震災時、米の原発安全策「秘匿」 保安院課長も見られず

東日本大震災発生前に米政府から日本政府に伝えられていた原子力発電所の全電源喪失対策の情報は、「テロ対策の秘密」の壁に阻まれて原子力安全・保安院の担当課長も見ることができなかった。東京電力にも伝えられず、福島第一原発事故の拡大の一因になった。特定秘密保護法が施行されれば、こうした情報がますます隠されると懸念する声が出ている。

秘匿された情報は、2001年の9・11同時多発テロを受け、米政府が自国の原発に義務づけた対策の内容で「B5b」と呼ばれる。全電源喪失に備え、(1)持ち運びできるバッテリーの配備(2)ベント弁や炉心冷却装置を手動で動かす手法の確立(3)手順書の整備や作業員の訓練――といった対策を具体的に示している。

関係者によると、米政府は08年までに複数回にわたり、B5bの内容を日本の原子力安全・保安院に伝えた。だが、秘密扱いを前提とした情報提供だったため、保安院は閲覧資格者を幹部ら数人に制限。担当の原子力安全技術基盤課の課長は11年秋の取材で、B5bの資料を自分は見ることができないと明かした。「手続きの遅れ」が理由だったというが、中には、その後も1年近く閲覧できず、記者に「ない」と説明した文書もあった。

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(朝日新聞社提供) 

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  • 福島原発・福島第1原発を茂木経産相が視察

    1、2号機の海側で行われている、地下汚染水の対策現場を視察する茂木敏充経産相(中央)=8月26日午後2時45分、福島県大熊町の東京電力福島第1原発[代表撮影] 

  • 福島原発・視察する廃炉安全監視協議会

    放射能汚染水漏れを受け、東京電力福島第1原子力発電所を視察する廃炉安全監視協議会のメンバー=4月24日午後、福島第1原発[代表撮影] 

  • 福島原発・福島第1原発を茂木経産相が視察

    汚染水の漏えいが見つかったタンク(正面)周辺を視察する茂木敏充経済産業相(右)=8月26日午後、福島県大熊町の東京電力福島第1原子力発電所[代表撮影] 

  • 福島原発・説明を受ける廃炉安全監視協議会のメンバー

    放射能汚染水漏れがあった東京電力福島第1原子力発電所の配管について、東電の担当者から説明を受ける廃炉安全監視協議会のメンバー=4月24日午後、福島第1原発[代表撮影] 

  • 福島原発・福島第1原発を茂木経産相が視察 

    1、2号機の海側で、地下汚染水の対策現場を視察する茂木敏充経産相(右手前)ら。中央の円柱状のものは遮水壁=8月26日午後2時41分、福島県大熊町の東京電力福島第1原発[代表撮影] 

  • 福島原発・第1原発敷地内の汚染水タンク

    東京電力福島第1原子力発電所の敷地内に立ち並ぶ汚染水タンク(手前)=3月5日(時事通信社チャーター機より撮影)

  • 福島原発・敷地内に並ぶ汚染水を貯蔵するタンク

    敷地内に並ぶ汚染水を貯蔵するタンク=3月1日午後0時6分、福島県大熊町[代表撮影]

  • 福島原発・敷地内に並ぶ汚染水を貯蔵する大型タンク

    敷地内に並ぶ汚染水を貯蔵する大型タンク=3月1日午後0時24分、福島県大熊町[代表撮影] 

  • 福島原発・海側で行われている地下汚染水の対策

    1、2号機の海側で行われている地下汚染水の対策。手前は地下水のくみ上げ設備。中央奥に遮水壁がある=8月26日午後2時49分、福島県大熊町の東京電力福島第1原発[代表撮影] 

  • 福島原発・下汚染水の対策現場で地下水のくみ上げを行っている設備 

    1・2号機の海側で行われている、地下汚染水の対策現場で、地下水のくみ上げを行っている設備=8月26日午後2時48分、福島県大熊町の東京電力福島第1原発[代表撮影]

  • 福島原発・汚染水を入れるG6タンク増設エリア

    汚染水を入れるG6タンク増設エリア=6月11日午前11時28分、福島県大熊町の福島第1原発[代表撮影] 

  • 福島原発・汚染水流出防止の護岸工事 

    汚染水の海洋流出防止のため、東京電力福島第1原発2号機の取水口付近で行われている護岸の地盤改良工事=22日午後7時[代表撮影]