分、幾島健太郎撮影
産業技術短期大学(兵庫県尼崎市)の久保田憲司講師(59)と学生らが、災害時に人命救助に向かう1人乗りの超小型垂直離着陸機の開発を進めている。円盤状の胴体の底に設けたプロペラ2枚の揚力で浮かび、ヘリコプターも無理な狭い場所に着陸できる。12日には初の有人飛行実験に挑戦したが、あえなく失敗。それでも久保田さんは「これからです。この空飛ぶ円盤で一人でも多くの命を救いたい」と前を向く。
直径約2メートル、高さ約2.5メートルで動力に水上バイクのエンジン2機を利用。上部に人が乗り、レバー操作でプロペラの傾きを変え、全方向に動ける。
東日本大震災で、久保田さんは病院の屋上で助けを求める人の映像をテレビで見て思った。「宇宙に行ける時代に、なぜこの人たちを助ける技術がないのか」。2011年夏、学生約15人と共に開発を始めた。米軍が1950年代に開発した「フライングプラットホーム」の資料をネット上で見つけ、プロペラ内蔵の円盤に人が乗る形を参考にした。
当時は姿勢を保つのが困難とされたが、久保田さんは一輪車ロボットの開発などでバランスを自動制御するジャイロ装置の研究を重ねていた。センサーで傾きを感知し、自動でプロペラの角度を変えることで平衡を保つ仕組みを作り出した。
この日は久保田さんが自ら円盤に乗って実験を始めたが、ギアの不具合でプロペラの一つが回らず、飛行を断念した。久保田さんは「非常に残念だが、調整し直して来年再チャレンジしたい。実用化できれば災害救助の歴史が変わる」と話している。【山田毅】